ONE
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険しい山道を越え、二人がたどり着いたのは古びた廃墟のような街だった。
かつてここに住んでいた人々は、大昔にこの地を支配していた強大な魔物によって追い払われたという。
「おい、この空気を感じるか?」
ラクサスが眉をひそめながら街を見渡した。
ミカも彼に倣い、周囲に意識を集中させる。
空気が異様に重く、どこか遠くから低い唸り声が聞こえるような気がする。
「なんだろう……嫌な感じがする」
「間違いねえ。この街にはまだ、魔物が巣食ってやがる」
ラクサスの言葉が終わると同時に、大地が揺れた。
突然、廃墟の奥から巨大な影が現れる。
「グァアァァァッ!」
現れたのは、体中を黒い霧で覆われたドラゴンのような魔物だった。
その目は紅く光り、見下ろすだけで圧倒的な威圧感を放っている。
「ミカ、下がってろ!」
ラクサスはすぐさま前に出ると、雷を纏った拳を振り上げる。
しかし、魔物はその攻撃をいとも簡単に弾き返した。
「くそっ、硬えな」
ミカは後ろで震える手を握りしめた。
自分も戦いたい。
けれど、今の自分の力では足を引っ張るだけかもしれないという不安が胸を締め付ける。
ラクサスは魔物と渡り合いながら、ふと後ろを振り返った。
「ミカ!」
その一声に、彼女は我に返る。
「お前にしかできねえことがあるだろ!」
ラクサスの言葉が胸に響く。
確かに、自分には雲を操る力がある。
恐れてばかりでは、彼の期待に応えることができない。
ミカは手を広げると、魔力を集中させた。
「……雲竜の掛罠!」
ミカの手から現れた白い雲が魔物の足元に広がり、一瞬その動きが鈍る。
その隙を逃さず、ラクサスが強烈な雷撃を叩き込んだ。
「雷竜の咆哮!」
雷雲から立ち上る二人の魔力が融合した攻撃が炸裂し、魔物の黒い霧が吹き飛んだ。
しかし、それでも魔物は倒れない。
傷つきながらも再び姿を現し、鋭い爪でミカを狙ってきた。
「くっ……!」
避ける間もなく、爪が彼女に迫る――その瞬間、ラクサスの体がミカの前に立ちはだかった。
「やるようになってきたじゃねえか」
雷を纏ったラクサスの背中がミカの視界を覆う。
その力強い姿に、彼女の胸が熱くなった。
「ラクサス……!」
彼はミカを守りながら、魔物に向き合う。
その姿を見て、ミカは自分がただ守られているだけではいけないと思った。
「私も……戦う!」
再び魔力を解放し、雲で魔物の動きを封じるバリアを作る。
ラクサスはその隙を突いて魔物の心臓めがけて雷を叩き込んだ。
「これで終わりだ! 雷竜の鳴動!」
轟音とともに、魔物の体が崩れ落ち、黒い霧が完全に消滅した。
静寂が訪れる中、ラクサスはゆっくりと振り返った。
「よくやったな」
その言葉に、ミカは思わず涙を浮かべた。
「でも……私、まだ弱くて……」
ラクサスは大きな手でミカの頭をぐしゃりと撫でた。
「安心しろ、お前は少しずつだが、ちゃんと強くなってる」
彼の優しい言葉に、ミカはようやく笑顔を見せた。
戦いの中で命を預け合い、二人の絆はさらに深まった。
ミカは、自分が成長するためにはラクサスの存在が不可欠であることを感じ、
ラクサスもまた、ミカを守りながら彼女に対する信頼と特別な感情を育んでいることに気づき始めていた。
次の旅路を前に、二人は少しだけ長い休息を取ることにした――。