Année 1 ~1年目~
Quel est votre nom ?
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「俺は幸村精市。」
よろしく、と言いながら右手を差し出された。
『あっ、私は水瀬 柚香』
慌てて右手を出そうとした。
・・・・できなかったけど。
「くすっ・・・ごめん、両手塞がってたね」
左手を口元に添えながら笑う彼は本当に同じ1年生なのかな。
何故か屋上なのに設置されている花壇の脇のベンチに並んで座った。
「今の曲は?聴いたことはある気がするんだけど・・・」
『エーデルワイス。サウンドオブミュージックって知ってる?』
「あぁ、映画の曲だったんだね」
曲の話からはじまって、お互いのことも話し始める。
彼はテニス部に入るらしい。
文化部だろうな、なんて勝手に想像してたから
人は見かけで判断しちゃいけないと心の中でちょっと反省。
ガーデニングが趣味なのはすごい似合うと心から思った。
「涼しい地域の花だから、うまくいくかわからないけど
エーデルワイスも育ててみようかな。」
『ちっちゃくて白くてかわいいよね。咲いたら写真見せてほしいな!』
「もちろん」
クラスは隣で、部活はなんと月に2日しかお休みが無いんだとか。
そんな部活について行ける人たちも、そんなハードスケジュールにする部活もすごい。
『身体壊さないようにね?』
「ふふっ、ありがとう。
でもそんなにやわじゃないさ。」
『すごいね!私には耐えられないなぁ・・・』
「水瀬さんだって、バイオリンが好きでほぼ毎日弾いてるんじゃない?」
それと一緒だよ、なんて幸村くんは笑うけど、そんなことないと思う。
『そうだけど、そんなに何時間もやってないよ。
あ、でもね。
目標はちゃんとあるよ。』
全日本学生音楽コンクール。通称学生コン。
小学4年生から高校生の大きなコンクールで1位を取ること。
別にプロになりたい、ってわけじゃないけど
少しでも多くの人に私の演奏を聞いて笑顔になってほしい。
『私の幸せな時間を、沢山の人におすそ分けしたいんだっ!』
言いながら身体ごと幸村くんの方を向いた。
・・・・あれ?固まってる・・・?
『・・・あっ、ごめん、話に夢中になっちゃって・・・!』
慌てて座り直して俯く。恥ずかしい・・・。
「あ、いや・・・。」
『そ、そろそろ帰ろうかな』
ちょっと不自然だけど、ベンチから立ち上がった。
「いいと思う。」
『ん?』
「俺も目標があるんだ。全国大会で三連覇するって。」
幸村くんのさっきまでのやわらかな雰囲気はどこへやら
いつの間に真剣な表情になっていた。
恰好いい。素直に感じた。
一瞬、まばたきすら忘れて幸村くんを見つめていると
再び柔らかな笑顔に戻って言った。
「お互い目標に向かって頑張ろう」
『・・・うん!』
穏やかに吹いた風が、花壇のシロツメクサを揺らした。
シロツメクサの花言葉「約束」