無機質な部屋
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目を開ければ、視界いっぱいに暗い部屋の様子が広がる
灰色っぽい天井に、灰色っぽい壁
床には、ありきたりな無地の絨毯が強いてある
電気をつければ明るくなるのだろうけれど、電気をつける理由は特にない
周囲を見渡し続けていた時、
ふと、部屋の一部分から、ちょっとだけ光が差し込んでいる事に気付いた
「・・・今は昼なんだ」
遮光カーテンに覆われた窓に近寄りながら、独り言を呟いてみる
何となく発した言葉に返事が返って来る訳も無く、独り言はすぐに部屋の静けさにかき消された
後に残るのは、何事も無かったかのように黙り込む静寂だけ
今の独り言は、いつしか発した張本人の僕にすら忘れられるのだろう
まるで、生き物が産まれてから死んで忘れられる様子のようだ、なんて適当に考えながら、カーテンを開けてみる
カーテンを開ければ、カーテンに隠されていた窓が姿を現す
その窓に隔たれた向こう側には、太陽に照らされた眩しい世界が広がっている
今は夏なのだろうか、遠くを見れば、遠くの景色がぽやぽやと揺れてぼやけて見える
こんな暑い中でも、あの人は僕を探してくれているのだろうか
「どうしたのサ」
突然、後ろから聞きなれた声が響く
振り返れば、そこには相変わらず奇抜な服を着ているマルクが立っていた
「・・・外を眺めてただけだよ。
だってこの部屋、何にも無くってやる事無いんだもの」
カーテンを閉めながら、近くにあった何の模様も面白みもない椅子に座る
椅子に座れば、役目を終えた、と言わんばかりに、体を支えていた足が軽くなる
「・・・外、出たいの?」
「別に・・・。今夏でしょう?暑いの嫌だし、出たくないよ。
ただ・・・ワガママ言っていいなら、暇つぶし用のオモチャとかが欲しいかな」
実際、この部屋の中は全く暑くない
冬になっても寒くないし、天気による気温の変化もない
窓から外の様子を見なければ、季節も天気も、昼か夜かも分かりやしない
壁掛け時計は、1から12の数字をただグルグルと回っているだけ
だから、午後1時かと思ったら午前1時だった、なんて事もよくある事だ
そんなどうでもいい事を考えながらマルクの方をチラリ、と見る
マルクはとても不安そうなそうな表情で僕を見つめていた
自分がどれ程愛されているか、マルクの様子を見ていれば痛いほどによく分かる
「愛されている」それが自覚できるだけで、生きる意味を感じられる
一人でこの部屋にいる間は寂しいけれど・・・それでも、とても幸せだ
本音を言えば、オモチャなんかいらない
部屋には本当に何もないし、退屈なのも間違いない
けれど、本当は、愛が僕から離れていないかを知るのが一番の目的
別に確認するまでも無いのかもしれないけれど・・・不安そうな表情が愛しくて
ちょっと可哀想ではあるけれど、止められない
買い物一つすら許さないなんて、他の人から見たら一種の束縛なのかもしれない
けれど、僕は別にそれでも構わない
束縛される程愛されるなんて、とても幸福じゃないか
マルクは僕の事を愛してくれているし、僕もマルクの事を愛している
つまり、僕達は相思相愛、というものだろう
何か大切なものを忘れているような気もするけれど
大切なものを忘れてしまうほどに、僕は幸せだ
end
灰色っぽい天井に、灰色っぽい壁
床には、ありきたりな無地の絨毯が強いてある
電気をつければ明るくなるのだろうけれど、電気をつける理由は特にない
周囲を見渡し続けていた時、
ふと、部屋の一部分から、ちょっとだけ光が差し込んでいる事に気付いた
「・・・今は昼なんだ」
遮光カーテンに覆われた窓に近寄りながら、独り言を呟いてみる
何となく発した言葉に返事が返って来る訳も無く、独り言はすぐに部屋の静けさにかき消された
後に残るのは、何事も無かったかのように黙り込む静寂だけ
今の独り言は、いつしか発した張本人の僕にすら忘れられるのだろう
まるで、生き物が産まれてから死んで忘れられる様子のようだ、なんて適当に考えながら、カーテンを開けてみる
カーテンを開ければ、カーテンに隠されていた窓が姿を現す
その窓に隔たれた向こう側には、太陽に照らされた眩しい世界が広がっている
今は夏なのだろうか、遠くを見れば、遠くの景色がぽやぽやと揺れてぼやけて見える
こんな暑い中でも、あの人は僕を探してくれているのだろうか
「どうしたのサ」
突然、後ろから聞きなれた声が響く
振り返れば、そこには相変わらず奇抜な服を着ているマルクが立っていた
「・・・外を眺めてただけだよ。
だってこの部屋、何にも無くってやる事無いんだもの」
カーテンを閉めながら、近くにあった何の模様も面白みもない椅子に座る
椅子に座れば、役目を終えた、と言わんばかりに、体を支えていた足が軽くなる
「・・・外、出たいの?」
「別に・・・。今夏でしょう?暑いの嫌だし、出たくないよ。
ただ・・・ワガママ言っていいなら、暇つぶし用のオモチャとかが欲しいかな」
実際、この部屋の中は全く暑くない
冬になっても寒くないし、天気による気温の変化もない
窓から外の様子を見なければ、季節も天気も、昼か夜かも分かりやしない
壁掛け時計は、1から12の数字をただグルグルと回っているだけ
だから、午後1時かと思ったら午前1時だった、なんて事もよくある事だ
そんなどうでもいい事を考えながらマルクの方をチラリ、と見る
マルクはとても不安そうなそうな表情で僕を見つめていた
自分がどれ程愛されているか、マルクの様子を見ていれば痛いほどによく分かる
「愛されている」それが自覚できるだけで、生きる意味を感じられる
一人でこの部屋にいる間は寂しいけれど・・・それでも、とても幸せだ
本音を言えば、オモチャなんかいらない
部屋には本当に何もないし、退屈なのも間違いない
けれど、本当は、愛が僕から離れていないかを知るのが一番の目的
別に確認するまでも無いのかもしれないけれど・・・不安そうな表情が愛しくて
ちょっと可哀想ではあるけれど、止められない
買い物一つすら許さないなんて、他の人から見たら一種の束縛なのかもしれない
けれど、僕は別にそれでも構わない
束縛される程愛されるなんて、とても幸福じゃないか
マルクは僕の事を愛してくれているし、僕もマルクの事を愛している
つまり、僕達は相思相愛、というものだろう
何か大切なものを忘れているような気もするけれど
大切なものを忘れてしまうほどに、僕は幸せだ
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