第1章
夢小説設定
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夜のティータイムが習慣になって、どれくらい経っただろう。
ミカは、静かに 茶の表面に映る自分の姿を眺めていた。
「……明日、ちょっと出かけるわ」
何気なく言ったその言葉に、
リヴァイは 手を止めた。
「出かける?」
「ええ。昔の知り合いと会うの」
ミカは、どこか懐かしげに微笑んだ。
「久しぶりに顔を見れるのが楽しみで」
リヴァイは、何も言わずに 茶をすする。
その瞳の奥がわずかに 鋭さを増したことに、ミカは気づかなかった。
地下の裏通り――。
ミカは、一人の男と向かい合っていた。
長身で、ダークグレーのコートを羽織った男。
どこか知的な雰囲気を纏っているが、その目には 鋭い光が宿っている。
「…… ミカ」
男――ファーランは、ミカを見て 薄く笑った。
「久しぶりだな」
「本当にね!」
ミカは、ふっと微笑んだ。
「ずっと消息が分からなかったけど……元気そうで安心したわ」
ファーランは、軽く肩をすくめる。
「まぁな。色々あったが……今は、あるヤツと組んでる」
そう言って、彼は 片手をポケットに突っ込みながら、薄く笑った。
「……お前も知ってるヤツだよ。リヴァイって言うんだがな」
ミカは、一瞬 目を見開いた。
「リヴァイと……?」
「ああ。少し前にアイツと勝負して、負けた」
ファーランは、僅かに 苦笑しながら言葉を続ける。
「アイツ、バケモンみてぇに強ぇな。
まぁ、俺もプライドはあったが……負けを認めるしかなかった」
ミカは、ファーランの言葉を聞きながら、
ふっと遠くを見た。
リヴァイとファーラン――。
彼らが 同じ道を歩んでいるなんて、少し意外だった。
「……で、お前は今、何してるんだ?」
ファーランがミカの顔を覗き込む。
「まだあのガキどもの世話をしてるのか?」
「ええ。相変わらずね」
ミカは 笑って答えた。
「でも、私はそれが好きだから」
ファーランは、ふっと 目を細める。
「変わらねぇな、お前は」
そう言って、彼はミカの頭を軽くポンポンと撫でた。
――その光景を、遠くから眺める男がいた。
リヴァイは、路地の影に身を潜めながら、
ミカとファーランのやりとりを 無言で見つめていた。
ファーランがミカの頭を撫でる瞬間――。
彼の指が、無意識に力を込める。
「……チッ」
短く舌打ちをし、リヴァイは 視線を逸らした。
(くだらねぇ)
そう思う。
思おうとする。
――なのに。
なぜか 胸の奥が妙にざわつく。
ファーランのことは認めている。
アイツの実力も、度胸も知っている。
けれど、ミカが 「昔からの知り合い」 だと知った途端――
リヴァイは 自分でも訳の分からない苛立ち を覚えていた。
その夜。
ミカはいつものようにリヴァイの家を訪れた。
けれど――
「……今日はお茶は飲まないの?」
ミカが問いかけると、
リヴァイは 少し遅れて「……勝手にしろ」とだけ答えた。
いつもと変わらないはずなのに、
どこか 冷たい。
ミカは、ゆっくりとティーカップを口元に運びながら、
彼をじっと見つめた。
「……何かあった?」
リヴァイは、少しだけ 表情を動かした。
「別に」
「あら、そう?」
「……そいつのとこに行かねぇのかよ」
「そいつ?」
ミカが首をかしげると、
リヴァイは 舌打ち混じりに湯呑みを置いた。
「ファーランのことかしら?」
リヴァイは 答えない。
けれど、その沈黙が 答えと同じだった。
ミカは ふっと笑う。
「ファーランは、今どこにいるの?」
「さぁな」
リヴァイは、ティーカップを軽く回す。
「俺の部下になったんだから、どっかで勝手に動いてるだろ」
ミカは、そんな彼の態度に
何かが引っかかる気がした。
――けれど、それが何なのかは、まだ分からなかった。