不死と不存在
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UNEXISTED <不存在>
他対象 自動発動型
触れた対象の存在を、過去から未来にかけて消し去ってしまう。
その対象が存在しなかった世界となり、あらゆる辻褄が合わせられていくが、対象を記憶している者は、使用者本人以外存在しない。
「……存在を否定する力か」
「貴方のことはよく知らないけれど、存在を無かったことになんて、したくありません……誰一人としても……」
彼女は誰にもこの力を使いたくなくて、1人でこの廃村に立て篭っていた。
彼女自身、自分が死んで、この能力が他者に移ってしまうことを恐れ旅にも出なかった。
しかし、噂を聞きつけた者、同じような否定者と名乗る者が襲ってくる日々。
存在ごと消してしまうより、死なせる方がいいと……今まで沢山の人間を殺してしたのだ。
「能力で消したこともあるのか?」
「……はい。やむを得ずそうしてしまったこともあります。記憶からも、歴史からも消えてしまうことがいかに残酷かを私だけが知っています。存在自体がなくなるので、事情を知らずに私を襲う人も後を絶ちません。」
アンデッドは掴んだ女の手を静かに離した。
あの看板や禍々しい廃村は、誰も消さないために彼女が用意した精一杯の手段だった。
「私を襲ってきた否定者に聞きました。
私が死ぬと、他の人に否定能力が移ってしまうらしいのです。
私が最も恐れているのは、私が死んでこの恐ろしい能力を悪用されてしまうことです」
この能力が悪用されたら、世界は終わってしまうかもしれない、と。
「……だから私は、この能力を誰にも使いたくなくて、ここに籠もっているんです。」
その言葉に、アンデッドは深く息をつき、短く呟いた。
「……だったら、俺を消したくなるまで、アンタを護ってやるよ。」
「え?」
「俺が死にてぇのは本当だが、確かにアンタの言う通り、存在が消えてもいいかどうかは考えたことがなかったよ。だから俺に考える時間をくれ。その代わり、アンタが死なねぇように護ってやる。」
彼の言葉に、女は目を見開いた。
「……わかりました。気が変わることはないとは思いますが……それでもいいなら。」
「じゃあ、決まりだな。腕、痛むか?……悪かった。」
「いいえ!平気です。」
そう言うと、アホ毛がぴょんと立ち上がった。
「嘘か……分かりやすいなアンタ。」
「そ、そんなことありません!!」
「俺はアンデッドだ。アンタの名前は?」
「私はミカ。よろしくお願いします、アンデッドさん」
こうして、死にたい男と、死にたくない女の奇妙な旅が始まったのだった。