※おまけ(若干ホモ変態臭い・キャラ崩壊)


｢……無事に、渡せましたかねぇ｣


ランプキンはローアを操縦する手を休め、小さく呟いた。
あのときの彼の様子を見る限り、脈はかなりあるだろう。
あの目……特に二回目のときの瞳は、明らかに嫉妬と焦りを宿していた。
あそこまで露骨に反応されるといっそ煽り甲斐があるものだ。

現段階では歳の差が気になるが、マルクの成長はそろそろ止まるはずだ。
5、6年もすればグリルも追い付くだろう。
それでもマルクは多少気にするかもしれない。
それを彼に任せるか、それとも多少は煽るか――どうすれば良いかの思考を巡らせる。

が。


｢ラン！拉致監禁ならミーだけにしてくだサイ！｣

｢帰ってキテみたらいきなりローア強奪とか！酷すぎるヨォ！｣

｢わたくしは縛られていないだけマシなんだろうけど、納得いかないわ｣


ぎゃあぎゃあと騒ぐ三人のせいで、思考がうまく纏まらない。
万が一にも二人の邪魔をしないように、まずウィズとドロシアの二人を家から連れ出した。
更にちょうどこちらに着いたマホロアをローアごと強奪し、宙に旅立って現在に至る。
ローアも何かを察したのか、ランプキンに従順だった。


｢ローアがボクのお願いを無視するナンテ……！
ランプキン、いつの間にローアを調教したノォ!?｣

｢……ランプキンならできそうね。
無機物すら従えそう｣

｢ローア調教するくらいならミーを！ミーに構ってくだサイ！｣

｢あなたは相変わらず欲望に忠実ね｣

｢チョット！ソレはローアに失礼ダヨォ！？
ウィズと比較ナンテしないでよネェ！｣

｢……少し黙っていただけますか？
あっついチョコレートかけますよ？｣

｢ヒィッ！｣


背中から迸る彼の怒気に、マホロアは悲鳴をあげた。
ドロシアも目を逸らし、黙り混む。
賢明な判断だった。

しかし。


｢チョコレートプレイデスか!?
それはそれでバレンタインらしくていいデスね！｣


空気を読めない人が一人だけいた。
あまつさえ目を輝かせている。
マホロアとドロシアの顔が固まった。
その表情は明らかに「空気読めよこの変態」と物語っていた。
変態のせいで巻き添えにされるなんて冗談じゃない。
ランプキンがゆっくりと振り返ると、二人はビクッと身体を震わせた。


｢……ピーピーギャーギャー喚かないでくれるかな？
黙れって言ったよね？
それとも貴方の耳はちゃんと機能していないのかなぁ？｣


彼の目は完全に据わっていた。
今度こそ流石のウィズも固まった。
同時に空気もピシリと凍る。
その空気を感じ取ったのか、ランプキンはハッとした表情を浮かべて慌てて笑った。


｢す、すみません。
考え事をしていたのでつい｣

｢……ランプキンが敬語外れたの久々に見たヨォ……｣

｢なにをそんなに考えていたの？｣


ドロシアの問いに、ランプキンは小さく笑った。
橙の瞳には先程とは打って変わって愛おしむような優しい光が宿っている。


｢花が咲いて、実ればいいなと思っただけですよ｣


御粗末さまでした。