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昔、マルクが小さな指輪を贈ってくれたんだ。
指輪ってなんだか大人のアクセサリーなイメージがあって、それをはめているだけでちょっぴり大人になれたような気がした。
でも背伸びしたそれは少し緩くて、指の根元でクルクル回ってしまうのが「まだお前には早い」って言われてるみたいで悔しかったっけ。
サイズ直しって手段ももちろんあったけど、マルクが「おまじないみたいなモンだからそれはダメ」って言ってたし、何よりボクちんもこれに手を加えたくなかった。
「中指にすれば?」「ネックレスにすれば?」とも言われたけど……たしかにそれならまだマシだったけど……どうしても薬指にしたかったんだ。
子どもっぽいこだわりだったかもしれないけど。
陽の光や月明かりにかざすともっとキラキラして、それを見ているだけで幸せだった。
……落とすのが怖くて、結局ネックレスにしていたことも多いけど。
だんだんと馴染んできて、ぴったりになって。
やっと指輪に認められたような気がして嬉しかった。
あ、でも「もう回らなくなったよ!」ってマルクに言ったときも「ガキ」って言われたっけ。
ずっと子ども扱いしてくるんだから。
……それから更に数年経った今では、すっかり小さくなっちゃった。
入らなくはないんだけど、外すのに苦労するというか、ハンドクリーム必須というか、いつか外れなくなりそうで怖いって感じ?
せっかくプレゼントしてもらったものだし、外すのは嫌だったから今度は小指にはめることにした。
大きいならともかく小さいのはもうどうにもならないしね。
ちょっと寂しいけど、それだけボクちんが大きくなったと思えば嬉しいような……うーん、複雑。
でも、こうして小指にはまっているのもなかなか可愛いかも?
「……あ、入んなくなっちゃったのサ?」
そんなことを思っていたら、マルクがボクちんの右手に触れてそう言ってきた。
なぜかその声は少しだけ弾んでいた。
「うーん……ちょっともうキツいかも」
「だろうね。子どものキミに贈ったものだし」
「ふふん、ボクちんもすっかり大人だからね!」
少しだけ感じていた寂しさを隠して明るくそう言うと、彼は黙り込んでしまった。
……というか、真顔?
どうしたんだろう?
てっきりいつものように「そういう所がガキなんだよ」みたいなことを言われると思っていたのに。
そんな反応されると、こっちもどうしたらいいのかわからなくて何も言えなくなるじゃないか。
「そっか……うん。じゃあ、今度はこれやるよ」
マルクが先に口を開いた。
ぶっきらぼうなそれと同時に差し出されたのは、手のひらに収まるくらいの小さな箱だった。
「……えっ?」
マルクの顔と上品な光沢のあるそれを交互に見ていると、彼はボクちんから目を逸らして顎をしゃくった。
促されるがままに受け取り、指先に感じる布地の滑らかさに狼狽えながら箱を開いてみる。
「っ、こ、これって……!」
目に飛び込んできたのは、滑らかな輪を描く白銀と頂点に輝く透明な石。
まるでこの世の全ての星たちを集めたような煌めきにクラリと視界が回り、箱を取り落としそうになったのをすんでのところでマルクが受け止めてくれた。
そのまま彼は一度大きく息を吐いてからその輪を慎重に摘みあげ、固まったボクちんの左手をとる。
そしてごく自然に、輪は薬指に収まった。
ちょっとヒンヤリしていたそれはいつもより高いボクちんの体温と重なって馴染んでいく。
「……うん、それなら今のキミにピッタリなのサ」
頬を染めたマルクが満足そうに、うんと優しく笑う。
そのままボクちんの手をとって指輪にキスを落とすと、石の輝きが更に強くなった。
これは夢?と思ってしまうけど薬指の感触が夢じゃないといっていた。
「マ、マルク、えっと、これって、つまり」
「……見ればわかるだろ?」
本当はこの箱を見た時からもしかしてとは思っていた。
ボクちんの能力にかかれば、とか以前にその意図がわからないほどもう子どもじゃない。
……子どもじゃない、けど
「ボクちん子どもだから、ちゃんと言ってくれなきゃわかんないよ?」
零れそうなものを抑え、あの日と同じ台詞を。
正直、指輪だけでも十分すぎるくらいだ。
この指輪にどれだけの価値があって、用意するのにどれだけの労力を要したかなんて見ただけでわかるから。
それでもボクちんは他でもないキミの口から、証が欲しかった。
「もう子どもじゃないだろ?普段は子ども扱いするなーとかいう癖にホンットに都合がいいのサ」
「子どもでもいいもん!」
「ったく……一回しか言わないからな?」
マルクは一度咳払いをしてボクちんを抱き寄せた。
彼の腕の中がいつもより温かい気がして、思わず顔が緩んでしまう。
「グリル、ボクは――」
低く優しく紡がれた言葉が耳に、心の奥底に深く深く染み込んでいく。
胸に柔らかくて温かいものが満ちて、溢れて。
ああ、ダメだ。やっぱり零れちゃった。
「うっ……ひっく、うん、ボクちんも………」
「……大人になっても泣き虫は変わんないのサ?」
ボクちんの頭をグリグリと撫でて楽しそうに笑う。
ああそういえばあの時も泣いちゃったんだっけ?
「そんなことないもん!」と反論しようと顔を上げたけど、彼の顔を見た途端に惚けてしまった。
「でも、そういうところも大好き」
ちゅ、とそのまま軽く口付けられる。
少しだけしょっぱくて、思わずお互いに笑い合う。
ああもう、子どもとか大人とかどうでもいいや。
そんなことを思いながら、少しだけ背伸びをしてキスのお返しをした。
指輪ってなんだか大人のアクセサリーなイメージがあって、それをはめているだけでちょっぴり大人になれたような気がした。
でも背伸びしたそれは少し緩くて、指の根元でクルクル回ってしまうのが「まだお前には早い」って言われてるみたいで悔しかったっけ。
サイズ直しって手段ももちろんあったけど、マルクが「おまじないみたいなモンだからそれはダメ」って言ってたし、何よりボクちんもこれに手を加えたくなかった。
「中指にすれば?」「ネックレスにすれば?」とも言われたけど……たしかにそれならまだマシだったけど……どうしても薬指にしたかったんだ。
子どもっぽいこだわりだったかもしれないけど。
陽の光や月明かりにかざすともっとキラキラして、それを見ているだけで幸せだった。
……落とすのが怖くて、結局ネックレスにしていたことも多いけど。
だんだんと馴染んできて、ぴったりになって。
やっと指輪に認められたような気がして嬉しかった。
あ、でも「もう回らなくなったよ!」ってマルクに言ったときも「ガキ」って言われたっけ。
ずっと子ども扱いしてくるんだから。
……それから更に数年経った今では、すっかり小さくなっちゃった。
入らなくはないんだけど、外すのに苦労するというか、ハンドクリーム必須というか、いつか外れなくなりそうで怖いって感じ?
せっかくプレゼントしてもらったものだし、外すのは嫌だったから今度は小指にはめることにした。
大きいならともかく小さいのはもうどうにもならないしね。
ちょっと寂しいけど、それだけボクちんが大きくなったと思えば嬉しいような……うーん、複雑。
でも、こうして小指にはまっているのもなかなか可愛いかも?
「……あ、入んなくなっちゃったのサ?」
そんなことを思っていたら、マルクがボクちんの右手に触れてそう言ってきた。
なぜかその声は少しだけ弾んでいた。
「うーん……ちょっともうキツいかも」
「だろうね。子どものキミに贈ったものだし」
「ふふん、ボクちんもすっかり大人だからね!」
少しだけ感じていた寂しさを隠して明るくそう言うと、彼は黙り込んでしまった。
……というか、真顔?
どうしたんだろう?
てっきりいつものように「そういう所がガキなんだよ」みたいなことを言われると思っていたのに。
そんな反応されると、こっちもどうしたらいいのかわからなくて何も言えなくなるじゃないか。
「そっか……うん。じゃあ、今度はこれやるよ」
マルクが先に口を開いた。
ぶっきらぼうなそれと同時に差し出されたのは、手のひらに収まるくらいの小さな箱だった。
「……えっ?」
マルクの顔と上品な光沢のあるそれを交互に見ていると、彼はボクちんから目を逸らして顎をしゃくった。
促されるがままに受け取り、指先に感じる布地の滑らかさに狼狽えながら箱を開いてみる。
「っ、こ、これって……!」
目に飛び込んできたのは、滑らかな輪を描く白銀と頂点に輝く透明な石。
まるでこの世の全ての星たちを集めたような煌めきにクラリと視界が回り、箱を取り落としそうになったのをすんでのところでマルクが受け止めてくれた。
そのまま彼は一度大きく息を吐いてからその輪を慎重に摘みあげ、固まったボクちんの左手をとる。
そしてごく自然に、輪は薬指に収まった。
ちょっとヒンヤリしていたそれはいつもより高いボクちんの体温と重なって馴染んでいく。
「……うん、それなら今のキミにピッタリなのサ」
頬を染めたマルクが満足そうに、うんと優しく笑う。
そのままボクちんの手をとって指輪にキスを落とすと、石の輝きが更に強くなった。
これは夢?と思ってしまうけど薬指の感触が夢じゃないといっていた。
「マ、マルク、えっと、これって、つまり」
「……見ればわかるだろ?」
本当はこの箱を見た時からもしかしてとは思っていた。
ボクちんの能力にかかれば、とか以前にその意図がわからないほどもう子どもじゃない。
……子どもじゃない、けど
「ボクちん子どもだから、ちゃんと言ってくれなきゃわかんないよ?」
零れそうなものを抑え、あの日と同じ台詞を。
正直、指輪だけでも十分すぎるくらいだ。
この指輪にどれだけの価値があって、用意するのにどれだけの労力を要したかなんて見ただけでわかるから。
それでもボクちんは他でもないキミの口から、証が欲しかった。
「もう子どもじゃないだろ?普段は子ども扱いするなーとかいう癖にホンットに都合がいいのサ」
「子どもでもいいもん!」
「ったく……一回しか言わないからな?」
マルクは一度咳払いをしてボクちんを抱き寄せた。
彼の腕の中がいつもより温かい気がして、思わず顔が緩んでしまう。
「グリル、ボクは――」
低く優しく紡がれた言葉が耳に、心の奥底に深く深く染み込んでいく。
胸に柔らかくて温かいものが満ちて、溢れて。
ああ、ダメだ。やっぱり零れちゃった。
「うっ……ひっく、うん、ボクちんも………」
「……大人になっても泣き虫は変わんないのサ?」
ボクちんの頭をグリグリと撫でて楽しそうに笑う。
ああそういえばあの時も泣いちゃったんだっけ?
「そんなことないもん!」と反論しようと顔を上げたけど、彼の顔を見た途端に惚けてしまった。
「でも、そういうところも大好き」
ちゅ、とそのまま軽く口付けられる。
少しだけしょっぱくて、思わずお互いに笑い合う。
ああもう、子どもとか大人とかどうでもいいや。
そんなことを思いながら、少しだけ背伸びをしてキスのお返しをした。
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