馴れ初め
名前を教えてください<(_ _*)>
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(君 視点)
その日は、朝から雨が降り続いていた。
幸いにも私は傘を持っていたが、仕事が終わる頃には、雨足がかなり強くなっていた。
「今日はこのまま、降りやみそうにないなぁ……」
駅に到着し、いつもの商店街とは逆の出口に向かおうとした時、視界の隅に見慣れた後ろ姿を捉えた。
真選組の隊服。山崎さんだ。
彼は駅前の掲示板の前で立っていて、どうやら誰かを待っているようだった。けれど、傘は持っていない。隊服の肩先が、わずかに濡れ始めているのが見えた。
私は少し迷った。声をかけるべきか、そのまま通り過ぎるべきか。真選組の監察という立場上、きっとプライベートな任務か何かで待機しているのかもしれない。邪魔をするのは気が引ける。
しかし、このまま濡れて風邪をひかれては大変だ。
意を決して、私は彼に近づいた。
「山崎さん、お疲れ様です」
「……っ、君さん!」
山崎さんは、突然の私の声に少し驚き、振り返った。彼の目がわずかに丸くなる。
「こんな雨の中、どうされたんですか? 傘、お持ちでないようですが……」
私が傘を少し傾け、彼にも雨がかからないようにして尋ねると、山崎さんは困ったように頭をかいた。
「ああ、実はですね……ちょっとこれから、とある用事があるのですが……傘を持ってくるのを完全に忘れてしまいまして」
「これから…!こんな土砂降りの中でですか?」
私は思わず声を上げてしまった。雨の中、隊服のまま傘もささずに立っているなんて、あまりに無謀すぎる。
「ええ、まあ。これも仕事なんで……って、君さん。そんなにこっちに寄ってると、濡れちゃいますよ」
山崎さんは私の心配をよそに、自分の心配をしてくれる。その優しさが、胸にじんわりと染みた。
「大丈夫です。あの、もしよろしければ……」
私は自分のバッグから、予備として持っていた折り畳み傘を取り出した。それは、小さいけれど、撥水性のしっかりした傘だった。
「これ、もしよろしければ、お使いになりませんか? 私は自分の傘がありますから」
山崎さんは、私の手のひらに乗った傘を、まるで珍しいものを見るかのようにじっと見つめた。
「えっ……でも、悪いですよ。君さんこそ、予備がなくなっちゃうじゃないですか」
「私はこちらの傘があるので平気です。山崎さんが風邪をひいて、お仕事に支障が出る方が大変です。もしよろしければ、お使いになってください」
私が強く勧めると、山崎さんは数秒間考え込んだ後、ゆっくりと小さく息を吐いた。
「……ありがとうございます。君さんの優しさには、本当に助けられます。必ず、明日には綺麗にしてお返しします」
彼はそう言って、深々と頭を下げた。律儀で、少し不器用なところが、山崎さんらしいと思った。
「いいえ、そんな。お気になさらないでください。では、お仕事、頑張ってくださいね。私はこれで失礼します」
私は彼の手にそっと傘を乗せ、自分の傘をしっかり差し直して、駅の出口へと向かった。
(少しでも、山崎さんの役に立てたなら、嬉しいけれど……)
彼の温かい言葉が、雨の冷たさを忘れさせてくれるようだった。
☔️ 濡れた地面と温かい心(山崎 視点)
「本当に助かった……」
俺は、君さんから借りたばかりの折り畳み傘を広げ、濡れた隊服の肩を撫でた。
彼女が去った方向を、しばらく見つめてしまう。
彼女の 遠慮がちなのに芯の通った優しさは、いつも俺の予想を超えてくる。まさか、任務中の張り込み現場まで来て、傘を貸してくれるなんて。
(俺、この人に、こんなに優しくしてもらって、いいんだろうか)
俺の仕事は、いつ誰を疑い、監視しなければならないか分からない、孤独な任務だ。その緊張を、彼女はいつも一瞬で解いてくれる。まるで、乾いた土に染み込む雨のように、自然と、優しく。
手に持った傘は、小さくて女性らしいけれど、しっかりと雨粒を弾いている。
隊服の袖越しに伝わる、まだ彼女の温もりが残っているような気がした。
「……明日、必ずきっちり返さないと」
いや、「明日」でいいのか? 彼女の家の場所は知っているが、突然夜に押し掛けるのは迷惑だろう。かと言って、屯所に呼び出すわけにもいかない。
(次に会う時まで、この傘を大切に持っておこう)
張り込みの最中だというのに、俺の頭の中は、任務のことよりも、君さんのことでいっぱいになっていた。彼女の控えめな笑顔、真剣な眼差し、そして、雨の中の優しい気遣い。
この傘は、単なる雨具じゃない。彼女の、俺への心遣いの証だ。
大切に、大切に扱おう。
俺は改めて、掲示板の裏に身を隠し、張り込みを再開した。けれど、心の中は先ほどまでの冷たさではなく、温かいもので満たされていた。
その日は、朝から雨が降り続いていた。
幸いにも私は傘を持っていたが、仕事が終わる頃には、雨足がかなり強くなっていた。
「今日はこのまま、降りやみそうにないなぁ……」
駅に到着し、いつもの商店街とは逆の出口に向かおうとした時、視界の隅に見慣れた後ろ姿を捉えた。
真選組の隊服。山崎さんだ。
彼は駅前の掲示板の前で立っていて、どうやら誰かを待っているようだった。けれど、傘は持っていない。隊服の肩先が、わずかに濡れ始めているのが見えた。
私は少し迷った。声をかけるべきか、そのまま通り過ぎるべきか。真選組の監察という立場上、きっとプライベートな任務か何かで待機しているのかもしれない。邪魔をするのは気が引ける。
しかし、このまま濡れて風邪をひかれては大変だ。
意を決して、私は彼に近づいた。
「山崎さん、お疲れ様です」
「……っ、君さん!」
山崎さんは、突然の私の声に少し驚き、振り返った。彼の目がわずかに丸くなる。
「こんな雨の中、どうされたんですか? 傘、お持ちでないようですが……」
私が傘を少し傾け、彼にも雨がかからないようにして尋ねると、山崎さんは困ったように頭をかいた。
「ああ、実はですね……ちょっとこれから、とある用事があるのですが……傘を持ってくるのを完全に忘れてしまいまして」
「これから…!こんな土砂降りの中でですか?」
私は思わず声を上げてしまった。雨の中、隊服のまま傘もささずに立っているなんて、あまりに無謀すぎる。
「ええ、まあ。これも仕事なんで……って、君さん。そんなにこっちに寄ってると、濡れちゃいますよ」
山崎さんは私の心配をよそに、自分の心配をしてくれる。その優しさが、胸にじんわりと染みた。
「大丈夫です。あの、もしよろしければ……」
私は自分のバッグから、予備として持っていた折り畳み傘を取り出した。それは、小さいけれど、撥水性のしっかりした傘だった。
「これ、もしよろしければ、お使いになりませんか? 私は自分の傘がありますから」
山崎さんは、私の手のひらに乗った傘を、まるで珍しいものを見るかのようにじっと見つめた。
「えっ……でも、悪いですよ。君さんこそ、予備がなくなっちゃうじゃないですか」
「私はこちらの傘があるので平気です。山崎さんが風邪をひいて、お仕事に支障が出る方が大変です。もしよろしければ、お使いになってください」
私が強く勧めると、山崎さんは数秒間考え込んだ後、ゆっくりと小さく息を吐いた。
「……ありがとうございます。君さんの優しさには、本当に助けられます。必ず、明日には綺麗にしてお返しします」
彼はそう言って、深々と頭を下げた。律儀で、少し不器用なところが、山崎さんらしいと思った。
「いいえ、そんな。お気になさらないでください。では、お仕事、頑張ってくださいね。私はこれで失礼します」
私は彼の手にそっと傘を乗せ、自分の傘をしっかり差し直して、駅の出口へと向かった。
(少しでも、山崎さんの役に立てたなら、嬉しいけれど……)
彼の温かい言葉が、雨の冷たさを忘れさせてくれるようだった。
☔️ 濡れた地面と温かい心(山崎 視点)
「本当に助かった……」
俺は、君さんから借りたばかりの折り畳み傘を広げ、濡れた隊服の肩を撫でた。
彼女が去った方向を、しばらく見つめてしまう。
彼女の 遠慮がちなのに芯の通った優しさは、いつも俺の予想を超えてくる。まさか、任務中の張り込み現場まで来て、傘を貸してくれるなんて。
(俺、この人に、こんなに優しくしてもらって、いいんだろうか)
俺の仕事は、いつ誰を疑い、監視しなければならないか分からない、孤独な任務だ。その緊張を、彼女はいつも一瞬で解いてくれる。まるで、乾いた土に染み込む雨のように、自然と、優しく。
手に持った傘は、小さくて女性らしいけれど、しっかりと雨粒を弾いている。
隊服の袖越しに伝わる、まだ彼女の温もりが残っているような気がした。
「……明日、必ずきっちり返さないと」
いや、「明日」でいいのか? 彼女の家の場所は知っているが、突然夜に押し掛けるのは迷惑だろう。かと言って、屯所に呼び出すわけにもいかない。
(次に会う時まで、この傘を大切に持っておこう)
張り込みの最中だというのに、俺の頭の中は、任務のことよりも、君さんのことでいっぱいになっていた。彼女の控えめな笑顔、真剣な眼差し、そして、雨の中の優しい気遣い。
この傘は、単なる雨具じゃない。彼女の、俺への心遣いの証だ。
大切に、大切に扱おう。
俺は改めて、掲示板の裏に身を隠し、張り込みを再開した。けれど、心の中は先ほどまでの冷たさではなく、温かいもので満たされていた。