ONE
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ラクサスの旅は気まぐれだった。
目的地を定めるわけでもなく、風任せに次の町へと歩む日々。
最初はそのペースについていけず、ミカは何度も音を上げそうになった。
しかしラクサスの背中を追ううちに、いつしかその歩幅に慣れてきた自分に気づいた。
「……次の町には何があるの?」
ミカが息を整えながら尋ねると、ラクサスは肩越しに振り返り、ふっと笑った。
「さあな。何か面白いもんでもあればいいが」
そんな曖昧な答えにもかかわらず、彼の言葉には不思議と安心感があった。
どこに行くのかわからなくても、この人と一緒なら大丈夫だと思えた。
ある日、二人が辿り着いたのは静かな山村だった。
畑で働く人々の姿が見え、空気には草や土の匂いが混じっている。
「少し休むぞ」
ラクサスがそう言うと、二人は村の小さな宿に泊まることにした。
久々に柔らかい布団で眠れると思ったミカは、宿の主が差し出した簡素な夕食を美味しそうに平らげた。
だが、村はどこか静かすぎた。
夜になり、月が昇ると、不意に遠くから叫び声が聞こえた。
「ラクサス、今の……!」
「……ああ、厄介事の匂いがするな」
二人は急いで外に出た。
叫び声が聞こえた方向へ駆けつけると、そこには巨大な魔物がうごめいていた。
村人たちは武器を持って立ち向かおうとしていたが、明らかに手に負えない相手だった。
「俺が行く。お前は――」
「私も行く!」
ミカの言葉に、ラクサスはわずかに目を細めた。
その表情は試すようでもあり、どこか期待するようでもあった。
「いいだろう。足を引っ張るなよ」
魔物との戦闘は熾烈を極めた。
ミカは必死に雲の滅竜魔法を駆使して戦ったが、攻撃がうまく当たらない。
自分の未熟さに歯がゆさを覚える一方、ラクサスの戦いぶりに目を奪われた。
「雷竜の鉄拳!」
彼の雷の魔法が魔物を正確に捉え、傷を負わせていく。
その姿は圧倒的で、ミカが目指すべき頂のように思えた。
「ミカ、気を抜くな!」
ラクサスの声にハッとし、ミカはもう一度自分の力を信じて魔法を放つ。
「雲竜の咆哮!」
彼女の魔法が魔物の足元を包み込み、動きを封じた瞬間、ラクサスの拳が魔物の急所を打ち抜いた。
魔物は大きな音を立てて倒れ込み、戦いは終わりを迎えた。
戦闘後、二人は村人たちに感謝され、用意された宴でささやかな祝福を受けた。
ミカは疲れた体を宿のベッドに横たえながら、そっとラクサスに問いかけた。
「私、ちゃんと戦えてたかな……?」
彼はベッドの隅に座り、ミカを見下ろすようにして短く答えた。
「ああ、お前はよくやった。だがまだまだだな」
その言葉に、ミカは一瞬肩を落としたが、ラクサスが続けた言葉に顔を上げた。
「だが、次はもっとやれるだろう。お前ならな」
彼の言葉に込められた信頼が、ミカの胸にじんわりと広がった。
「……うん。ありがとう、ラクサス」
静かな夜、窓の外には満天の星空が広がっていた。