いろとかたち
Quel est votre nom ?
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美術の授業では下書きの期限が間近に控えていた。
何とか授業内に収めようと必死に下書きを描く生徒や
すでに色塗りに手をつけている生徒、
中には色塗りを次回以降にまわすつもりなのか、会話に花を咲かせている生徒の姿が見える。
名前は完成直前の下書きを終わらせるため
黙々とキャンバスと向かい合っていた。
幸村「何描いてるの?」
『ほわっ!?』
よっぽど集中していたのか、名前は急に聞こえた声に驚いて目を見開いた。
『びっっっくり、し・・た・・・』
ゆっくりと声のする方へ視線を向けると
目の前には楽しそうに名前の絵を覗き込む幸村の姿が目に映った。
幸村「よっぽど集中してたんだね」
幸村は邪魔してごめんね、と口では言うものの
表情は相変わらずいたずらっ子のように楽しそうな笑顔を浮かべている。
『いや、こっちこそ気づかなくてごめんね』
幸村「いや、気にしないで。俺が勝手に来ただけだから。」
幸村が花壇の方へ向けた視線にこたえるように
涼しい風が幸村の蒼い髪をそっとゆらした。
幸村「ここって風も気持ち良いし景色も悪くない。
・・・その割に人があまり来ないからいい穴場だよね」
『(綺麗・・・)あ・・・うん。お気に入りの場所なんだ。』
名前の視線に気づかなかったのか、特に何を気にする様子もなく
幸村は再び名前の絵へと目を向けた。
幸村「ブルースター?」
『あ、いや・・・私の想像の中の花を描いてみたんだけど・・・
こんな感じの花、実際にあるんだ?』
幸村「うん。別名オキシペタルム。名前の通り青い、綺麗な花だよ。」
『見てみたいなぁ。・・・あ、でもそしたらこの絵は題材に合わなくなっちゃうね。』
幸村「身近な風景の中に想像の世界を織り交ぜるなんて描きにくいよね。」
『もう下書きが終わってる人に言われても説得力がないなぁ。。。(笑)』
花壇の中に青い花を想像で描いてみたものの、実際にある花に近くなってしまうと
現実味が強くなりすぎてしまう。
幸いほとんど色を付ける前だったから多少の修正はできるものの
美術の授業という限られた時間のなかでどうにかするのは難しい。
『・・・後日提出にするか。』
幸村「描きなおすの?」
『うん。どうせ描きなおすなら最初からやろうかな。
・・・どんなのにしようかな。。。』
幸村「少し場所を変えてみる?何かヒントが見つかるかもしれないよ。」
『そうしようかな。』
気持ちを切り替えるためにも道具を一通り片付け立ち上がると同時に
隣の幸村も名前の画材を持って立ち上がった。
『自分のくらい自分で持つから大丈夫だよ、ありがとう。』
幸村「俺はだいたい片付け終わって荷物が無いから気にしないで。」
言葉と一緒に微笑みを返す幸村には名前に荷物を手渡す気はさらさらない様子で
荷物を受け取ろうと差し出した手を包むようにして下ろさせると、
男が先に持ったのに、女の子の言葉一つで返しちゃうなんて格好悪いじゃないか、
なんて冗談ぽく言いながらゆっくりと歩き始めた。
名前は再びお礼を言うと、幸村を追いかけると
ここにはこんなものがあったら面白い、こんな風景を見てみたい、などと話しながら
そして時々ここであんなことがあった、こんなことをした、等と脱線した話しも交えながら暫く校内を歩いて回った。
幸村「どう、イメージはできそう?」
授業の終わりを告げるチャイムが鳴る頃、幸村が話を戻すように尋ねた。
『うーん・・・なんとなく?
でも、色どうしようかな・・・』
幸村「色は後でもいいんじゃない?
同じものを見ていても、天気や時間帯によって物の見え方って違ってくるし
1日ゆっくり考えてみたらどうかな。」
『確かに。。。天気や時間帯か・・・
ありがとう、焦らずにゆっくり考えてみる!
・・・そういえば、幸村君はどんな絵を描いたの?』
幸村「んー、授業でみんなの絵を見る機会はあるだろうし
それはまたのお楽しみ、ってことにしておこうかな。」
『自分でハードルを上げていくね(笑)』
幸村「そんなつもりじゃなかったんだけどな(笑)
・・・ところで、この今描きかけていたのはどうするんだい?」
授業の課題とは別に趣味で続けるのも良いが、
どうせいろんな理由をつけて後回しにして、結局ほったらかしになってしまうだろう。
だからと言って、せっかく一生懸命描いた下書きを捨てるのには惜しい気がしてしまう。
『んー・・・どうしようかなぁ・・・』
幸村「じゃあさ、これ俺にくれないかな。」
『え、この描きかけ?・・・いいけど・・・
(こんな中途半端な状態の下書き、どうするんだろう)』
不思議そうに見つめた先の幸村は嬉しそうな表情で下書きを受け取ると同時に
校庭には授業の終わりを告げるチャイムが鳴り響いた。
放課後、何とか新たな下書きを描き終えた頃
空の色はオレンジと群青色が混ざり合うグラデーションを映し出していることに気づき
ふと時計を見ると、針は最終下校時刻の20分前をさしていた。
少し急いで画材道具を片付け、校舎を出ると
部活終わりの生徒であろう生徒が数名のグループを作って校門へと足を向けていた。
『(テニス部も帰る頃かな。)』
周りの目を気にしながら不自然にならないよう、少し周囲を見渡してみるが
テニスバッグらしきものを持った生徒はいるが、見慣れた蒼い髪はみあたらなかった。
『(こんな広い学校だし、偶然会うなんてめったにないか。)』
最初はアドバイスのお礼もかねて下書きも無事にできたことを報告しようかと考えたが
すぐに幸村も部活仲間と帰路についているだろうと思いなおし
おとなしく一人で足を進めることにした。
名前は乗り換えの電車を待つ間、読みかけの本を開いて文字を眺めてみたものの
なんとなく読む気にもなれず、ふとほとんどが群青色に包まれた空を眺めた。
『(空って、よく見たらいつも単色じゃないんだ・・・)』
「先生、下書きの進捗はどうでしょう?」
『!?』
突然すぐ横から声が聞こえ、反射的に声のする方向へ向くと
そこには授業中と同じようにいたずらっ子のように笑う幸村が立っていた。
幸村「お疲れ様。納得のいく絵は描けそう?」
『ゆ、きむらくん・・・びっくりした・・・
幸村君こそ部活お疲れ様。おかげさまで下書きは終わったから
あともう1回くらい残れば色塗りも間に合うかな。』
幸村「苗字さんの絵って丁寧で繊細だから、色塗りも時間かかりそうだもんね」
『絵が上手いわけではないけど、できる限りのことはやりたいんだ。』
幸村「よしよし、いい子」
《わしゃわしゃ・・・》
『わっ!』
名前の返答を聞くと、幸村は満面の笑みで名前の頭をペットのように少し大げさに撫でた。
『///同い年なのに子ども扱いしてるでしょ!(幸村君ってこんなにスキンシップ激しい人だっけ?)』
対照的に名前は頬を少し赤らめながらも、頬を膨らませて少し睨むように幸村を見るが
幸村は相変わらず楽しそうに笑っている。
幸村「くすっ、そんなことないよ?」
《まもなく、2番ホームに電車が参ります。・・・》
幸村「あ・・・俺はこっちの電車だから。気を付けて帰るんだよ?」
『ありがとう。幸村君もね、また明日!』
アナウンスと共にそれぞれ反対のホームへわかれ、やってきた電車へと乗り込むと
名前は電車内の椅子の壁に寄りかかるようにして立ち、すっかり日が落ちた空を見た。
『(・・・星ってこんなにきれいだったんだ。夜空にしても良いな。)』
何とか授業内に収めようと必死に下書きを描く生徒や
すでに色塗りに手をつけている生徒、
中には色塗りを次回以降にまわすつもりなのか、会話に花を咲かせている生徒の姿が見える。
名前は完成直前の下書きを終わらせるため
黙々とキャンバスと向かい合っていた。
幸村「何描いてるの?」
『ほわっ!?』
よっぽど集中していたのか、名前は急に聞こえた声に驚いて目を見開いた。
『びっっっくり、し・・た・・・』
ゆっくりと声のする方へ視線を向けると
目の前には楽しそうに名前の絵を覗き込む幸村の姿が目に映った。
幸村「よっぽど集中してたんだね」
幸村は邪魔してごめんね、と口では言うものの
表情は相変わらずいたずらっ子のように楽しそうな笑顔を浮かべている。
『いや、こっちこそ気づかなくてごめんね』
幸村「いや、気にしないで。俺が勝手に来ただけだから。」
幸村が花壇の方へ向けた視線にこたえるように
涼しい風が幸村の蒼い髪をそっとゆらした。
幸村「ここって風も気持ち良いし景色も悪くない。
・・・その割に人があまり来ないからいい穴場だよね」
『(綺麗・・・)あ・・・うん。お気に入りの場所なんだ。』
名前の視線に気づかなかったのか、特に何を気にする様子もなく
幸村は再び名前の絵へと目を向けた。
幸村「ブルースター?」
『あ、いや・・・私の想像の中の花を描いてみたんだけど・・・
こんな感じの花、実際にあるんだ?』
幸村「うん。別名オキシペタルム。名前の通り青い、綺麗な花だよ。」
『見てみたいなぁ。・・・あ、でもそしたらこの絵は題材に合わなくなっちゃうね。』
幸村「身近な風景の中に想像の世界を織り交ぜるなんて描きにくいよね。」
『もう下書きが終わってる人に言われても説得力がないなぁ。。。(笑)』
花壇の中に青い花を想像で描いてみたものの、実際にある花に近くなってしまうと
現実味が強くなりすぎてしまう。
幸いほとんど色を付ける前だったから多少の修正はできるものの
美術の授業という限られた時間のなかでどうにかするのは難しい。
『・・・後日提出にするか。』
幸村「描きなおすの?」
『うん。どうせ描きなおすなら最初からやろうかな。
・・・どんなのにしようかな。。。』
幸村「少し場所を変えてみる?何かヒントが見つかるかもしれないよ。」
『そうしようかな。』
気持ちを切り替えるためにも道具を一通り片付け立ち上がると同時に
隣の幸村も名前の画材を持って立ち上がった。
『自分のくらい自分で持つから大丈夫だよ、ありがとう。』
幸村「俺はだいたい片付け終わって荷物が無いから気にしないで。」
言葉と一緒に微笑みを返す幸村には名前に荷物を手渡す気はさらさらない様子で
荷物を受け取ろうと差し出した手を包むようにして下ろさせると、
男が先に持ったのに、女の子の言葉一つで返しちゃうなんて格好悪いじゃないか、
なんて冗談ぽく言いながらゆっくりと歩き始めた。
名前は再びお礼を言うと、幸村を追いかけると
ここにはこんなものがあったら面白い、こんな風景を見てみたい、などと話しながら
そして時々ここであんなことがあった、こんなことをした、等と脱線した話しも交えながら暫く校内を歩いて回った。
幸村「どう、イメージはできそう?」
授業の終わりを告げるチャイムが鳴る頃、幸村が話を戻すように尋ねた。
『うーん・・・なんとなく?
でも、色どうしようかな・・・』
幸村「色は後でもいいんじゃない?
同じものを見ていても、天気や時間帯によって物の見え方って違ってくるし
1日ゆっくり考えてみたらどうかな。」
『確かに。。。天気や時間帯か・・・
ありがとう、焦らずにゆっくり考えてみる!
・・・そういえば、幸村君はどんな絵を描いたの?』
幸村「んー、授業でみんなの絵を見る機会はあるだろうし
それはまたのお楽しみ、ってことにしておこうかな。」
『自分でハードルを上げていくね(笑)』
幸村「そんなつもりじゃなかったんだけどな(笑)
・・・ところで、この今描きかけていたのはどうするんだい?」
授業の課題とは別に趣味で続けるのも良いが、
どうせいろんな理由をつけて後回しにして、結局ほったらかしになってしまうだろう。
だからと言って、せっかく一生懸命描いた下書きを捨てるのには惜しい気がしてしまう。
『んー・・・どうしようかなぁ・・・』
幸村「じゃあさ、これ俺にくれないかな。」
『え、この描きかけ?・・・いいけど・・・
(こんな中途半端な状態の下書き、どうするんだろう)』
不思議そうに見つめた先の幸村は嬉しそうな表情で下書きを受け取ると同時に
校庭には授業の終わりを告げるチャイムが鳴り響いた。
放課後、何とか新たな下書きを描き終えた頃
空の色はオレンジと群青色が混ざり合うグラデーションを映し出していることに気づき
ふと時計を見ると、針は最終下校時刻の20分前をさしていた。
少し急いで画材道具を片付け、校舎を出ると
部活終わりの生徒であろう生徒が数名のグループを作って校門へと足を向けていた。
『(テニス部も帰る頃かな。)』
周りの目を気にしながら不自然にならないよう、少し周囲を見渡してみるが
テニスバッグらしきものを持った生徒はいるが、見慣れた蒼い髪はみあたらなかった。
『(こんな広い学校だし、偶然会うなんてめったにないか。)』
最初はアドバイスのお礼もかねて下書きも無事にできたことを報告しようかと考えたが
すぐに幸村も部活仲間と帰路についているだろうと思いなおし
おとなしく一人で足を進めることにした。
名前は乗り換えの電車を待つ間、読みかけの本を開いて文字を眺めてみたものの
なんとなく読む気にもなれず、ふとほとんどが群青色に包まれた空を眺めた。
『(空って、よく見たらいつも単色じゃないんだ・・・)』
「先生、下書きの進捗はどうでしょう?」
『!?』
突然すぐ横から声が聞こえ、反射的に声のする方向へ向くと
そこには授業中と同じようにいたずらっ子のように笑う幸村が立っていた。
幸村「お疲れ様。納得のいく絵は描けそう?」
『ゆ、きむらくん・・・びっくりした・・・
幸村君こそ部活お疲れ様。おかげさまで下書きは終わったから
あともう1回くらい残れば色塗りも間に合うかな。』
幸村「苗字さんの絵って丁寧で繊細だから、色塗りも時間かかりそうだもんね」
『絵が上手いわけではないけど、できる限りのことはやりたいんだ。』
幸村「よしよし、いい子」
《わしゃわしゃ・・・》
『わっ!』
名前の返答を聞くと、幸村は満面の笑みで名前の頭をペットのように少し大げさに撫でた。
『///同い年なのに子ども扱いしてるでしょ!(幸村君ってこんなにスキンシップ激しい人だっけ?)』
対照的に名前は頬を少し赤らめながらも、頬を膨らませて少し睨むように幸村を見るが
幸村は相変わらず楽しそうに笑っている。
幸村「くすっ、そんなことないよ?」
《まもなく、2番ホームに電車が参ります。・・・》
幸村「あ・・・俺はこっちの電車だから。気を付けて帰るんだよ?」
『ありがとう。幸村君もね、また明日!』
アナウンスと共にそれぞれ反対のホームへわかれ、やってきた電車へと乗り込むと
名前は電車内の椅子の壁に寄りかかるようにして立ち、すっかり日が落ちた空を見た。
『(・・・星ってこんなにきれいだったんだ。夜空にしても良いな。)』