第1章
夢小説設定
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コン、コン――。
ミカは地下と地上を繋ぐ階段のすぐ近くにある小屋で、とある人物との待ち合わせをしていた。
かつて、ミカが面倒を見ていた孤児の一人。
幼かった彼も、今では立派な青年になっている。
「…… ミカさん」
その声に、ミカは顔を上げる。
「元気そうで良かったわ」
彼は、少しだけ躊躇うような間を置いてから、
まっすぐな瞳で彼女を見つめた。
「俺…… ミカさんに話があってきました」
ミカは、一瞬 驚いたように目を瞬かせた。
「話?」
「はい」
青年は 強く頷く。
「今まで、ミカさんに助けてもらってばかりでした。
でも、俺たちももう子供じゃない。
俺たち自身が、誰かを助ける立場にならないといけないんじゃないかって思うんです」
その言葉を聞いて、ミカは小さく笑った。
「……ずいぶん成長したわね」
幼い頃は、いつも不安そうに彼女の後ろをついてきていた彼が、
今は 誰かを守りたいと口にしている。
その成長が、何よりも嬉しかった。
けれど――
「それで、あなたは何をしたいの?」
ミカは、静かに尋ねる。
「地下で、私と一緒に活動する?」
青年は 少しだけ迷ったように目を伏せた。
「……それも考えました。
でも、俺が本当にやるべきなのは、地上での活動だと思うんです」
ミカの目が、僅かに揺れた。
「地上で?」
「はい。ミカさんが送り出した子供たちが、
俺みたいに運が良ければ良いけれど、本当に幸せに暮らせているのか、ずっと気になっていました。
だから俺は、地上に行って、彼らの支援をしたいんです」
ミカはゆっくりと息を吐いた。
(……地上か)
それは、彼女自身が 無意識に避けてきた領域 だった。
地上に送り出した子供たちが、
本当に幸せになれているのか――
もし、そうでなかったとしたら。
考えるだけで、胸が締めつけられる。
でも、彼は今、
その 「見たくなかった現実」 に向き合おうとしている。
その意志を、私は否定できる立場じゃない。
「……分かったわ」
青年の顔が、ぱっと明るくなる。
「本当ですか?」
「ええ…」
ミカは 真剣な眼差しで彼を見つめた。
「あの子達がちゃんと生活できているか、仕事は続けられているか、
誰かにひどい扱いを受けていないか――
それを調べて、必要なら助けてあげる。もちろん、私と一緒に協力してね。それが出来る?」
青年は、真剣に頷いた。
「もちろんです!」
「……ありがとう」
ミカは、小さく微笑んだ。
(私は地下を離れることはできない)
(でも、この子が地上で、
私の代わりに「今まで送り出した子供たち」を支えてくれるなら――)
それは、新たな希望だった。
その夜。
ミカはいつものようにリヴァイの家を訪れた。
けれど、リヴァイは
彼女がほんの少し 違う空気を纏っていることに気づいていた。
「……何かあったのか?」
リヴァイが茶を淹れながら、ぽつりと問う。
ミカは、一瞬だけ動きを止めた。
「……何もないわ」
そう言って、ティーカップを口元に運ぶ。
「嘘つけ」
リヴァイは じっとミカを見た。
彼は知っている。
ミカが何かを隠すとき、
こうやって 微かに視線を逸らす癖があることを。
「……最近、お前の動きが変だ」
「気のせいよ」
「……」
リヴァイは、それ以上何も言わなかった。
けれど、確信していた。
―― ミカは、何かを隠している。