19
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「…!…… …!」
なんだ?なんだろう…
『シュア!入るな!』
何か叫んでる…?
誰かが…私に?
『起きちゃだめだ…』
どうして?
『行くな…』
だから、どうして…
「…さもな…ばロイドはここで…」
「…ロイ、ド…?」
体が重い。
頭が鈍く痛んで体に力が入らない。
頭の中に響いた声。どこからか、聞こえる声。
ふっと投げ出されるように意識を手に入れて目を開くと、シュアは自分がテーブルに突っ伏したままで眠っていることに気がついた。
見渡した周りには…同じようにベッドに入るでもなく眠っている仲間たち。
そして…
「おまえに死んでもらうだけだ!」
「…!」
どこかで聞いたような声が、不意に外から届いて振り返った。
「ロイド…?」
うまく動かない足を無理やりたたき起して、玄関まで這うように歩く。
いやな予感がする…
ロイド、確かに聞こえた声の中にはその名前があった。
『行くな…』
「!」
ふいに、扉を目前にして全身が凍りつく。
歩き出そうとした足が硬直して、そのまま崩れるようにシュアは床に座り込んだ。
力が入るのは分かるのに、まるで金縛りのようにその場から歩きだすことができない。
誰の声?
誰が邪魔をするの…
「ロイド…!」
「シュア?」
「シュア!?」
ふいに、後ろから掛けられた声にはっとなって振り返った。
「コレット…ゼロス…!」
「こんなところでなにやって…」
「外が騒がしいよね、シュア…どうしたの?」
「ロイドが…きっとロイドが…」
「ロイド…?」
うまく伝えられないことをもどかしく思いながら、訴えるようにコレットとゼロスを交互に見つめる。
そしてその名前をシュアから聞くなり、コレットは不安そうに表情を歪めた。
「ちょっと待てよ、シュアは…どうしたんだ?」
「動けない…分からないけど動けない…だから、お願い外を見てきて…!」
懇願するシュアに顔を見合せて、うん。とシュアの手に触れるとコレットが先に扉から出ていく。
ゼロスもまたくしゃっとシュアの頭を撫でると、その後に続いて扉の外へと出て行った。
なにが…起きているのだろう…
外でも、この家の中でも、自分自身にも。
そばにある壁に背中を預けると、微かだけれどゼロスの声が聞こえてくる。
「…関係ないんだろ!心は同じなんだろ!」
未だに身体はうまく言うことをきかない。
けれど、その声に…内容も分からないその言葉に、自然と力みすぎていた全身の力が抜けていくのを、シュアは感じていた。
その声だけで、安心する。
自分はいつのまに、そして彼はいつのまにこんなにも…
「おまえは茶番劇に参加しないの?」
ふいに、掛けられた声にはっとしてシュアは声のした方を見上げた。
ひどく冷たい声。そしてその先で浮かべている、冷たく見下すような微笑み。
「…え?」
思わず声を零して開いた口が、閉じられなかった。
その微笑みを湛えているのが、その主の正体を、シュアはあまりに信じられなかったから。
「ミト…ス…?」
「そうだよ。そんなことも忘れたの?おまえはそうやっていつも、都合の悪いことを忘れようとする」
「…な…」
「まぁ、おまえをそうしたのはボクだけど」
放たれた言葉に、シュアはその両目を目一杯に広げてミトスを見返した。
「記憶、取り戻したいんだっけ?…いいよ、思う存分思い出せばいい」
言うなり広げたその片手をシュアに向けて、ミトスはまた冷たく笑む。
なにをされるか分からず、思わず構えたシュアに、ふいに襲う強い衝撃。
ドン、と胸にマナを注ぎ込まれたような衝撃。
思わず顔を歪めるシュアが見上げる先で、ミトスはそれでも無表情に自分を見下ろしていた。
「その目でボクを見るな。二度目の絶望…よく味わうといいよ」
吐き捨てるように言ってシュアの横を通り過ぎると、ミトスはゼロス達の出て行った扉から外へと向かう。
しんと静まり返る室内に、シュアの中を巡る重苦しいマナ。そして
「…い、や…」
突然堰を切ったように、目まぐるしく流れ込んでくる映像。
自分の目から次々と涙があふれ出していることを、頭を抱えるシュアは気づかない。
「わ、たし…」
「…そっか。…そうだった…」
その涙で頬を濡らしたまま、気付けば動くようになっていた身体でシュアはその場にゆらりと立ち上がる。
まだ少し靄のかかったようになる頭は、それでも今のシュアには思い出そうとするもの全てを与えてくれた。
家の外から聞こえてくる仲間の声。
けれどそれを捉えることもなく、一秒の後にはシュアはその場から姿を消していた。
どうしようもない虚無感に包まれた空間。
元からさみしい感じの漂う場所ではあったが、今はそれすら消え去った空気が、アルテスタの家の前、ロイド達の立たずむその場所に広がっていた。
そしてその場所でリフィルが倒れるアルテスタに必死で治癒術を唱えるのを、それを心配そうに見つめるコレットやジーニアス、同じく地に伏して言葉を繰り返すタバサの前で悲しみに暮れるプレセアやしいな、今は去ったユアンの言葉にその場に立ち尽くすロイド、リーガルを…ゼロスはぐるりと見渡して、ふと気がついた。
シュアが、いない。
そういえば、外に出る前に、シュアは玄関脇に座り込んでいた。
思い出すなりすぐに屋内に向かってみるも、シュアはいない。
安心してベッドに横になったのかと寝室を訪ねるも、やはりいない。
キッチン、アルテスタの作業場…どの部屋を訪ねても、シュアは見当たらなかった。
外に戻る途中、アルテスタを寝室まで運ぶリーガルやロイド、リフィルとすれ違って、ゼロスは外に出るなり残っていた仲間たちに声をかける。
「なぁ…シュア、どこに行った?」
「え?シュア?…そういえば…」
こちらを振り返る仲間たちの中で、しいながそう言葉を零したまま辺りを見回す。
「俺とコレットが外に出る前、扉の横で会って…身体が動かないとか言って、そこに待たせた」
「扉の横って、そこのかい?」
玄関の戸を指差したしいなにあぁ、と返すとしいなは眉を歪めて訝しげに返す。
「あたしが出てくるときは、いなかったよ。いたら気付くだろうから」
「どこに…いったんでしょうか」
「まさか、あいつらを追ったなんてことはないだろうね!?」
プレセアの言葉にすぐに慌てたようにしいながそう言うが、ゼロスには不思議とそんな気はしないでいた。
「…そんな無謀なこと、するやつじゃねぇよ」
「…ゼロス」
その口調が自然と真剣になっていることにも気付かず、否定したままゼロスはどことも言えない空間を見つめている。
ふと、
「…もしかして…こんな時に…?」
「ゼロス?」
「あ、あぁ…俺さまシュアちゃんのこと探してくるわ」
「え?って、どこへだい?」
「ちょーっと、心当たりがあるんでね」
たった一か所だけ、シュアの行く場所に心当たりがある。
思わず呟いたゼロスにコレットが不思議そうに聞き返して、しいなにもゼロスがそう返したちょうどその時、後ろの扉が開いてリフィル達が表へと出てきた。
すぐにプレセアがリフィルへと問いかける。
「アルテスタさんは…大丈夫でしょうか」
「ユニコーンの角で何とか応急処置は済ませたけれど、なるべく早く医者を連れてきたほうがいいわ」
「それならあたし、いい医者を知ってる。うちの頭領が重傷を負った時、フラノールから呼んできたんだ」
リフィルの言葉にすぐにそう返したしいなを見ると、コレットはロイドに向き直って懇願するように言った。
自分を治療してくれたアルテスタを、いま、何としても助けたい。
「いこうよロイド。お医者さん、呼んできてあげよう」
「よし。フラノールだな。行こう!」
「ロイド」
それに頷いたロイドがすぐにでも向かおうとするのを呼び止めて、ゼロスは言った。
「シュアがいないんだ」
「え!…本当だ…」
「俺、ちーっと探してくるから、フラノールの方は任せたぜ」
「だったら!だったらあたしも行くよ!」
言うなり歩き出したゼロスに向かって、しいながその背中に声を掛ける。
「しいなが来ちゃったらだれが医者まで案内すんのよ。心配しなくてもちゃーんと連れて帰ってくるから俺さまに任せな」
でも…とだけ言いかけたしいなにももう振り返るでもなく、ゼロスはひらひらと手を振ってレアバードに乗るべく開けた場所へと出ていく。
「しいな…ゼロスに、任せよう。医者までの案内、任せられるか?」
「うん…。…あいつ…シュアのこと…」
ロイドに答えて呟いたしいなの、そして仲間たちの頭上を、一台のレアバードが飛んでいく。
その機体は心なしか、普段よりもずっとずっと早い速度で飛んでいるようにさえ伺えた。
Next.