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静かに、降り積もる雪。
四季が過ぎようとも変わることなく、誰の上にも雪は舞い降りる。
癒すことはなくとも、誰にも隔たりなく、雪は悲しみを覆い隠してくれる。
シュアを連れてフラノールへと帰ってきたゼロスを、その宿屋で出迎えたのはロイドだった。
ロビーに置かれたテーブルについて、扉を開いたゼロスを捉えるなり彼の表情はぱっと明るくなる。
「ゼロス!」
「ロイド、」
「シュアは…」
「ロイド…」
どうしてすぐに仲間がいないことに気が付けなかったのかと、ここで待てば待つほどそればかりが悔やまれた。ゼロス1人で探しに行かせてしまったことにも。あのシュアが1人で飛び出すなんて、事態は自分が思っているよりもっと深刻かもしれないのに。
ふいに心配で気が気じゃなかった仲間が、ゆっくりとゼロスの後ろから現れて自分の名前を呼ぶ。
俯きがちにロイドに目を向けたシュアのその姿を捉えるなり、誰の目から見てもほっとしたように柔らかく笑んだロイドは、その直後にはその表情をすっと引き締めてそのままの足でシュアの前まで歩み寄った。
「心配したんだぞ」
「…ごめん、なさい」
「もう勝手にいなくなるなよ。絶対にだ」
「…ロイド。…何も、聞かないの?」
「シュアが話したくなったら話せばいいさ。簡単に話せることなら、ちゃんと話してからいなくなってただろ?」
「…ロイド…」
「まあそんなこんなでー、めでたしめでたし。で、ロイド君だけか?」
二人の様子を見守るように見つめていたゼロスが不意に口をはさむと、2人はゼロスを一瞥してはあ、と小さくため息を吐いた。
「…先生とリーガル、ジーニアスとしいなは医者に連れてかれてアルテスタの所にいるよ。コレットとプレセアは…」
「…?」
「上でシュアを待ってる。いつものシュアの居場所を用意しとくんだ、って」
「…!」
上階に向けた目を細めながらそう言ったロイドに、思わず##NAME1##はゼロスの顔を見上げた。
それに気づいたゼロスが振り返ると、すぐに同じように目を細めて##NAME1##を見やる。
ゼロス…
「だってよ」
「上がって一番奥の部屋だ」
「…うん」
溢れてくるいろいろな感情から零れそうになる涙を、どうにか堪えるように眉根を寄せてシュアは階上へと繋がる階段を1つ1つ上っていく。
本当だ。ゼロスの言う通りだ。帰らないなんて、間違っても自分の望んでいた事じゃない。
こんなにも、暖かい場所。自分を迎えてくれる、待っていてくれる心の拠り所が気づかない内にそこには生まれていた。
そしてあんなにも、眩しいほどに柔らかくほほ笑むゼロスの表情。
なんだかもう堪らなく、嬉しくて。形容できる言葉さえ見つからない。
私はまだここにいたいんだ…。ここで、そんな胸がいっぱいになるほどの喜びを感じていたい。
だから、
それなら私は…ここを守る為の最大限の努力をしよう。
この命に代えても、ルビナスが守ってくれたたった1つの命であっても、ここにはそれを捧げられるほどの価値がある。
シュアがそう力強く涙を拭い階段を上りきるのを見届けたゼロスは、1つ、息を飲み込むとそっとロイドへと向き直った。
自分も、そろそろケリをつけなければならない時だ。
自分がどうしたいのか。どうするべきなのか。
欲しいものは何なのか。守りたいものは何なのか。
「ロイド」
「ありがとな、ゼロス」
「…は?」
「シュア、連れて帰ってくれて」
「…あぁ…。気持ちは、分かるからな」
「ん?なんのだ?」
「…なぁ、昔話聞いてくれるか?」
信頼したい、信頼できると思った仲間だからこそ聞いてほしい。
そしてきっとなにかを確かめたい自分がいる。
こんな話を聞いて、この仲間が返してくれるであろう言葉を。本当に信頼できるのかを、試すような事をしてるのは分かってる、でも。
区切りを付けたいんだ。
後悔しない選択をするために。
なんだよ、いきなり。と当然の反応を返す仲間を彼の元いた席につかせて、ゼロスはゆっくりと語り始めた。
シュアにも聞かせた、あの話を。
そして彼の気持ちは、もうそれしか選べないほどにはっきりと形を見つけたのだった。
翌朝。フラノールに戻ってきた仲間たちを出迎えると、早速しいなに抱きしめられている##NAME1##に仲間たちは一斉に笑った。誰も、何も聞かない。それでも安心したようにそれぞれが一声ずつを##NAME1##にかけて再会を喜び合う。
「ところで…アルテスタさんはどうだった!?」
ロイドが最も気になっていたことを切り出すと、すぐにジーニアスが安心して、と言葉を返した。
「なんとか持ち直したよ。あのいやな医者、腕は確かだった。念のため、ミズホの人たちが護衛してくれてるよ」
「よし…。俺も考えたことがあるんだ。このままずるずるクルシスの出方を待ってても、世界は変わらないだろ?だから、今度はこっちから仕掛けよう」
安心したのもつかの間、すぐにロイドが表情を引き締めると、それを囲う仲間たちの表情もすぐにすっと引き締まる。
「目的は二つ。千年王国設立の阻止と…オリジンの解放だ」
「でもオリジンを解放すればクラトスの命は…」
「…まだよく分からない。でも…まだ死ぬと決まった訳じゃないし、あいつが俺たちの味方をするかも分からない。分からないことを悩んでる暇はないさ」
ロイドの言葉にそうだね…と呟くジーニアスの隣で、次に声をあげたのはリフィルだった。
「エターナルソードはどうするの?仮にオリジンの封印を解いたところで、ロイドでは装備できないのでしょう?わたしもジーニアスも、剣をあつかえるのかどうか…」
「それなら心配にはおよばねぇ」
「どういうことだ?」
ふいに声をあげたゼロスを、仲間たちが振り返る。
「俺さまがどうして魔法剣を使えると思う?テセアラの新技術で、魔導注入を受けたからよ。俺さまは人間だけど、エルフの血も入ってるって訳だ。どうだ?これなら何とかなりそうだろ?」
「それなら…これが最後の決戦になるわね」
リフィルの言葉に納得したように仲間たちが頷く。
「わかりました。やりましょう」
「…世界の統合のために」
「…そうだね」
「私もがんばるね」
けれど、最後に声をあげたコレットにロイドはすっと視線を上げてコレットを見据えた。
「…コレットは残れ」
「…どして?」
「おまえはマーテルの器として狙われてるんだぞ。ミズホかレネゲードに頼んでかくまってもらうんだ」
「…ロイドが…そういうなら。……ううん、やっぱり、ついてく!」
「でも…」
「ははーん。おまえ、ミトスからコレットちゃんを守り抜く自信がねーんだな。かわいそうな奴」
そんな2人の攻防戦に口を挟んだのは、ゼロス。
「な、なんだと」
「大丈夫よ、コレットちゃん。このゼロスさまが必ず守ってあげるからよ」
「ゼロス!」
「連れてってやりな。どこにいたってコレットは狙われるんだ。そんなこと分かってんだろーが。男ならビシッと決めな」
「そうだよ、ロイド。傍にいないと…守れるものも守れない」
「…わかったよ。コレットを連れていく。それでいいな」
「ありがと、ロイド。それにみんな」
ゼロスに加えシュアにも言いくるめられたロイドが頷くと、心底嬉しそうにほほ笑んだコレットに仲間たちがほほ笑み返す。
そうして、ここにいつものメンバーの意思が揃うと、いつものようにロイドの掛け声とともに一向はフラノールを後にするべく歩き出した。
救いの塔。
いつ見てもこの塔の不穏さは変わらないのに、今回だけはいつもと違う感覚を持たざるをえない。
そんななんとも言えない緊張感を感じながら、ロイドたちはついに決着をつけるべく再びこの塔の前へと赴いていた。
確かにそびえる塔は限りのない程に高い。けれどそれでも今は、はっきりとこの塔が自分たちの前に立ちはだかっているのを感じられる。遠い何か、見えない恐敵などではなく。
誰も何も言葉を交わすことのないまま、以前のように現れた階段を登ると、ふいにロイドが気づいたように足を止めた。その視線の先では数人の天使が入口を塞ように立ちはだかっている。
「ダメだ。ふさがれている!」
「このままでは退路をふさがれてしまうわ」
リフィルの言葉に一斉に足を止め、数瞬。すぐに後ろから仲間のものではない声が聞こえ、振り返った。
「ロイド!こっちだ!」
「ユアン…」
声をあげているその正体に思わずぽつりと零したのはシュア。
「ロイド、いこう!」
コレットの一声に全員が踵を返す。
すぐにユアンについて行った一行は、岩壁を切り取ったような空間にその足を踏み入れ、立ち止まったユアンと向き合った。
「どうして俺たちに協力してくれるんだ」
「ユグドラシル…に正体を知られた今、もはやマーテルを救う手段はおまえに力を貸すことしかないからだ。なれ合っている訳ではない」
「…ひねくれた奴だな。まあいいや。協力してくれて、ありがとう。行こうぜ、みんな!」
ロイドの一声にぞろぞろと仲間たちは離れたところにあるワープに向かっていく。
その中で、シュアだけはまっすぐにその足をユアンに向けた。
目の前に来るなり足を止めたシュアにいぶかしく視線を返すと、ふいに彼女の目はすっと細められる。
「ごめんなさい…忘れていて」
「な…」
「あなたのことも、母さんのことも」
今はもう思い出した、妙に優しいマナを向けてくれていたこの人のこと。
その周りを取り巻く人たち。そしてその中にいた、シュア。
「今度は逃げないで…ちゃんとあの人に向き合うから。あなたみたいに…」
すっと、気配が横を通り過ぎる。
自分の後ろで人数分のワープ装置の音が響く。
久しぶりに見た、シュアの笑顔。
思い出したのか。そう問いかける間もなく仲間とともに彼女は消えてしまったけれど。
振り返ることすら、できなかったけれど。
君が幸せならそれでいい。久しぶりに、ユアンはそんなことを思っていた。
そしてどうか…無事でいてほしい。かつての勇者は、君とその仲間でも一筋縄ではいかないだろうから。
「あなたみたいに…か」
昔のように呼んでくれればいいものを。
気付けば自分もまたふっと笑みを零していることを、けれど今の彼はそのままに、一人洞窟の中を佇んでいた。
Next.