歩いて帰ろう
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「女が下着を外に干すかフツー?」
彰クンは思いきり呆れた顔をした。
「だって天気良かったし、きちんとまわりをタオルで囲って外から見えないように…」
あたしの言い訳は「そうゆう問題じゃない」と一蹴された。
「お前、女の一人暮らしなんだからもっと気をつけろよ。おばさんが心配するはずだぜ」
そう言いながら「はい」と出されたのはペットボトルのお茶。コップを洗うのが面倒だと言う。
これが彼女ならきちんとコップで出すんだろうな。
所詮あたしはその程度なんだよね。
「警察呼んだ?」
「ううん、恥ずかしいから明日学校の先生に連絡してもらう」
そっか、と呟いた彰クンはそれから黙ってしまった。
途端にあたしは居心地が悪くなってソワソワし始める。
お母さんに頼まれているとは言え、やっぱり迷惑だよね。
しかも今まで散々避けておいて都合のいいときだけ頼ってくるなんてふざけんなって感じだろうな。
だけどあれは彰クンが悪い。
それを思い出したあたしはドキドキし始めた。
どうしよう。
二人きりだ、彰くんと…。
いやいやいやそんな事は有り得ない。
なんつったって彰クンには彼女がいるんだから。
「で、どーする?」
「はい?」
あたしが彰クンを見ると彼はニコッと微笑んだ。
よかった、あたしが心配するほど本人は迷惑だと思ってないのかもしれない。
「一人で居るのが怖いんだろ?」
あたしは素直に頷いた。あたしは彰クンのこの笑顔に弱い。つい甘えてしまいたくなる。
「ここに泊まる?それとも俺がお前の部屋にいこーか?」
その言葉で一気に頭の中に色んな事が過ぎった。
えっとあたし達は年頃の男女で…だけど保育園のお泊り会では必ず隣に布団を並べて寝たし、素っ裸でプールにだって入ったし…いやそれは何年前の話だ?
すると立ち上がった彰クンがベットの上の布団を引きずり降ろして床に敷いた。
ポカンとするあたしに彰クンはベットを指差す。
「お前、上ね」
歩いて帰ろう
あたしは緊張の余り眠れないはずだった。
だって随分長いこと片思いをしていた彰クンの部屋で、しかも二人きりで一晩…
彰クンには前科もあるわけだし、今度何かあったらキスだけって訳にはいかないような…
だけど期待するような展開はいくら待っても訪れる事はなく、昼間の部活の疲れがいつしかあたしの記憶を奪っていた。
…あたしの期待にも似た危惧はあっさり裏切られて本当に何もないまま朝を迎えた。
しかもぐっすり眠れた。
なんかもっとこう…と思いかけてやめた。
あたし達にはきっと、男女間の友情が成立しているんだ。
少なくとも彰クンの中ではそう。
ベットの下を見ると彰クンはまだ寝ている様子。
「…彰クン」
あたしは朝から部活があるんだけど、彰クンはないのかな。
「彰クン?」
あたしが少し強い口調で呼びかけると、彰クンの体がモゾ…と動いた。
「今日部活は?」
「………」
「午後から?」
「………んー」
「起きなくて大丈夫?」
「………ん」
本当?
うちなんか部活に遅刻したら坂道ダッシュ10本追加なんだけど…。
少し不安になったあたしはベットから降りて彰クンの肩を揺すった。
「ちょっと彰クン、ホントにいいんだね?あたし知らないよ?」
その時グイっと強い力で腕を引っ張られたあたしはそのまま彰クンの上に倒れ込んだ。
「なっ」
驚いて頭の中が真っ白になったあたしの体は、被さってきた布団の中で彰クンに抱きしめられていた。
ね、寝ぼけてるぅー!?
「あああの彰クンっ」
彰クンの胸は大きくて温かくて、彰クンの匂いでいっぱいで、あたしは顔が熱くなって心臓はバクバクで…
「あの…どなたかとお間違えですが…」
いやそれは間違いなく彼女なんだけど。
「寝ぼけないで、あたしだよ?」
あたしは彰くんの腕の中でその胸板をグイグイと押してみるが彰クンはビクともしない。
「………てない…」
何やらボソボソと言いながら彰クンの大きな手があたしの胸を鷲掴みにした。
「ぃぎゃーーっ!」
思わず出た鉄拳制裁に彰クンは「でっ」と言って手を離す。
慌てて布団から飛び出すと、そこで横になったまま頬を抑える彰クンの姿が目に入った。
「いてぇ…」
「目が覚めた?」
胸がドキドキしてる。
「…殴るこたねぇだろ」
「殴るわよ!」
あたしの…色んな意味でカワイイ乳を揉むなんて…っ
男の人に触られるの初めてなのに…っ
でも、胸が破裂しそうなのはそれが彰クンだったから。
「あ…あたし部活があるから帰る!色々ありがとね!」
動揺を隠せないあたしは慌てて玄関に向かった。
「部屋までついてってやろーか?」
背中から眠たそうな彰クンの声が聞こえたが、あたしは動揺を隠すための飛び切り元気な声で「ううん」と答えた。
「大丈夫。じゃあね」
あたしは胸の中のドキドキを抱えたまま、おそらく真っ赤になっているであろう顔を隠して、振り返えらず部屋を後にした。