TWO
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新たな旅路を進む二人は、突然現れた強力な魔物に行く手を阻まれた。
「ミカ、下がってろ!」
ラクサスが魔物の咆哮をかき消すように叫ぶ。
「私も戦える!」
ミカは魔力を練り上げ、雲を纏った拳で応戦しようとするが――
魔物の鋭い爪が彼女に向かって振り下ろされた瞬間、ラクサスが間に割り込んだ。
「ラクサス!」
衝撃音と共にラクサスの体が地面に叩きつけられ、血が地面に滴る。
「ぐぅ……っ!」
ラクサスは眉をしかめながらも立ち上がり、電撃を纏った拳で魔物を撃退する。
「ラクサス、大丈夫!?」
ミカが駆け寄るが、ラクサスは平然とした表情を作り、肩を竦めた。
「あぁ、かすり傷だ。」
だが、その腕から流れる血を見たミカの心は、罪悪感と無力感で押し潰されそうだった。
(私がもっと強ければ……こんなことにはならなかったのに……。)
その夜、街に転がり込み、宿舎に泊まる中で、ミカはずっと黙り込んでいた。ラクサスが手当をしている姿を見て、言葉が喉に詰まる。
「どうした?飯がまずいのか?」
ラクサスが軽く茶化すように声をかけたが、ミカは首を振るだけだった。
しばらくして、ミカは意を決して口を開いた。
「ラクサス、私……もっと強くならなきゃって思う。」
ラクサスは驚きもせず、淡々とした口調で返した。
「十分強いだろ。」
「違うの!」
ミカは突然立ち上がり、拳を握りしめた。
「ラクサスが私を庇って怪我をした。私が弱いから……私が迷惑ばかりかけてるから!」
ラクサスは軽く眉を上げながら言った。
「迷惑なんて思っちゃいねえ。お前を守るのは当然だ。」
その言葉にミカの胸が締め付けられる。
「それが辛いの!ラクサスは強いから、私の気持ちなんて分からないよ!」
ミカは涙を堪えきれず、その場を飛び出した。
「おい!」
ラクサスの声が追いかけるが、彼女は振り返らなかった。
公園の小さなベンチに座り込み、ミカは膝に顔を埋めて泣いていた。
(私が弱いから……ラクサスは私のせいで……。)
「泣いてんのか。」
突然聞こえた低い声に顔を上げると、そこにはラクサスが立っていた。
「ほっといて!」
ミカは強がりながら顔を逸らしたが、ラクサスは隣に腰を下ろし、静かに語り始めた。
「ミカ、俺は強いわけじゃねえ。」
その言葉に、涙で濡れた目でラクサスを見上げた。
「俺だって弱えよ。だけど、弱いからこそ必死になるんだ。守りたいもんがあるから、負けられねえ。」
ラクサスの言葉にミカの心が揺れる。
「お前が弱いと思うなら、それでいい。でも、お前の弱さを言い訳にすんな。俺はお前を信じてる。」
ミカは涙を拭いながら呟いた。
「ラクサス……でも、私、どうすればいいの?」
ラクサスはポケットから地図を取り出し、ミカに手渡した。
「お前に行ってほしい場所がある。妖精の尻尾という場所だ。」
「妖精の尻尾……?」
「ああ、俺が元いたギルドの名だ。あそこには、仲間を守る強さを教えてくれる奴らがいる。俺は訳あって戻れねえが……お前なら得られるものがあるはずだ。」
彼女は地図を握りしめながら、少し寂しそうな顔でラクサスを見上げた。
「ラクサスは一緒に行けないの?」
その問いにラクサスは微笑を浮かべるでもなく、ただ淡々と答えた。
「強くなるんだろ?」
その言葉はミカの心に静かに響いた。ラクサスの大きな手がそっと彼女の背中を押す。
「……うん。」
ミカは小さく頷きながらも、まだ納得しきれない表情を浮かべた。
「でも、ラクサスはどうするの?」
ラクサスは少しだけ視線を遠くに向け、短く答えた。
「俺は行くところがある。」
「どこへ?」
ミカは顔を上げ、まっすぐに彼を見つめた。
ラクサスはしばらくの沈黙の後、ぼそりと呟いた。
「ちと墓参りにでもな。天狼島ってところだ。」
「墓参り……」
なおも不安げな顔を見せるミカに、ラクサスは目線を合わせる。
「そんな顔すんな。妖精の尻尾でお前はもっと強くなれるはずだ。ギルドの奴らはお前のことをいつでも守ってくれる。
だからお前も強くなって、そいつらを守ってやってくれ。約束だ。」
「……うん、わかった……
たまには私のことも思い出してよね。」
ラクサスは少しだけ笑いながら軽く頷いた。
「おう。」
ミカは背筋を伸ばし、妖精の尻尾へ向けて歩き出した。その背中をじっと見送るラクサスの胸には、誇らしさと少しの寂しさが入り混じっていた。
「強くなれ、ミカ。」