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「無理をしたのね」
「そうさ。そう、言ってた…」
「しいなを守りたかったんだ。シュアは」
声が。仲間たちの声が聞こえる。
暗闇の中に、取り戻す意識、そして感覚。
シュアがうっすらと目蓋を上げると、暗闇だった視界に、光と仲間たちの顔が映りこんだ。
「シュア!」
すぐに気付いたしいなに名前を呼ばれて、ハッとして起き上がったシュアを軽い眩暈が襲う。
「大丈夫かい!?」
「うん、ちょっとクラっとしただけだから…平気」
どれだけ休んでいたのだろう。本当に、一瞬だ。
無理をして笑っているわけではないのに、見渡せば、仲間たちは心配そうにこちらを見つめている。
「本当に、平気だから」
「…そう、かい?」
「シュアがそう言うのだから」
「あぁ、かえって気を使わせてしまうだろう」
「…そうだな」
「でも辛いんだったら言ってよね!」
「はい…。無理は、しないでください」
それぞれが、それぞれに掛けてくれる言葉。
しいな、リフィル、リーガル、ロイド、ジーニアス、プレセア。
そうしてありがとう、と微笑み返したところで、シュアはすぐさま物足りなさに気付いて辺りを見回した。
「シュア?」
「…ゼロスは?」
もしかして無事に戻ってこられなかったんだろうか。
いや…だって、戦っているときは自分の前で…
「あぁ…あいつなら」
不安げにしているシュアに小さく笑ってから、しいなはそう言ってシュアの視界を開けた。
今までしいなの居た場所に映る風景。
そうしてようやく気付く、自分たちがエレカーに乗っていること。
そしてその操縦を、今正に視線の先でゼロスがしてくれている事。
「運転、任してるのさ。あいつ、平然としてるあまり運転しろって皆に責められてさ」
「なんだ……そっか」
ぼそっと呟いたシュアに、しいなは拍子の抜かれたような顔をするが、シュアは全く気付いていないようにゼロスの背中を見つめている。
心配してくれなかったわけじゃあ、ないんだろう。
多分…きっと、そうであったらいいというだけのことだけれど。
「…あぁー…そうかい。分かったよ、ちょっと待っといで」
「……え?」
「ロイド」
しいなに呼び掛けられて、なんだよ?と返事をしたロイドが強引に、ゼロスの元へ引っ張られていく。
疑問に思って向けた視線の先で、少しだけしいなと会話をしてから、ロイドと操縦を交代してこちらに歩み寄ってくるゼロス。
そしてその後ろで、しいなが満足そうに微笑んでいるのが見えた。
「ご指名ありがとうございます。俺様ゼロスさまです」
「…別に、呼んでな…」
「またまた、素直じゃねぇなあ。しいなが、俺様に会いたがってるから行ってやれってよ」
「そんなの…ただ、少し気になっただけだよ」
しいな…。
小さくため息を吐いたシュアに、いつものようにゼロスが笑う。
「俺様が心配してくれなかったから、拗ねてんの」
「そ、んなんじゃ…!」
「別に心配しなかったわけじゃねぇよ?ただ、あいつらがあんまりにも心配ーって顔するから。俺様がちょちょいっとキスでもすりゃぁ直るって…」
「え!?」
自分でも、まだだるい身体に驚くほどの機敏さで、シュアはゼロスと距離をとって向き合う。
「言ったら、操縦係にさせられてよー」
「…あ、そう」
「んな目に見えてがっかりすんなよシュアちゃん。なんなら今この場でも…」
「結構です」
あー、元気。すっごい元気。
思いっきり身体を伸ばしながら言うシュアが、もうその言葉どおり元気であることに、ゼロスはこっそりと笑った。
そしてそっと、シュアの眠っていた寝台へと腰を下ろす。
「眠り姫は王子様がキスすりゃ目を覚ますって話、知ってるか?」
「…なにそれ?」
「昔っからあるおとぎ話だよ」
「ふーん…。それ、信じてるの、ゼロス」
「さー、どーでしょ」
隠す意味さえ分からないけれど。
そうやって笑うゼロスは、いつだって自分の中でもっと違うことを隠しているような、そんな気がする。
「…それで、今は、どこに向かってるの?」
「レネゲードの基地だってよ。今度こそ、エレカーを貰いに行くんだと」
「レネゲード?…あぁ」
「旅の初めに話したろ?フウジ山岳に居た、ユアンって奴。あいつらの組織だよ」
ユアン…確か…。
『…どうしてここに居る?』
思い返される言葉。シュアにとって、知り合いかもしれない人物。
レネゲードに所属している人と、自分がどうして…。
ゼロスに小さく頷いて、シュアはふっとエレカーの前方に視線を向ける。
そしてそこから見える景色にはもう、レネゲードの基地のある、フィヨルドのような氷の世界が広がっていた。
「なんか、思ったよりすんなり行けてるよね?」
「…そりゃ、シュアがあれだけ峰打ちを炸裂すれば…」
「そういう意味じゃなくて、ちょっと不自然って事」
パスコードを入力すべく、リフィルが機械と向き合ってくれている、その後ろ。
ジーニアスとそんな会話を交わしていたシュアは、言って警戒するように辺りを見回した。
「…罠、かもしれないわね。これだけの設備があって、侵入者に気付かないわけがないでしょう」
「どっちにしたって行くしかないんだ」
「…そうだね」
リフィルの言葉にも、ロイドは早く開かないかと待ちわびた扉を見つめたままそう言って、シュアは頷く。
後ろでは、自分のせいでコレットがさらわれたのだと未だに自分を責め続けるプレセアに、ゼロスがいつもの調子で故意に話しかけているようだった。
レアバードを今度こそ、手に入れる。
もはや盗難に近いのかもしれないが、そんなことも言っていられない。
そうしてたどり着いた、レネゲードのテセアラベース。
振り返って、いつものように笑っているゼロスを見たシュアは、少しだけ柔らかく頬笑んだ。
コリンを失ったしいなに対しても、倒れて寝込んでいた自分に対しても、皆には冷たいと言われてさえいたけれど。
本当は誰よりも敏感に感じ取って、どんな形にしろ気にしてくれているのは、ゼロスなのかもしれない。
そしてそれに気付かれないようにしてるのも、きっとまたわざとなんだろう。
「開いたぞ!」
言ったロイドが振り返って、仲間たちも彼に続いて目的の格納庫の扉をくぐっていった。
見たこともない機械が並ぶ部屋。
待ち受けていたのは、今度は罠なんてものじゃない、敵本人だ。
いや、敵なのかも実際のところは良く分からないのだけれど。
そうしてロイドたちの向き合うユアンは、まるで待ちわびていたかのように不適に笑って見せた。
ロイドたちを挟んだ反対側には、すでに武器を携えた彼の手下が待ち構えている。
「覚悟するんだな!」
「丁度いい!今度こそ決着をつけてやる!」
怯むまでもない。
武器を取り出してきたユアンに、応えるロイド。
こちらも全員が武器を取り出して、2人の敵へと散り散りになる。
ユアンに向かうロイド、リーガル。手下の方に向かうゼロス、プレセア、しいな。
そこから少し離れたところで、リフィルとジーニアス、そしてシュアが詠唱を開始する。
「スプレッド!」
手下を襲う、いくつもの水の柱。
うまくかわされるものの、その逃げ道に待ち構えていたゼロスの攻撃が敵を襲う。
そして、ロイドが上手く間合いを詰められないでいるユアンの方にも、今度はシュアの魔術がその足元から湧き上がった。
「イラプション!」
湧き上がってくる炎。僅かにダメージを与えることは出来たものの、ロイドの攻撃を1つ当てるほどの隙しか作ることが出来ない。
ロイドの経験でも、天使であるユグドラシルは相当強いし、クラトスもまた同じだ。
そして同じく天使のユアンもまた、同じくらいに強いという事を、こうして剣を交えた今、嫌というほど思い知らされていた。
「っ……」
そして、少し離れたところで僅かにシュアを襲う眩暈。
無理をして足を引っ張らないよう中級魔術を使ったつもりだが、まだ雷の神殿の一件から完全に回復していなかったのだろう。
一度剣を支えによく息を吐いてから、それをきちんと構えてユアンの方へと向かっていく。
そしてユアンは、そんなシュアの様子を戦いながらも見逃してはいなかった。
シュアが近付くやいなや、掛かってきていたロイドとリーガルを遠くへと弾き飛ばす。
「ロイド!リーガルさん!」
「人の心配をしている場合か?」
叫んだシュアの背後から聞こえる声。
ハッとした振り向きざまに剣を向けると、間一髪、ユアンの武器とぶつかった金属音が響いた。
「くっ…」
「自分が分かっていない、というところか。お前の実力はそんなものではない」
「…え…?」
「思い出せばいい。体調を崩すのは、自分を理解していないからだ」
ギリギリと武器をぶつけ合って引かなかった2人が、ユアンがシュアを突き放す事で僅かの距離をとる。
そしてかざされたユアンの手。
やられる…!
シュアがそう思った瞬間には、痛みの代わりにドクン、と不思議な感覚が自分の中を巡った。
ヴォルトの時と同じ。しかし、ガツンと殴るように強引ではなくて、
優しく流れてくるような、暖かい…マナ。
ヴォルトの時は、その意思…言葉だった。
けれど、今度は違う。これは…
「あ、なたは…」
「……」
止まらない。未だに、どんどん流れてくるマナ。
そして沸いてくるような、情景。
『なんだ…?この子の…このマナは』
『…この子は、マナの子』
『マナ…?』
『そう。マナの力で授かった子。だからほら、体中にマナが溢れてる…。きっとこの子に必要なのは、水より何より、マナなのね』
『っ…』
『自分のマナを使うのは楽だろうな。だが使いすぎて空っぽになれば、命の保証はないぞ?』
『じゃぁ…』
『周りのマナを使え。お前なら上手く使えるだろう。それも、普通より少なく、普通より濃厚に…』
「今だ…!」
ロイドの言葉が聞こえた瞬間、シュアはハッとした。
ユアンからのマナも途切れて、慌てて防御を構えたユアンにも、ロイドが今までで一番の深手を負わせる。
駄目…!この人は、悪い人じゃ…
そうシュアが庇おうとした時には、駆けつけた手下は膝を折ったユアンを守るように立ちはだかる。
彼でさえ、もう今にも倒れそうなほどにボロボロだというのに。
「…馬鹿な、この私が負けるなど…」
…そうじゃない。人にマナを送っていれば、周りが疎かになる事くらい分かっていたはず。
この人は、分かってて、やったんだ。
「シュア、大丈夫かい!?」
ユアンが負けを認め、今だそうしてユアンを見つめるシュアを、しいながユアンから引き離そうとした、その時。
グラ…ッ!
地の底から響くような轟音が訪れて、身体が大きく揺さぶられる。
「何だ、この揺れは!?」
「ロイド!これぞ神の好機!今のうちにレアバードを奪おう!」
「あ、あぁ…」
そしてそれが地震だと分かった頃には、リーガルのその提案に乗っ取って、仲間たちは次々とレアバードに乗り込んでいった。
それでも、動けないシュア。
流れ込んできた暖かいマナは、まだその身体を血のように巡っている。
「シュア!」
「!あ、うん…」
しいなに呼ばれたシュアが振り返ると、そこにはもう仲間はしいなしか居ない。
急いでレアバードへと駆け寄ったシュアは、しいなを先に行かせると、最後にユアンの方を振り返ってからレアバードへと乗り込んだ。
片膝を付いたまま自分を見上げるユアンのその目が、まるで彼自身のマナのようであることに、シュアは益々動揺せざるを得なかった。
Next.
「そうさ。そう、言ってた…」
「しいなを守りたかったんだ。シュアは」
声が。仲間たちの声が聞こえる。
暗闇の中に、取り戻す意識、そして感覚。
シュアがうっすらと目蓋を上げると、暗闇だった視界に、光と仲間たちの顔が映りこんだ。
「シュア!」
すぐに気付いたしいなに名前を呼ばれて、ハッとして起き上がったシュアを軽い眩暈が襲う。
「大丈夫かい!?」
「うん、ちょっとクラっとしただけだから…平気」
どれだけ休んでいたのだろう。本当に、一瞬だ。
無理をして笑っているわけではないのに、見渡せば、仲間たちは心配そうにこちらを見つめている。
「本当に、平気だから」
「…そう、かい?」
「シュアがそう言うのだから」
「あぁ、かえって気を使わせてしまうだろう」
「…そうだな」
「でも辛いんだったら言ってよね!」
「はい…。無理は、しないでください」
それぞれが、それぞれに掛けてくれる言葉。
しいな、リフィル、リーガル、ロイド、ジーニアス、プレセア。
そうしてありがとう、と微笑み返したところで、シュアはすぐさま物足りなさに気付いて辺りを見回した。
「シュア?」
「…ゼロスは?」
もしかして無事に戻ってこられなかったんだろうか。
いや…だって、戦っているときは自分の前で…
「あぁ…あいつなら」
不安げにしているシュアに小さく笑ってから、しいなはそう言ってシュアの視界を開けた。
今までしいなの居た場所に映る風景。
そうしてようやく気付く、自分たちがエレカーに乗っていること。
そしてその操縦を、今正に視線の先でゼロスがしてくれている事。
「運転、任してるのさ。あいつ、平然としてるあまり運転しろって皆に責められてさ」
「なんだ……そっか」
ぼそっと呟いたシュアに、しいなは拍子の抜かれたような顔をするが、シュアは全く気付いていないようにゼロスの背中を見つめている。
心配してくれなかったわけじゃあ、ないんだろう。
多分…きっと、そうであったらいいというだけのことだけれど。
「…あぁー…そうかい。分かったよ、ちょっと待っといで」
「……え?」
「ロイド」
しいなに呼び掛けられて、なんだよ?と返事をしたロイドが強引に、ゼロスの元へ引っ張られていく。
疑問に思って向けた視線の先で、少しだけしいなと会話をしてから、ロイドと操縦を交代してこちらに歩み寄ってくるゼロス。
そしてその後ろで、しいなが満足そうに微笑んでいるのが見えた。
「ご指名ありがとうございます。俺様ゼロスさまです」
「…別に、呼んでな…」
「またまた、素直じゃねぇなあ。しいなが、俺様に会いたがってるから行ってやれってよ」
「そんなの…ただ、少し気になっただけだよ」
しいな…。
小さくため息を吐いたシュアに、いつものようにゼロスが笑う。
「俺様が心配してくれなかったから、拗ねてんの」
「そ、んなんじゃ…!」
「別に心配しなかったわけじゃねぇよ?ただ、あいつらがあんまりにも心配ーって顔するから。俺様がちょちょいっとキスでもすりゃぁ直るって…」
「え!?」
自分でも、まだだるい身体に驚くほどの機敏さで、シュアはゼロスと距離をとって向き合う。
「言ったら、操縦係にさせられてよー」
「…あ、そう」
「んな目に見えてがっかりすんなよシュアちゃん。なんなら今この場でも…」
「結構です」
あー、元気。すっごい元気。
思いっきり身体を伸ばしながら言うシュアが、もうその言葉どおり元気であることに、ゼロスはこっそりと笑った。
そしてそっと、シュアの眠っていた寝台へと腰を下ろす。
「眠り姫は王子様がキスすりゃ目を覚ますって話、知ってるか?」
「…なにそれ?」
「昔っからあるおとぎ話だよ」
「ふーん…。それ、信じてるの、ゼロス」
「さー、どーでしょ」
隠す意味さえ分からないけれど。
そうやって笑うゼロスは、いつだって自分の中でもっと違うことを隠しているような、そんな気がする。
「…それで、今は、どこに向かってるの?」
「レネゲードの基地だってよ。今度こそ、エレカーを貰いに行くんだと」
「レネゲード?…あぁ」
「旅の初めに話したろ?フウジ山岳に居た、ユアンって奴。あいつらの組織だよ」
ユアン…確か…。
『…どうしてここに居る?』
思い返される言葉。シュアにとって、知り合いかもしれない人物。
レネゲードに所属している人と、自分がどうして…。
ゼロスに小さく頷いて、シュアはふっとエレカーの前方に視線を向ける。
そしてそこから見える景色にはもう、レネゲードの基地のある、フィヨルドのような氷の世界が広がっていた。
「なんか、思ったよりすんなり行けてるよね?」
「…そりゃ、シュアがあれだけ峰打ちを炸裂すれば…」
「そういう意味じゃなくて、ちょっと不自然って事」
パスコードを入力すべく、リフィルが機械と向き合ってくれている、その後ろ。
ジーニアスとそんな会話を交わしていたシュアは、言って警戒するように辺りを見回した。
「…罠、かもしれないわね。これだけの設備があって、侵入者に気付かないわけがないでしょう」
「どっちにしたって行くしかないんだ」
「…そうだね」
リフィルの言葉にも、ロイドは早く開かないかと待ちわびた扉を見つめたままそう言って、シュアは頷く。
後ろでは、自分のせいでコレットがさらわれたのだと未だに自分を責め続けるプレセアに、ゼロスがいつもの調子で故意に話しかけているようだった。
レアバードを今度こそ、手に入れる。
もはや盗難に近いのかもしれないが、そんなことも言っていられない。
そうしてたどり着いた、レネゲードのテセアラベース。
振り返って、いつものように笑っているゼロスを見たシュアは、少しだけ柔らかく頬笑んだ。
コリンを失ったしいなに対しても、倒れて寝込んでいた自分に対しても、皆には冷たいと言われてさえいたけれど。
本当は誰よりも敏感に感じ取って、どんな形にしろ気にしてくれているのは、ゼロスなのかもしれない。
そしてそれに気付かれないようにしてるのも、きっとまたわざとなんだろう。
「開いたぞ!」
言ったロイドが振り返って、仲間たちも彼に続いて目的の格納庫の扉をくぐっていった。
見たこともない機械が並ぶ部屋。
待ち受けていたのは、今度は罠なんてものじゃない、敵本人だ。
いや、敵なのかも実際のところは良く分からないのだけれど。
そうしてロイドたちの向き合うユアンは、まるで待ちわびていたかのように不適に笑って見せた。
ロイドたちを挟んだ反対側には、すでに武器を携えた彼の手下が待ち構えている。
「覚悟するんだな!」
「丁度いい!今度こそ決着をつけてやる!」
怯むまでもない。
武器を取り出してきたユアンに、応えるロイド。
こちらも全員が武器を取り出して、2人の敵へと散り散りになる。
ユアンに向かうロイド、リーガル。手下の方に向かうゼロス、プレセア、しいな。
そこから少し離れたところで、リフィルとジーニアス、そしてシュアが詠唱を開始する。
「スプレッド!」
手下を襲う、いくつもの水の柱。
うまくかわされるものの、その逃げ道に待ち構えていたゼロスの攻撃が敵を襲う。
そして、ロイドが上手く間合いを詰められないでいるユアンの方にも、今度はシュアの魔術がその足元から湧き上がった。
「イラプション!」
湧き上がってくる炎。僅かにダメージを与えることは出来たものの、ロイドの攻撃を1つ当てるほどの隙しか作ることが出来ない。
ロイドの経験でも、天使であるユグドラシルは相当強いし、クラトスもまた同じだ。
そして同じく天使のユアンもまた、同じくらいに強いという事を、こうして剣を交えた今、嫌というほど思い知らされていた。
「っ……」
そして、少し離れたところで僅かにシュアを襲う眩暈。
無理をして足を引っ張らないよう中級魔術を使ったつもりだが、まだ雷の神殿の一件から完全に回復していなかったのだろう。
一度剣を支えによく息を吐いてから、それをきちんと構えてユアンの方へと向かっていく。
そしてユアンは、そんなシュアの様子を戦いながらも見逃してはいなかった。
シュアが近付くやいなや、掛かってきていたロイドとリーガルを遠くへと弾き飛ばす。
「ロイド!リーガルさん!」
「人の心配をしている場合か?」
叫んだシュアの背後から聞こえる声。
ハッとした振り向きざまに剣を向けると、間一髪、ユアンの武器とぶつかった金属音が響いた。
「くっ…」
「自分が分かっていない、というところか。お前の実力はそんなものではない」
「…え…?」
「思い出せばいい。体調を崩すのは、自分を理解していないからだ」
ギリギリと武器をぶつけ合って引かなかった2人が、ユアンがシュアを突き放す事で僅かの距離をとる。
そしてかざされたユアンの手。
やられる…!
シュアがそう思った瞬間には、痛みの代わりにドクン、と不思議な感覚が自分の中を巡った。
ヴォルトの時と同じ。しかし、ガツンと殴るように強引ではなくて、
優しく流れてくるような、暖かい…マナ。
ヴォルトの時は、その意思…言葉だった。
けれど、今度は違う。これは…
「あ、なたは…」
「……」
止まらない。未だに、どんどん流れてくるマナ。
そして沸いてくるような、情景。
『なんだ…?この子の…このマナは』
『…この子は、マナの子』
『マナ…?』
『そう。マナの力で授かった子。だからほら、体中にマナが溢れてる…。きっとこの子に必要なのは、水より何より、マナなのね』
『っ…』
『自分のマナを使うのは楽だろうな。だが使いすぎて空っぽになれば、命の保証はないぞ?』
『じゃぁ…』
『周りのマナを使え。お前なら上手く使えるだろう。それも、普通より少なく、普通より濃厚に…』
「今だ…!」
ロイドの言葉が聞こえた瞬間、シュアはハッとした。
ユアンからのマナも途切れて、慌てて防御を構えたユアンにも、ロイドが今までで一番の深手を負わせる。
駄目…!この人は、悪い人じゃ…
そうシュアが庇おうとした時には、駆けつけた手下は膝を折ったユアンを守るように立ちはだかる。
彼でさえ、もう今にも倒れそうなほどにボロボロだというのに。
「…馬鹿な、この私が負けるなど…」
…そうじゃない。人にマナを送っていれば、周りが疎かになる事くらい分かっていたはず。
この人は、分かってて、やったんだ。
「シュア、大丈夫かい!?」
ユアンが負けを認め、今だそうしてユアンを見つめるシュアを、しいながユアンから引き離そうとした、その時。
グラ…ッ!
地の底から響くような轟音が訪れて、身体が大きく揺さぶられる。
「何だ、この揺れは!?」
「ロイド!これぞ神の好機!今のうちにレアバードを奪おう!」
「あ、あぁ…」
そしてそれが地震だと分かった頃には、リーガルのその提案に乗っ取って、仲間たちは次々とレアバードに乗り込んでいった。
それでも、動けないシュア。
流れ込んできた暖かいマナは、まだその身体を血のように巡っている。
「シュア!」
「!あ、うん…」
しいなに呼ばれたシュアが振り返ると、そこにはもう仲間はしいなしか居ない。
急いでレアバードへと駆け寄ったシュアは、しいなを先に行かせると、最後にユアンの方を振り返ってからレアバードへと乗り込んだ。
片膝を付いたまま自分を見上げるユアンのその目が、まるで彼自身のマナのようであることに、シュアは益々動揺せざるを得なかった。
Next.