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petit l'écrin


『精市ー!部活お疲れ様!』

制服に着替えて部室から出たら校舎の方から聞きなれた声が近づいてきた。

幸「ありがとう。」

笑いながら言うと彼女は嬉しそうに笑顔を返した。
でも、ちょっとこれが最近困っていることだったりもする。

幸「[#dn=2#]、俺は図書室で待っててって言ったよね?」

[#dn=2#]は冷え性なのか、少し寒い場所にいるとすぐに全身が冷たくなってしまう。
女の子なんだから身体をむやみに冷やしてはいけないのに。

『だって早く会いたいんだもん』

少し寂しそうに上目遣いで行ってくる君。
その姿に思わず許してしまいそうになるから、本当にずるいよね。

緩みそうになる顔をどうにか引き締める。

幸「それでもだめ。マフラーもそんな巻き方じゃ寒いだろ?」

そう言いながらマフラーを寒くないように巻き直してやると、
[#dn=2#]は嬉しそうにされるがままになった。

幸「手袋は?」

『しない!』

幸「だめ。もうこんなに冷たくなっているじゃないか。」

マフラーは大人しく巻かれるのに、なぜか手袋は嫌がる。

『寒く感じないもん!』

幸「それ冷たくなりすぎて感覚が無くなっているだけだからね?」

『精市のイップス(`・ω・´)』

幸「そんなことするわけないだろ」

そもそも威張って言うことじゃないよ、それ。

『イップスだから手袋じゃ治らないの!』

そう言って[#dn=2#]は冷たい手を俺の手に絡めてきた。

『手袋したら直接手繋げないもん。』

幸「・・・はぁ・・・」


[#dn=2#]は本当にずるい。
俺だって手袋やコートを挟まずに君に触れたいんだ。
でも、君が心配で仕方がないから我慢をしているのに。
そんなこと言われたら許すしかないじゃないか。

幸「じゃあ、反対は手袋して?」

『うん!』

が左手に手袋をしたのを確認して、俺の左手と[#dn=2#]の右手を俺のコートのポケットに入れた。

『あったかーいっ!』

ポケットのなかでぎゅっと手を握って嬉しそうにする君を見ていたら、もう叱ることなんてできなくて。

幸「ほら、寒いから早く帰るよ。」

『えーーゆっくり帰ろうよーー』

幸「誰かさんが図書室で大人しく待っていたら少しゆっくり話せたんだけどな」

『!・・・(´・ω・`)』

少し拗ねたように言って見せると、[#dn=2#]は一瞬はっとして、今度は少し寂しそうな表情になった。

幸「すぐに冷たくなっちゃう誰かさんが心配で外ではゆっくりしていられないから、待っててって言ってたのに」

さらに言えば、[#dn=2#]はみるみるうちに悲しそうな表情になってきた。
少し意地悪しすぎちゃったかな?

幸「今度の日曜は部活が休みだから、久しぶりに家に来ないかい?」

『!いく!!』

今度はぱっと笑顔になってこちらを見てくる。
本当に君を見ていると飽きないな。

幸「じゃあ、それまでに風邪ひかないように温かくしてね?」

『うん!』

家の中なら暖房が効いて温かいから、厚着をしないで君に触れていられる。
身体の内側から温まるように、ハーブティーも淹れてあげよう。

そして、[#dn=2#]を抱きしめながらゆっくり過ごそう。

ハーブの香りを楽しみながら、ゆっくりの君の体温を感じられる日曜日が今から楽しみだ。

普段は部活で忙しくてあまり相手をしてあげられないけど・・・


一緒にいられる時くらいは、君に温もりを。








(《ピンポーン・・・ガチャッ・・・》)
(幸「いらっしゃい・・・ってまた寒そうな恰好して・・・」)
(『えへへ、楽しみで急いで来ちゃった!』)
(幸「まったく・・・早く部屋に行こう」)

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