馴れ初め
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(君 視点)
山崎さんと過ごした喫茶店での時間は、あっという間に過ぎた。温かいコーヒーと、穏やかな会話。特別なことは何も話していないけれど、山崎さんの誠実な人柄が伝わってきて、とても心地よかった。
「今日はありがとうございました。クッキー、大切にいただきますね」
「いえ、こちらこそ、付き合ってくれてありがとう、君さん。じゃあ、駅まで送るよ」
「え? でも、お気遣いなく。山崎さんもお疲れでしょうし」
「いや、大丈夫。どうせ俺も、この後ちょっと屯所に戻る用事があるから。一緒に行こう」
自然と、彼は私の荷物がある側の、車道に面した方を歩いてくれる。さりげないエスコートに、私の胸は小さくときめいた。
(「ありがとう」の後に、「君さん、駅まで送るよ」って、タメ口…)
喫茶店を出る直前、彼は自然と敬語から少しだけカジュアルな口調に変わった。まだ「タメ口」とまではいかないけれど、その一歩手前のような、親密さを感じさせる話し方。
まだ、私も山崎さんも、お互いを「さん付け」で呼んでいる。この微妙な距離感が、また新鮮だった。
駅前の大通りに出て、雑踏の中を並んで歩く。
「山崎さん、さっき、お仕事が忙しいって言ってましたけど、大丈夫なんですか?」
「ああ、まあね。監察ってのは、暇なようでいて、急に面倒な任務が降ってくるから。特に最近、副長が……」
山崎さんが少し愚痴をこぼし始めた、その時だった。
「おォォォォイ!! 山崎ィィィ!! そこで何モタモタしてやがるんだコノヤロー!!」
突然、背後から凄まじい大声が響き渡った。
私の肩がピクッと震え、反射的に山崎さんの背中に隠れるように身を寄せた。
振り返ると、そこには、真っ黒な隊服の集団。そして、その先頭には、真選組鬼の副長・土方十四郎さんと、真選組一番隊隊長・沖田総悟くんの姿があった。
「うわあああ! 土方さん! 沖田隊長! なんでここに!」
山崎さんは、心底驚いた様子で悲鳴に近い声を上げた。さっきまでの穏やかな雰囲気は、一瞬で吹き飛んでしまった。
「うるせえ! お前、マヨネーズの買い出しを頼んだっきり、全然戻ってこねぇから探しに来たんだよ! 女とデートか、このサボリ魔が!」
土方さんは、鬼のような形相で山崎さんに詰め寄る。その手には、マヨネーズがべっとりついたフランスパンのようなものが握られていた。
「ち、違います! 土方さん! これは違います! 葵さんは、先日俺が借りた傘を返し、そのお礼としてお茶を……」
山崎さんが慌てて弁解する傍らで、沖田隊長がひょっこりと顔を出した。
「へえ、山崎のくせに女の人といるなんて珍しいですねィ。もしかして、山崎、新しい監察対象ですか? 真選組に敵対するテロリストとか」
「ちょっ、沖田隊長! 失礼なことを言わないでください! 君さんは一般の市民の方です!」
君さん、ごめんなさい! と、山崎さんは私の方を向いて焦ったように頭を下げる。
私はといえば、そのドタバタ劇に、ただただ圧倒されていた。土方さんの迫力、沖田隊長の毒舌。これが、いつも山崎さんが身を置いている日常なのだと思うと、少し気の毒になった。
「あ、あの…、君と申します。山崎さんには、先日お借りした傘を返していただいたんです。ご迷惑をおかけして、申し訳ありません…」
私は、土方さんと沖田隊長に向かって、精一杯丁寧に頭を下げた。
その瞬間、土方さんの顔つきが少し変わった。
「……傘? ああ、そうか。この前、山崎が夜中に傘の手入れをしてやがったのは、あんたのモンだったのか」
土方さんは、私を上から下まで値踏みするように見た後、フン、と鼻を鳴らした。
「ま、いい。山崎。もうすぐ近藤さんが隊務から戻る。早く屯所に戻って、溜まってる書類を片付けろ。お前、こんな可愛い女性を待たせてんじゃねえぞ」
「は、はい! ありがとうございます!」
土方さんの最後の言葉に、山崎さんの顔が一瞬で赤くなる。土方さんなりに、私に気を遣ってくれたのだろうか。
「チッ、山崎のくせに、羨ましいですねィ」と沖田隊長は相変わらず辛辣だ。
「君さん。本当にごめんなさい! こんな連中といるところを見せちゃって……」
「大丈夫です。あの、私、これで失礼しますね」
私は、赤くなっている山崎さんに会釈をし、土方さんたちの集団から離れるように、早足で駅の改札へと向かった。
(あんな、山崎さん…初めて見たなぁ)
土方さんたちの前で、あたふたしている山崎さんの姿は、さっきまでの穏やかな彼とは別人のようだったけれど、それはそれで、人間味があって可愛らしいと感じてしまった。
🏃♂️ 土方さんと隊士たちの猛追(山崎 視点)
「くそ〜!副長のあの言い方! 君さんに完全にデートだと思われたじゃないか!」
俺は、土方さんたちに連行されるように屯所に向かいながら、頭の中でパニックになっていた。
「ま、デートに変わりねぇだろ。山崎のくせに、やるじゃねえか」
「チッ。土方さん、山崎を褒めないでください。調子に乗ります」
土方さんと沖田隊長は、俺をからかうのをやめない。
「違いますって! 傘を返しただけです! ただのお礼です!」
「傘を返すのに、二人きりで静かな喫茶店に行くか? しかも週末の午後に。馬鹿かテメェ」
土方さんが鋭く指摘する。その通りだ。否定できる言葉がない。
(…もう、いっそのこと、デートだと認めてしまえばよかったのか?)
先ほど、君さんに「駅まで送るよ」と言った時、自然に敬語が外れていたことに、今更気づいた。
「また、お茶でもご一緒させてもらっても良いでしょうか」と尋ねた時も、緊張のあまり敬語だったが、これからはもう少し、砕けた話し方ができるかもしれない。
「これからは、もう少し、タメ口で話してみようかな」
土方さんたちのおかげで、ある意味、吹っ切れた気がした。真選組の騒々しさに巻き込んでしまったことは申し訳ないが、これで君さんとの距離は少し縮まったはずだ。
「とにかく、山崎。明日の朝までには、溜まっている書類を片付けておけ。恋愛してる暇があるなら、ちゃんと仕事しろ」
「はい! やります! ありがとうございます、土方さん!」
俺は、土方さんの言葉の優しさを噛み締めながら、夜通しのデスクワーク覚悟で、屯所の門をくぐった。
山崎さんと過ごした喫茶店での時間は、あっという間に過ぎた。温かいコーヒーと、穏やかな会話。特別なことは何も話していないけれど、山崎さんの誠実な人柄が伝わってきて、とても心地よかった。
「今日はありがとうございました。クッキー、大切にいただきますね」
「いえ、こちらこそ、付き合ってくれてありがとう、君さん。じゃあ、駅まで送るよ」
「え? でも、お気遣いなく。山崎さんもお疲れでしょうし」
「いや、大丈夫。どうせ俺も、この後ちょっと屯所に戻る用事があるから。一緒に行こう」
自然と、彼は私の荷物がある側の、車道に面した方を歩いてくれる。さりげないエスコートに、私の胸は小さくときめいた。
(「ありがとう」の後に、「君さん、駅まで送るよ」って、タメ口…)
喫茶店を出る直前、彼は自然と敬語から少しだけカジュアルな口調に変わった。まだ「タメ口」とまではいかないけれど、その一歩手前のような、親密さを感じさせる話し方。
まだ、私も山崎さんも、お互いを「さん付け」で呼んでいる。この微妙な距離感が、また新鮮だった。
駅前の大通りに出て、雑踏の中を並んで歩く。
「山崎さん、さっき、お仕事が忙しいって言ってましたけど、大丈夫なんですか?」
「ああ、まあね。監察ってのは、暇なようでいて、急に面倒な任務が降ってくるから。特に最近、副長が……」
山崎さんが少し愚痴をこぼし始めた、その時だった。
「おォォォォイ!! 山崎ィィィ!! そこで何モタモタしてやがるんだコノヤロー!!」
突然、背後から凄まじい大声が響き渡った。
私の肩がピクッと震え、反射的に山崎さんの背中に隠れるように身を寄せた。
振り返ると、そこには、真っ黒な隊服の集団。そして、その先頭には、真選組鬼の副長・土方十四郎さんと、真選組一番隊隊長・沖田総悟くんの姿があった。
「うわあああ! 土方さん! 沖田隊長! なんでここに!」
山崎さんは、心底驚いた様子で悲鳴に近い声を上げた。さっきまでの穏やかな雰囲気は、一瞬で吹き飛んでしまった。
「うるせえ! お前、マヨネーズの買い出しを頼んだっきり、全然戻ってこねぇから探しに来たんだよ! 女とデートか、このサボリ魔が!」
土方さんは、鬼のような形相で山崎さんに詰め寄る。その手には、マヨネーズがべっとりついたフランスパンのようなものが握られていた。
「ち、違います! 土方さん! これは違います! 葵さんは、先日俺が借りた傘を返し、そのお礼としてお茶を……」
山崎さんが慌てて弁解する傍らで、沖田隊長がひょっこりと顔を出した。
「へえ、山崎のくせに女の人といるなんて珍しいですねィ。もしかして、山崎、新しい監察対象ですか? 真選組に敵対するテロリストとか」
「ちょっ、沖田隊長! 失礼なことを言わないでください! 君さんは一般の市民の方です!」
君さん、ごめんなさい! と、山崎さんは私の方を向いて焦ったように頭を下げる。
私はといえば、そのドタバタ劇に、ただただ圧倒されていた。土方さんの迫力、沖田隊長の毒舌。これが、いつも山崎さんが身を置いている日常なのだと思うと、少し気の毒になった。
「あ、あの…、君と申します。山崎さんには、先日お借りした傘を返していただいたんです。ご迷惑をおかけして、申し訳ありません…」
私は、土方さんと沖田隊長に向かって、精一杯丁寧に頭を下げた。
その瞬間、土方さんの顔つきが少し変わった。
「……傘? ああ、そうか。この前、山崎が夜中に傘の手入れをしてやがったのは、あんたのモンだったのか」
土方さんは、私を上から下まで値踏みするように見た後、フン、と鼻を鳴らした。
「ま、いい。山崎。もうすぐ近藤さんが隊務から戻る。早く屯所に戻って、溜まってる書類を片付けろ。お前、こんな可愛い女性を待たせてんじゃねえぞ」
「は、はい! ありがとうございます!」
土方さんの最後の言葉に、山崎さんの顔が一瞬で赤くなる。土方さんなりに、私に気を遣ってくれたのだろうか。
「チッ、山崎のくせに、羨ましいですねィ」と沖田隊長は相変わらず辛辣だ。
「君さん。本当にごめんなさい! こんな連中といるところを見せちゃって……」
「大丈夫です。あの、私、これで失礼しますね」
私は、赤くなっている山崎さんに会釈をし、土方さんたちの集団から離れるように、早足で駅の改札へと向かった。
(あんな、山崎さん…初めて見たなぁ)
土方さんたちの前で、あたふたしている山崎さんの姿は、さっきまでの穏やかな彼とは別人のようだったけれど、それはそれで、人間味があって可愛らしいと感じてしまった。
🏃♂️ 土方さんと隊士たちの猛追(山崎 視点)
「くそ〜!副長のあの言い方! 君さんに完全にデートだと思われたじゃないか!」
俺は、土方さんたちに連行されるように屯所に向かいながら、頭の中でパニックになっていた。
「ま、デートに変わりねぇだろ。山崎のくせに、やるじゃねえか」
「チッ。土方さん、山崎を褒めないでください。調子に乗ります」
土方さんと沖田隊長は、俺をからかうのをやめない。
「違いますって! 傘を返しただけです! ただのお礼です!」
「傘を返すのに、二人きりで静かな喫茶店に行くか? しかも週末の午後に。馬鹿かテメェ」
土方さんが鋭く指摘する。その通りだ。否定できる言葉がない。
(…もう、いっそのこと、デートだと認めてしまえばよかったのか?)
先ほど、君さんに「駅まで送るよ」と言った時、自然に敬語が外れていたことに、今更気づいた。
「また、お茶でもご一緒させてもらっても良いでしょうか」と尋ねた時も、緊張のあまり敬語だったが、これからはもう少し、砕けた話し方ができるかもしれない。
「これからは、もう少し、タメ口で話してみようかな」
土方さんたちのおかげで、ある意味、吹っ切れた気がした。真選組の騒々しさに巻き込んでしまったことは申し訳ないが、これで君さんとの距離は少し縮まったはずだ。
「とにかく、山崎。明日の朝までには、溜まっている書類を片付けておけ。恋愛してる暇があるなら、ちゃんと仕事しろ」
「はい! やります! ありがとうございます、土方さん!」
俺は、土方さんの言葉の優しさを噛み締めながら、夜通しのデスクワーク覚悟で、屯所の門をくぐった。