ONE
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高原の街での戦いから数日が経ち、二人は小さな村で一息ついていた。
日々の厳しい旅路とは打って変わって、のどかな空気が流れ、疲れた心と体を癒してくれる。
しかし、ミカの胸にはどうしようもないモヤモヤが広がっていた。
彼女はまだ、先日の戦いで自分がラクサスに守られてばかりだったことを引きずっていた。
「私、本当にラクサスの隣に立てるのかな……」
そんな思いが募る中、ある日ラクサスが村の鍛冶屋と話し込んでいるのを見かけた。
そこで彼が発した何気ない一言が、ミカの心に鋭く刺さる。
「成長はしてるが、アイツはまだガキだ。俺が居ねぇとどうしようもねぇだろうよ」
軽い冗談のつもりだったその言葉を、ミカは深刻に受け止めてしまった。
彼にとって自分は足手まといなのではないか。そう考えると、彼の隣にいる資格があるのかどうか、迷いが生まれてきた。
その夜――
ラクサスが眠りについた頃、ミカは一人で宿を抜け出した。
一度、離れよう……
彼女は心の中でそう呟き、荷物をまとめて静かに村を出て行った。
どこに向かうかも決めていない。ただ、自分が強くならなければ、ラクサスと共にいることはできないと感じていた。
翌朝――
ラクサスはミカの姿がないことに気づき、宿の主人に話を聞いた。
「あの娘さん、夜中に出て行ったみたいですよ。ラクサスには伝えてあるから大丈夫だと言っていましたけどねぇ⋯」
その言葉を聞いて、ラクサスは静かに息を吐いた。
「ったく……何考えてやがる」
少し苛立ちを覚えながらも、すぐに彼女の足跡を追い始める。
一方、ミカは険しい山道を一人で進んでいた。
彼女の心には決意があった。
「もっと強くなって、ラクサスに認めてもらうんだ」
だが、その思いとは裏腹に、旅は過酷だった。
魔物に襲われることもあり、また自分の力を過信したせいで、体力を消耗してしまうことも多かった。
それでも彼女は進むことを止めなかった。
そんな彼女の前に現れたのは、巨大な狼型の魔物だった。
その鋭い牙と冷酷な瞳を前に、ミカは息を呑む。
「ここで負けたら……私、何のために旅をしてるかわからない!」
彼女は渾身の力を込めて魔力を解放する。
「雲竜の咆哮!」
しかし、狼型の魔物は素早く避け、逆にその牙が彼女に迫る。
「くっ……!」
防ぐこともできず、体が宙に舞ったその瞬間――。
「雷竜の崩拳!」
轟音とともに、雷の拳が狼型の魔物を吹き飛ばした。
ミカは驚いた表情で振り返る。そこには、息を切らせたラクサスが立っていた。
「お前、一人で何やってんだよ」
ラクサスの声には、いつもの余裕はなく、むしろ心配と怒りが混じっていた。
「……私、もっと強くなりたくて……」
「馬鹿が…」
ラクサスはミカに歩み寄り、その肩を掴む。
「強くなりたいのは分かる。でも、黙って一人で勝手に行くのは違うよな?」
彼の強い言葉に、ミカは涙を堪えきれなくなった。
「だって……私、ラクサスの足手まといになるのが怖かったの!」
その言葉を聞いて、ラクサスは少しだけ力を抜いた。
「足手まといだと? そんなこと、一度でも俺が言ったか?」
彼は優しい目でミカを見つめた。
「お前がいなきゃ、俺はあのドラゴンにも勝てなかった。お前の力はちゃんと俺を助けてる。それを忘れんな」
ミカは涙を拭いながら、ようやく笑顔を取り戻した。
「……ごめんなさい。そして、ありがとう」
ラクサスは大きく息を吐くと、彼女の頭を軽く叩いた。
「謝るなら、もっと信じろ。俺はお前を信じてるんだからな」
その言葉に、ミカは心からの感謝を感じた。
ラクサスとともにいることの意味を、改めて理解した瞬間だった。
そして二人はまた並んで歩き出す。