馴れ初め
名前を教えてください<(_ _*)>
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(山崎 視点)
「ったく、何やってんだ俺は……」
屯所の一室で、俺は借りた折り畳み傘を丁寧に乾かした後、改めて畳んでいる。普段の俺なら、こんなにもモノを丁寧に扱うことなどない。アンパンの袋なら雑に破り捨てるし、バドミントンのラケットは手荒に扱うこともしばしばだ。
しかし、これは君さんから借りた、優しさの塊だ。
傘は完全に乾いていたが、俺はさらに念入りにマイクロファイバーの布で軽く拭いた。小さな傘なのに、なぜかとても重く感じる。これは、どうやって返すかというプレッシャーの重さだ。
ただ次に商店街で会った時に「ありがとうございました」と渡すだけでもいい。けれど、それではなんだか味気ない。彼女は雨の中、俺の任務の邪魔になるかもしれないのに、優しさを見せてくれたのだ。
そうだ、何かお礼をしたい。
いや、お礼というのも仰々しいか。ただの傘だ。
でも、「少しだけ、二人で話す時間」が欲しい。
これが本音だと気づいた時、自分の心臓がドクンと音を立てるのを感じた。公務ではない、純粋に彼女と一対一で、穏やかに話したい。
俺は思い切って、彼女の携帯にメッセージを送ることにした。以前、近隣トラブルの聞き取り調査で彼女に協力してもらった際、連絡先を交換していたのだ。もちろん、その後は業務連絡など一切したことはない。
山崎:
君さん、夜分にすみません。真選組の山崎です。
先日は、傘を貸していただき本当にありがとうございました。おかげさまで風邪もひかずに済みました。
傘をお返ししたいのですが、よろしければ、どこかでお茶でもご一緒させていただくことはできますか?
きちんと感謝を伝えたいので。
メッセージを送信し、携帯をデスクに置いた途端、心臓がバドミントンをしている時のように激しく鼓動し始めた。32歳の大人が、こんなメッセージ一つで緊張しているなんて、情けない。
数分後、携帯がピコン、と鳴った。震える手で確認する。
君:
山崎さん、お疲れ様です。
傘のことはどうぞお気になさらないでください。
お茶の件ですが、私も山崎さんとゆっくりお話できるのは嬉しいです。
いつ頃がよろしいでしょうか?
「嬉しいです」。その一文が、心臓に突き刺さるように響いた。
俺は、急いで次のメッセージを打った。
山崎:
ありがとうございます!
では、もしご都合がよろしければ、今週の土曜日の午後はいかがでしょうか?
駅前に、静かな喫茶店があるんです。
☕️ 喫茶店のカウンター席で(君 視点)
土曜日の午後、指定された駅前の喫茶店を訪れた。老舗のようで、静かで落ち着いた雰囲気だ。
「山崎さん、お待たせいたしました」
入口から奥を見た瞬間、カウンター席で新聞を読んでいる山崎さんの姿を見つけた。私服姿の山崎さんを見るのは初めてだ。隊服を着ていないせいか、少しだけ優しげに見える。
彼はすぐに気づき、立ち上がって会釈をしてくれた。
「君さん、わざわざありがとうございます。俺も今来たところなんで、どうぞこちらへ」
指定された席に座り、私は少し緊張しながらも、店内の穏やかな空気に浸った。
「私服姿の山崎さんを見るのは、初めてです」
私がそう言うと、山崎さんは照れたように頬をかいた。
「はは……そうですか。隊服以外の服なんて、どうせ市販の地味なものばかりなんで、面白くないですよ」
「そんなことはありません。とても似合っていらっしゃいます」
私がそう言うと、彼は本当に少しだけ驚いたような顔をした後、嬉しそうに笑った。
「ありがとうございます。君さんこそ、お仕事の時とはまた違って、とても素敵です」
彼のまっすぐな言葉に、私の頬が熱くなるのを感じた。私はいつも地味な色の服ばかり選んでしまうけれど、今日は少し明るい色のブラウスを選んで正解だったかもしれない。
注文したコーヒーが運ばれてきた。山崎さんは一口飲んでから、咳払いをした。
「それで、あの。本当に先日はありがとうございました」
彼はそう言って、きっちりとアイロンがかけられ、ビニール袋に入った私の折り畳み傘を、そっとテーブルに置いた。
「おかげさまで、本当に助かりました。これはその、心ばかりですが……」
そう言って、彼は傘の横に、小さな包みを滑らせた。
「あの、山崎さん。傘のお礼なんて、大丈夫ですのに……」
「いや、受け取ってください。お礼というか、……俺の気持ちです。君さんがいつも、俺の仕事とか、立場とかを詮索せずに、ただ優しく接してくれることへの感謝、だと思ってください」
山崎さんのまっすぐな瞳に見つめられ、私はそれ以上断ることができなくなった。包みを開けると、中には地元で有名な洋菓子店の、可愛らしいクッキーの詰め合わせが入っていた。
「ありがとうございます……すごく可愛いです。いただきますね」
「どうぞ。……で、その、これからは、こうしてたまにお茶でも、ご一緒させてもらっても、良いでしょうか」
山崎さんは、少し遠慮がちに、けれど真剣な声でそう尋ねた。
私は、彼のこの控えめな申し出が、とても嬉しかった。
「はい。私も、山崎さんとお話できるのは楽しいです。また、ぜひ」
窓の外の陽射しが、カウンター席を静かに照らす。
初めて二人きりで過ごす、穏やかで優しい時間が、ゆっくりと流れていった。この関係が、ゆっくりと、大切に育っていけばいいと、心から願った。
「ったく、何やってんだ俺は……」
屯所の一室で、俺は借りた折り畳み傘を丁寧に乾かした後、改めて畳んでいる。普段の俺なら、こんなにもモノを丁寧に扱うことなどない。アンパンの袋なら雑に破り捨てるし、バドミントンのラケットは手荒に扱うこともしばしばだ。
しかし、これは君さんから借りた、優しさの塊だ。
傘は完全に乾いていたが、俺はさらに念入りにマイクロファイバーの布で軽く拭いた。小さな傘なのに、なぜかとても重く感じる。これは、どうやって返すかというプレッシャーの重さだ。
ただ次に商店街で会った時に「ありがとうございました」と渡すだけでもいい。けれど、それではなんだか味気ない。彼女は雨の中、俺の任務の邪魔になるかもしれないのに、優しさを見せてくれたのだ。
そうだ、何かお礼をしたい。
いや、お礼というのも仰々しいか。ただの傘だ。
でも、「少しだけ、二人で話す時間」が欲しい。
これが本音だと気づいた時、自分の心臓がドクンと音を立てるのを感じた。公務ではない、純粋に彼女と一対一で、穏やかに話したい。
俺は思い切って、彼女の携帯にメッセージを送ることにした。以前、近隣トラブルの聞き取り調査で彼女に協力してもらった際、連絡先を交換していたのだ。もちろん、その後は業務連絡など一切したことはない。
山崎:
君さん、夜分にすみません。真選組の山崎です。
先日は、傘を貸していただき本当にありがとうございました。おかげさまで風邪もひかずに済みました。
傘をお返ししたいのですが、よろしければ、どこかでお茶でもご一緒させていただくことはできますか?
きちんと感謝を伝えたいので。
メッセージを送信し、携帯をデスクに置いた途端、心臓がバドミントンをしている時のように激しく鼓動し始めた。32歳の大人が、こんなメッセージ一つで緊張しているなんて、情けない。
数分後、携帯がピコン、と鳴った。震える手で確認する。
君:
山崎さん、お疲れ様です。
傘のことはどうぞお気になさらないでください。
お茶の件ですが、私も山崎さんとゆっくりお話できるのは嬉しいです。
いつ頃がよろしいでしょうか?
「嬉しいです」。その一文が、心臓に突き刺さるように響いた。
俺は、急いで次のメッセージを打った。
山崎:
ありがとうございます!
では、もしご都合がよろしければ、今週の土曜日の午後はいかがでしょうか?
駅前に、静かな喫茶店があるんです。
☕️ 喫茶店のカウンター席で(君 視点)
土曜日の午後、指定された駅前の喫茶店を訪れた。老舗のようで、静かで落ち着いた雰囲気だ。
「山崎さん、お待たせいたしました」
入口から奥を見た瞬間、カウンター席で新聞を読んでいる山崎さんの姿を見つけた。私服姿の山崎さんを見るのは初めてだ。隊服を着ていないせいか、少しだけ優しげに見える。
彼はすぐに気づき、立ち上がって会釈をしてくれた。
「君さん、わざわざありがとうございます。俺も今来たところなんで、どうぞこちらへ」
指定された席に座り、私は少し緊張しながらも、店内の穏やかな空気に浸った。
「私服姿の山崎さんを見るのは、初めてです」
私がそう言うと、山崎さんは照れたように頬をかいた。
「はは……そうですか。隊服以外の服なんて、どうせ市販の地味なものばかりなんで、面白くないですよ」
「そんなことはありません。とても似合っていらっしゃいます」
私がそう言うと、彼は本当に少しだけ驚いたような顔をした後、嬉しそうに笑った。
「ありがとうございます。君さんこそ、お仕事の時とはまた違って、とても素敵です」
彼のまっすぐな言葉に、私の頬が熱くなるのを感じた。私はいつも地味な色の服ばかり選んでしまうけれど、今日は少し明るい色のブラウスを選んで正解だったかもしれない。
注文したコーヒーが運ばれてきた。山崎さんは一口飲んでから、咳払いをした。
「それで、あの。本当に先日はありがとうございました」
彼はそう言って、きっちりとアイロンがかけられ、ビニール袋に入った私の折り畳み傘を、そっとテーブルに置いた。
「おかげさまで、本当に助かりました。これはその、心ばかりですが……」
そう言って、彼は傘の横に、小さな包みを滑らせた。
「あの、山崎さん。傘のお礼なんて、大丈夫ですのに……」
「いや、受け取ってください。お礼というか、……俺の気持ちです。君さんがいつも、俺の仕事とか、立場とかを詮索せずに、ただ優しく接してくれることへの感謝、だと思ってください」
山崎さんのまっすぐな瞳に見つめられ、私はそれ以上断ることができなくなった。包みを開けると、中には地元で有名な洋菓子店の、可愛らしいクッキーの詰め合わせが入っていた。
「ありがとうございます……すごく可愛いです。いただきますね」
「どうぞ。……で、その、これからは、こうしてたまにお茶でも、ご一緒させてもらっても、良いでしょうか」
山崎さんは、少し遠慮がちに、けれど真剣な声でそう尋ねた。
私は、彼のこの控えめな申し出が、とても嬉しかった。
「はい。私も、山崎さんとお話できるのは楽しいです。また、ぜひ」
窓の外の陽射しが、カウンター席を静かに照らす。
初めて二人きりで過ごす、穏やかで優しい時間が、ゆっくりと流れていった。この関係が、ゆっくりと、大切に育っていけばいいと、心から願った。