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一刻も早く。
テセアラベースから脱出したロイドたちは、そうして休むまもなく、すぐにコレットを救出しに向かった。
テセアラベースに乗り込んで役半日。
飛竜の巣からコレットを助け出した一行に、ようやくの身体を休める時間が訪れる。
とりあえずとサイバックの宿を取った一行は、コレット救出の際に衰弱したプレセアをベッドへ寝かせて、各々の休む時間を取る事にした。
ベッドへ腰掛け、自分の所為だからとプレセアの脇でずっと座り続けるコレットを、ボーっとしたようにシュアは見つめ続けていた。
『思い出せばいい。体調を崩すのは、自分を理解していないからだ』
『この子は、マナの子だもの』
レネゲードのテセアラベースでの事を、落ち着いた今、ようやくきちんと考えることが出来る。
ユアンから送られてきたマナと、それからすぐに湧き上がるような情景。
あれが記憶だったとしたら?
自分と、自分を抱く母親と、父親。
つまり女の人の声だった、彼女が言った“この子”が、自分だったとしたら…。
マナの子。
…自分が?
身体中にマナが溢れていて、それは人間で言う水のように重要なもので。
次の記憶は、少し大きくなってからだろうか。
魔術を使って、今の自分と同じように眩暈を起こしていたその子供。
自分と同じ症状。やはり、それが自分だったとするなら。
ユアンは、その記憶を引き出してくれたんだ。
どうしてか、自分が記憶を失っているのを知っていて。
そして、記憶を失う前の自分を知っていて。
「マナ…の、子」
それは無意識に呟いていた。
自分がそうであろう事はもう確実。
そして人間でないことも。ハーフエルフ以上に異端である事も。
そこまで考えて、シュアは軽く目の前が暗くなったのを感じた。
眩暈なんかじゃない。ふと、自分で自分が無性に怖くなっただけだ。
未だ祈り続けるコレットにちらりと視線を送ってから、シュアは何を考えることもなく静かにその部屋を出た。
もう、辺りは暗い。
いかにサイバックでも、夜はそれなりに冷え込むようだ。
室内用に衣服を何枚か脱いでいたシュアには、そこはやはり少し寒いぐらいの気候だった。
月を見上げ、意味もなく辺りを見回す。
広場に面したここから見える風景の中には、すでにほとんど人もなく、ポツポツと帰路につく人が2人。
そして視界の端にもう1人発見して、シュアは半分条件反射にそちらへと視線を送った。
暗くてよくは見えない。
色の判別もほとんどつかない。
けれど、あの見慣れた紅い、長い…
「ゼロス?」
気が付けば、シュアは近寄ってそう、その人の名前を以って呼び掛けていた。
バッと、反応の良すぎるほどに振り向いたその人は、一度もとの方向に首を戻して、すぐにまた振り返ったこちらへと足早に近寄ってくる。
「…よーぉ、シュアちゃん」
「…何、やってるの?こんなところで」
「そっちこそ。俺様は、ちょーっと外の空気吸ってただけ」
「…私も、かな。今、出てきたばかり」
宿の壁に背を預けるシュアの隣に、ゼロスは立ったままで肩を並べる。
そして、沈黙の支配する空間。
お互いに話したいことがあって、けれど簡単に話すことが出来るものでもない。
何度も口を開いては空気を呑んで、5回目のそれをしようとした頃、ようやくシュアは耐え切れずに言葉を発した。
「…あのさ」
「んー?」
「…ゼロスとは、よく話すよね。あ、今は、ちょっと、あれだけど…」
「そーか?…あぁー…そーか」
「うん。なんでかな…」
二人して見上げる月は、あと少しで満月になりそうなほど、満ちている。
そしてその光を、いつもは重ね着している衣服のせいで見えないシュアの指輪が、独占したように受けて輝いていた。
「…“一番に信用したから”、じゃ、ねーの?」
「…あ、そっか。そうだね…そうかも」
「……」
ちらりとシュアを一瞥しただけで、ゼロスは何も言葉を返さない。
それに少しだけ困ったように視線を泳がせるシュアの横で、その胸に光る指輪を目にしたゼロスは、それでも思い立ったように話題を振る。
「そーいや、なんか思い出せたか?」
「え?あ…う、うん」
そして突然の言葉に少しだけ戸惑ったシュアは、思い出すように少しだけ頭の中を探った。
時々、シュアの頭に鋭い痛みと共によみがえる様な、暖かい声の主。
その人の言っていた、『葉型の模様』。
心当たりがある。自分の脇腹にある、やはり葉っぱの形をした痣。
もしもあれがそうだとしたなら、相手の人物は、自分と同じ痣を持っているということになるんだろう。
そして、ユアンの引き出してくれた記憶。
自分がマナの子であるという、事実。
分かったことはこれ位だ。
そして自分が今問われているのが、まさにこのこと。
「…私、なんかよく分からないんだけどね?マナの…」
一度言葉を切ったシュアに、ゼロスは不思議そうに視線を向ける。
「…マナの…力、かな。…時々ね!声が浮かんでくるの。きっとそれが…ルビって人なんだと、思う」
「…じゃ、じき思い出せそーだな」
「うん、そうだと…いいんだけど」
苦笑を零したまま、話題を強引に捻じ曲げたシュアは、そしてそのまま地面に視線を貼り付けてしまった。
言えなかった、自分の正体。
マナの子だなんて、言われても想像がつかないだろう。
それに、もし理解が出来てしまったら、その時どんな反応をするかを今度は自分が想像出来ない。
信じてるだなんだって言ったって、自分が信じられるのは…結局、そこまでなんだろうか。
「っ…私、寒いし、そろそろ戻るね」
逃げるようにして、シュアはゼロスを振り返らずに足早にその場を去った。
悟られるのも、怖かったから。
貴方を信じきれていませんなんて、絶対に感づかれたくないと思ったから。
なんだ。ゼロスが言ってた人間の自分勝手さって、こういうことか。
宿のドアを乱暴に閉めて、シュアはそのまま部屋へと戻っていった。
残されたゼロスが、そのドアをただ不思議そうに見つめる。
「…報告、途中だったんだけど…ま、いーか」
ぼそりと呟いて頭を掻くと、さっきまでシュアのしていたように、ゼロスはその背中を冷たい宿の壁へと預けた。
頭を預けると自ずと目に入る月。シュアに見つかって、その横に並ぶまでは気付きもしなかった。
今夜の月が、こんな中途半端な形をしていること。
まるで悪夢から目覚めたようだった。
シュアの声が聞こえて、慌てて帰させた組織の使いが姿を消した時。
そしてまた、信じてるという戯言の様な言葉がぐるぐるとゼロスの中を巡る。
「信じてる、か…」
じき思い出せそーだな。
思い出した時、シュアがシュアのままでいるのならと思う自分は、いったい何を望んでいるんだろう。
悪夢を自ら掴んだはずの自分の手を、ゼロスはしばらくの間、そうして穴が開くほどに見つめ続けているだけだった。
「大体なんでこんなこと…ゼロス、大丈夫?」
「あぁ、へーきだってば。シュアちゃんてばよっぽど俺様のこと心配なのね」
「…っていうかまさかゼロスが風邪ひくなんて、って思って。変なものでも食べた?」
「…俺様はこれから食べるものの方が心配」
地の神殿。精霊たちを目覚めさせるべく訪れたロイドたちを待っていたのは、むき出しの岩、切り立った崖、今にも落ちそうなつり橋に、謎の小人。
先に進みたければカレーを作れとうるさいその小人にリクエストされ、精霊に会うためならば仕方がないとロイドたちは焚火を囲んで一段落していた。
コレットに手伝ってもらいながら、初めて料理当番の回ってきたシュアがカレーを作りにかかっている。その横で、サイバックを離れた時からくしゃみを何度もして調子の悪そうにしているゼロスが岩に寄りかかる。
心配されたにもかかわらずそうして口を滑らせたゼロスは、明らかに野菜を切る力にどんどん力の加わるシュアから、一歩、後ずさった。
「…ゼロス、余計なこと言うと余計食べられないものになるだろ」
「ロイド?」
「あ、あぁ俺ちょっと周り見てくるな!」
「…もう」
白々しくロイドの去っていく背中を見やってから、だいぶ落ち着いたリズムで野菜を切るようになって、ふと思う。
調子もいいけれど、ロイドはいつでも本当にいい空気を作ってくれる。
始めて会った時も、その後も。突然加わった自分にも戸惑うことなく接してくれた。
そして、ぐるりと視線を巡らせてみて思う。
だからこそ周りもこんなに心地いい雰囲気でいられるということ。
そしてやはり自分の傍には、いつでもゼロスがいるなということ。
しいなだってもちろんよく一緒にいることが多い。けれど、気がつけばそこにゼロスがいるかどうかを確かめなくても、自分はゼロスに話しかけている気がする。
どうしてかなんて、理由なんて分からないけれど。
「…んな見つめられちゃうと、俺様照れちゃうなー」
声を掛けられてハッと気づけば、いつのまにかゼロスを見つめたまま考え込んでいた自分の至近距離まで、顔を寄せたゼロスが自分を見つめている。
思わず後ずさったシュアは、余程驚いたのかそのまま後ずさって、
「ぅ、わああぁぁぁ!?」
大きな悲鳴をあげながら、手に持った包丁を勢いよく…投げた。
それは綺麗な一直線を描いて、ゼロスの髪を掠りながら近くの岩に突き刺さる。
瞬間、はらりとゼロスの髪が数本、ごつごつとした地べたに舞い落ちた。
「ど、どうしたのさ、突然」
「あ、えっと…」
「シュア、包丁は投げたら危ないよ」
突然大きな声を上げたシュアに仲間たちの視線が集まる。
そして真剣に言い聞かせてくるコレットに頷きながら、シュアは立ち上がって包丁を取りに行く。
そんなシュアのすれ違う横で、また何かしたのかとしいなに問いかけられても、ゼロスはしばらく青ざめたまま反応を返すことはなかった。
Next.
テセアラベースから脱出したロイドたちは、そうして休むまもなく、すぐにコレットを救出しに向かった。
テセアラベースに乗り込んで役半日。
飛竜の巣からコレットを助け出した一行に、ようやくの身体を休める時間が訪れる。
とりあえずとサイバックの宿を取った一行は、コレット救出の際に衰弱したプレセアをベッドへ寝かせて、各々の休む時間を取る事にした。
ベッドへ腰掛け、自分の所為だからとプレセアの脇でずっと座り続けるコレットを、ボーっとしたようにシュアは見つめ続けていた。
『思い出せばいい。体調を崩すのは、自分を理解していないからだ』
『この子は、マナの子だもの』
レネゲードのテセアラベースでの事を、落ち着いた今、ようやくきちんと考えることが出来る。
ユアンから送られてきたマナと、それからすぐに湧き上がるような情景。
あれが記憶だったとしたら?
自分と、自分を抱く母親と、父親。
つまり女の人の声だった、彼女が言った“この子”が、自分だったとしたら…。
マナの子。
…自分が?
身体中にマナが溢れていて、それは人間で言う水のように重要なもので。
次の記憶は、少し大きくなってからだろうか。
魔術を使って、今の自分と同じように眩暈を起こしていたその子供。
自分と同じ症状。やはり、それが自分だったとするなら。
ユアンは、その記憶を引き出してくれたんだ。
どうしてか、自分が記憶を失っているのを知っていて。
そして、記憶を失う前の自分を知っていて。
「マナ…の、子」
それは無意識に呟いていた。
自分がそうであろう事はもう確実。
そして人間でないことも。ハーフエルフ以上に異端である事も。
そこまで考えて、シュアは軽く目の前が暗くなったのを感じた。
眩暈なんかじゃない。ふと、自分で自分が無性に怖くなっただけだ。
未だ祈り続けるコレットにちらりと視線を送ってから、シュアは何を考えることもなく静かにその部屋を出た。
もう、辺りは暗い。
いかにサイバックでも、夜はそれなりに冷え込むようだ。
室内用に衣服を何枚か脱いでいたシュアには、そこはやはり少し寒いぐらいの気候だった。
月を見上げ、意味もなく辺りを見回す。
広場に面したここから見える風景の中には、すでにほとんど人もなく、ポツポツと帰路につく人が2人。
そして視界の端にもう1人発見して、シュアは半分条件反射にそちらへと視線を送った。
暗くてよくは見えない。
色の判別もほとんどつかない。
けれど、あの見慣れた紅い、長い…
「ゼロス?」
気が付けば、シュアは近寄ってそう、その人の名前を以って呼び掛けていた。
バッと、反応の良すぎるほどに振り向いたその人は、一度もとの方向に首を戻して、すぐにまた振り返ったこちらへと足早に近寄ってくる。
「…よーぉ、シュアちゃん」
「…何、やってるの?こんなところで」
「そっちこそ。俺様は、ちょーっと外の空気吸ってただけ」
「…私も、かな。今、出てきたばかり」
宿の壁に背を預けるシュアの隣に、ゼロスは立ったままで肩を並べる。
そして、沈黙の支配する空間。
お互いに話したいことがあって、けれど簡単に話すことが出来るものでもない。
何度も口を開いては空気を呑んで、5回目のそれをしようとした頃、ようやくシュアは耐え切れずに言葉を発した。
「…あのさ」
「んー?」
「…ゼロスとは、よく話すよね。あ、今は、ちょっと、あれだけど…」
「そーか?…あぁー…そーか」
「うん。なんでかな…」
二人して見上げる月は、あと少しで満月になりそうなほど、満ちている。
そしてその光を、いつもは重ね着している衣服のせいで見えないシュアの指輪が、独占したように受けて輝いていた。
「…“一番に信用したから”、じゃ、ねーの?」
「…あ、そっか。そうだね…そうかも」
「……」
ちらりとシュアを一瞥しただけで、ゼロスは何も言葉を返さない。
それに少しだけ困ったように視線を泳がせるシュアの横で、その胸に光る指輪を目にしたゼロスは、それでも思い立ったように話題を振る。
「そーいや、なんか思い出せたか?」
「え?あ…う、うん」
そして突然の言葉に少しだけ戸惑ったシュアは、思い出すように少しだけ頭の中を探った。
時々、シュアの頭に鋭い痛みと共によみがえる様な、暖かい声の主。
その人の言っていた、『葉型の模様』。
心当たりがある。自分の脇腹にある、やはり葉っぱの形をした痣。
もしもあれがそうだとしたなら、相手の人物は、自分と同じ痣を持っているということになるんだろう。
そして、ユアンの引き出してくれた記憶。
自分がマナの子であるという、事実。
分かったことはこれ位だ。
そして自分が今問われているのが、まさにこのこと。
「…私、なんかよく分からないんだけどね?マナの…」
一度言葉を切ったシュアに、ゼロスは不思議そうに視線を向ける。
「…マナの…力、かな。…時々ね!声が浮かんでくるの。きっとそれが…ルビって人なんだと、思う」
「…じゃ、じき思い出せそーだな」
「うん、そうだと…いいんだけど」
苦笑を零したまま、話題を強引に捻じ曲げたシュアは、そしてそのまま地面に視線を貼り付けてしまった。
言えなかった、自分の正体。
マナの子だなんて、言われても想像がつかないだろう。
それに、もし理解が出来てしまったら、その時どんな反応をするかを今度は自分が想像出来ない。
信じてるだなんだって言ったって、自分が信じられるのは…結局、そこまでなんだろうか。
「っ…私、寒いし、そろそろ戻るね」
逃げるようにして、シュアはゼロスを振り返らずに足早にその場を去った。
悟られるのも、怖かったから。
貴方を信じきれていませんなんて、絶対に感づかれたくないと思ったから。
なんだ。ゼロスが言ってた人間の自分勝手さって、こういうことか。
宿のドアを乱暴に閉めて、シュアはそのまま部屋へと戻っていった。
残されたゼロスが、そのドアをただ不思議そうに見つめる。
「…報告、途中だったんだけど…ま、いーか」
ぼそりと呟いて頭を掻くと、さっきまでシュアのしていたように、ゼロスはその背中を冷たい宿の壁へと預けた。
頭を預けると自ずと目に入る月。シュアに見つかって、その横に並ぶまでは気付きもしなかった。
今夜の月が、こんな中途半端な形をしていること。
まるで悪夢から目覚めたようだった。
シュアの声が聞こえて、慌てて帰させた組織の使いが姿を消した時。
そしてまた、信じてるという戯言の様な言葉がぐるぐるとゼロスの中を巡る。
「信じてる、か…」
じき思い出せそーだな。
思い出した時、シュアがシュアのままでいるのならと思う自分は、いったい何を望んでいるんだろう。
悪夢を自ら掴んだはずの自分の手を、ゼロスはしばらくの間、そうして穴が開くほどに見つめ続けているだけだった。
「大体なんでこんなこと…ゼロス、大丈夫?」
「あぁ、へーきだってば。シュアちゃんてばよっぽど俺様のこと心配なのね」
「…っていうかまさかゼロスが風邪ひくなんて、って思って。変なものでも食べた?」
「…俺様はこれから食べるものの方が心配」
地の神殿。精霊たちを目覚めさせるべく訪れたロイドたちを待っていたのは、むき出しの岩、切り立った崖、今にも落ちそうなつり橋に、謎の小人。
先に進みたければカレーを作れとうるさいその小人にリクエストされ、精霊に会うためならば仕方がないとロイドたちは焚火を囲んで一段落していた。
コレットに手伝ってもらいながら、初めて料理当番の回ってきたシュアがカレーを作りにかかっている。その横で、サイバックを離れた時からくしゃみを何度もして調子の悪そうにしているゼロスが岩に寄りかかる。
心配されたにもかかわらずそうして口を滑らせたゼロスは、明らかに野菜を切る力にどんどん力の加わるシュアから、一歩、後ずさった。
「…ゼロス、余計なこと言うと余計食べられないものになるだろ」
「ロイド?」
「あ、あぁ俺ちょっと周り見てくるな!」
「…もう」
白々しくロイドの去っていく背中を見やってから、だいぶ落ち着いたリズムで野菜を切るようになって、ふと思う。
調子もいいけれど、ロイドはいつでも本当にいい空気を作ってくれる。
始めて会った時も、その後も。突然加わった自分にも戸惑うことなく接してくれた。
そして、ぐるりと視線を巡らせてみて思う。
だからこそ周りもこんなに心地いい雰囲気でいられるということ。
そしてやはり自分の傍には、いつでもゼロスがいるなということ。
しいなだってもちろんよく一緒にいることが多い。けれど、気がつけばそこにゼロスがいるかどうかを確かめなくても、自分はゼロスに話しかけている気がする。
どうしてかなんて、理由なんて分からないけれど。
「…んな見つめられちゃうと、俺様照れちゃうなー」
声を掛けられてハッと気づけば、いつのまにかゼロスを見つめたまま考え込んでいた自分の至近距離まで、顔を寄せたゼロスが自分を見つめている。
思わず後ずさったシュアは、余程驚いたのかそのまま後ずさって、
「ぅ、わああぁぁぁ!?」
大きな悲鳴をあげながら、手に持った包丁を勢いよく…投げた。
それは綺麗な一直線を描いて、ゼロスの髪を掠りながら近くの岩に突き刺さる。
瞬間、はらりとゼロスの髪が数本、ごつごつとした地べたに舞い落ちた。
「ど、どうしたのさ、突然」
「あ、えっと…」
「シュア、包丁は投げたら危ないよ」
突然大きな声を上げたシュアに仲間たちの視線が集まる。
そして真剣に言い聞かせてくるコレットに頷きながら、シュアは立ち上がって包丁を取りに行く。
そんなシュアのすれ違う横で、また何かしたのかとしいなに問いかけられても、ゼロスはしばらく青ざめたまま反応を返すことはなかった。
Next.