歩いて帰ろう
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練習が終わって顔を洗うために外へ出た時のこと。
さっきの生意気な奴を見つけた。
隣のサチコを肘で突く。
「ね、居たよ。さっき話した奴」
サチコも目を細めてソイツを睨む。
「一年なんじゃない?ホント、生意気そうな顔してる。」
彼女はそう耳打ちすると、「ウチのクラスにバスケ部の子が居るからチクってくるよ」と力強く歩き出した。あたしも慌てて後を追う。
「神くーん」
練習が終わって入り口から出て来る人の波に逆らいながら、サチコは中に声をかけた。
「神…知り合い?」
「だから2年になってクラスが一緒になって…ちょうど席が隣だからね」
あたしの問いに答えながらサチコがフロアに向かってヒラヒラと手を振る。
スラリとした色白の、端正な顔立ちをした男の子がサチコの姿を認めるとタオルを手に持って近づいてきた。
「え?なに?」
サチコが手短に事の次第を説明すると、神くんはパッチリとした大きな目を何度か瞬きして「アイツ…」と呟いた。
「その特徴、多分清田って奴だと思う。アイツそういうとこあるからなぁ…ちょっと確認しとくよ」
そして神くんはあたしに視線を移した。
「えっ…と、みょう寺サン…だっけ?ごめんね、よく言っとくから」
あたしはハァ…と小さく頷く。
あの神くんをこんな近くで見るのは初めてだったけど、なんて言うか、モテるってことがよくわかった。
モテる男バス…
意味もなく嫌いなタイプ。
「じゃあヨロシク」
そう言ってその場を離れようとするサチコに続いてあたしも身を翻す。
「キヨタ、か~」
「なんだかスッキリした。出来れば自分で文句言いたかったけど。」
あたし達は笑いながら部室へ向かった。
歩いて帰ろう
昼休みの終わりも近づいた頃、あたし達は教室の前の廊下で立ち話をしていた。
「なま恵も早く寮を出ればいいのに。窮屈じゃない?」
2年に進級した時、サチコは寮を出て親戚の家から学校に通うようになっていた。
「…うん」
仲の良かったサチコが寮を出てしまったのはとても残念で、あたしも本当は寮を出たかったのだけど、そんな事を言ったら母さんは否応なしにアイツと同じマンションを借りるに違いない。
実際何回も言われたし。
それが嫌で未だに寮を出ることが出来ずにいる。
でも寮母さんからも、今年は一年生が沢山入って3人で相部屋の人達も居るから都合のつく上級生は出てほしい、みたいなこと言われたんだよね。
「あ、」
あたし達が声のした方に顔を向けるとそこには神くんがいた。
「昨日のあれ、やっぱりノブ…清田だったよ。キツク言っといたから」
そう言ってニッコリ笑う。
「ハァ…」
あたしは気のない返事をした後に慌てて付け加えた。
「あ、ありがと」
「ん、」
「きちんと躾といてよ!」
サチコの冗談にフワリとした笑顔を残して去って行く神くんをあたしはぼんやりと見送った。
「神スマイルにやられちゃった?」
サチコの声でフと我に返った。
「え?」
「やめときなよ」
サチコの言葉の意味がわからなくて、まじまじとその顔を見詰める。
「神くんを好きになるのはやめといたほうがいいよ。」
思ってもみない台詞に絶句するあたしに彼女は続けた。
「鉄の男、だからね。フラれたコ、何人も知ってる。興味ないんだって。」
「バッ…そんなの有り得ないから!」
思わず吹き出す。
「あたしバスケ部嫌いだもん」
「え?そうなの?それってキヨタのせい?」
「そうそうあの勘違いワイルド男のせい」
あたしはサチコと声をあげて笑ったけれど、バスケが嫌いな本当の理由は心の奥にしまい込んだままにしておいた。
神くんがモテるのは知ってる。
別に彼を好きとか嫌いとか意識したことはないけど…あぁそうだな、もしかしたら意識的に視界に入れないようにはしたかもしれない。
バスケットが上手くて、笑顔がチャームポイント、って嫌だ、また思い出しちゃった。
あたしの頭の中にアイツはいつまで居座るつもりなんだろう。
あたしの初恋のアイツ。
神奈川の高校に引っ張られるくらい、中学の時から有名だった。
まだバスケを続けているんだろうか。
ふと思い出したアイツの顔は、予鈴の音と共に掻き消された。
さっきの生意気な奴を見つけた。
隣のサチコを肘で突く。
「ね、居たよ。さっき話した奴」
サチコも目を細めてソイツを睨む。
「一年なんじゃない?ホント、生意気そうな顔してる。」
彼女はそう耳打ちすると、「ウチのクラスにバスケ部の子が居るからチクってくるよ」と力強く歩き出した。あたしも慌てて後を追う。
「神くーん」
練習が終わって入り口から出て来る人の波に逆らいながら、サチコは中に声をかけた。
「神…知り合い?」
「だから2年になってクラスが一緒になって…ちょうど席が隣だからね」
あたしの問いに答えながらサチコがフロアに向かってヒラヒラと手を振る。
スラリとした色白の、端正な顔立ちをした男の子がサチコの姿を認めるとタオルを手に持って近づいてきた。
「え?なに?」
サチコが手短に事の次第を説明すると、神くんはパッチリとした大きな目を何度か瞬きして「アイツ…」と呟いた。
「その特徴、多分清田って奴だと思う。アイツそういうとこあるからなぁ…ちょっと確認しとくよ」
そして神くんはあたしに視線を移した。
「えっ…と、みょう寺サン…だっけ?ごめんね、よく言っとくから」
あたしはハァ…と小さく頷く。
あの神くんをこんな近くで見るのは初めてだったけど、なんて言うか、モテるってことがよくわかった。
モテる男バス…
意味もなく嫌いなタイプ。
「じゃあヨロシク」
そう言ってその場を離れようとするサチコに続いてあたしも身を翻す。
「キヨタ、か~」
「なんだかスッキリした。出来れば自分で文句言いたかったけど。」
あたし達は笑いながら部室へ向かった。
歩いて帰ろう
昼休みの終わりも近づいた頃、あたし達は教室の前の廊下で立ち話をしていた。
「なま恵も早く寮を出ればいいのに。窮屈じゃない?」
2年に進級した時、サチコは寮を出て親戚の家から学校に通うようになっていた。
「…うん」
仲の良かったサチコが寮を出てしまったのはとても残念で、あたしも本当は寮を出たかったのだけど、そんな事を言ったら母さんは否応なしにアイツと同じマンションを借りるに違いない。
実際何回も言われたし。
それが嫌で未だに寮を出ることが出来ずにいる。
でも寮母さんからも、今年は一年生が沢山入って3人で相部屋の人達も居るから都合のつく上級生は出てほしい、みたいなこと言われたんだよね。
「あ、」
あたし達が声のした方に顔を向けるとそこには神くんがいた。
「昨日のあれ、やっぱりノブ…清田だったよ。キツク言っといたから」
そう言ってニッコリ笑う。
「ハァ…」
あたしは気のない返事をした後に慌てて付け加えた。
「あ、ありがと」
「ん、」
「きちんと躾といてよ!」
サチコの冗談にフワリとした笑顔を残して去って行く神くんをあたしはぼんやりと見送った。
「神スマイルにやられちゃった?」
サチコの声でフと我に返った。
「え?」
「やめときなよ」
サチコの言葉の意味がわからなくて、まじまじとその顔を見詰める。
「神くんを好きになるのはやめといたほうがいいよ。」
思ってもみない台詞に絶句するあたしに彼女は続けた。
「鉄の男、だからね。フラれたコ、何人も知ってる。興味ないんだって。」
「バッ…そんなの有り得ないから!」
思わず吹き出す。
「あたしバスケ部嫌いだもん」
「え?そうなの?それってキヨタのせい?」
「そうそうあの勘違いワイルド男のせい」
あたしはサチコと声をあげて笑ったけれど、バスケが嫌いな本当の理由は心の奥にしまい込んだままにしておいた。
神くんがモテるのは知ってる。
別に彼を好きとか嫌いとか意識したことはないけど…あぁそうだな、もしかしたら意識的に視界に入れないようにはしたかもしれない。
バスケットが上手くて、笑顔がチャームポイント、って嫌だ、また思い出しちゃった。
あたしの頭の中にアイツはいつまで居座るつもりなんだろう。
あたしの初恋のアイツ。
神奈川の高校に引っ張られるくらい、中学の時から有名だった。
まだバスケを続けているんだろうか。
ふと思い出したアイツの顔は、予鈴の音と共に掻き消された。