歩いて帰ろう
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学校ではバスケ部の神くんに恋しているけれど、家に帰れば幼なじみの彰クンがとても気になる。
多分あたしは神くんも彰クンも同じ世界の人だってことを忘れていたんだと思う。
あたしの中では神くんの居る世界と彰クンの居る世界は別物だった。
歩いて帰ろう
「こぉ~い~しちゃったんだ、たぶん、っと…」
部活帰りに衝動買いしたスキンケア用品を棚に並べながら、あたしは虚しく鼻歌を歌っていた。
これまた未来のない恋をしたもんだ。
よりによってキヨタと同等とは。もはや神くんの中のあたしは性別をも越えているに違いない。
朝の惨劇も、ソフト部の顧問と(女の先生だから)警察に行った事も、なんだか遠い昔の事のようだ。
こんな時は色々と考えないように黙々と何かに熱中するに限る。
張り切って夕飯でも作ろう。
面倒な時は親が冷凍して送ってくれるオカズを解凍するだけなんだけど、体が資本なので一応気をつけているつもり。
せ~つ~な~い片思い~♪」
キッチンに立っているとチャイムが鳴った。
親からの定期便かな?と首にかけたタオルで手を拭きながら玄関に向かう。
「よ」
玄関を開けるとそこには彰クンが居た。
「忘れ物」
そう言ってあたしにヘアバンドを差し出す。
「あ、りがと」
「ん」
そのまま背を向けようとした彰クンを呼び止めてしまったのは何故なのか、あたしにも分からない。
「ん?」
「あ~…と、ご飯まだなら食べてく?昨日のお礼」
きっとあたしは考えすぎるのが嫌だったんだ。
今朝、もしあたしが拒まなければどうなっていたのか、急にそれが気になったわけではない。
「間違えてない」って聞こえたような気がする微かな言葉すら、寝言だったのかもしれないんだし。
だけど神くんより彰クンの方が、多少なりともあたしを女の子だと思ってくれてるような気がする。
「なんでこの季節に鍋なんだよ」
彰クンは眉尻を思いきり下げた。
「これが最高なのよ。簡単に野菜も肉も沢山食べれるんだから。」
「相撲取りかお前は」
お互いをけなしたりけなされたりしながら、それでも一人ではない夕食はとても楽しかった。
「うわ~男の子って凄い食べるんだね」
冷凍ストックしてた白ご飯も綺麗になくなっていた。
「俺も、お前みたいに大食漢の女見た事ない」
あたしが睨むと「はっはっはっ」と大きな口を開けて笑う。
やっぱりあたし達の間に色気はない。
「うちの男バス、決勝リーグ進出なんだ~。彰クンは?」
「うちもだよ。…そういや今日海南に会ったな。」
その時まであたしは、何となく神くんと彰クンが同じ世界にいる人だとは思っていなかった事に気付いた。
「え~と、にねん…っつたら神、だっけ?知ってる?」
その名前が彰クンの口から出た事に驚いて返事に躊躇すると彰クンの携帯が鳴りだした。
「あ、今人んち」
さりげなくあたしに背を向けた彰クンを見て『彼女』だと直感した。
「また後で電話するよ」
胸が痛むのは、まだあたしが何かを期待していた証拠だ。
「なぁに~?カノジョ~?」
携帯を折りたたむ彰クンを茶化す振りでそれを確認せずにはいられないあたしは、どこまでも哀しい女の子だ。
「何?気になる?」
彰クンが悪戯っぽい視線を向ける。
あたしはそれだけでドキドキした。
「彼女だったら、妬く?」
「…っ」
既に嫉妬しているあたしは思わず言葉に詰まる。
「んなワケねーか」
フッと彰クンが笑った。
そんな風に言われたら他に答えようがない。
「んなワケねーよ」
そう答えるしか、ないじゃない。
彰クンが笑うのに合わせてあたしも笑ったけど、心は笑っていなかった。
あたし達はどこまでも“オサナナジミ”
それ以上でも以下でもないんだ。
「じゃ、そろそろ帰ろーかな。ごちそうさん」
玄関で靴を履いた彰クンが「あ、そーだ」とあたしを振り返る。
「忙しくなくなってよかった」
「は?」
あたしは意味が分からず間抜けな声を出した。
「俺、そーとー嫌われてたみたいだから。今日は昔に戻れたみたいで楽しかったよ」
全然涼しい顔してたくせに…。
一応気にしてたんだと知ると、少し嬉しい気持ちと罪悪感とでどうしていいのかわからなくなる。
3年前、彰クンの真意を聞く勇気がなかったあたしは、それからあたしではない女の子と付き合い出した彰クンにショックを受けた。
本当に嫌いになれたらよかったけれど、だけどそんな簡単なものではなくて。
自然と二人の距離が離れることを願ったあたし。
彰クンはユルい。
だけどあたしはズルい。
いつまでもそんな事にこだわっていたあたしもあたしだ。
実際あれから何年経った?
「嫌ってなんかないよ 彰クンの思い過ごしだって」
「ならいーけど」
彰クンに恋していた事さえ忘れてしまえば、全て笑える話になると思った。
「都民なのに二人揃って神奈川にいるなんてもう腐れ縁越えてるし。
彰クンとは多分一生いい友達でいれると思う。」
あたしは自分の心にけじめをつけるつもりでそう言ったのだけれど、意外にも彰クンが何の反応も見せなかったのが少し気になった。
「?…彰クン?」
あたしの声に反応して視線を合わせた彰クンはもう何時もの彼だったから不安に感じたのはあたしの思い過ごしだろう。
「オマエがそう言うなら仕方ねーか」
「何よそれ」
ホントよく分からない人。
大人になるにつれて彰クンはどんどん掴み処のない人になっていったように思う。
それはあたしが子供過ぎるからなのだろうか。
「またね」
だけどきっとあたし達はイイ友達になれる。
そうなれるように、彰クンに期待したりドキドキしたりするのは今日で終わりにしよう。
そうできるように努力しよう。
そう思った。
多分あたしは神くんも彰クンも同じ世界の人だってことを忘れていたんだと思う。
あたしの中では神くんの居る世界と彰クンの居る世界は別物だった。
歩いて帰ろう
「こぉ~い~しちゃったんだ、たぶん、っと…」
部活帰りに衝動買いしたスキンケア用品を棚に並べながら、あたしは虚しく鼻歌を歌っていた。
これまた未来のない恋をしたもんだ。
よりによってキヨタと同等とは。もはや神くんの中のあたしは性別をも越えているに違いない。
朝の惨劇も、ソフト部の顧問と(女の先生だから)警察に行った事も、なんだか遠い昔の事のようだ。
こんな時は色々と考えないように黙々と何かに熱中するに限る。
張り切って夕飯でも作ろう。
面倒な時は親が冷凍して送ってくれるオカズを解凍するだけなんだけど、体が資本なので一応気をつけているつもり。
せ~つ~な~い片思い~♪」
キッチンに立っているとチャイムが鳴った。
親からの定期便かな?と首にかけたタオルで手を拭きながら玄関に向かう。
「よ」
玄関を開けるとそこには彰クンが居た。
「忘れ物」
そう言ってあたしにヘアバンドを差し出す。
「あ、りがと」
「ん」
そのまま背を向けようとした彰クンを呼び止めてしまったのは何故なのか、あたしにも分からない。
「ん?」
「あ~…と、ご飯まだなら食べてく?昨日のお礼」
きっとあたしは考えすぎるのが嫌だったんだ。
今朝、もしあたしが拒まなければどうなっていたのか、急にそれが気になったわけではない。
「間違えてない」って聞こえたような気がする微かな言葉すら、寝言だったのかもしれないんだし。
だけど神くんより彰クンの方が、多少なりともあたしを女の子だと思ってくれてるような気がする。
「なんでこの季節に鍋なんだよ」
彰クンは眉尻を思いきり下げた。
「これが最高なのよ。簡単に野菜も肉も沢山食べれるんだから。」
「相撲取りかお前は」
お互いをけなしたりけなされたりしながら、それでも一人ではない夕食はとても楽しかった。
「うわ~男の子って凄い食べるんだね」
冷凍ストックしてた白ご飯も綺麗になくなっていた。
「俺も、お前みたいに大食漢の女見た事ない」
あたしが睨むと「はっはっはっ」と大きな口を開けて笑う。
やっぱりあたし達の間に色気はない。
「うちの男バス、決勝リーグ進出なんだ~。彰クンは?」
「うちもだよ。…そういや今日海南に会ったな。」
その時まであたしは、何となく神くんと彰クンが同じ世界にいる人だとは思っていなかった事に気付いた。
「え~と、にねん…っつたら神、だっけ?知ってる?」
その名前が彰クンの口から出た事に驚いて返事に躊躇すると彰クンの携帯が鳴りだした。
「あ、今人んち」
さりげなくあたしに背を向けた彰クンを見て『彼女』だと直感した。
「また後で電話するよ」
胸が痛むのは、まだあたしが何かを期待していた証拠だ。
「なぁに~?カノジョ~?」
携帯を折りたたむ彰クンを茶化す振りでそれを確認せずにはいられないあたしは、どこまでも哀しい女の子だ。
「何?気になる?」
彰クンが悪戯っぽい視線を向ける。
あたしはそれだけでドキドキした。
「彼女だったら、妬く?」
「…っ」
既に嫉妬しているあたしは思わず言葉に詰まる。
「んなワケねーか」
フッと彰クンが笑った。
そんな風に言われたら他に答えようがない。
「んなワケねーよ」
そう答えるしか、ないじゃない。
彰クンが笑うのに合わせてあたしも笑ったけど、心は笑っていなかった。
あたし達はどこまでも“オサナナジミ”
それ以上でも以下でもないんだ。
「じゃ、そろそろ帰ろーかな。ごちそうさん」
玄関で靴を履いた彰クンが「あ、そーだ」とあたしを振り返る。
「忙しくなくなってよかった」
「は?」
あたしは意味が分からず間抜けな声を出した。
「俺、そーとー嫌われてたみたいだから。今日は昔に戻れたみたいで楽しかったよ」
全然涼しい顔してたくせに…。
一応気にしてたんだと知ると、少し嬉しい気持ちと罪悪感とでどうしていいのかわからなくなる。
3年前、彰クンの真意を聞く勇気がなかったあたしは、それからあたしではない女の子と付き合い出した彰クンにショックを受けた。
本当に嫌いになれたらよかったけれど、だけどそんな簡単なものではなくて。
自然と二人の距離が離れることを願ったあたし。
彰クンはユルい。
だけどあたしはズルい。
いつまでもそんな事にこだわっていたあたしもあたしだ。
実際あれから何年経った?
「嫌ってなんかないよ 彰クンの思い過ごしだって」
「ならいーけど」
彰クンに恋していた事さえ忘れてしまえば、全て笑える話になると思った。
「都民なのに二人揃って神奈川にいるなんてもう腐れ縁越えてるし。
彰クンとは多分一生いい友達でいれると思う。」
あたしは自分の心にけじめをつけるつもりでそう言ったのだけれど、意外にも彰クンが何の反応も見せなかったのが少し気になった。
「?…彰クン?」
あたしの声に反応して視線を合わせた彰クンはもう何時もの彼だったから不安に感じたのはあたしの思い過ごしだろう。
「オマエがそう言うなら仕方ねーか」
「何よそれ」
ホントよく分からない人。
大人になるにつれて彰クンはどんどん掴み処のない人になっていったように思う。
それはあたしが子供過ぎるからなのだろうか。
「またね」
だけどきっとあたし達はイイ友達になれる。
そうなれるように、彰クンに期待したりドキドキしたりするのは今日で終わりにしよう。
そうできるように努力しよう。
そう思った。