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「……で、どうしてミーは磔にされているのデショウか?」
薄暗い部屋の中、磔にされているウィズは乾いた笑みを浮かべていた。
手足をばたつかせみても、頑丈な拘束具はビクともしない。
……尤も、彼の魔力をもってすれば簡単に破壊できてしまうのだろうが。
彼を見ながら、ダークマインドとランプキンは妖しい笑みを浮かべている。
「おやおや、わかっているくせに」
「わざとなのかしら?」
「わざとってなッ……んむっ……」
マインドが素早くウィズの唇を奪った。
抵抗させる間もなく舌をねじ込み、口内を蹂躙すればウィズの身体から力が抜けていく。
くちゅ、と唾液の交ざり合う水音が響いた。
ゆっくりと顔を離せば、細い銀の糸が一瞬だけ紡がれ、プツリと切れた。
少し息の上がった彼を見下ろしながら、マインドは濡れた唇を舐める。
その光景をランプキンは苦笑しながら見ていた。
「随分と見せ付けてくれますね……」
「ふふ、貴方もする?」
「今は遠慮しておきます。
もっと面白いものがありますからね」
ランプキンがウィズの下腹部――否、もっと下の方に視線を逸らす。
マインドがその視線の先を辿ると、ウィズの股間のあたりがしっかりと膨らんでいたのを見つけ、呆れたように溜め息をついた。
「もう、キスだけでこんなになるなんて……」
「おや、もっと前から少し勃っていましたよ?
磔になった最初から」
「そうなの?
やっぱりそういうところは男の人の方が詳しいのね。
それにしても……」
マインドが真っ直ぐにウィズを見つめる。
その目は加虐的な光が帯びていた。
「いったい何を期待してるのかしら?」
ウィズは屈辱に耐えるように、唇を噛み締めていた。
その表情ですら二人を刺激するとは自覚しているのだろうか。
「まったく貴方ってば……しょうがない人ね」
マインドは聖母のような笑みを浮かべると、手を伸ばしてウィズの頬に触れた。
そのまま感触を楽しむように撫でる。
「マインド様ぁ……」
懇願するような瞳でマインドを見つめるウィズ。
彼女はクスリと笑うと、それに応えるように顔をウィズの顔に近づけた。
二回目の口付けがかわされそうになった刹那……
「マインド嬢」
ランプキンが不意に彼女の腕を掴み、腰を抱き寄せた。
唐突なことに驚き、小さな悲鳴を上げながらなすがままに彼の腕の中に収まるマインド。
ランプキンは彼女の耳元に顔を寄せ、一言二言囁いた。
マインドは一瞬ニヤリと笑ったが、すぐに不満そうに頬を膨らませた。
「……良い考えとは思うけど、いちいちこういうことするのは止めなさい……」
「貴女の反応も個人的にはツボですからね。
……貴女は不意打ちに弱い」
彼はクスリと笑うと、彼女の耳を食んだ。
必死に甘い声を漏らすまいとする彼女の頭を二、三度撫でるとスッと手を離した。
マインドはすぐさま距離を取ると、赤い顔で彼を睨んだ。
「っ……今度絶対啼かせてやる」
「おやおや、楽しみですね」
彼は手に持ったステッキをくるくる回しながら、余裕たっぷりの笑みを浮かべていた。
混乱した表情のウィズは、二人の顔を繰り返し見比べている。
「……な、なにを話していたのデスか?」
「いえ、お気になさらず」
「私たちだけの内緒話よ」
自分はわからないのに、二人は楽しそうだ。
ウィズの心にモヤモヤとした黒煙が広がっていく。
疎外されたような感覚――ウィズの一番嫌いな感覚だった。
「……そういえば、今月発売された『最新版 世界の拷問』はお読みになられましたか?」
「ええ、読みましたよ!」
「What!?何ですかそのデンジャラスなネームのブック!!」
あまりにも唐突に話が変わり、ウィズは目をむいた。
先程までの艶めかしい会話は何だったのだろうか。
「今回の応募者全員サービスのギロチン、マインド嬢は応募しましたか?」
「ギロチン!?応募者全員サービスに!?」
「今回はパスしました。
デザインがあまり好きではなくて……」
「パスした理由それデスか!?」
「ああたしかに、あのモロに拷問具って雰囲気は逆に萎えますね」
「出来る限りシンプルであってほしいものね」
「え……なんデスかその変な拘り……」
「でも歴史があるものなら装飾があってもいいと思うの。
むしろ趣を感じるわ」
「そうですね。
装飾に意味を見いだせると愛着が沸きますからねぇ」
紳士淑女のように上品な笑みを浮かべながら、しかし内容は限りなくえぐい会話が繰り広げられていく。
その光景を、ウィズは信じられないものを見る目で見ていた。
ちなみに彼はドМだが、ハードな拷問類の類はあまり好みではないらしい。
「あとは『月刊拷問』も買いましたよ」
「ほう……今月は緊縛特集でしたよね。
三つ目の論文がなかなか興味深かったです」
「今までの学説が覆る日も近いかもしれませんね」
拷問に論文や学説があるのか、とツッコみたいウィズだったがもう話には入れない。
彼には理解できない世界が出来上がっていた。
ウィズのことなどまったく目に入っていないかのようだ。
美しい顔立ちの二人が微笑を湛えながら語らう姿は絵になるが、いかんせん内容が酷い。
「108ページのロープはもう少し締め付けてあってほしかったわ」
「たしかに。
あれでは逆に体重がかかってしまいそうですよね……される方の身にもなってほしいものです。
される気はありませんが」
「あら、ランプキンさんも縛り上げてみたいとも思ったのに。
といっても、私は鎖ばっか使ってるけど」
「私はどちらかと言うとロープや毛糸の方が好きですね」
「鎖も結構良いわよ?
ジャラジャラって音で聴覚も責めることができるのよ!
目隠しをすれば威力も倍増!」
「たしかに。
ですがロープは縛った痕が魅力的です。
それに鎖と違って結び目を作ることができますし」
「そうねぇ……どちらも甲乙付け難いわ。
使い分けができる楽しみもあるけれど……」
「そうですね。
やはり臨機応変な対応ができてこそ、真のサディストですね」
「ね!やっぱりランプキンさんとは話が合うわ!」
「私もとても有意義な議論ができて嬉しいです」
二人は本当に楽しそうだ。
しかし何度も言うが、内容が酷い。
そのまま二人が語り合っていると、どこからか何かがピキピキとひび割れるような音が聞こえてきた。
二人はハッと我に返ったようにウィズの方を見る。
「……で……ス……」
彼からは、怒りのオーラのような赤い光が放たれていた。
磔にされていた手がギュッと握りしめられたのを見て、ランプキンは咄嗟にマインドを庇うように前に歩み出た。
「いっ……いつまでミーを放置するつもりデスか!?
放置プレイは嫌いデス!」
ウィズの叫びが部屋にこだますると同時に、彼を拘束していた枷が破壊された。
金属片が派手な音を立てて床に落ちる。
「なんで二人の世界に入っているのデスか!?
それでミーは放置デスか!?
ランのばかああああ!!マインド様のばかああああ!!」
そのまま床にぺったり座ると、駄々をこねる幼子のようにポロポロと涙を流し始めた。
マインドとランプキンは一瞬呆気にとられ……小さく溜め息をついた。
「……ランプキンさん、私限界みたい」
「奇遇ですね、私もです」
エ?と眉をひそめるウィズに、今日いちばん優しい表情を浮かべた二人が手を差し伸べる。
戸惑いながら二人の手を取ると、グイと引っ張られ、ちょうどマインドとランプキンに挟まれる形で二人同時に抱き締められてしまった。
「ワッ……!何なんデスか急に!?
散々放置したと思ったら……!」
「……すみません、貴方が可愛すぎたから少し虐めすぎてしまいました」
「まぁ、議論も白熱しちゃったんだけどね」
マインドはウィズの涙を止めるように、後ろからそっと濡れた頬に口付けた。
彼がピクンと反応するのを見て、楽しそうな笑みを浮かべる。
「泣かせちゃった分、楽しませてあげなきゃね」
「もっとも、違った意味で啼くかもしれませんがね……」
今度はランプキンが彼の額に口付けを落とす。
「ところでウィズは毛糸とロープ、どちらをお好みで?」
「あら、ウィズは鎖の方が好きよね?」
「……やっぱり縛るんデスか?
たまには普通に……」
「「え?これが私の普通ですけど……」」
「Oh……」
ウィズは半ば呆れたように首を振り溜め息をつく。
しかしそんなものは建前にしか過ぎない。
欲を満たすような甘い悦楽への期待を抱きながら、彼らに身を委ねた。
……内心、計画通りと囁きながら。
next
→あとがき
薄暗い部屋の中、磔にされているウィズは乾いた笑みを浮かべていた。
手足をばたつかせみても、頑丈な拘束具はビクともしない。
……尤も、彼の魔力をもってすれば簡単に破壊できてしまうのだろうが。
彼を見ながら、ダークマインドとランプキンは妖しい笑みを浮かべている。
「おやおや、わかっているくせに」
「わざとなのかしら?」
「わざとってなッ……んむっ……」
マインドが素早くウィズの唇を奪った。
抵抗させる間もなく舌をねじ込み、口内を蹂躙すればウィズの身体から力が抜けていく。
くちゅ、と唾液の交ざり合う水音が響いた。
ゆっくりと顔を離せば、細い銀の糸が一瞬だけ紡がれ、プツリと切れた。
少し息の上がった彼を見下ろしながら、マインドは濡れた唇を舐める。
その光景をランプキンは苦笑しながら見ていた。
「随分と見せ付けてくれますね……」
「ふふ、貴方もする?」
「今は遠慮しておきます。
もっと面白いものがありますからね」
ランプキンがウィズの下腹部――否、もっと下の方に視線を逸らす。
マインドがその視線の先を辿ると、ウィズの股間のあたりがしっかりと膨らんでいたのを見つけ、呆れたように溜め息をついた。
「もう、キスだけでこんなになるなんて……」
「おや、もっと前から少し勃っていましたよ?
磔になった最初から」
「そうなの?
やっぱりそういうところは男の人の方が詳しいのね。
それにしても……」
マインドが真っ直ぐにウィズを見つめる。
その目は加虐的な光が帯びていた。
「いったい何を期待してるのかしら?」
ウィズは屈辱に耐えるように、唇を噛み締めていた。
その表情ですら二人を刺激するとは自覚しているのだろうか。
「まったく貴方ってば……しょうがない人ね」
マインドは聖母のような笑みを浮かべると、手を伸ばしてウィズの頬に触れた。
そのまま感触を楽しむように撫でる。
「マインド様ぁ……」
懇願するような瞳でマインドを見つめるウィズ。
彼女はクスリと笑うと、それに応えるように顔をウィズの顔に近づけた。
二回目の口付けがかわされそうになった刹那……
「マインド嬢」
ランプキンが不意に彼女の腕を掴み、腰を抱き寄せた。
唐突なことに驚き、小さな悲鳴を上げながらなすがままに彼の腕の中に収まるマインド。
ランプキンは彼女の耳元に顔を寄せ、一言二言囁いた。
マインドは一瞬ニヤリと笑ったが、すぐに不満そうに頬を膨らませた。
「……良い考えとは思うけど、いちいちこういうことするのは止めなさい……」
「貴女の反応も個人的にはツボですからね。
……貴女は不意打ちに弱い」
彼はクスリと笑うと、彼女の耳を食んだ。
必死に甘い声を漏らすまいとする彼女の頭を二、三度撫でるとスッと手を離した。
マインドはすぐさま距離を取ると、赤い顔で彼を睨んだ。
「っ……今度絶対啼かせてやる」
「おやおや、楽しみですね」
彼は手に持ったステッキをくるくる回しながら、余裕たっぷりの笑みを浮かべていた。
混乱した表情のウィズは、二人の顔を繰り返し見比べている。
「……な、なにを話していたのデスか?」
「いえ、お気になさらず」
「私たちだけの内緒話よ」
自分はわからないのに、二人は楽しそうだ。
ウィズの心にモヤモヤとした黒煙が広がっていく。
疎外されたような感覚――ウィズの一番嫌いな感覚だった。
「……そういえば、今月発売された『最新版 世界の拷問』はお読みになられましたか?」
「ええ、読みましたよ!」
「What!?何ですかそのデンジャラスなネームのブック!!」
あまりにも唐突に話が変わり、ウィズは目をむいた。
先程までの艶めかしい会話は何だったのだろうか。
「今回の応募者全員サービスのギロチン、マインド嬢は応募しましたか?」
「ギロチン!?応募者全員サービスに!?」
「今回はパスしました。
デザインがあまり好きではなくて……」
「パスした理由それデスか!?」
「ああたしかに、あのモロに拷問具って雰囲気は逆に萎えますね」
「出来る限りシンプルであってほしいものね」
「え……なんデスかその変な拘り……」
「でも歴史があるものなら装飾があってもいいと思うの。
むしろ趣を感じるわ」
「そうですね。
装飾に意味を見いだせると愛着が沸きますからねぇ」
紳士淑女のように上品な笑みを浮かべながら、しかし内容は限りなくえぐい会話が繰り広げられていく。
その光景を、ウィズは信じられないものを見る目で見ていた。
ちなみに彼はドМだが、ハードな拷問類の類はあまり好みではないらしい。
「あとは『月刊拷問』も買いましたよ」
「ほう……今月は緊縛特集でしたよね。
三つ目の論文がなかなか興味深かったです」
「今までの学説が覆る日も近いかもしれませんね」
拷問に論文や学説があるのか、とツッコみたいウィズだったがもう話には入れない。
彼には理解できない世界が出来上がっていた。
ウィズのことなどまったく目に入っていないかのようだ。
美しい顔立ちの二人が微笑を湛えながら語らう姿は絵になるが、いかんせん内容が酷い。
「108ページのロープはもう少し締め付けてあってほしかったわ」
「たしかに。
あれでは逆に体重がかかってしまいそうですよね……される方の身にもなってほしいものです。
される気はありませんが」
「あら、ランプキンさんも縛り上げてみたいとも思ったのに。
といっても、私は鎖ばっか使ってるけど」
「私はどちらかと言うとロープや毛糸の方が好きですね」
「鎖も結構良いわよ?
ジャラジャラって音で聴覚も責めることができるのよ!
目隠しをすれば威力も倍増!」
「たしかに。
ですがロープは縛った痕が魅力的です。
それに鎖と違って結び目を作ることができますし」
「そうねぇ……どちらも甲乙付け難いわ。
使い分けができる楽しみもあるけれど……」
「そうですね。
やはり臨機応変な対応ができてこそ、真のサディストですね」
「ね!やっぱりランプキンさんとは話が合うわ!」
「私もとても有意義な議論ができて嬉しいです」
二人は本当に楽しそうだ。
しかし何度も言うが、内容が酷い。
そのまま二人が語り合っていると、どこからか何かがピキピキとひび割れるような音が聞こえてきた。
二人はハッと我に返ったようにウィズの方を見る。
「……で……ス……」
彼からは、怒りのオーラのような赤い光が放たれていた。
磔にされていた手がギュッと握りしめられたのを見て、ランプキンは咄嗟にマインドを庇うように前に歩み出た。
「いっ……いつまでミーを放置するつもりデスか!?
放置プレイは嫌いデス!」
ウィズの叫びが部屋にこだますると同時に、彼を拘束していた枷が破壊された。
金属片が派手な音を立てて床に落ちる。
「なんで二人の世界に入っているのデスか!?
それでミーは放置デスか!?
ランのばかああああ!!マインド様のばかああああ!!」
そのまま床にぺったり座ると、駄々をこねる幼子のようにポロポロと涙を流し始めた。
マインドとランプキンは一瞬呆気にとられ……小さく溜め息をついた。
「……ランプキンさん、私限界みたい」
「奇遇ですね、私もです」
エ?と眉をひそめるウィズに、今日いちばん優しい表情を浮かべた二人が手を差し伸べる。
戸惑いながら二人の手を取ると、グイと引っ張られ、ちょうどマインドとランプキンに挟まれる形で二人同時に抱き締められてしまった。
「ワッ……!何なんデスか急に!?
散々放置したと思ったら……!」
「……すみません、貴方が可愛すぎたから少し虐めすぎてしまいました」
「まぁ、議論も白熱しちゃったんだけどね」
マインドはウィズの涙を止めるように、後ろからそっと濡れた頬に口付けた。
彼がピクンと反応するのを見て、楽しそうな笑みを浮かべる。
「泣かせちゃった分、楽しませてあげなきゃね」
「もっとも、違った意味で啼くかもしれませんがね……」
今度はランプキンが彼の額に口付けを落とす。
「ところでウィズは毛糸とロープ、どちらをお好みで?」
「あら、ウィズは鎖の方が好きよね?」
「……やっぱり縛るんデスか?
たまには普通に……」
「「え?これが私の普通ですけど……」」
「Oh……」
ウィズは半ば呆れたように首を振り溜め息をつく。
しかしそんなものは建前にしか過ぎない。
欲を満たすような甘い悦楽への期待を抱きながら、彼らに身を委ねた。
……内心、計画通りと囁きながら。
next
→あとがき