09 再会
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いつも通り日の暮れた後の街を散歩していたある日の事だ。
「胡桃先輩…?」
名前を呼ばれて、思わず振り返ってしまった。まさか街で呼び止められるとは思わなかったのだ。人違いのふりをして振り返らずに歩き続ければ誤魔化せたかもしれないが、もう遅い。
吸血鬼になってから家には帰っていない。つまり私はかつての知人に会うにはとても都合が悪いのだ。
「やっぱり!胡桃先輩じゃないですか!」
まずい、非常にまずい。振り返った先に居たのは、中学時代の陸上部の後輩であった。確か彼は今、高校1年生であったか。
「あー、えっと、久しぶりー」
「久しぶりー、じゃないですよ。行方不明になってるって友達から聞きました。」
「えー、そ、そうだっけ?あはは。」
どうやら私が行方知れずになっている事は知人に広まっているらしい。
上手い誤魔化し方が見つからず、あからさまに怪しい態度をとってしまう。
「何かあったんですか?」
「え?」
「何か事件に巻き込まれてるとか。」
後輩の彼は私の目を真っ直ぐ覗き込む。そいえば彼は困っている人間を放っておけないタイプであった。うむ、益々面倒だ。
「実はね、城田くん……」
「は、はい。」
「私に会ったことは忘れてー!」
何か相談する気になったように見せかけ、彼が油断した所でその場から逃げ出す。
「ええ⁉︎ちょと、胡桃先輩!」
驚いたように私の名前を呼ぶ彼のリュックサックから黒猫がこちらを覗いていたことに、その時私は気づかなかった。