12 本棚
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「あ、あそこにも外国語の本が」
本棚の一番上の段にある外国語が背表紙の本に手を伸ばす。私はだんだんと当初の目的を忘れ、外国語の本をいろいろ見てみることに夢中になりだしたのだ。
だが、どうにも目当ての本に手が届かない。背伸びをしても届かないので、次第に爪先立ちになっていく。だんだんと無理のある体勢になってきたので、私は伸ばしたのと反対の手で棚の段に体重をかけて立っていた。それが良くなかったのだ。
「もうちょっと……うわっ!」
本棚がぐらりと大きく揺れる。
まずい、倒れる。そう思った私は体勢を崩しながら後ずさるが、背の高い本棚は私に向かって倒れてくる。その時、私の背中が何かにもたれかかったのを感じた。
「…………ん……」
「え?」
ギュッと目を瞑って衝撃を待ったが、本棚は倒れてこない。足下に何冊かの本がバサバサと落ちてくるだけだ。まあそれもなかなか痛いのだが。
「…………」
「うわー!ジェジェさん、ごめんなさい!」
目を開ければ私の体はジェジェさんにもたれかかっていて、本棚を支えるジェジェさんの両腕に包まれる形になっていた。どうやらジェジェさんが腕で頭の高さの本も落ちないように押さえてくれたみたいだ。
すぐに離れようとするが、目の前には本棚があるので私からは離れられない。ジェジェさんの腕が退かされるまでたいして時間はかからなかったはずだが、申し訳なさと恥ずかしさでとても長く感じた。
「…………何をしていた……」
「えっと、あそこの本を取ろうとしてて……」
「これか…………?」
「は、はい、それです。ありがとうございます」
せっかく取ってもらったのだが、棚からはたくさんの本が落ちてしまったのでそれどころではなかったりする。
「…………今度は、自分を呼べ……取ってやる…………」
「そんな。店内にいるならともかく、わざわざ奥から来ていただくのは申し訳ないですよ」
「……だが…………今も自分が来ていなければ……危険、だった…………」
ジェジェさんはさっきまで店の奥のいわゆる居住スペースにいた。きっと偶々私が本棚を倒しそうなときに何か用があってこっちに来たのだろう。おかげさまで助かった。
「大丈夫ですよ!次からはちゃんと踏み台使いますから」
「………………」
私の言葉にジェジェさんは黙り込む。だが、ただ納得して黙り込んだのではない。不機嫌オーラだ。ジェジェさんの顔は紙袋で隠れているため、その表情は全くといっていいほど見えない。だがたまにこうして態度で巧みに感情表現するのだ。
この不機嫌オーラをよく受ける筆頭の御国さんは大抵容赦なくスルーするが、私は彼ほど図太くないのでとてもじゃないが居た堪れない。
「わ、わかりました!今度からいらっしゃるときはお願いしてもいいですか?」
「…………当然、だ……」
そう応えるジェジェさんは、顔こそ見えないがどこか嬉しそうだ。と、いうのは私の思い上がりだろうか?
ジェジェさんの頭の上の紙袋も、ずっと同じ顔なはずなのに急に可愛らしく見えてきた。
2/2ページ