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2人を見放せないのは、2人が仲間だから?
「シュア!」
「シュア!?あなた…まさか」
強引に表に引っ張り出されて‐最も、それもシュアの考えの内なのだが‐、すぐに再会したリフィルとジーニアスのその反応に、シュアはあぁ、当然だな、と苦笑した。
「どうだろう…分からないけど、ファイアーボール、お見舞いしたらさ」
「え!?」
大して気に留めても居ないように笑うシュア。
けれどそんなシュアが、一体何のためにそんな事をしたのか。
なんとなくでも悟ったリフィルは、少しだけ困ったように、俯いてこっそりと微笑んでみせた。
ロイド達に再会できるかは分からない。
けれど、向こうは向こうできっとゼロスが何とかしてくれるだろう。
今は、2人を助ける事の出来るタイミングを探さなければ。
失うものの何もないシュアに、迷いは無かった。
そして無性にゼロスに信頼を寄せている自分に、疑問を抱く事も。
行きが散々なら帰りも散々だ。
長い長いグランテセアラブリッジを、今度は反対方向に向かって渡っていく。
そうしてフウジ大陸側にようやく降り立つと、すぐにメルトキオに向かう事も無く兵士たちは一度歩みを止めた。
時間が稼げるのならその方がいい。
3人も、自ずとそれに従った。
「ここで一度応援を待つぞ」
兵士の1人が言って、残りの3人がそれに従う。
応援が呼ばれれば、今より監視もキツくなる。
メルトキオに着いてしまったら最後、もうゲームオーバーだと考えていいだろう。
やるなら今しかない。
そうシュアが密かに決意しているのを、表情から読み取ったリフィルは同じくこっそりと息を呑む。
「とりあえず、跳ね橋を上げるぞ」
1人がそう言って、別の1人が実行すべく、この集団を離れて行った。
この場に兵士は3人。
脅えたふりをしてリフィルとジーニアスに近寄るシュアは、背中を兵士から見られないように、縛られたままの手で自分のウエストにこっそりと手を伸ばす。
そして忍ばせてあった折りたたみナイフを、まっすぐに伸ばす事もせず、くの字のままでギチギチと自分の手首の縄を切っていった。
「姉さん…僕ら、どうなっちゃうの?」
「…このまま連行されれば、死刑…でしょうね」
「そんな…!」
「このまま連行されれば…」
機械を設定し終えたのか、離れていた兵士が戻ってくる。
と、同時にナイフによって開放されるシュアの腕。
「私が動いたら…リフィルさん。動ける限りでいい、ジーニアスと離れて」
「…分かったわ」
こそこそと、耳打ち程度の声で話すシュアとリフィル。
何か話し合っているのか、自分達に完全に背を向けている兵士たちは当然何も気付かない。
シュアはそっと、衣擦れの音さえ聞こえないよう、腰の剣に手を伸ばした。
「ぐぁっ!?」
突如、同僚が苦痛の声を上げて倒れゆく様を、他の兵士たちは呆然と見つめていた。
ドサッと地に伏すと同時に、もう動かない兵士の脇から自身の剣を抜くシュアの姿が、ようやく見えるようになるまで。
「き、貴様ぁっ…!」
「武器も取り上げないで、文句なんか言えないでしょう」
シュアがそう1人で対峙している間、言われたとおりにその場からゆっくりと離れていくリフィルたち。
そこまでの行く手を阻むように、シュアは2人の前に立って、汗の滲む手でその剣を握り直す。
「…面白い。貴様1人で戦う気か?」
「……」
確かに分が悪い。
けれど引く訳にもいかない。
あぁ、ゼロスに助けられた…あの時みたいだ。
眩暈こそしないけれど、この距離じゃ詠唱も出来なくて。
自分にはもうほとんど、分なんか無いに等しくて。
明らかに危険な状況なのに、それも痛いほど伝わっているのに、
シュアの表情には微かに笑顔が浮かんでいた。
それを見た兵士たちが、思わず怯んでいるのか、攻撃に踏み出せずに居る状態の中。
ほぼ上がり切った橋の方から、それは懐かしいような、声。
「なーにやっちゃってんの」
あぁ、そうだ。こうして彼はいつだって自分の事を助けてくれるんだろう。
理由も根拠も無い。それは予感であり、確信。
期待に満ちた表情でシュアが顔を上げると、そこにはなんら裏切ることなく、自分の始めての記憶と同じ光景がそこにあった。
紅い彼は、腰から抜いた両刃剣を手に、不思議にも共に空から降り立ったロイドたちと敵に対峙していく。
ボーっとしている暇はない。
剣を握り直したシュアは、彼らを援護するべく自分もその戦闘へとすぐさま参加していった。
ロイドもゼロスもシュアも、負ける気など、もはや微塵も感じていなかった。
「ぐ…っ」
あまり気持ちいいとはいえない声が、初めにシュアが貫いた兵士の口から零れる。
「なぜ…殺さんっ!」
「人を殺すなんて、誰もしたくないから…でしょ?ロイド」
「あぁ、当たり前だ」
急所は外れていたのだろう。むしろ、倒れている4人の中で一番口がきける状態なのが、彼だったぐらいだ。
シュアの問いに強く頷くロイド。ゼロスも頷く事は無いが、ロイドの問いを予想していたかのように笑っている。
「ゼロス、ありがとう。約束、守ってくれて」
剣を抜いた際に取り落とした自分のナイフを拾ったシュアは、リフィルたちの縄を解きながら、ゼロスにそう微笑みかけた。
「…どーいたしまして。ったく、酷な事言うっつうか…」
「ま、脱出できたのはゼロスのおかげじゃないけどな」
「そりゃー言いっこ無しだぜ、ロイド君」
思わずロイドが口を挟むが、ゼロスはむしろ開き直っているのか、ロイドの肩に腕を回して自慢げに笑っている。
それを見て思わずシュアも笑みを零していた頃、
ふと、自分の方に駆け寄る影がある事に気付いて、すぐにシュアはジーニアスを開放したその手を止めた。
「シュア!」
「…だ、れ?」
少し変わった服を着た、黒髪の女の子。
自分を知っている人物なのだろうか。
息を弾ませて嬉しそうに微笑みかけてくればくるほど、シュアは彼女に対して申し訳ない気持ちになるばかりだ。
「シュア!あぁ会えて良かったよ!まさかロイドたちと一緒に居るなんて!」
「あの、ごめんなさい…」
「……え?」
「誰…ですか?」
傍にいたジーニアスもリフィルも、シュアのその言葉に思わず目を伏せる。
この中で絶句しているのはその少女だけだ。
はたから見て雰囲気を悟ったのか、ゼロスは2人の傍に歩み寄って、自分に困惑した表情を向けるシュアに声を掛けた。
「シュア。ほら、前に話しただろ?お友達のしいなだ」
「!あ…」
そう、説明をするゼロスを思わず見上げるしいな。
そんなしいなにも、ゼロスはシュアの様子を淡々と話して聞かせた。
「しいな。シュアちゃんは今一切の記憶がないんだと。もちろん俺様のことも覚えてなかったし、自分の事も分からなかった」
「そ、んな…!そんな馬鹿な事…!」
自分が、今目の前の少女を傷つけている。
そうでなければ、もし自分が少しでも彼女の事を覚えているなら、悲しそうにする彼女を、抱きしめてあげる位は出来るのに。
シュアは無意識にもそっとしいなの手を取ると、困ったように、それしか出来ずに、しいなに向かって微笑んでみせた。
「はじめまして、しいな。私は…シュア」
「シュア…!」
「ごめん。でも、こうするしかできなくて…。これからだって、今の私だって、しいなの友達に、なれるかな…」
やはり困ったように言ったシュアに、今度は困った顔で俯いたのは、しいなの方だった。
シュアの記憶の中で、二度目の日暮れ。
8人に増えたロイド達一行は、その高さゆえ、夕日も隠れるフウジ山岳の麓へと辿り着いていた。
目的は、レアバードの回収。
もう指名手配もされているのだろう。こうなればもはや何を遠慮する事もなくシルヴァラントへと行く事が出来る。
それに、どうせ逃げるなら追っ手が来られない場所がいい。
じき、日も完全に落ちて辺りは暗闇に包まれる。
足場や見通しの悪い山道での野宿を避けて、一行は全ての用事を明日に回す事にした。
そして今夜一晩を過ごすこの麓では、野宿の準備が分担しながら着々と進められている。
そんな中、気を使ったのだろうか。リフィルが振り分けた分担の中で、シュアは薪拾いの役割へとついていた。
しいなと共に、たった2人きりで。
「シュア」
「ん?」
不思議と気まずい雰囲気は漂っていなかった。
シュアについては歳こそ分からないが、きっとしいなより年上なのだろう。
なるべく会話を弾ませようと努力しているのが、しいなにも痛いほどに伝わって来ていた。
そんな会話の切れ目に、ふとしいながシュアに呼びかけて、枝を拾ったばかりのシュアは身体を起こしざまにしいなを振り返る。
「…あ、あたしにとって、やっぱりシュアはシュアだよ…。そりゃ、やっぱりちょっと違うけどさ…」
「…しいな」
「あたしの知ってる事でいいなら、なんでも話すよ!だから…だから、思い出しとくれよ!あたし…」
シュアは、何も言わない。
いや、何も言う事ができない。
ただ必死に言葉を紡ぐしいなを、見守るしか出来ない。
「大切なんだ…シュアと過ごした時間。あたしの思い出の中で、一番…」
「しいな…」
「…!あ、いや、違うんだよ!あんたを責めたいわけじゃなくて…急かしたいわけじゃなくて…あたしは…」
どんなに仲が良かったのだろう。
どんなに楽しい時間を過ごしたのだろう。
シュアにとって今の時間、仲間達と旅をしている時間は、空っぽだった自分にも本当に楽しいものだと思っている。
きっとたくさんの思い出があるんだろう、しいなにはもっとずっと。
それにも関わらず、目の前の少女はかつての自分との時間が一番だと言ってくれている。
それはどんな気持ちなんだろう。
思い出したい、まるで好奇心のようにそう思うのは、少し不謹慎だろうか。
「しいな、」
「ごめん…どうにも出来ない事ぐらい、分かってるんだ。ただ…」
「うん。しいな。…私もね、しいなの事思い出したい。だから、少しずつでいいから、知ってる事教えて?」
まだ、旅はきっと長いよ。
拾った薪を足元に置いたシュアは、しいなの近くまで歩み寄ってから、そっとその隣に腰を下ろした。
「もうちょっとしたら、戻ろっか」
そう微笑んで自分を見上げるシュアに、少しだけ戸惑ったしいなは、けれどゆっくり自分もその隣に腰を下ろして、シュアの肩にそっと自分の頭を預けた。
自分の肩がひんやりと湿っていくのを感じたシュアは、この時月明かりの元、まだ2日目の自分にこっそりと小さな決意をしていた。
Next.
「シュア!」
「シュア!?あなた…まさか」
強引に表に引っ張り出されて‐最も、それもシュアの考えの内なのだが‐、すぐに再会したリフィルとジーニアスのその反応に、シュアはあぁ、当然だな、と苦笑した。
「どうだろう…分からないけど、ファイアーボール、お見舞いしたらさ」
「え!?」
大して気に留めても居ないように笑うシュア。
けれどそんなシュアが、一体何のためにそんな事をしたのか。
なんとなくでも悟ったリフィルは、少しだけ困ったように、俯いてこっそりと微笑んでみせた。
ロイド達に再会できるかは分からない。
けれど、向こうは向こうできっとゼロスが何とかしてくれるだろう。
今は、2人を助ける事の出来るタイミングを探さなければ。
失うものの何もないシュアに、迷いは無かった。
そして無性にゼロスに信頼を寄せている自分に、疑問を抱く事も。
行きが散々なら帰りも散々だ。
長い長いグランテセアラブリッジを、今度は反対方向に向かって渡っていく。
そうしてフウジ大陸側にようやく降り立つと、すぐにメルトキオに向かう事も無く兵士たちは一度歩みを止めた。
時間が稼げるのならその方がいい。
3人も、自ずとそれに従った。
「ここで一度応援を待つぞ」
兵士の1人が言って、残りの3人がそれに従う。
応援が呼ばれれば、今より監視もキツくなる。
メルトキオに着いてしまったら最後、もうゲームオーバーだと考えていいだろう。
やるなら今しかない。
そうシュアが密かに決意しているのを、表情から読み取ったリフィルは同じくこっそりと息を呑む。
「とりあえず、跳ね橋を上げるぞ」
1人がそう言って、別の1人が実行すべく、この集団を離れて行った。
この場に兵士は3人。
脅えたふりをしてリフィルとジーニアスに近寄るシュアは、背中を兵士から見られないように、縛られたままの手で自分のウエストにこっそりと手を伸ばす。
そして忍ばせてあった折りたたみナイフを、まっすぐに伸ばす事もせず、くの字のままでギチギチと自分の手首の縄を切っていった。
「姉さん…僕ら、どうなっちゃうの?」
「…このまま連行されれば、死刑…でしょうね」
「そんな…!」
「このまま連行されれば…」
機械を設定し終えたのか、離れていた兵士が戻ってくる。
と、同時にナイフによって開放されるシュアの腕。
「私が動いたら…リフィルさん。動ける限りでいい、ジーニアスと離れて」
「…分かったわ」
こそこそと、耳打ち程度の声で話すシュアとリフィル。
何か話し合っているのか、自分達に完全に背を向けている兵士たちは当然何も気付かない。
シュアはそっと、衣擦れの音さえ聞こえないよう、腰の剣に手を伸ばした。
「ぐぁっ!?」
突如、同僚が苦痛の声を上げて倒れゆく様を、他の兵士たちは呆然と見つめていた。
ドサッと地に伏すと同時に、もう動かない兵士の脇から自身の剣を抜くシュアの姿が、ようやく見えるようになるまで。
「き、貴様ぁっ…!」
「武器も取り上げないで、文句なんか言えないでしょう」
シュアがそう1人で対峙している間、言われたとおりにその場からゆっくりと離れていくリフィルたち。
そこまでの行く手を阻むように、シュアは2人の前に立って、汗の滲む手でその剣を握り直す。
「…面白い。貴様1人で戦う気か?」
「……」
確かに分が悪い。
けれど引く訳にもいかない。
あぁ、ゼロスに助けられた…あの時みたいだ。
眩暈こそしないけれど、この距離じゃ詠唱も出来なくて。
自分にはもうほとんど、分なんか無いに等しくて。
明らかに危険な状況なのに、それも痛いほど伝わっているのに、
シュアの表情には微かに笑顔が浮かんでいた。
それを見た兵士たちが、思わず怯んでいるのか、攻撃に踏み出せずに居る状態の中。
ほぼ上がり切った橋の方から、それは懐かしいような、声。
「なーにやっちゃってんの」
あぁ、そうだ。こうして彼はいつだって自分の事を助けてくれるんだろう。
理由も根拠も無い。それは予感であり、確信。
期待に満ちた表情でシュアが顔を上げると、そこにはなんら裏切ることなく、自分の始めての記憶と同じ光景がそこにあった。
紅い彼は、腰から抜いた両刃剣を手に、不思議にも共に空から降り立ったロイドたちと敵に対峙していく。
ボーっとしている暇はない。
剣を握り直したシュアは、彼らを援護するべく自分もその戦闘へとすぐさま参加していった。
ロイドもゼロスもシュアも、負ける気など、もはや微塵も感じていなかった。
「ぐ…っ」
あまり気持ちいいとはいえない声が、初めにシュアが貫いた兵士の口から零れる。
「なぜ…殺さんっ!」
「人を殺すなんて、誰もしたくないから…でしょ?ロイド」
「あぁ、当たり前だ」
急所は外れていたのだろう。むしろ、倒れている4人の中で一番口がきける状態なのが、彼だったぐらいだ。
シュアの問いに強く頷くロイド。ゼロスも頷く事は無いが、ロイドの問いを予想していたかのように笑っている。
「ゼロス、ありがとう。約束、守ってくれて」
剣を抜いた際に取り落とした自分のナイフを拾ったシュアは、リフィルたちの縄を解きながら、ゼロスにそう微笑みかけた。
「…どーいたしまして。ったく、酷な事言うっつうか…」
「ま、脱出できたのはゼロスのおかげじゃないけどな」
「そりゃー言いっこ無しだぜ、ロイド君」
思わずロイドが口を挟むが、ゼロスはむしろ開き直っているのか、ロイドの肩に腕を回して自慢げに笑っている。
それを見て思わずシュアも笑みを零していた頃、
ふと、自分の方に駆け寄る影がある事に気付いて、すぐにシュアはジーニアスを開放したその手を止めた。
「シュア!」
「…だ、れ?」
少し変わった服を着た、黒髪の女の子。
自分を知っている人物なのだろうか。
息を弾ませて嬉しそうに微笑みかけてくればくるほど、シュアは彼女に対して申し訳ない気持ちになるばかりだ。
「シュア!あぁ会えて良かったよ!まさかロイドたちと一緒に居るなんて!」
「あの、ごめんなさい…」
「……え?」
「誰…ですか?」
傍にいたジーニアスもリフィルも、シュアのその言葉に思わず目を伏せる。
この中で絶句しているのはその少女だけだ。
はたから見て雰囲気を悟ったのか、ゼロスは2人の傍に歩み寄って、自分に困惑した表情を向けるシュアに声を掛けた。
「シュア。ほら、前に話しただろ?お友達のしいなだ」
「!あ…」
そう、説明をするゼロスを思わず見上げるしいな。
そんなしいなにも、ゼロスはシュアの様子を淡々と話して聞かせた。
「しいな。シュアちゃんは今一切の記憶がないんだと。もちろん俺様のことも覚えてなかったし、自分の事も分からなかった」
「そ、んな…!そんな馬鹿な事…!」
自分が、今目の前の少女を傷つけている。
そうでなければ、もし自分が少しでも彼女の事を覚えているなら、悲しそうにする彼女を、抱きしめてあげる位は出来るのに。
シュアは無意識にもそっとしいなの手を取ると、困ったように、それしか出来ずに、しいなに向かって微笑んでみせた。
「はじめまして、しいな。私は…シュア」
「シュア…!」
「ごめん。でも、こうするしかできなくて…。これからだって、今の私だって、しいなの友達に、なれるかな…」
やはり困ったように言ったシュアに、今度は困った顔で俯いたのは、しいなの方だった。
シュアの記憶の中で、二度目の日暮れ。
8人に増えたロイド達一行は、その高さゆえ、夕日も隠れるフウジ山岳の麓へと辿り着いていた。
目的は、レアバードの回収。
もう指名手配もされているのだろう。こうなればもはや何を遠慮する事もなくシルヴァラントへと行く事が出来る。
それに、どうせ逃げるなら追っ手が来られない場所がいい。
じき、日も完全に落ちて辺りは暗闇に包まれる。
足場や見通しの悪い山道での野宿を避けて、一行は全ての用事を明日に回す事にした。
そして今夜一晩を過ごすこの麓では、野宿の準備が分担しながら着々と進められている。
そんな中、気を使ったのだろうか。リフィルが振り分けた分担の中で、シュアは薪拾いの役割へとついていた。
しいなと共に、たった2人きりで。
「シュア」
「ん?」
不思議と気まずい雰囲気は漂っていなかった。
シュアについては歳こそ分からないが、きっとしいなより年上なのだろう。
なるべく会話を弾ませようと努力しているのが、しいなにも痛いほどに伝わって来ていた。
そんな会話の切れ目に、ふとしいながシュアに呼びかけて、枝を拾ったばかりのシュアは身体を起こしざまにしいなを振り返る。
「…あ、あたしにとって、やっぱりシュアはシュアだよ…。そりゃ、やっぱりちょっと違うけどさ…」
「…しいな」
「あたしの知ってる事でいいなら、なんでも話すよ!だから…だから、思い出しとくれよ!あたし…」
シュアは、何も言わない。
いや、何も言う事ができない。
ただ必死に言葉を紡ぐしいなを、見守るしか出来ない。
「大切なんだ…シュアと過ごした時間。あたしの思い出の中で、一番…」
「しいな…」
「…!あ、いや、違うんだよ!あんたを責めたいわけじゃなくて…急かしたいわけじゃなくて…あたしは…」
どんなに仲が良かったのだろう。
どんなに楽しい時間を過ごしたのだろう。
シュアにとって今の時間、仲間達と旅をしている時間は、空っぽだった自分にも本当に楽しいものだと思っている。
きっとたくさんの思い出があるんだろう、しいなにはもっとずっと。
それにも関わらず、目の前の少女はかつての自分との時間が一番だと言ってくれている。
それはどんな気持ちなんだろう。
思い出したい、まるで好奇心のようにそう思うのは、少し不謹慎だろうか。
「しいな、」
「ごめん…どうにも出来ない事ぐらい、分かってるんだ。ただ…」
「うん。しいな。…私もね、しいなの事思い出したい。だから、少しずつでいいから、知ってる事教えて?」
まだ、旅はきっと長いよ。
拾った薪を足元に置いたシュアは、しいなの近くまで歩み寄ってから、そっとその隣に腰を下ろした。
「もうちょっとしたら、戻ろっか」
そう微笑んで自分を見上げるシュアに、少しだけ戸惑ったしいなは、けれどゆっくり自分もその隣に腰を下ろして、シュアの肩にそっと自分の頭を預けた。
自分の肩がひんやりと湿っていくのを感じたシュアは、この時月明かりの元、まだ2日目の自分にこっそりと小さな決意をしていた。
Next.