ONE
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旅を続ける中で、ミカは己の弱さを痛感していた。
魔力の使い方、戦闘での立ち回り、何一つラクサスには及ばない。
だが、彼の後ろを歩いているだけでは成長できないこともまた、彼女にはわかっていた。
「ねえ、ラクサス」
ある夜、焚火を囲んでいた時、ミカは意を決して声をかけた。
「私、もっと強くなりたい。どうすればいいか教えて」
ラクサスは焚火の炎をじっと見つめたまま、少しの間黙っていた。
その沈黙が重く感じられたが、彼は低い声で答えた。
「簡単なことだ。力が欲しいなら、限界を超えろ。それだけだ」
「限界を……?」
「ああ。自分で自分を甘やかしてるうちは何も変わらねえ」
その言葉にミカは唇を噛んだ。
自分がまだどこかで怠けていたのだろうか。
覚悟を決めるように小さく頷くと、彼は立ち上がり、背を向けた。
「明日の朝、山に行くぞ。覚悟しとけ」
翌朝、二人が向かったのは険しい山道だった。
岩場を登り、深い霧の中を進むうちに、ミカの足は何度も止まりそうになった。
しかしラクサスは振り返ることなく進み続ける。
「ラクサス、ちょっと待って――!」
そう叫んだ瞬間、足元が崩れ、ミカの体が滑り落ちた。
「きゃっ!」
咄嗟に雲を作り出して体を支えようとしたが、慌てたせいで魔力が乱れ、うまく形にならない。
その時、鋭い声が響いた。
「焦るな! お前の力はそんなもんじゃねえだろ!」
ラクサスが手を伸ばし、ぎりぎりのところで彼女の腕を掴んだ。
引き上げられたミカは息を切らしながら地面に座り込む。
「お前、怖いか?」
ラクサスが険しい目で尋ねると、ミカは小さく頷いた。
それを見て、彼は低く笑う。
「ならいい。怖さを忘れちまった奴は、すぐに命を落とす」
その言葉に、ミカはラクサスの厳しさの裏にある優しさを感じた。
彼は彼なりに、自分を成長させようとしてくれているのだと。
山頂に着くと、周囲には雲海が広がっていた。
ラクサスは立ち止まり、腕を組んでミカを見た。
「ここからは一人でやってみろ。自分の力で、雲を操れ」
彼の言葉に、ミカは緊張で息を呑んだが、すぐに覚悟を決めた。
両手を広げ、魔力を集中させる。
「……雲竜の翼!」
彼女の背中に雲のような形をした魔力が広がり、そのまま空へと浮かび上がった。
ふわりと広がる感覚に、ミカは自信を取り戻し始める。
「やった……私、できた!」
だがその喜びも束の間、突然、雲海の中から巨大な鳥のような魔物が現れた。
その鋭い爪がミカに迫る。
「っ……!」
ミカは必死に雲で防ごうとしたが、力が不十分で、バリアが砕けてしまう。
その瞬間、ラクサスの雷が魔物を貫いた。
「まだ力が足りねえな」
地上で腕を組んでいるラクサスが、冷静に言い放った。
それでも、ミカの中に新たな感覚が芽生えていた。
山を下りながら、ラクサスに問いかけた。
「私、もっともっと強くなる。そしたら……ラクサスみたいに誰かを守れるかな?」
「守れるさ。お前がその気ならな」
その言葉に、ミカは力強く頷いた。
旅は続く。
そのたびにミカは少しずつ成長し、滅竜魔導士としての力を磨いていくのだった。