夢と真実と友情
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カービィがナイトメアを倒したことで、ポップスターに平和が戻った。
夢の泉は元通り美しく虹色に輝き、人々の夢は守られている。
まるで物語のような、綺麗な結末。
「……それで、よかったじゃないか」
プププランドの王にして、夢の泉の守護者たるデデデは満足そうに笑う。
一見黒に見紛う深い青の瞳は、真っ直ぐにカービィを見つめていた。
その瞳は酷く優しく、どこか夜の海を思わせる。
「よくないよ……こんなの全然、よくない……」
しかしカービィは、彼の視線を跳ね返すかのように睨みつけていた。
絞り出すような声も、握りしめられた小さな拳も、ぶるぶると怒りに震えている。
「みんなボクをヒーロー扱いしてくるんだ。
お礼もいっぱい貰って、すごいね、えらいね、頑張ったねって褒められて」
「本当のことだろう?
おまえは夢の泉を守った英雄ぞい」
デデデは相変わらず穏やかな表情を浮かべている。
その表情に暗いものは微塵もない。
カービィは小さく首を振った。
その目は潤み、今にも涙が零れ落ちてしまいそうだ。
デデデの瞳が凪いだ海ならば、彼女の瞳はさしずめ荒波だろうか。
「違う……違うよ、だって、デデデはボクが気付くずっと前からみんなを守ろうとしてた……。
本当の英雄はボクなんかじゃない。
ボクは、ボクはそれを知ってるから、みんなに教えなきゃいけないの。
だからボク説明したよ、誰が本当の英雄なのか。
なのに、皆信じてくれないの!
『デデデを庇ってるのね』とか……意味わかんない……っ!」
何も知らない村人の間では、「デデデ=夢の泉のピンチにも拘らず遊んでいた駄目な王様」というレッテルを張られたままだった。
酷いところでは、昔のようにナイトメアと密通していたという噂すら立っているほどだ。
カービィは必死に村人に事情に説明しようとしていた。
「デデデは夢の泉を守ろうとしていた」「ボクのためを思ってくれていた」と。
しかし村人は全く聞く耳を持たず、むしろカービィが必死になればなるほど、デデデを庇っていると思われ、却って彼の評判を落としかねないことになってしまっていた。
そうなってしまえばさすがのカービィも何も言えない。
「ワシ……いや、“俺”がやった過去のことを考えれば当然の帰結だ。
今更何とも思わないぞ」
「そんなの過去の話だよ!」
カービィは声を張り上げるが、デデデは黙って首を振る。
それどころかおどけるように笑ってみせた。
「それを言っていいのは被害者だけだろ?
反乱が起こらないだけまだマシな方だ」
「……ッ、おかしいよ!
こんなの、絶対おかしい……」
カービィは堪らず顔を覆って泣き出してしまった。
心無い村人の言葉を聞くたび、彼女自身の心が引き裂かれそうだった。
「何も知らないくせに!」と叫びたいのを何度こらえたことか。
彼女が必死になればなるほど、庇っていると思われる悪循環。
何もできない自分が歯痒かった。
「たとえ世界を守れても、ボクはキミを、大切な人一人さえちゃんと守れていないじゃないか……っ!」
半ば叫ぶように、言葉を吐き出す。
デデデは眉根を寄せて、小さく溜め息をついた。
「なぁカービィ、あの時お前が俺に言ってくれたこと、覚えているか?」
問われたカービィは顔を上げ、怪訝そうな表情で彼を見た。
彼は頬をポリポリと掻きながら少しぶっきらぼうに呟く。
「『キミがそう思ってくれているのなら、ボクは大丈夫だよ』
そう言ったよな?
……この言葉、そのまんまお前に返すぜ」
彼女の目が大きく見開かれた。
星空の下、たしかに自分が言ったことだ。
悪夢がこの星を蝕んだあの時、デデデが身を呈してまで自分を守ろうとしてくれていたことが嬉しかった。
いけないと思いながらも、喜んでしまった。
彼の言葉は、気持ちは、周囲の期待に応えるべく戦い続けて磨り減った彼女の心に、やわらかな火を灯した。
最終的に自分が戦う事になろうと、そう言ってくれる人が居るだけで、どれだけ嬉しかったことか。
「正直、お前がああ言ってくれるとは思わなかったんだよな。
クラッコとかは俺が王子だったころから付き合いがあるし、メタナイトはまあ……アイツは察しがいいんだろうな。
それにしてもアイツとは最後まで揉めたな……『カービィに説明だけでもしておくべきだ』って怒られたし」
「そうだよ!なんでボクに一言相談してくれなかったの!」
「だって、事情知っちまったら絶対自分でやるだろ?」
ウッと言葉に詰まるカービィ。
見事に図星である。
どう考えても自分が戦おうとする姿しか想像しかできない。
その反応を見た彼もやれやれと肩を竦めた。
「住民からどう思われていようが、正直どうでもいい。
誰でもないお前が、ちゃんとわかってくれている。
理解してくれている……それだけで十分なんだよ。
むしろ、俺が一番お前にお礼を言わなきゃけない立場だ。
……俺の国を、俺を、守ってくれてありがとう」
そう言い切る笑顔があまりにも堂々としていて。
「あぁ、やっぱり大王なんだ」と思わずにいられないほどで。
まだ少し納得ができなかったが、「キミがそう言ってくれるなら」とカービィも小さく頷いた。
「ああ、そんな話をしていて思い出した。
約束のものを渡さなきゃな」
デデデがおもむろに内線電話を取り「アレを」と雑な指示を出すと、すぐにワドルディが大きな化粧箱を抱えてやって来た。
慎重に丁寧にカービィの前に置くと、素早く去っていく。
「……?」
キョトンとする彼女を促すように、デデデは顎をしゃくる。
勧められるがままにカービィは箱を開け、すぐに大きな歓声を上げた。
そこに入っていたのは、なかなかお目にかかれないほどに立派なスイカだった。
まるで宝石のように艶やかで、見ただけでみずみずしさがわかるようだ。
「やるよ、それ」
「えぇっ、いいの!?
これすっごい高いやつじゃない!?」
「お前のためのものだ。
あの時俺言っただろ?
『スイカ用意して待ってるから』って」
だから遠慮なく受け取ってくれ、と続ける。
確かにそんなことを言われた記憶はあるが、まさかこんなにご立派なものを持ち出されると思っていなかったカービィは、呆然とするばかりだった。
「覚えててくれたんだ」
「当然だろう?
この俺様が直々に最高のものを選んだ。
だから心して食えよ?」
得意そうに笑うデデデ。
そんな彼を見て、カービィはピンと思いついた。
「ねぇ、せっかくだから一緒に食べようよ!」
「カービィがスイカを分けるなんて明日は槍でも降るのか……?」
「なっ、酷くない!?それ!」
我ながら名案だと思っていたのに!と憤慨するカービィをあやしながら、再びワドルディを呼ぶ。
ワドルディはスイカを持って行くと、すぐに切り分けて戻ってきた。
予想通りとてもみずみずしく、綺麗な赤色をしている。
「美味しそう……!いただきまーす!」
カービィは豪快にかぶりつくと、満面の笑みを浮かべた。
「んんん~!あまぁ~い!」
そのままモリモリと食べ進める。
いい食べっぷりである。
嬉しそうにデデデも笑うと、スイカを手に取りかじり――カービィと同じ表情を浮かべた。
「うま……!」
「でしょ!こんなに美味しいスイカ初めて食べた!
ありがとうデデデ!」
「なん変な話だな、俺がお礼であげたものなのにお礼言われるって」
「だって、こんなに美味しいのくれたんだもん」
「まぁ、お前らしいな」
二人は夢中になってスイカにかぶりつく。
ちなみにカービィが、吸い込みたくなる衝動を「もったいないから」を一生懸命抑えていたことは秘密である。
まぁ、デデデには当然お見通しであるのだが。
「それにしてもホントにこれ美味いな。
ちょっと高いけど産地契約するかな……」
「えーそれはちょっとやめてよ。
王室御用達とか余計に値段上っちゃうじゃん。
君腐っても王なんだし」
「俺が食ってるからって人気出るのか?」
「(……最近結構人気あると思うんだけどな、ムカつくから黙っておこう)」
「別に、いつでも食べに来ればいいだろう。
格安価格で提供してやろう」
「待ってお金取るの?
一応聞いておくとトモダチプライスは?」
「一億デデン」
「価格設定ひどくない?」
そんな他愛もない冗談を言い合いながら、スイカを食べる二人。
残り半分を過ぎた頃、不意にカービィの表情が真剣なものになった。
「……ボクはね、キミが思っている通り、あんまり戦うことは好きじゃないよ。
できれば平穏に過ごしたいとも思ってる」
「……あぁ、そうだろうな」
デデデは食べかけのスイカを皿に置くと真っ直ぐに彼女の方を見た。
そんなこと彼はとっくの昔に知っていた。
彼女は目をつぶり、スイカをもう一口だけ齧ると小さく頷いた。
「でもキミは、一つだけ勘違いをしている。
あのね、ボクは……“意味のない戦い”が嫌いなだけなんだよ。
無意味に誰かを傷付けたりとか、泣かせちゃったりとか、そういうのが嫌なの。
目的があるなら、戦うことを否定しない……むしろボクは、大切なもののためならいくらでも頑張れる、戦ってみせる」
目を開きまっすぐにデデデの方を向く。
真剣な表情がふわりとしたものに変わった。
「ボクはね、キミが王のこの星を守りたいんだよ。
これは紛れもないボクの意志。
誰か押し付けられたものじゃなくて、ボク自身が思って、ボク自身が決めたもの」
デデデの目が大きく見開かれる。
何かを言おうとして、しかし言葉にならなくて、口をつぐむ。
彼女がそう言ってくれたからといって、直ぐには頷けない。
それもカービィにはわかっていた。
彼女もずっと彼を見ていたから。
「でもボクだけじゃ守りきれないかもしれない……。
この前みたいに、キミの方が早く気づくこともあるしね。
……だから、ボクは一緒にこの星を守りたい。
キミとこの星を守るためなら、ボクはいくらでも頑張れる、戦える。
キミがもし、ボクを守りたいと思ってくれてるなら、ボクと一緒に戦って欲しいんだ」
彼が自分を守ろうと、戦わなくて済むようにしてくれてる事を知って、それでも……いや、だからこそ共に戦いたいと願った。
彼は一瞬泣きそうに唇を噛み締める。
しかし直ぐに、太陽のような笑みを浮かべた。
「当然だ!お前もこの星も俺様が守ってやる!」
夢と真実と友情
(キミごとこの星を守ってみせる)
NEXT
→あとがき
夢の泉は元通り美しく虹色に輝き、人々の夢は守られている。
まるで物語のような、綺麗な結末。
「……それで、よかったじゃないか」
プププランドの王にして、夢の泉の守護者たるデデデは満足そうに笑う。
一見黒に見紛う深い青の瞳は、真っ直ぐにカービィを見つめていた。
その瞳は酷く優しく、どこか夜の海を思わせる。
「よくないよ……こんなの全然、よくない……」
しかしカービィは、彼の視線を跳ね返すかのように睨みつけていた。
絞り出すような声も、握りしめられた小さな拳も、ぶるぶると怒りに震えている。
「みんなボクをヒーロー扱いしてくるんだ。
お礼もいっぱい貰って、すごいね、えらいね、頑張ったねって褒められて」
「本当のことだろう?
おまえは夢の泉を守った英雄ぞい」
デデデは相変わらず穏やかな表情を浮かべている。
その表情に暗いものは微塵もない。
カービィは小さく首を振った。
その目は潤み、今にも涙が零れ落ちてしまいそうだ。
デデデの瞳が凪いだ海ならば、彼女の瞳はさしずめ荒波だろうか。
「違う……違うよ、だって、デデデはボクが気付くずっと前からみんなを守ろうとしてた……。
本当の英雄はボクなんかじゃない。
ボクは、ボクはそれを知ってるから、みんなに教えなきゃいけないの。
だからボク説明したよ、誰が本当の英雄なのか。
なのに、皆信じてくれないの!
『デデデを庇ってるのね』とか……意味わかんない……っ!」
何も知らない村人の間では、「デデデ=夢の泉のピンチにも拘らず遊んでいた駄目な王様」というレッテルを張られたままだった。
酷いところでは、昔のようにナイトメアと密通していたという噂すら立っているほどだ。
カービィは必死に村人に事情に説明しようとしていた。
「デデデは夢の泉を守ろうとしていた」「ボクのためを思ってくれていた」と。
しかし村人は全く聞く耳を持たず、むしろカービィが必死になればなるほど、デデデを庇っていると思われ、却って彼の評判を落としかねないことになってしまっていた。
そうなってしまえばさすがのカービィも何も言えない。
「ワシ……いや、“俺”がやった過去のことを考えれば当然の帰結だ。
今更何とも思わないぞ」
「そんなの過去の話だよ!」
カービィは声を張り上げるが、デデデは黙って首を振る。
それどころかおどけるように笑ってみせた。
「それを言っていいのは被害者だけだろ?
反乱が起こらないだけまだマシな方だ」
「……ッ、おかしいよ!
こんなの、絶対おかしい……」
カービィは堪らず顔を覆って泣き出してしまった。
心無い村人の言葉を聞くたび、彼女自身の心が引き裂かれそうだった。
「何も知らないくせに!」と叫びたいのを何度こらえたことか。
彼女が必死になればなるほど、庇っていると思われる悪循環。
何もできない自分が歯痒かった。
「たとえ世界を守れても、ボクはキミを、大切な人一人さえちゃんと守れていないじゃないか……っ!」
半ば叫ぶように、言葉を吐き出す。
デデデは眉根を寄せて、小さく溜め息をついた。
「なぁカービィ、あの時お前が俺に言ってくれたこと、覚えているか?」
問われたカービィは顔を上げ、怪訝そうな表情で彼を見た。
彼は頬をポリポリと掻きながら少しぶっきらぼうに呟く。
「『キミがそう思ってくれているのなら、ボクは大丈夫だよ』
そう言ったよな?
……この言葉、そのまんまお前に返すぜ」
彼女の目が大きく見開かれた。
星空の下、たしかに自分が言ったことだ。
悪夢がこの星を蝕んだあの時、デデデが身を呈してまで自分を守ろうとしてくれていたことが嬉しかった。
いけないと思いながらも、喜んでしまった。
彼の言葉は、気持ちは、周囲の期待に応えるべく戦い続けて磨り減った彼女の心に、やわらかな火を灯した。
最終的に自分が戦う事になろうと、そう言ってくれる人が居るだけで、どれだけ嬉しかったことか。
「正直、お前がああ言ってくれるとは思わなかったんだよな。
クラッコとかは俺が王子だったころから付き合いがあるし、メタナイトはまあ……アイツは察しがいいんだろうな。
それにしてもアイツとは最後まで揉めたな……『カービィに説明だけでもしておくべきだ』って怒られたし」
「そうだよ!なんでボクに一言相談してくれなかったの!」
「だって、事情知っちまったら絶対自分でやるだろ?」
ウッと言葉に詰まるカービィ。
見事に図星である。
どう考えても自分が戦おうとする姿しか想像しかできない。
その反応を見た彼もやれやれと肩を竦めた。
「住民からどう思われていようが、正直どうでもいい。
誰でもないお前が、ちゃんとわかってくれている。
理解してくれている……それだけで十分なんだよ。
むしろ、俺が一番お前にお礼を言わなきゃけない立場だ。
……俺の国を、俺を、守ってくれてありがとう」
そう言い切る笑顔があまりにも堂々としていて。
「あぁ、やっぱり大王なんだ」と思わずにいられないほどで。
まだ少し納得ができなかったが、「キミがそう言ってくれるなら」とカービィも小さく頷いた。
「ああ、そんな話をしていて思い出した。
約束のものを渡さなきゃな」
デデデがおもむろに内線電話を取り「アレを」と雑な指示を出すと、すぐにワドルディが大きな化粧箱を抱えてやって来た。
慎重に丁寧にカービィの前に置くと、素早く去っていく。
「……?」
キョトンとする彼女を促すように、デデデは顎をしゃくる。
勧められるがままにカービィは箱を開け、すぐに大きな歓声を上げた。
そこに入っていたのは、なかなかお目にかかれないほどに立派なスイカだった。
まるで宝石のように艶やかで、見ただけでみずみずしさがわかるようだ。
「やるよ、それ」
「えぇっ、いいの!?
これすっごい高いやつじゃない!?」
「お前のためのものだ。
あの時俺言っただろ?
『スイカ用意して待ってるから』って」
だから遠慮なく受け取ってくれ、と続ける。
確かにそんなことを言われた記憶はあるが、まさかこんなにご立派なものを持ち出されると思っていなかったカービィは、呆然とするばかりだった。
「覚えててくれたんだ」
「当然だろう?
この俺様が直々に最高のものを選んだ。
だから心して食えよ?」
得意そうに笑うデデデ。
そんな彼を見て、カービィはピンと思いついた。
「ねぇ、せっかくだから一緒に食べようよ!」
「カービィがスイカを分けるなんて明日は槍でも降るのか……?」
「なっ、酷くない!?それ!」
我ながら名案だと思っていたのに!と憤慨するカービィをあやしながら、再びワドルディを呼ぶ。
ワドルディはスイカを持って行くと、すぐに切り分けて戻ってきた。
予想通りとてもみずみずしく、綺麗な赤色をしている。
「美味しそう……!いただきまーす!」
カービィは豪快にかぶりつくと、満面の笑みを浮かべた。
「んんん~!あまぁ~い!」
そのままモリモリと食べ進める。
いい食べっぷりである。
嬉しそうにデデデも笑うと、スイカを手に取りかじり――カービィと同じ表情を浮かべた。
「うま……!」
「でしょ!こんなに美味しいスイカ初めて食べた!
ありがとうデデデ!」
「なん変な話だな、俺がお礼であげたものなのにお礼言われるって」
「だって、こんなに美味しいのくれたんだもん」
「まぁ、お前らしいな」
二人は夢中になってスイカにかぶりつく。
ちなみにカービィが、吸い込みたくなる衝動を「もったいないから」を一生懸命抑えていたことは秘密である。
まぁ、デデデには当然お見通しであるのだが。
「それにしてもホントにこれ美味いな。
ちょっと高いけど産地契約するかな……」
「えーそれはちょっとやめてよ。
王室御用達とか余計に値段上っちゃうじゃん。
君腐っても王なんだし」
「俺が食ってるからって人気出るのか?」
「(……最近結構人気あると思うんだけどな、ムカつくから黙っておこう)」
「別に、いつでも食べに来ればいいだろう。
格安価格で提供してやろう」
「待ってお金取るの?
一応聞いておくとトモダチプライスは?」
「一億デデン」
「価格設定ひどくない?」
そんな他愛もない冗談を言い合いながら、スイカを食べる二人。
残り半分を過ぎた頃、不意にカービィの表情が真剣なものになった。
「……ボクはね、キミが思っている通り、あんまり戦うことは好きじゃないよ。
できれば平穏に過ごしたいとも思ってる」
「……あぁ、そうだろうな」
デデデは食べかけのスイカを皿に置くと真っ直ぐに彼女の方を見た。
そんなこと彼はとっくの昔に知っていた。
彼女は目をつぶり、スイカをもう一口だけ齧ると小さく頷いた。
「でもキミは、一つだけ勘違いをしている。
あのね、ボクは……“意味のない戦い”が嫌いなだけなんだよ。
無意味に誰かを傷付けたりとか、泣かせちゃったりとか、そういうのが嫌なの。
目的があるなら、戦うことを否定しない……むしろボクは、大切なもののためならいくらでも頑張れる、戦ってみせる」
目を開きまっすぐにデデデの方を向く。
真剣な表情がふわりとしたものに変わった。
「ボクはね、キミが王のこの星を守りたいんだよ。
これは紛れもないボクの意志。
誰か押し付けられたものじゃなくて、ボク自身が思って、ボク自身が決めたもの」
デデデの目が大きく見開かれる。
何かを言おうとして、しかし言葉にならなくて、口をつぐむ。
彼女がそう言ってくれたからといって、直ぐには頷けない。
それもカービィにはわかっていた。
彼女もずっと彼を見ていたから。
「でもボクだけじゃ守りきれないかもしれない……。
この前みたいに、キミの方が早く気づくこともあるしね。
……だから、ボクは一緒にこの星を守りたい。
キミとこの星を守るためなら、ボクはいくらでも頑張れる、戦える。
キミがもし、ボクを守りたいと思ってくれてるなら、ボクと一緒に戦って欲しいんだ」
彼が自分を守ろうと、戦わなくて済むようにしてくれてる事を知って、それでも……いや、だからこそ共に戦いたいと願った。
彼は一瞬泣きそうに唇を噛み締める。
しかし直ぐに、太陽のような笑みを浮かべた。
「当然だ!お前もこの星も俺様が守ってやる!」
夢と真実と友情
(キミごとこの星を守ってみせる)
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