第1章
夢小説設定
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「違ぇよ、イザベル。手首の返しを意識しろ」
リヴァイの低い声が響く。
地下の広場――。
リヴァイとファーランは、イザベルに立体機動装置の使い方を教えていた。
「分かってるって! ……ってうわっ!」
イザベルが勢いよくワイヤーを放つが、バランスを崩して回転しながら地面に転がった。
「チッ……お前、鳥になりたいって言った割には、落ちるのが得意だな」
リヴァイが呆れたように言う。
「うっ……今のはちょっとしたミスだって!」
ファーランは 笑いながら手を貸した。
「まぁまぁ、最初はこんなもんさ。慣れりゃお前も空を飛べるさ」
イザベルは 悔しそうに唇を噛みながら、立ち上がる。
「次は成功させて、姉御にみせてやるんだ!」
「……勝手にしろ」
その頃、ミカは地下の隠れた一角で、協力者と密かに連絡を取っていた。
ここ最近、ミカは地上と頻繁にやり取りをしている。
地上へ送った子供たちの様子を確認し、必要ならば支援を送るためだ。
しかし、今回の報告は最悪だった。
「……何ですって?」
ミカの 表情が固まる。
「……あの子が、奴隷のように扱われている?」
協力者の青年が 険しい表情で頷いた。
「はい。送った先の家が契約を無視して、子供を酷使していたようです。
劣悪な環境で働かされ、十分な食事も与えられていませんでした」
ミカは、強く拳を握りしめた。
(そんなこと……許せない)
ミカが地上へ送る際、
「子供を苦しませたら、こちらへ引き取る」 という契約を結んでいた。
この件は 明らかな契約違反 だ。
「……その子は、今どこに?」
「僕が引き取っています。
今は落ち着きましたが、心も身体もボロボロです」
ミカは 深く息をついた。
「……ありがとう。助けてくれて」
青年は 真剣な表情でミカを見つめた。
「ミカさん……これでいいんですか?」
ミカはハッとする。
「え?」
「今までは、地上へ送り出すことが最善だと思っていました。
でも……本当にそれが正しいんでしょうか?」
ミカは、言葉を失った。
(……私は、本当に正しいことをしているの?)
地下の子供たちを助けるために、地上へ送り出す――。
でも、送り出した先でこんな扱いを受けるのなら……?
(私は、本当に地下にいるべきなのかしら)
初めて、自分のしてきたことに 深い疑問を抱く。
その夜。
ミカは、いつものようにリヴァイのもとへ行こうとしなかった。
いや、行こうとは思った。
けれど、どうしても気持ちが落ち着かず、考え込んでいるうちに時間が過ぎてしまったのだ。
そして――リヴァイがミカの家に来た。
「……おい」
扉をノックする音。
「ミカ、いるか?」
ミカは、一瞬だけ動きを止めた。
(リヴァイ……?)
彼が自分の家を訪ねてくることなんて、最近は滅多にない。
それだけで、妙な違和感を覚えた。
扉を開けると、そこには いつもと変わらない無表情のリヴァイがいた。
「……どうしたの?」
ミカが何気なく問うと、
リヴァイは じっとミカを見つめた。
「いや、お前が来ねぇからな。……イザベルのやつが、立体機動を使いこなせるようになったらお前に見せてやりたいと息巻いていた」
その一言に、ミカは僅かに口を開いたが、すぐに閉じた。
(イザベルを言い訳にする割に、一人で来たのね)
「いつもなら勝手に来るくせに、今日は来ねぇ。
何かあったのか」
リヴァイは部屋へ上がり、ミカの家の中を見渡した。
――その視線が、机の上の書類の山で止まる。
「……何だ、これは」
リヴァイが手に取ろうとした瞬間、
ミカは素早くそれを隠した。
「関係ないわ」
「……チッ」
リヴァイは、僅かに 目を細める。
(……やっぱり、何か隠してやがる)
「最近、お前の動きが変だ」
「気のせいよ」
「……そうか」
リヴァイは 何も言わず、ミカをじっと見つめた。
(どう見ても気のせいじゃねぇが……今は何も聞かねぇ)
「茶はねぇのか」
「……淹れるわ」
ミカは、微かに表情を緩めながらも、
内心、リヴァイが気付いたことに焦っていた。
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