歩いて帰ろう
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「なま恵~!」
「もぉ止めて、せっかく詰め込んだの忘れちゃうから!」
次の日の朝一番にウチの教室にやってきて喚くサチコに両手で耳を塞いだ。
昨日電話でちょっと話したらこれだ。
「あんたバスケ部嫌いとか言っ…」
「おっきな声で言わないで!」
あたしはサチコの口を押さえて回りを見渡すと小さく耳打ちした。
「だから詳しいことは今度時間のある時に話すって言ったじゃん」
あたしの手を振り払ったサチコが声を潜める。
「…遅かれ早かれバレる事だけどさ、恨まれるよ?彼のファンに…」
そんな事言われても…
「だって付き合っちゃったんだから今更文句言われてもねぇ…」
「お~強気」とサチコは茶化すようなニヤケ顔を隠そうともしない
「で、どっちから告白したの?」
その時予鈴が鳴って救われたと感じたあたしに「後でしっかり聞くからね」と背中を向けようとしたサチコの腕を掴む。
「神くんに余計な事いわないでね」
サチコはニヤリと笑ってあたしの鼻をつついた。
歩いて帰ろう
帰りのHRが終わるとサチコが廊下で待っていた。
すんげぇ根性。
たぶん野次馬根性。
「神くんに変なこと聞かなかったよね!?」
「聞かないよ、アイツも澄ました顔しやがって、なんかムカつくあんた達」
ゴメンゴメンと謝る。
「どこをどうしてそうなったのよ?もったいぶらないで教えて」
サチコがあたしの両頬を引き伸ばした。
イテテと情けない声を出す。
「みょう寺さん」
その時、聞きなれた声がしてサチコの手が離れた。
頬を押さえるあたしの目に神くんが映る。
「神く~ん、アタシに何か言うことあるんじゃないの?」とサチコが恨めしそうに神くんを見上げた。
神くんはきょとんとしてあたしを見るからあたしはちょっと気まずくなって苦笑いする。
彼はすぐに理解したようで「サッチーの友達とっちゃった」と笑った。
「もーあたしにも誰か紹介してよ、牧さんとか牧さんとか牧さんとか」
「牧さんにも好みがあるからなぁ…」と何故か渋る神くんを前にその交渉は成功しそうにもない。
「今日は時間がないからその話は今度ね」と話題を打ち切った神くんがあたしに向き直った。
「今日も少しシュート打ってから帰ろうと思うんだけどみょう寺さんはどうする?」
おお、あたしすっかり彼女扱いだ。
「古典暗記しながら待ってるよ」
こちらは難なく話がまとまり、じゃあねとサチコに手を振ると彼女は悪戯っぽい目で神くんを見た。
「神くん、その子すごくいい子だから大切にしてよね。いろんな意味で」
思わず感動してしまう。
そんなこと言ってくれるあんたこそいい子だよサチコと心の中で泣いた。
今度ジュース奢ってあげなくっちゃ。
そしたらサチコが神くんにボソボソと耳打ちを始める。
そんな事、あたしだってしたことないのに妬ける…さっきの感動取り消し、なんて思っていたら一瞬眉を顰めた神くんが「馬鹿っ」と言って笑いを堪えるように口元を緩めた。
「そんなんだから牧さんに紹介できないんだよ」
「なになに?」と会話に入ろうとしたのだけれど「行こ」と神くんがそれを遮ってワザとらしくあたしに聞く。
「どうしてアレと友達なの?」
サチコ、何を言った?
「そのテの相談にはいつでも乗りますよぅ」と嬉しそうなサチコの申し出を神くんは丁寧に断った。
「ねぇねぇ、さっきの何だったの?」
ほらサチコが何か言ったんでしょ?とあたしが聞くと神くんは苦笑いした。
「たいしたことじゃないよ」
うわ、何か隠してる。
すんごい気になる。
「え~教えてよ」
どさくさに紛れて腕に手を添えてみちゃったりして。
並んで体育館に向かうあたし達を見て何やら囁きあってる子達がいるのが視界に入るとちょっと嬉しかったりする。
えーとね、と神くんは少し目を逸らした。
「ウチのバレー部の女の子ってさ、すっごい下ネタに強いんだよね」
「そうなの?」
知らなかった。
「そーゆーこと」
へぇとしか答えられないあたし。
運動部が多少下品なのは仕方ないものね。
あたしは苦手だから極力参加しないし、振られてもサチコが上手くかわしてくれるし。
そういった意味でもあたしにとってはいい友達なんだけど…
「馬鹿だよね」
「だよね」
「でも紹介くらいしてあげればいいのに」
「あそこまでいくと俺の人間性を疑われるから嫌だ」
…何を言ったんだろう本当に…
頭の隅に多少のひっかかりを感じながら、シュート練習を始めた神くんの邪魔にならないように体育館の隅っこに座って教科書を広げた。
「お待たせ」
随分長いこと待ったような気がするけれど、神くんの顔を見たらそんなのどうだって良くなってしまうから恋って恐ろしい。
「あー腹減った」
歩きながら神くんはそう言って大きく伸びをした。
「ホントに熱心だね」とあたしが言うと「バスケくらいしか取り得がないからね」と返ってくる。
「そんな事ないと思うよ」
「そんな風に言ってくれるのはみょう寺さんだけだよ」
神くん狡いよなぁ。
どれだけ自分が魅力的か本当は知ってるくせに。
こんな人が彼氏だとあたしはいつだってハラハラしなくちゃなんない。
漫画なんかだとマネージャーが一番危ないんだよね。
だけど海南の男バスで女の子を見たことがないからその心配はなさそうなのが救い。
こんな風に皆と帰る時間が重なる日にはあたしが彼女だって猛烈にアピールしたくてしっかり隣をキープして歩いた。
「こーゆー日に限って親がいないんだよな。どっかで昼飯食べて帰らない?」
願ってもないお誘いに飛び付いた。
「あ、それならウチにご飯食べにくる?ついでに数学教えて欲しいとこがあるの。今は教科書持ってないから」
「…別に…いいけど…」
神くんが少し驚いたような戸惑いを見せた理由があたしには分からなかった。
「あ…別に食べて帰ってもいいんだけどね、数学もそんなに…」
「いいよ全然、みょう寺さんがいいなら」
あんな話をした後で部屋に呼ぶなんて誘ってるの?とその時神くんが考えたなんて、当のあたしは思いもしなかったんだから。
つづく.
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「もぉ止めて、せっかく詰め込んだの忘れちゃうから!」
次の日の朝一番にウチの教室にやってきて喚くサチコに両手で耳を塞いだ。
昨日電話でちょっと話したらこれだ。
「あんたバスケ部嫌いとか言っ…」
「おっきな声で言わないで!」
あたしはサチコの口を押さえて回りを見渡すと小さく耳打ちした。
「だから詳しいことは今度時間のある時に話すって言ったじゃん」
あたしの手を振り払ったサチコが声を潜める。
「…遅かれ早かれバレる事だけどさ、恨まれるよ?彼のファンに…」
そんな事言われても…
「だって付き合っちゃったんだから今更文句言われてもねぇ…」
「お~強気」とサチコは茶化すようなニヤケ顔を隠そうともしない
「で、どっちから告白したの?」
その時予鈴が鳴って救われたと感じたあたしに「後でしっかり聞くからね」と背中を向けようとしたサチコの腕を掴む。
「神くんに余計な事いわないでね」
サチコはニヤリと笑ってあたしの鼻をつついた。
歩いて帰ろう
帰りのHRが終わるとサチコが廊下で待っていた。
すんげぇ根性。
たぶん野次馬根性。
「神くんに変なこと聞かなかったよね!?」
「聞かないよ、アイツも澄ました顔しやがって、なんかムカつくあんた達」
ゴメンゴメンと謝る。
「どこをどうしてそうなったのよ?もったいぶらないで教えて」
サチコがあたしの両頬を引き伸ばした。
イテテと情けない声を出す。
「みょう寺さん」
その時、聞きなれた声がしてサチコの手が離れた。
頬を押さえるあたしの目に神くんが映る。
「神く~ん、アタシに何か言うことあるんじゃないの?」とサチコが恨めしそうに神くんを見上げた。
神くんはきょとんとしてあたしを見るからあたしはちょっと気まずくなって苦笑いする。
彼はすぐに理解したようで「サッチーの友達とっちゃった」と笑った。
「もーあたしにも誰か紹介してよ、牧さんとか牧さんとか牧さんとか」
「牧さんにも好みがあるからなぁ…」と何故か渋る神くんを前にその交渉は成功しそうにもない。
「今日は時間がないからその話は今度ね」と話題を打ち切った神くんがあたしに向き直った。
「今日も少しシュート打ってから帰ろうと思うんだけどみょう寺さんはどうする?」
おお、あたしすっかり彼女扱いだ。
「古典暗記しながら待ってるよ」
こちらは難なく話がまとまり、じゃあねとサチコに手を振ると彼女は悪戯っぽい目で神くんを見た。
「神くん、その子すごくいい子だから大切にしてよね。いろんな意味で」
思わず感動してしまう。
そんなこと言ってくれるあんたこそいい子だよサチコと心の中で泣いた。
今度ジュース奢ってあげなくっちゃ。
そしたらサチコが神くんにボソボソと耳打ちを始める。
そんな事、あたしだってしたことないのに妬ける…さっきの感動取り消し、なんて思っていたら一瞬眉を顰めた神くんが「馬鹿っ」と言って笑いを堪えるように口元を緩めた。
「そんなんだから牧さんに紹介できないんだよ」
「なになに?」と会話に入ろうとしたのだけれど「行こ」と神くんがそれを遮ってワザとらしくあたしに聞く。
「どうしてアレと友達なの?」
サチコ、何を言った?
「そのテの相談にはいつでも乗りますよぅ」と嬉しそうなサチコの申し出を神くんは丁寧に断った。
「ねぇねぇ、さっきの何だったの?」
ほらサチコが何か言ったんでしょ?とあたしが聞くと神くんは苦笑いした。
「たいしたことじゃないよ」
うわ、何か隠してる。
すんごい気になる。
「え~教えてよ」
どさくさに紛れて腕に手を添えてみちゃったりして。
並んで体育館に向かうあたし達を見て何やら囁きあってる子達がいるのが視界に入るとちょっと嬉しかったりする。
えーとね、と神くんは少し目を逸らした。
「ウチのバレー部の女の子ってさ、すっごい下ネタに強いんだよね」
「そうなの?」
知らなかった。
「そーゆーこと」
へぇとしか答えられないあたし。
運動部が多少下品なのは仕方ないものね。
あたしは苦手だから極力参加しないし、振られてもサチコが上手くかわしてくれるし。
そういった意味でもあたしにとってはいい友達なんだけど…
「馬鹿だよね」
「だよね」
「でも紹介くらいしてあげればいいのに」
「あそこまでいくと俺の人間性を疑われるから嫌だ」
…何を言ったんだろう本当に…
頭の隅に多少のひっかかりを感じながら、シュート練習を始めた神くんの邪魔にならないように体育館の隅っこに座って教科書を広げた。
「お待たせ」
随分長いこと待ったような気がするけれど、神くんの顔を見たらそんなのどうだって良くなってしまうから恋って恐ろしい。
「あー腹減った」
歩きながら神くんはそう言って大きく伸びをした。
「ホントに熱心だね」とあたしが言うと「バスケくらいしか取り得がないからね」と返ってくる。
「そんな事ないと思うよ」
「そんな風に言ってくれるのはみょう寺さんだけだよ」
神くん狡いよなぁ。
どれだけ自分が魅力的か本当は知ってるくせに。
こんな人が彼氏だとあたしはいつだってハラハラしなくちゃなんない。
漫画なんかだとマネージャーが一番危ないんだよね。
だけど海南の男バスで女の子を見たことがないからその心配はなさそうなのが救い。
こんな風に皆と帰る時間が重なる日にはあたしが彼女だって猛烈にアピールしたくてしっかり隣をキープして歩いた。
「こーゆー日に限って親がいないんだよな。どっかで昼飯食べて帰らない?」
願ってもないお誘いに飛び付いた。
「あ、それならウチにご飯食べにくる?ついでに数学教えて欲しいとこがあるの。今は教科書持ってないから」
「…別に…いいけど…」
神くんが少し驚いたような戸惑いを見せた理由があたしには分からなかった。
「あ…別に食べて帰ってもいいんだけどね、数学もそんなに…」
「いいよ全然、みょう寺さんがいいなら」
あんな話をした後で部屋に呼ぶなんて誘ってるの?とその時神くんが考えたなんて、当のあたしは思いもしなかったんだから。
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