第1章
夢小説設定
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地下街の朝は早い。
昼夜の区別がないこの世界では、人の動きが始まる時こそ「朝」 だった。
リヴァイは壁際に凭れながら、通りを眺めていた。
喧嘩、盗み、死。
いつもの光景。
だが、その中に 妙な動きを見つけた。
リヴァイの視線が、自然とそちらへ向かう。
路地裏に数人の影があり、そこには記憶に新しい顔があった。
昨日の夜、妙な女と出会った。
金を盗んだガキを庇い、妙な覚悟を見せ、
それでいて、こちらの期待を裏切るように無防備に笑った女。
……だが、彼女は今、数人の子供たちと話していた。
「ここで待ってて」
ミカの声が微かに聞こえた。
「私が戻るまで、絶対にここから出ないこと。いいわね?」
子供たちが こくりと頷く。
リヴァイは 少し眉をひそめる。
――何をしてる?
ミカは 周囲を警戒するように辺りを見回し、
一人で 路地を出て行った。
――あの時はただの「ガキの親」だと思った。
だがどう見ても、おかしい。
ミカは数人の子供たちを連れていた。
それは、あの金を盗んだガキではない。
明らかに別の子供たち。
年齢も性別もバラバラで、
上は十代後半、下は五歳ほどの子もいる。
どう見ても二十歳そこそこの女だ。
こんな年齢で、こんなにガキを産めるわけがない。
弟や妹か?
……いや、違う。
どう考えても 血が繋がっていないような顔つきのガキも混じっている。
リヴァイの眉間に、わずかに皺が寄る。
――リヴァイは、無意識のうちにミカの後を追っていた。
ミカは人通りの少ない屋台の前で足を止めた。
リヴァイは少し離れた建物の影で、様子を伺った。
「これはいくら?」
ミカはパンを指差し、屋台の主人に尋ねた。
「五十」
主人がそう言うと、ミカは小さく考え込む。
「……二つで七十でどう?」
「は? 安くする理由ねぇだろ」
「そしたら七つ。三百出すから釣りは取っといてね」
「……チッ、仕方ねぇな」
――値切り上手な女だ。
ミカはパンを受け取ると、すぐに路地裏へ戻っていく。
リヴァイは、自然と その後を追っていた。
「――おい」
リヴァイは路地の影から現れた。
ミカが子供たちにパンを渡して見送った、その時だった。
彼の声に、ミカは驚いたように 目を開く。
「あら、昨日の……」
リヴァイは 腕を組み、彼女を見下ろす。
「お前、なんなんだ」
唐突な問いかけに、ミカはきょとんとした顔 をした。
「……何の話?そういえば……名乗っていなかったね、私の名はミカ」
「ミカ……お前のガキどものことだ」
ミカは少し目を伏せ、そして笑う。
「家族よ」
リヴァイは目を細めた。
嘘をつくのが下手な女だ。
それが 家族でないことくらい、リヴァイには分かる。
だが、ミカは それ以上の説明をしなかった。
「……お前、何してんだ」
リヴァイは少し声を低くする。
「地下街で、そんなことして何になる」
「何にもならないかもしれないわね」
ミカは 小さく笑った。
「でも、ここにいる子供たちには――」
「余計な情を持つと、死ぬぞ」
リヴァイが 遮るように言った。
地下街のルールだ。
優しさは 弱さになる。
ミカは一度瞬きをして、リヴァイの目を見た。
「…あなたは太陽を見たことがある?」
ただ一言、ぽつりと発してミカは去っていく。
リヴァイは、ただ その背中を見送ることしかできなかった。
――何なんだ、この女は。
リヴァイの中で、妙な違和感が残った。
そして、その違和感は徐々に彼の行動を変えていくことになる。