Xまとめ
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※付き合ってない
※若干過去編設定あります
キラキラと光る電飾。
幸せそうに笑う子ども。
聞こえてくる賛美歌やクリスマスソング。
華を添えるかのように降る白い結晶。
そんなもの全部クソ喰らえだ。
ボクだって“あの時”まではああ過ごしていたさ。
それが当たり前だと思っていた。
疑うことすらなかった。
でも今は……と考えて慌てて頭を振る。
これ以上は考えちゃダメだ、と駆け出した。
少しでも離れたかった。
この暖かくて優しくて、慈愛に満ちた世界から。
何も視界に入れたくないし何も聞きたくなかった。
ひたすら人気の無い方に走って、走って……一面の銀世界に辿り着いてようやく足を止めた。
それでも遠くから祝福と歓喜の歌が聞こえてきて、耳を塞いで蹲る。
美しいはずの歌が不愉快なノイズでしか無かった。
あんなに走ったのに寒くて寒くて堪らない。
身体の震えが止まらない。
呼吸をする度に鋭い冷気が肺を刺し、そのままボクの身体を中心から凍らせていく。
意識が遠のいていくのが怖いのに、どこか甘美にさえ思えてくる。
いっそ呼吸すら止めてしまおうか?
このまま眠りについてしまおうか?
何も見なければ?何も聞かなければ?何も考えなければ?
もうなんでもいい、この痛みから逃れられるならどうだっていい。
とにかくボクは楽になりたいんだ!
「やっと見つけた……!」
意識を手放す寸前、不意に声が響いてきて反射的に顔を上げた。
白銀だけだった世界に違う色が混じっていた。
若葉色の少女――グリルはゼェゼェと荒い呼吸を繰り返しながらこちらに近づいてくる。
その頬は真っ赤に染まっていた。
なんでここに、とボクが言うより先にグリルが口を開いた。
「そんなところにいたら風邪ひくよ?早く帰ろう?」
「嫌だッ!」
自分でも思った以上に大きな声だった。
しまった、と思ったときはもう遅かった。
彼女も足を止めて泣きそうな顔をする。
ああ、そのまま帰ってしまえばいい。
この子にだけはこんな醜態を晒したくないし、これ以上傷つけたくない。
だから一刻でも早く立ち去ってくれ――そう思っているはずなのに、なぜか涙が出てきそうになって俯いた。
サクサクと雪を踏む音が聞こえてくる。
「来るな!」というたった一言がどうしても言えなくて、唇を噛み締めた。
「……家族とじゃなくてもいいんだよ」
思いがけない言葉に顔を上げる。
ボク以上に泣きそうな顔をしたグリルが、それでもうんと優しく笑っていた。
「ねえ、ボクちんとじゃダメ?
ボクちんはキミとクリスマスを過ごしたいな」
ボクの顔を覗き込むグリルの頬はさっきよりも赤くなっていた。
手袋を外して、ボクの帽子に積もった雪を払う。
撫でるようなそれは子どもをあやす母を思わせ、その優しい笑みはどこか神聖さすら感じさせるようで。
気が付いたらあんなに酷かった身体の震えがすっかり止まっていた。
「家族じゃなくても、一緒に居たいと思えれば……それだけでいいんだよ」
グリルがさっきとは違う方の手を差し出す。
ボクも手を出そうとして、でも躊躇って引っ込めようとしたら無理矢理掴まれた。
その手は小さくて柔らかくて……温かかった。
強ばっていた身体が、繋いだ手の指先から少しずつ解けていく。
伝った熱が胸に到達した瞬間、一気に身体が軽くなった。
「だからほら、ちゃんと立って!」
グリルがボクの手を強く引っ張る……が、それでもボクの身体はビクともしなかった。
顔を真っ赤にしてウンウン唸りながら引っ張る彼女がおかしくて可愛くて、思わず笑ってしまう。
その拍子に涙が零れて、雪に解けて消えた。
「ほんっと非力だよな、キミ」
そう言ってわざと急に立ち上がると、彼女は反動で尻もちをついてしまった。
ボクも連られてバランスを崩し雪に倒れ込む。
二人してバカみたいに雪にダイビングして、身体は寒いはずなのに暖かい気すらしてくる。
なぜか笑いが込み上げてきて、気が付いたら全身真っ白のまま大笑いしていた。
グリルはビックリしていたけど、これまたボクに連られのか笑い出す。
二人でひとしきり笑ったあと、お互いの身体に着いた雪を払いあった。
「もう!これお気に入りなのに!」と頬を膨らませる彼女はもういつもの少女だった。
「ほら、早く帰ってス○ブラやるよ!
今日もボコボコにしちゃうからね!」
「はぁ!?今度こそ負けないのサ!」
駆け出す彼女を追いかけて、光の中へ帰る。
胸を刺す痛みが全て消えたわけじゃない。
相変わらず歌は耳障りだし、電飾は目を刺してくるけど……。
「あ!言い忘れてた!」
「何なのサ?」
「マルク、メリークリスマス!」
聞きたくないものはこの子の声が、見たくないものはこの子の笑顔が全部かき消してくれる。
……この小さな灯火があれば、ボクはもう凍らない。
クリスマスなんて大嫌いだけど。
天使にだけならこの言葉を贈ろう。
「……メリークリスマス!」
※若干過去編設定あります
キラキラと光る電飾。
幸せそうに笑う子ども。
聞こえてくる賛美歌やクリスマスソング。
華を添えるかのように降る白い結晶。
そんなもの全部クソ喰らえだ。
ボクだって“あの時”まではああ過ごしていたさ。
それが当たり前だと思っていた。
疑うことすらなかった。
でも今は……と考えて慌てて頭を振る。
これ以上は考えちゃダメだ、と駆け出した。
少しでも離れたかった。
この暖かくて優しくて、慈愛に満ちた世界から。
何も視界に入れたくないし何も聞きたくなかった。
ひたすら人気の無い方に走って、走って……一面の銀世界に辿り着いてようやく足を止めた。
それでも遠くから祝福と歓喜の歌が聞こえてきて、耳を塞いで蹲る。
美しいはずの歌が不愉快なノイズでしか無かった。
あんなに走ったのに寒くて寒くて堪らない。
身体の震えが止まらない。
呼吸をする度に鋭い冷気が肺を刺し、そのままボクの身体を中心から凍らせていく。
意識が遠のいていくのが怖いのに、どこか甘美にさえ思えてくる。
いっそ呼吸すら止めてしまおうか?
このまま眠りについてしまおうか?
何も見なければ?何も聞かなければ?何も考えなければ?
もうなんでもいい、この痛みから逃れられるならどうだっていい。
とにかくボクは楽になりたいんだ!
「やっと見つけた……!」
意識を手放す寸前、不意に声が響いてきて反射的に顔を上げた。
白銀だけだった世界に違う色が混じっていた。
若葉色の少女――グリルはゼェゼェと荒い呼吸を繰り返しながらこちらに近づいてくる。
その頬は真っ赤に染まっていた。
なんでここに、とボクが言うより先にグリルが口を開いた。
「そんなところにいたら風邪ひくよ?早く帰ろう?」
「嫌だッ!」
自分でも思った以上に大きな声だった。
しまった、と思ったときはもう遅かった。
彼女も足を止めて泣きそうな顔をする。
ああ、そのまま帰ってしまえばいい。
この子にだけはこんな醜態を晒したくないし、これ以上傷つけたくない。
だから一刻でも早く立ち去ってくれ――そう思っているはずなのに、なぜか涙が出てきそうになって俯いた。
サクサクと雪を踏む音が聞こえてくる。
「来るな!」というたった一言がどうしても言えなくて、唇を噛み締めた。
「……家族とじゃなくてもいいんだよ」
思いがけない言葉に顔を上げる。
ボク以上に泣きそうな顔をしたグリルが、それでもうんと優しく笑っていた。
「ねえ、ボクちんとじゃダメ?
ボクちんはキミとクリスマスを過ごしたいな」
ボクの顔を覗き込むグリルの頬はさっきよりも赤くなっていた。
手袋を外して、ボクの帽子に積もった雪を払う。
撫でるようなそれは子どもをあやす母を思わせ、その優しい笑みはどこか神聖さすら感じさせるようで。
気が付いたらあんなに酷かった身体の震えがすっかり止まっていた。
「家族じゃなくても、一緒に居たいと思えれば……それだけでいいんだよ」
グリルがさっきとは違う方の手を差し出す。
ボクも手を出そうとして、でも躊躇って引っ込めようとしたら無理矢理掴まれた。
その手は小さくて柔らかくて……温かかった。
強ばっていた身体が、繋いだ手の指先から少しずつ解けていく。
伝った熱が胸に到達した瞬間、一気に身体が軽くなった。
「だからほら、ちゃんと立って!」
グリルがボクの手を強く引っ張る……が、それでもボクの身体はビクともしなかった。
顔を真っ赤にしてウンウン唸りながら引っ張る彼女がおかしくて可愛くて、思わず笑ってしまう。
その拍子に涙が零れて、雪に解けて消えた。
「ほんっと非力だよな、キミ」
そう言ってわざと急に立ち上がると、彼女は反動で尻もちをついてしまった。
ボクも連られてバランスを崩し雪に倒れ込む。
二人してバカみたいに雪にダイビングして、身体は寒いはずなのに暖かい気すらしてくる。
なぜか笑いが込み上げてきて、気が付いたら全身真っ白のまま大笑いしていた。
グリルはビックリしていたけど、これまたボクに連られのか笑い出す。
二人でひとしきり笑ったあと、お互いの身体に着いた雪を払いあった。
「もう!これお気に入りなのに!」と頬を膨らませる彼女はもういつもの少女だった。
「ほら、早く帰ってス○ブラやるよ!
今日もボコボコにしちゃうからね!」
「はぁ!?今度こそ負けないのサ!」
駆け出す彼女を追いかけて、光の中へ帰る。
胸を刺す痛みが全て消えたわけじゃない。
相変わらず歌は耳障りだし、電飾は目を刺してくるけど……。
「あ!言い忘れてた!」
「何なのサ?」
「マルク、メリークリスマス!」
聞きたくないものはこの子の声が、見たくないものはこの子の笑顔が全部かき消してくれる。
……この小さな灯火があれば、ボクはもう凍らない。
クリスマスなんて大嫌いだけど。
天使にだけならこの言葉を贈ろう。
「……メリークリスマス!」