10 来訪者
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店にやってきたメガネの人は終始不機嫌そうな顔をしていた。やはり、棚からボトルシップが落ちてきたのを怒っているんだろうか。痛そうだったし。
「俺はC3東京支部副支部長第三補佐の露木です。」
「C3?すみません、初めて聞きます。」
「C3は人間と人外との『共存』を目指す中立機関。例えば吸血鬼の存在が公になることで混乱を招くことのないよう処理するのも仕事のひとつです。」
確かに、私は吸血鬼になる前は吸血鬼の存在なんて少しも知らなかった。御国さんの話では人を襲う吸血鬼もいるらしいのだから少しは騒ぎになっていそうなものだが、そうならなかったのはこの人の言うC3とやらが何か手を回していたからなのかもしれない。
「それで…そのC3の方が私に何の御用でしょう?」
「用、というよりは通達です。現在、"人間の"胡桃さんは行方不明ということになっています。しかしそれでは万が一"吸血鬼の"貴女が保護された場合、吸血鬼の存在が公になってしまう可能性がある。」
確かにそうだ。今の私は日光を浴びることが出来ない。それは健康な人間としては不自然だ。つまり、私はもうこれまでのように、
これまでの環境で生活することは出来ないのだ。
今のところ至極まっとうなことを言っている露木さんの話を、私は黙って聞いていた。しかし次に続いた彼の言葉は、衝撃的なものであった。
「そこで、C3は時期を見て胡桃という方に死亡認定が下りるよう手配することが決定しました。」
「っ……!」
吸血鬼になってから、考えていなかった。いや、敢えて考えていなかったのかもしれない。本来私はあの事故で死んでいた。それは紛れもない事実だ。けれど、今"私"はここにいる。それなのに、死んだ扱いになるなんて。
「そもそも貴女はあの時本来亡くなっていた。それに貴女はもう人間ではない。当然のことです。」
「で、でも!私は吸血鬼になってからそんなに経ってないですし、まだ実感がわかないというか、人間だった頃の感じが残ってるというか……」
その時だった。急に露木さんがギロリと睨みつけてきた。不機嫌そうだとは思っていたが、その程度ではない。彼ははっきりとした憎悪を私に向けてきているんだ。
「貴女が吸血鬼になってどれだけ経ったかも、自身の今の状況についてどう思っているかも、俺には関係ない。貴女は"今"、"吸血鬼"である。それが全てなんですよ。」
会ったばかりのその人に言われたその言葉は、私の胸に重く残った。
「俺はC3東京支部副支部長第三補佐の露木です。」
「C3?すみません、初めて聞きます。」
「C3は人間と人外との『共存』を目指す中立機関。例えば吸血鬼の存在が公になることで混乱を招くことのないよう処理するのも仕事のひとつです。」
確かに、私は吸血鬼になる前は吸血鬼の存在なんて少しも知らなかった。御国さんの話では人を襲う吸血鬼もいるらしいのだから少しは騒ぎになっていそうなものだが、そうならなかったのはこの人の言うC3とやらが何か手を回していたからなのかもしれない。
「それで…そのC3の方が私に何の御用でしょう?」
「用、というよりは通達です。現在、"人間の"胡桃さんは行方不明ということになっています。しかしそれでは万が一"吸血鬼の"貴女が保護された場合、吸血鬼の存在が公になってしまう可能性がある。」
確かにそうだ。今の私は日光を浴びることが出来ない。それは健康な人間としては不自然だ。つまり、私はもうこれまでのように、
これまでの環境で生活することは出来ないのだ。
今のところ至極まっとうなことを言っている露木さんの話を、私は黙って聞いていた。しかし次に続いた彼の言葉は、衝撃的なものであった。
「そこで、C3は時期を見て胡桃という方に死亡認定が下りるよう手配することが決定しました。」
「っ……!」
吸血鬼になってから、考えていなかった。いや、敢えて考えていなかったのかもしれない。本来私はあの事故で死んでいた。それは紛れもない事実だ。けれど、今"私"はここにいる。それなのに、死んだ扱いになるなんて。
「そもそも貴女はあの時本来亡くなっていた。それに貴女はもう人間ではない。当然のことです。」
「で、でも!私は吸血鬼になってからそんなに経ってないですし、まだ実感がわかないというか、人間だった頃の感じが残ってるというか……」
その時だった。急に露木さんがギロリと睨みつけてきた。不機嫌そうだとは思っていたが、その程度ではない。彼ははっきりとした憎悪を私に向けてきているんだ。
「貴女が吸血鬼になってどれだけ経ったかも、自身の今の状況についてどう思っているかも、俺には関係ない。貴女は"今"、"吸血鬼"である。それが全てなんですよ。」
会ったばかりのその人に言われたその言葉は、私の胸に重く残った。