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アルテスタの家。
形のある土産、そうでない土産。それらを抱えながら戻ってきたロイド達だったが、出発前に分かれた仲間たちは未だ戻っていない。
少しだけ心配になりながらも、今は休んで待ちましょう、と言ったリフィルの言葉を飲み込んで、それぞれがアルテスタに借りたベッドで仮眠を取っていた。
外は、もう日も落ちて夜と呼べる時間もすぐそこに迫っている。
シュアは、リビングにいた。
ミトスも今は寝る準備をしに寝室に向かい、アルテスタは何やら作業をしている。
徐に立ち上がって、玄関の戸を開く。と、眼前にまだ色の薄い闇が広がって、少しだけ足を踏み出すのを躊躇する。
ふと、人の気配を感じて振り返った。
そこには、壁に背を預けて出てきたばかりの自分を振り返っている、ゼロス。
「!びっくりした…ゼロス…」
「なーにを驚いてんのよ。さてはやましいことでも…」
「そういうんじゃ、ないよ!ただ…」
「ん?」
ゼロスこそ、こんなところで何をしていたんだろう。
頭の片隅で思いながらも、これから行く先を頭に思い浮かべる。
本当は誰にも話さずに、行こうと思っていたのだけれど。
「…ちょっとデート、しよっか」
枯葉や灰の敷かれている森。
そこに降り立ったレアバードの周囲だけが、それらを吹き飛ばし地表を覗かせている。
かつて仲間に別れを告げた直後、シュアが訪れていた家。ルビナスと、かつてのシュアが暮らしていた一軒家。
言葉を交わすこともなくただ黙々とレアバードを下りてそこに近づいていくシュアに続きながら、ゼロスはとにかく色々なことに疑問を抱いていた。
そんな、ゼロスの疑問に答えるように、シュアがようやく口を開き始める。
「ここはね、ルビの家なの」
「!って…」
「うん。みんなと別れた時に、地震があった時にいたのがここ。あの前日…ゼロスと話していた時に、思い出したの。ここが…ルビの家で、ここで…ルビが亡くなっていること」
自分に背を向けたまま歩き続けるシュアの表情が、ゼロスには見えない。
思わず眉根を寄せたまま歩くゼロスの前で、以前にシュアが訪れた時と同じ、ヴン…という音が聞こえて思わずあたりを見回す。
「?どうしたの?」
「ん?いや…」
不思議そうに振り返ったシュアが、そう、と零して再び歩き続けるのに続こうと、足を踏み出した。
が、
ヴン…
「!いっ…たく、ねえ…?」
何かに、ぶつかった。
確かに、視界には何もないはずなのに。だからといって痛くもなく、ただ何かにはね返されたような。
「ゼロス?」
「シュア?お前…」
「ん?」
「…ここ、なんかあるぜ?なんで俺だけ…」
「え?」
なにかある、と言われても。
明らかに何もない場所まで引き返して、ゼロスが手をかざしているその場所に触れてみる。
ヴン…
手は、何に触れることもなくゼロスの掌に、重なった。
「なるほどね…」
「んん?」
「結界、ってか」
「結界?」
なんで気付かねえかな…
半ば呆れたようにあからさまな溜息をつくと、ゼロスは一度手を引っ込めて一歩、その場から後ずさった。
「シュアちゃん、こっち、手ぇ出してみ」
「ん?こう?」
何かを貰い受けるように差し出したシュアの手を、ゼロスが握る。
「!…ぜ、ゼロス…?」
「もっかい歩いて」
「な…」
「照れてないで、はい前進ー」
べつに…照れてないし…
ぼそぼそと言い訳を零しながら、明らかに早くなった歩調で言われたとおりにシュアが歩く。
それに引っ張られるようにしながら、ゼロスも。と、
ヴン…
今度は目の前ではなく、耳元で、その音が聞こえた。
やっぱりな…口にはせずにそう思いながら、ゼロスは繋いだ手の先でずんずん歩き進めるシュアに目を向ける。
この家には、というよりこの家周辺にはなんらかの結界が張ってあって、そこにはシュア以外の人間が入れないようになっているんだろう。
本人も分かっていないということは、記憶をなくす以前のシュアが張ったのか・・・。
そもそも結界なんてどうやって張るのか。確かにシュアの不思議な魔力なら出来ないこともないかもしれないけれど、なぜこんなことをする必要があったのか。
気づけばずんずん歩いて行くシュアがその家に入ることもせず裏に回っていく。
それを疑問に思ったゼロスは、けれどすぐに目に入ったそれを見て、納得した。
建てられてから、それほど時間も経っていないように見える、墓石。
徐に、##NAME1##が口を開いた。
「これがルビのお墓。ルビナス=アルメリア…そう彫ってあるの」
「それが本名、ね」
「…うん。ここに一緒に住んでいた私の、恋人。そして、もうこの世にはいない人」
「…」
「今日ここに来たのはね、たまにこうして参りたいって、思ったから」
言ってシュアはゼロスの手をほどくと、墓の前で手を合わせる。
それを見守るゼロスは、その墓石に手を合わせることもなくただ、その光景を見ているしかできない。
「…行こっか。みんな、もうすぐ帰ってくるだろうし」
「なに、もういいの」
「うん。家の中は、この間私がきれーに掃除しといたから」
振り返ったシュアはそう笑って、また結界を抜けるべくゼロスの手を拾った。
そう言ったのは、本当はゼロスに家の中に入ってほしくなかったから。
夢の中で見た光景。幸せそうに笑っていた自分とルビナスの空間。
それを、不思議とゼロスには見てほしくなかった。あのキッチンを、あのリビングを…ベッドを。ゼロスには見せたくなかった。
彼はなにも知らないはずなのに。なんだか、見せるには少しだけ…それこそやましいような感覚を持ったから。
来た時と同じように結界を抜けた2人は、そのままレアバードに乗り込んだ。
行きよりも深さを増した夜空を、たった1つのレアバードで。2人は強い風に煽られながら一直線に飛んで行った。
##NAME1##とゼロスがその家に戻ってから、すこし経った頃だっただろうか。
ジルコンを手に残りの仲間たちはアルテスタの家まで戻り、仮眠を取ったままのロイド達を起こしてリビングへと集まる。
「みんなに聞かせたい話があるんだ」
「話?」
ふいに切り出したロイドにコレットがオウム返しをすると、すぐにロイドは頷く。
「この世界のこと。それから…勇者ミトスのこと」
すでにその場にいて語り部から話を聞いていた面々が、少しだけ顔を険しくする。
それにただならぬ話だと悟った残りの面々もまた、真剣にその言葉に耳を傾けた。
「ミトスはハーフエルフだったんだ」
「な、なんだって…?」
「カーラーン大戦が始まった時に村を追い出された。そして村に戻るためにミトスは仲間とカーラーン大戦を終わらせた」
思わず驚きを言葉にしたしいなに頷いて、ロイドが続ける。
「この世界は、えーっと…精霊…」
「…はぁ。私が代わりに話しましょう」
「ご、ごめん先生」
「精霊オリジンと契約をしたミトスは、そのオリジンから与えられた魔剣の力を利用して世界を二つに引き裂いたの」
『…!』
誰もが驚きをめいっぱいに張り付け、ミトスが…とプレセアが零すと、リフィルはそれに頷いた。
「そしてミトスには3人の仲間がいたわ。ミトス…ミトス=ユグドラシル。そう、ミトスはクルシスのユグドラシル…。彼は姉のマーテル、今はレネゲードのユアン、そして…クラトスと共に、この世界の仕組みを作った」
「!先生…」
「ええ。クラトスはかつての勇者の仲間。そして、彼らは天使となったことで…本来の寿命に逆らい四千年という時を跨いでいる」
「…でも!だからこそ目的も定まったの。魔剣…それがあれば、きっと世界を元に戻すこともできる」
明らかに混乱の色を見せる仲間たちを気遣うように、ふいに##NAME1##がそう言葉を発する。
「そうしたら、この世界の、このアンバランスな仕組みも何とかなるかもしれない。でしょ?」
一緒に行動していた仲間に目を向けると、彼らはそれに頷く。
今初めて事実を聞かされた仲間たちも、少しずつ頭の中を整理しながら…しいなはシュアに向かって、そうだね…と頷いてみせた。
「あとはマナの欠片だな。本当にデリス・カーラーンにあるのかな…」
「オリジンの魔剣のことも気になるわ。それもまたデリス・カーラーンに…?」
ロイドが切り出して、続いたリフィルに何とも言えないね、とシュアが零すと思い悩むようにリーガルが口を開く。
「しかし…危険だな」
「うん…」
けれどその横で、なんてことのないようにゼロスが言った。
「虎穴に入らずんば虎子を得ずじゃねーの?」
「???なんだそりゃ…」
「危険を冒さないと大事なものは手に入らないっていうことだよ」
「へー。そうなんだ」
「…もう悲しくなってくるわね」
わけの分からなそうにしたロイドにジーニアスが説明すると、すぐにリフィルが呆れたようにその手を額に当てる。
「でもゼロスの言う通りだ。行ってみようぜ!クルシスの本拠地、デリス・カーラーンに」
「でもどうやって行くの?」
そんなリフィルの向かいでコレットがそう問いかけると、すぐにゼロスがそれに答えた。
「教典によると救いの塔が入り口になってるな」
「じゃあ救いの塔に行けばいい。こっちにもあるだろ?」
「そりゃあるけどよ。あそこに行くには俺さまのクルシスの輝石が必要なはずだぜ。救いの塔は、クルシスの輝石がカギの役割を果たしてるからな」
「詳しいのね」
「やだなぁリフィル様。俺さま、神子ですからー」
「そっか。お前もクルシスの輝石を持って生まれたんだよなぁ」
「そーゆーこと。今は妹に預けてある。トイズバレー鉱山の南東にある修道院だ」
言ったゼロスを少しだけ窺うようにしながら、シュアはその視線を彼に向けた。
そうだ、つい忘れがちになってしまう。彼が神子だということ。
そしてゼロスにとって、それは恨みたくなるほどの歴史を刻んできた、望みもしない境遇だということ。
だからリフィルに笑った時の彼の表情は、やっぱりどこか眉をしかめたくなるものだということに。
よし、そこへ行こう。そう力強く目標を定めたロイドの目を見つめながら、シュアは我に返ったように言葉を放った。
「あ、でも修道院なら…明日の方がいいよね」
「そっか、そうだな。コレットたちも休んだ方がいいし…明日の朝、そこに向かおう」
言ったロイドに誰もが頷いて、その目にこの先の不安や決意をそれぞれが映し出している。
敵の本拠地は目の前。けれどそれとは別に、ゼロスだけはどこかうかない表情を浮かべて今は遠い、自分の妹のことを思い返していた。
Next.