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空間が、微かに白んで見える。
あれからどれくらいの時がたっただろう。
目の前で眠る仲間が動く気配は、ない。
「ばかだ…なぁ」
俺のことなんか助けるなんて。
ゼロスは自分の横で静かに寝息を立てるシュアを見つめた。
『ごめん…疲れちゃったから少し…休むね。ゼロスは早く…ロイドたちを追いかけて』
『何言ってんだよ…?シュア…お前こそ…』
『大丈、夫…。マナ、使いすぎちゃっただけだから…少し休めば平気だから…』
『大丈夫なわけ…』
『デリス・カーラーン…ここにはいくらでもマナがある…。だから、休んでればすぐに元通り、だよ』
『ゼロスにはやることがあるんでしょ…?ゼロスが望んで、裏切るわけがないよ』
そうほほ笑んで、シュアは静かに目を閉じた。
思わず覗き込んだシュアは確かに小さく呼吸をしていて、静かな寝息をたてて眠り続けている。
そっとその髪を撫でて、ゼロスはゆっくりと腰を上げた。
ゼロスが目を覚ました時、シュアは変わらずに自分の傷口に向かって真剣なまなざしを向けていた。
なぜだろう。痛みが、ない。
そっと手を伸ばしてシュアの腕を掴むと、一瞬びくりと身体を揺らしたシュアの掌から温かな光が消える。
「ゼロス…、…っゼロス!」
「ありえねーよ、もう…。ちっとも痛くねーなんて」
どれくらいの時間、シュアはこうしていたのだろう。
いったいどうしたら、あの状態からここまで治るのだろう。
本当に、シュアの力は計り知れない。
隠してることがある…
シュアはそう言っていた。
羽があるシュア。救いの塔内部の構造を知っているシュア。
結界を張る事が出来ること、あり得ない程の力があること、その理由も自分は何一つ知らない。
けれど…それなのに自分はこいつを…シュアという人物を、軽蔑することがどうしてもできない。
今までハーフエルフに抱いていたような嫌悪感。
リフィルやジーニアスに抱かないのは今さら、シュアにもそんな感情を抱くどころか。
すごく、ものすごく…
言葉で表すのが難しいくらいに、愛しい。
あの瞬間…シュアの刃が自分の身体を貫いた瞬間、これでいいと思いながら、もっとその刃を自分に食い込ませるつもりだった。
後戻りをする気はこれっぽっちもなかった。
けれど、そんな理由でもシュアを抱きしめた瞬間、今まで生きてきた22年間の中で…最も満たされた気分になった。
幸せだと、生きてきた中で初めて感じた。
「シュア…」
「…ゼロス…、!傷…!」
手を掴む力を緩めるゼロスに、はっとしたシュアが傷口に目を向けると、もうそこには微かな跡一つ残っていない。
ただ服だけが破れて、傷があったであろう場所だけが窺える。
けれど、安堵したのも束の間。
ふと、一瞬視界に映った深い青に、直後シュアの目は大きく見開かれた。
…まさか。ありえない。
それでも再び目を凝らして傷口付近を凝視したシュアに、それははっきりと視界の中心に飛び込んできた。
「?…シュア?」
自分を呼ぶゼロスの声も、今はシュアの耳には届かない。
どこかで見たような、痣。
どこかでなんかじゃ、ない。ここにある。
「どうして…」
「おい、シュア…?」
「ゼロス、この……あざ……」
「あざ?あぁ…」
生まれつきだ。中々洒落てるだろ?
「、じゃあ…」
『何があっても…会えるように』
「る……び……」
「は?シュア?」
途端、ふっとシュアの身体は揺れ、ドサッという鈍い音が空間に響いた。
急に自分の隣へと倒れこんだシュアをゼロスが思わず覗き込むと、シュアは横になったまま、表情だけは緩くほほ笑んでいる。
「そっか…」
「シュア」
「よかった…」
「おい?シュア!」
そうして、シュアは行けと言った。
まさか、こんな展開になるなんて。
シュアに勝たせることもできず、追いかけろとだけ零して、シュアは眠りについてしまった。
煮え切らないことは山ほどある。
それでももう、こうなったからにはやらないわけにはいかねぇだろ?
今自分にできるのは、シュアの傍にいることじゃない。
アイオニトスを、確実に手に入れること。
そして、数多の罠に襲われているであろう仲間たちを助けること。
ここまで必死になったシュアの想いに、応えること。
「シュア…大丈夫って、言ったからな。嘘、つくなよ…?」
ぽつりと零したゼロスが一歩、足を踏み出す。
そうしてしばらくシュアを見つめた後、ゼロスは緩やかに動かした羽で静かに空間を飛び立っていった。
彼のまなざしは、もう真っすぐと前しか見据えていなかった。
「ん…」
静かな、空間。
ここに自分がいることはとっくにばれているだろうに、天使の影は一つも、ない。
ゆっくりと身体を起こして辺りを見回すと、変わりのない空間に自分だけが佇んでいた。
ただ、はっきりと思い知らされるのは。
自分の傍らに広がる赤黒い血だまり。
ゼロス…行ったんだね。
ここに彼の姿が無いということは、クルシスの輝石一つ残っていないということは。
彼がきっと…無事だということ。
そっか…助かったんだ。…良かった。
「っ…!」
本当に、良かった…!
もう、自分のせいで誰かを失うのは嫌だった。もしも…考えたくもないけれど、もしもゼロスが助からなかったら、自分はどうしたいいかわからなかった。心も、命すら、投げ出していたかもしれない。
再びせきを切ったように流れ出す涙を拭うこともせず、シュアは震える自分の両腕を抱きしめる
ルビ…あなたは…
「見守ってて…くれたんだ」
ゼロスの脇腹にあった痣。
どこかで見た、いや、自分の同じ位置にあるそれと同じ…
葉型の、痣。
でも、不思議な感覚だ。
ゼロスは、もう。
彼がかつての彼だと思えない程に、確かに自分の中でゼロスを知ってしまっている。
『そっか…よかった…』
思わず自分の零していたその言葉が、どういう意味だったのか。
なにが、“よかった”のだろう。
「ゼロス…」
彼を他の誰かと比べることなんて、したくないのに。
彼に彼以外を求めるなんて、もっとも彼にはしたくないことなのに。
自分がいったいどうしたいのか、安堵の裏側で、シュアはぐるぐると回るそれらを抱えたまま、少しの間小さく膝を抱えていた。
ゆるりと、仲間の後ろに降り立つ。
あと一歩というところで佇んでいる仲間は、自分には気づく様子もない。
シュアは、辿り着いていた。
何ら迷うこともなく…あれから戦いの場を飛び立ち…仲間の後を追うべくここまで辿り着いた。
目の前には大いなる実りの間へと続く扉のない入口。
その前で立ち尽くすロイドに、そっと歩み寄ると声をかける。
「ロイド?」
「!」
跳び跳ねるように驚きを見せたロイドが、振り返る。
けれどその直後には、仲間の姿に安堵したように強張った肩をそっと下ろした。
「シュア…!」
「ただいま。…どうしたの?こんなところで」
「ああ…。いや、今、罠に、やられそうになったんだ。だけど…」
「?」
「これが…こんなものが、いつの間にか俺の胸にあって…」
その手に握っているものをこちらに差し出してくるロイドの手中に目を向ける。
そこには、一枚の、橙色の羽根。
黄昏に輝くそれは、どこかで見たような羽根。
「ゼロス…」
「へ…?」
「ううん。ねえロイド…忘れないで。ロイドにはどこまでも仲間がついてる。だから…どこまでだって…ロイドは行ける」
「シュア…。ああ!」
力強く眉を尖らせたロイドに思わず小さく、笑う。
「俺をここまで導いてくれたみんなのためにも…コレットを助け出す!」
「うん!」
「シュア。…結局、ゼロスは…」
「その答えは、この先に待ってるよ。ロイドもみんなと…別れたんだね」
「……ああ」
「大丈夫。ロイドはロイドのすべきことをすればいいから。みんなも、そうしたんだから」
「ああ」
一人になったと思っていた。
けれど、それは違った。
今でもみんなはここにいて、俺を支えていて、
そして傍らには確かに仲間が、心強い仲間がここにはいる。
そんなことをシュアに再確認させられて、ロイドは力強く頷いてから目の前の階段を上った。
その先には、まるで行き止まりのようなただの壁が立ちふさがる。
「ロイド、ここは任せて」
「シュア、」
「今は何も聞かないで。コレットを助けることだけに集中して」
「…うん」
一歩、ロイドより前に踏み出したシュアが、おもむろに懐から短剣を取りだす。
鞘からそれを取りだすなり、掴むように柄を握って、ただ壁へと突きたてる。
小さく漏れだす光。
そして瞬間、壁はまるで何もなかったかのように消え失せた。
疑問を持たない方がどうかしている。それでも、今の自分がすべきなのはそれを問いただすことじゃあない。
「行くぞ!」
力強く声を上げたロイドに頷いて、シュアもその後を追って入口をくぐった。
その先に待ちうけている大きな苦悩すら、心強い仲間といるシュアにはまだ憂えるものではなかった。
Next.
あれからどれくらいの時がたっただろう。
目の前で眠る仲間が動く気配は、ない。
「ばかだ…なぁ」
俺のことなんか助けるなんて。
ゼロスは自分の横で静かに寝息を立てるシュアを見つめた。
『ごめん…疲れちゃったから少し…休むね。ゼロスは早く…ロイドたちを追いかけて』
『何言ってんだよ…?シュア…お前こそ…』
『大丈、夫…。マナ、使いすぎちゃっただけだから…少し休めば平気だから…』
『大丈夫なわけ…』
『デリス・カーラーン…ここにはいくらでもマナがある…。だから、休んでればすぐに元通り、だよ』
『ゼロスにはやることがあるんでしょ…?ゼロスが望んで、裏切るわけがないよ』
そうほほ笑んで、シュアは静かに目を閉じた。
思わず覗き込んだシュアは確かに小さく呼吸をしていて、静かな寝息をたてて眠り続けている。
そっとその髪を撫でて、ゼロスはゆっくりと腰を上げた。
ゼロスが目を覚ました時、シュアは変わらずに自分の傷口に向かって真剣なまなざしを向けていた。
なぜだろう。痛みが、ない。
そっと手を伸ばしてシュアの腕を掴むと、一瞬びくりと身体を揺らしたシュアの掌から温かな光が消える。
「ゼロス…、…っゼロス!」
「ありえねーよ、もう…。ちっとも痛くねーなんて」
どれくらいの時間、シュアはこうしていたのだろう。
いったいどうしたら、あの状態からここまで治るのだろう。
本当に、シュアの力は計り知れない。
隠してることがある…
シュアはそう言っていた。
羽があるシュア。救いの塔内部の構造を知っているシュア。
結界を張る事が出来ること、あり得ない程の力があること、その理由も自分は何一つ知らない。
けれど…それなのに自分はこいつを…シュアという人物を、軽蔑することがどうしてもできない。
今までハーフエルフに抱いていたような嫌悪感。
リフィルやジーニアスに抱かないのは今さら、シュアにもそんな感情を抱くどころか。
すごく、ものすごく…
言葉で表すのが難しいくらいに、愛しい。
あの瞬間…シュアの刃が自分の身体を貫いた瞬間、これでいいと思いながら、もっとその刃を自分に食い込ませるつもりだった。
後戻りをする気はこれっぽっちもなかった。
けれど、そんな理由でもシュアを抱きしめた瞬間、今まで生きてきた22年間の中で…最も満たされた気分になった。
幸せだと、生きてきた中で初めて感じた。
「シュア…」
「…ゼロス…、!傷…!」
手を掴む力を緩めるゼロスに、はっとしたシュアが傷口に目を向けると、もうそこには微かな跡一つ残っていない。
ただ服だけが破れて、傷があったであろう場所だけが窺える。
けれど、安堵したのも束の間。
ふと、一瞬視界に映った深い青に、直後シュアの目は大きく見開かれた。
…まさか。ありえない。
それでも再び目を凝らして傷口付近を凝視したシュアに、それははっきりと視界の中心に飛び込んできた。
「?…シュア?」
自分を呼ぶゼロスの声も、今はシュアの耳には届かない。
どこかで見たような、痣。
どこかでなんかじゃ、ない。ここにある。
「どうして…」
「おい、シュア…?」
「ゼロス、この……あざ……」
「あざ?あぁ…」
生まれつきだ。中々洒落てるだろ?
「、じゃあ…」
『何があっても…会えるように』
「る……び……」
「は?シュア?」
途端、ふっとシュアの身体は揺れ、ドサッという鈍い音が空間に響いた。
急に自分の隣へと倒れこんだシュアをゼロスが思わず覗き込むと、シュアは横になったまま、表情だけは緩くほほ笑んでいる。
「そっか…」
「シュア」
「よかった…」
「おい?シュア!」
そうして、シュアは行けと言った。
まさか、こんな展開になるなんて。
シュアに勝たせることもできず、追いかけろとだけ零して、シュアは眠りについてしまった。
煮え切らないことは山ほどある。
それでももう、こうなったからにはやらないわけにはいかねぇだろ?
今自分にできるのは、シュアの傍にいることじゃない。
アイオニトスを、確実に手に入れること。
そして、数多の罠に襲われているであろう仲間たちを助けること。
ここまで必死になったシュアの想いに、応えること。
「シュア…大丈夫って、言ったからな。嘘、つくなよ…?」
ぽつりと零したゼロスが一歩、足を踏み出す。
そうしてしばらくシュアを見つめた後、ゼロスは緩やかに動かした羽で静かに空間を飛び立っていった。
彼のまなざしは、もう真っすぐと前しか見据えていなかった。
「ん…」
静かな、空間。
ここに自分がいることはとっくにばれているだろうに、天使の影は一つも、ない。
ゆっくりと身体を起こして辺りを見回すと、変わりのない空間に自分だけが佇んでいた。
ただ、はっきりと思い知らされるのは。
自分の傍らに広がる赤黒い血だまり。
ゼロス…行ったんだね。
ここに彼の姿が無いということは、クルシスの輝石一つ残っていないということは。
彼がきっと…無事だということ。
そっか…助かったんだ。…良かった。
「っ…!」
本当に、良かった…!
もう、自分のせいで誰かを失うのは嫌だった。もしも…考えたくもないけれど、もしもゼロスが助からなかったら、自分はどうしたいいかわからなかった。心も、命すら、投げ出していたかもしれない。
再びせきを切ったように流れ出す涙を拭うこともせず、シュアは震える自分の両腕を抱きしめる
ルビ…あなたは…
「見守ってて…くれたんだ」
ゼロスの脇腹にあった痣。
どこかで見た、いや、自分の同じ位置にあるそれと同じ…
葉型の、痣。
でも、不思議な感覚だ。
ゼロスは、もう。
彼がかつての彼だと思えない程に、確かに自分の中でゼロスを知ってしまっている。
『そっか…よかった…』
思わず自分の零していたその言葉が、どういう意味だったのか。
なにが、“よかった”のだろう。
「ゼロス…」
彼を他の誰かと比べることなんて、したくないのに。
彼に彼以外を求めるなんて、もっとも彼にはしたくないことなのに。
自分がいったいどうしたいのか、安堵の裏側で、シュアはぐるぐると回るそれらを抱えたまま、少しの間小さく膝を抱えていた。
ゆるりと、仲間の後ろに降り立つ。
あと一歩というところで佇んでいる仲間は、自分には気づく様子もない。
シュアは、辿り着いていた。
何ら迷うこともなく…あれから戦いの場を飛び立ち…仲間の後を追うべくここまで辿り着いた。
目の前には大いなる実りの間へと続く扉のない入口。
その前で立ち尽くすロイドに、そっと歩み寄ると声をかける。
「ロイド?」
「!」
跳び跳ねるように驚きを見せたロイドが、振り返る。
けれどその直後には、仲間の姿に安堵したように強張った肩をそっと下ろした。
「シュア…!」
「ただいま。…どうしたの?こんなところで」
「ああ…。いや、今、罠に、やられそうになったんだ。だけど…」
「?」
「これが…こんなものが、いつの間にか俺の胸にあって…」
その手に握っているものをこちらに差し出してくるロイドの手中に目を向ける。
そこには、一枚の、橙色の羽根。
黄昏に輝くそれは、どこかで見たような羽根。
「ゼロス…」
「へ…?」
「ううん。ねえロイド…忘れないで。ロイドにはどこまでも仲間がついてる。だから…どこまでだって…ロイドは行ける」
「シュア…。ああ!」
力強く眉を尖らせたロイドに思わず小さく、笑う。
「俺をここまで導いてくれたみんなのためにも…コレットを助け出す!」
「うん!」
「シュア。…結局、ゼロスは…」
「その答えは、この先に待ってるよ。ロイドもみんなと…別れたんだね」
「……ああ」
「大丈夫。ロイドはロイドのすべきことをすればいいから。みんなも、そうしたんだから」
「ああ」
一人になったと思っていた。
けれど、それは違った。
今でもみんなはここにいて、俺を支えていて、
そして傍らには確かに仲間が、心強い仲間がここにはいる。
そんなことをシュアに再確認させられて、ロイドは力強く頷いてから目の前の階段を上った。
その先には、まるで行き止まりのようなただの壁が立ちふさがる。
「ロイド、ここは任せて」
「シュア、」
「今は何も聞かないで。コレットを助けることだけに集中して」
「…うん」
一歩、ロイドより前に踏み出したシュアが、おもむろに懐から短剣を取りだす。
鞘からそれを取りだすなり、掴むように柄を握って、ただ壁へと突きたてる。
小さく漏れだす光。
そして瞬間、壁はまるで何もなかったかのように消え失せた。
疑問を持たない方がどうかしている。それでも、今の自分がすべきなのはそれを問いただすことじゃあない。
「行くぞ!」
力強く声を上げたロイドに頷いて、シュアもその後を追って入口をくぐった。
その先に待ちうけている大きな苦悩すら、心強い仲間といるシュアにはまだ憂えるものではなかった。
Next.