Xまとめ
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※未練タラタランザ→セクトニア様
※モブ目線
やけに月が蒼い夜だった。
変な時間に目覚めてしまい、月に惹かれるように外に出てみた。
冷たい風が容赦なく肌を刺し、軽率に外に出たことを少しだけ後悔する。
あんまり明るいから油断していた……。
とはいえ何となく帰る気にならなくて、パトロールがてら散歩をする。
……状況からすると俺が一番不審者だが。
「……ん?」
風の音に紛れてどこからか歌声が聞こえてきた。
こんな夜更けに何事かとそれを辿ってみる。
「……タランザ殿?」
到着したのは美しい花が咲くワールドツリー。
その根元にタランザ殿がいた。
夜風に吹かれた銀糸がサラサラと靡いていて、月の光が広がるようだ。
こちらに気付いている様子は無い。
彼は後ろにも目があると言うが、今は目の前の花以外の存在は文字通り眼中に無いのだろう。
甲斐甲斐しく水をやりに行く姿は毎日見かけるし、花に向かって話しかけているのも知っている。
しかし今日は、歌っている……正直少し心配だ。
声をかけようにもタイミングをはかりかね、良くないとは思いつつ立ち聴きをしていて気付いた。
この優しい旋律は子守唄だ。
女王に捧げる歌として相応しいか否かはこの際置いておいて、永久なる眠りについているというあの花にはいささか不釣り合いな気がしないでもない。
そもそもこの男は矛盾だらけだ。
起こらないとわかり切っている奇跡を願って旅に出て、後で自分が辛くなるのにわざわざ幻影を造り出す……。
見ていてこちらが苦しくなるくらいだ。
今だってそうだ、誰よりも彼女に目覚めて欲しいと、会いたいと願っているだろう。
歌声は時折震えている。
一瞬声が詰まり、鼻を啜る音がする。
きっとそれは寒さのせいではない。
それでも歌うのを止めようとはしない……眠らせるための揺籃歌を紡ぎ続ける。
本当に矛盾だらけで度し難い。
それでも深く、愚直なまでに彼女を愛しているということだけは、痛いほどに伝わってくる。
そうでなければこんなに優しい歌声なはずがない。
……こんなに胸を締め付ける歌声なはずがない。
月明かりをスポットライトに歌う彼。
ただ1人の観客は嬉しくて揺れているように見えた。
※モブ目線
やけに月が蒼い夜だった。
変な時間に目覚めてしまい、月に惹かれるように外に出てみた。
冷たい風が容赦なく肌を刺し、軽率に外に出たことを少しだけ後悔する。
あんまり明るいから油断していた……。
とはいえ何となく帰る気にならなくて、パトロールがてら散歩をする。
……状況からすると俺が一番不審者だが。
「……ん?」
風の音に紛れてどこからか歌声が聞こえてきた。
こんな夜更けに何事かとそれを辿ってみる。
「……タランザ殿?」
到着したのは美しい花が咲くワールドツリー。
その根元にタランザ殿がいた。
夜風に吹かれた銀糸がサラサラと靡いていて、月の光が広がるようだ。
こちらに気付いている様子は無い。
彼は後ろにも目があると言うが、今は目の前の花以外の存在は文字通り眼中に無いのだろう。
甲斐甲斐しく水をやりに行く姿は毎日見かけるし、花に向かって話しかけているのも知っている。
しかし今日は、歌っている……正直少し心配だ。
声をかけようにもタイミングをはかりかね、良くないとは思いつつ立ち聴きをしていて気付いた。
この優しい旋律は子守唄だ。
女王に捧げる歌として相応しいか否かはこの際置いておいて、永久なる眠りについているというあの花にはいささか不釣り合いな気がしないでもない。
そもそもこの男は矛盾だらけだ。
起こらないとわかり切っている奇跡を願って旅に出て、後で自分が辛くなるのにわざわざ幻影を造り出す……。
見ていてこちらが苦しくなるくらいだ。
今だってそうだ、誰よりも彼女に目覚めて欲しいと、会いたいと願っているだろう。
歌声は時折震えている。
一瞬声が詰まり、鼻を啜る音がする。
きっとそれは寒さのせいではない。
それでも歌うのを止めようとはしない……眠らせるための揺籃歌を紡ぎ続ける。
本当に矛盾だらけで度し難い。
それでも深く、愚直なまでに彼女を愛しているということだけは、痛いほどに伝わってくる。
そうでなければこんなに優しい歌声なはずがない。
……こんなに胸を締め付ける歌声なはずがない。
月明かりをスポットライトに歌う彼。
ただ1人の観客は嬉しくて揺れているように見えた。