星の熱度
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「ね、カービィ。
たまには星でも見に行かないのサ?」
「銀河に行く、じゃなくて?」
「うん」
珍しいなぁ。
いつもは銀河に行って360度星だらけのところを散歩したりするのに、どうしてだろう?と首を捻る。
「カービィ、今日は何日?」
「……ああ、なるほど!」
今日は7月7日、七夕だ。
初心に戻って夜空を見上げるのも楽しそう!
何よりもマルクのお誘いだから、断る理由なんてなかった。
「うん、いいね!行こう!」
ボクの返事にマルクは嬉しそうに笑った。
可愛いなぁと思うけど、拗ねるだろうから黙っておこう。
どこにしようかと相談して、村で一番高い丘の上にした。
あそこなら周りに邪魔な光はないし、夜風もよく当たる。
そこに7時に集まることにして、ボクらは一旦別れた。
「何着て行こっかな……」
せっかくなんだから可愛い恰好にしたい、ボクだって女の子だ。
そう思いながら帰宅したボクは、早速家じゅうのクローゼットやタンスをひっくり返し始めた。
部屋中にカラフルな山ができていく。
ふと、一着のワンピースが目に留まった。
ふんわりした素材の、薄桃のワンピース。
ついこの前、一目惚れして買ったものだ。
これに白の透け素材のカーディガンを合わせればなんとなく織姫っぽいんじゃないか……自分でも驚くほど安直な考えで、服装が決まった。
「……でも、ちょっと寒いかな?」
ワンピースはノースリーブで、カーディガンは透け素材。
でももう7月だし、今もかなり暑いし、大丈夫なんじゃないかな……?
何よりマルクって、こういう服好きだし……ね。
***
「あ……まだちょっと暑いなぁ……」
準備をして外に出てみると、やっぱり空気は昼の名残を残していた。
薄着をしてちょうどいいくらいだ。
少し足早に丘を登ると、じんわりと汗をかいてしまう。
7時5分前、マルクはもう先に来ていた。
「マルクッ!おまたせ!」
「別にそんなに待ってなッ……!」
ボクを見たマルクが赤くなって、サッと目を逸らした。
どうやら予想通り好みだったらしい。
それがわかって、ボクも嬉しかった。
言葉にはあんまり表してくれないけど、態度で見え見えだもん。
ボク達は丘に腰掛けると、空を見上げた。
「まだあんまり星出てないね」
「そうだね……」
夏は日が長いからか、7時とはいえまだ日は完全には暮れていなかった。
星もちらちらと見え始めたくらい。
とはいっても、暮れなずんでいる空はとても綺麗だった。
少しだけ物悲しいような、うっとりしてしまうような、情緒的な不思議な気持ちにさせられる。
チラッとマルクの方を見ると、彼も難しい顔をしていた。
一体何を考えているのだろう、真剣とすら言える表情にドキドキしてしまう。
「ね、カービィは知ってるのサ?
織姫と彦星がイチャイチャするあまり神様が『リア充爆発しろ』って引き離しちゃったってやつ」
マルクのせいで光の速さで情緒もときめきも飛んでいった。
思わず力が抜けて、丘を転がり落ちそうになってしまう。
「……遠い世界での伝承だからあんまり詳しくはないけど、そんなギャグみたいな感じじゃなかったと思うの」
「いや、簡単に言うとそうだろ?」
……確かに間違ってはいない、間違ってはいないんだけど、致命的に違うよね。
そもそも簡単にまとめちゃいけないと思うんだけどなぁ……。
「川なんて、気力で乗り越えろって感じなのサ」
「気力で乗り越えられるものなのかな……?
天の川ってちょろちょろした小川って規模じゃないし」
「それか飛べよ」
「……キミは織姫と彦星をなんだと思ってるの?」
「仮にも彦星は鷲座のアルタイルなんだから飛べって思うのサ」
「無茶言わないでよ!」
キミの存在がファンタジー(魔法使い的な意味で)なのに、どうしてさっきから妙に現実主義なんだろう……?
「きっとあれだよ、何か事情があるんだよ。
神様に罰せられるとか……よくわかんないけど」
「えー?
ボクだったら、カービィに会うためだったら何だって……」
そこまで言ってマルクはハッと息を詰まらせた。
更に、みるみるうちに赤くなっていく。
だいたい言いたいことはわかったけど、こっちまで気恥ずかしくなってしまう。
「……だったらボクはきっと神様を倒しちゃうなぁ」
照れ隠しにそう言うと、マルクも調子を取り戻したのかプッと吹き出した。
「さすがピンクの悪魔。
カービィなら本当にやりそうで怖いのサ……」
「失礼な……くしゅん!」
体が震えた。
だんだん寒くなってきている。
さっき汗をかいたせいもあると思うけど、やっぱりここまで薄着じゃあちょっと寒かったかなぁ?
……と思っていると、何かが肩にふわっとかかった。
「バーカ、なーんでそんな薄着してるのサ」
マルクが自分の上着を脱いでボクにかけてくれていた。
暖かくてなんだか安心するけど、残り香のせいでドキドキもしてしまう。
「だってもう7月だよ?」
「夜はまだ冷えるんじゃないのサ?」
「大丈夫だと思ってたんだよー。
それに……せっかくのデートだし、可愛いって思われたかったんだもん」
言ってから恥ずかしくなってしまった。
……自分で言うのもなんだけど、なかなか乙女な気がする。
そう自覚すると、余計に顔が赤くなるのを感じた。
一方マルクも赤くなっていた。
お互いになんとなくこそばゆい感じがしてしまう。
「む、無理されて風邪引いたら大変だし……キッ、キミは何着てても……可愛いんだから身体張るなッ!
……でも、それも似合ってる。可愛い」
ぶっきらぼうだけど一生懸命なのが伝わってきて、胸の辺りが温かくなる。
思わず彼の胸元にギュッと抱きついた。
そのまま彼の胸に顔を埋めると、男の子の匂いがした。
「な、何なのサ……!」
「えへへー」
マルクは驚きながらも、しっかり抱き留めてくれる。
強く、でも決して痛くない強さで抱き締められて、寒さなんてあっという間になくなっていた。
心も身体も温かい。
「あ、でも風邪引いたら看病し」
「それは遠慮しておく」
却下すると舌打ちが聞こえてきた。
実際マルクの看病は看病にならない。
「汗をかくといい」とか言って襲ってくるのが簡単に想像できる。
そのまま「遠慮するなよ」「いやいやいや」と話していると、ふとマルクが黙りこんだ。
「カービィ、空見て」
顔を上げると、思わず感嘆の声が漏れた。
いつの間にかすっかり暗くなった空に、幾千もの星たちが瞬いていた。
それらはちょうど帯のような形を成している……天の川だ。
普段は織姫と彦星を隔てている川のはずなのに、あんまりキラキラと輝いているから、今夜は二人の再会を祝福しているようにも見える。
本当に綺麗だった。
さっきマルクがいきなり黙ったのも頷ける。
「すごーい……」
それ以外の感想が言えなかった。
目の前の星空を形容する言葉が見つからなかった。
正直、星なんて見慣れていると思っていた。
でも今この頭上に広がる光景は、そんな言葉を一切寄せ付けない。
一つひとつの星が輝いて、あの大河を作り出していた。
「マルクと見られてよかった」
空を見上げながら、自然とそんな言葉が漏れていた。
口に出してから改めて思う、マルクとこの星空を見てよかった。
「……ボクも、カービィと見られてよかった」
素直な言葉に驚いてマルクの方に向き直ってみると、彼は優しい笑みを浮かべてボクを見ていた。
二色の瞳はまるで天上の星のように輝いていて、目が離せなくなる。
「……ボクね、彦星じゃなくてよかった。
1年に1回しか会えないなんて、きっと耐えられない……気が狂いそうなのサ」
ボクを抱き締める腕に力がこもった。
離さない――言葉にはしなくても、彼の気持ちがその瞳から、腕からひしひしと伝わってきていた。
「ボクも織姫じゃなくてよかった。
こうしていつでも会えるもん。
……これって、すっごく幸せなことなんだね」
「うん、ボクらはとっても幸せ者なのサ」
「ああ、ボクはなんて幸せなんだろ……」
ボクと彼、どっちの言葉だったろう。
わからないけれど、多分どちらにしろ正解だと思う。
ボクらが世界で一番幸せなんじゃないかって、本気で思っていた。
織姫と彦星のように引き離される恋愛もあるけど、ボクらは一緒にいられる。
隣に居られて、一緒に星空を見られて、こうして抱きしめあえて……。
そんなことを考えていると、スッとボクの顔を持ち上げられた。
マルクの顔が目前に迫る。
まるで最初から約束されていたかのように、ボクは自然に瞳を閉じた。
唇に熱が触れる。
そこから全身に、じわりと熱が伝わっていく。
決してそれは不快な熱ではなく、むしろ心地よいものだった。
ゆっくりと唇が離れていってからも、身体は熱を求めている。
「ね……もっと……」
「どれくらい……?」
「星の数くらい……」
マルクはクスリと笑い、「いいよ」と言うと再び口付けてきた。
星の下で、何度も何度も口付けを交わす。
周りが静かだからか、舌が絡み合う音がやけに大きく聞こえる。
恥ずかしいはずなのに、そんなこともうどうでもよくなってしまう。
ただただ、熱に溺れていたい……。
唇を重ねるごとに、舌を絡ませるごとに増す熱が、ボクの思考回路を甘く溶かしていく。
今頃織姫と彦星は、1年ぶりの再会の喜びを分かち合っているのかな……。
おぼろげになった思考の隅で、ふとそんなことを思っていた。
星の熱度
(いつまでも一緒にいられますように)
next
→あとがき
たまには星でも見に行かないのサ?」
「銀河に行く、じゃなくて?」
「うん」
珍しいなぁ。
いつもは銀河に行って360度星だらけのところを散歩したりするのに、どうしてだろう?と首を捻る。
「カービィ、今日は何日?」
「……ああ、なるほど!」
今日は7月7日、七夕だ。
初心に戻って夜空を見上げるのも楽しそう!
何よりもマルクのお誘いだから、断る理由なんてなかった。
「うん、いいね!行こう!」
ボクの返事にマルクは嬉しそうに笑った。
可愛いなぁと思うけど、拗ねるだろうから黙っておこう。
どこにしようかと相談して、村で一番高い丘の上にした。
あそこなら周りに邪魔な光はないし、夜風もよく当たる。
そこに7時に集まることにして、ボクらは一旦別れた。
「何着て行こっかな……」
せっかくなんだから可愛い恰好にしたい、ボクだって女の子だ。
そう思いながら帰宅したボクは、早速家じゅうのクローゼットやタンスをひっくり返し始めた。
部屋中にカラフルな山ができていく。
ふと、一着のワンピースが目に留まった。
ふんわりした素材の、薄桃のワンピース。
ついこの前、一目惚れして買ったものだ。
これに白の透け素材のカーディガンを合わせればなんとなく織姫っぽいんじゃないか……自分でも驚くほど安直な考えで、服装が決まった。
「……でも、ちょっと寒いかな?」
ワンピースはノースリーブで、カーディガンは透け素材。
でももう7月だし、今もかなり暑いし、大丈夫なんじゃないかな……?
何よりマルクって、こういう服好きだし……ね。
***
「あ……まだちょっと暑いなぁ……」
準備をして外に出てみると、やっぱり空気は昼の名残を残していた。
薄着をしてちょうどいいくらいだ。
少し足早に丘を登ると、じんわりと汗をかいてしまう。
7時5分前、マルクはもう先に来ていた。
「マルクッ!おまたせ!」
「別にそんなに待ってなッ……!」
ボクを見たマルクが赤くなって、サッと目を逸らした。
どうやら予想通り好みだったらしい。
それがわかって、ボクも嬉しかった。
言葉にはあんまり表してくれないけど、態度で見え見えだもん。
ボク達は丘に腰掛けると、空を見上げた。
「まだあんまり星出てないね」
「そうだね……」
夏は日が長いからか、7時とはいえまだ日は完全には暮れていなかった。
星もちらちらと見え始めたくらい。
とはいっても、暮れなずんでいる空はとても綺麗だった。
少しだけ物悲しいような、うっとりしてしまうような、情緒的な不思議な気持ちにさせられる。
チラッとマルクの方を見ると、彼も難しい顔をしていた。
一体何を考えているのだろう、真剣とすら言える表情にドキドキしてしまう。
「ね、カービィは知ってるのサ?
織姫と彦星がイチャイチャするあまり神様が『リア充爆発しろ』って引き離しちゃったってやつ」
マルクのせいで光の速さで情緒もときめきも飛んでいった。
思わず力が抜けて、丘を転がり落ちそうになってしまう。
「……遠い世界での伝承だからあんまり詳しくはないけど、そんなギャグみたいな感じじゃなかったと思うの」
「いや、簡単に言うとそうだろ?」
……確かに間違ってはいない、間違ってはいないんだけど、致命的に違うよね。
そもそも簡単にまとめちゃいけないと思うんだけどなぁ……。
「川なんて、気力で乗り越えろって感じなのサ」
「気力で乗り越えられるものなのかな……?
天の川ってちょろちょろした小川って規模じゃないし」
「それか飛べよ」
「……キミは織姫と彦星をなんだと思ってるの?」
「仮にも彦星は鷲座のアルタイルなんだから飛べって思うのサ」
「無茶言わないでよ!」
キミの存在がファンタジー(魔法使い的な意味で)なのに、どうしてさっきから妙に現実主義なんだろう……?
「きっとあれだよ、何か事情があるんだよ。
神様に罰せられるとか……よくわかんないけど」
「えー?
ボクだったら、カービィに会うためだったら何だって……」
そこまで言ってマルクはハッと息を詰まらせた。
更に、みるみるうちに赤くなっていく。
だいたい言いたいことはわかったけど、こっちまで気恥ずかしくなってしまう。
「……だったらボクはきっと神様を倒しちゃうなぁ」
照れ隠しにそう言うと、マルクも調子を取り戻したのかプッと吹き出した。
「さすがピンクの悪魔。
カービィなら本当にやりそうで怖いのサ……」
「失礼な……くしゅん!」
体が震えた。
だんだん寒くなってきている。
さっき汗をかいたせいもあると思うけど、やっぱりここまで薄着じゃあちょっと寒かったかなぁ?
……と思っていると、何かが肩にふわっとかかった。
「バーカ、なーんでそんな薄着してるのサ」
マルクが自分の上着を脱いでボクにかけてくれていた。
暖かくてなんだか安心するけど、残り香のせいでドキドキもしてしまう。
「だってもう7月だよ?」
「夜はまだ冷えるんじゃないのサ?」
「大丈夫だと思ってたんだよー。
それに……せっかくのデートだし、可愛いって思われたかったんだもん」
言ってから恥ずかしくなってしまった。
……自分で言うのもなんだけど、なかなか乙女な気がする。
そう自覚すると、余計に顔が赤くなるのを感じた。
一方マルクも赤くなっていた。
お互いになんとなくこそばゆい感じがしてしまう。
「む、無理されて風邪引いたら大変だし……キッ、キミは何着てても……可愛いんだから身体張るなッ!
……でも、それも似合ってる。可愛い」
ぶっきらぼうだけど一生懸命なのが伝わってきて、胸の辺りが温かくなる。
思わず彼の胸元にギュッと抱きついた。
そのまま彼の胸に顔を埋めると、男の子の匂いがした。
「な、何なのサ……!」
「えへへー」
マルクは驚きながらも、しっかり抱き留めてくれる。
強く、でも決して痛くない強さで抱き締められて、寒さなんてあっという間になくなっていた。
心も身体も温かい。
「あ、でも風邪引いたら看病し」
「それは遠慮しておく」
却下すると舌打ちが聞こえてきた。
実際マルクの看病は看病にならない。
「汗をかくといい」とか言って襲ってくるのが簡単に想像できる。
そのまま「遠慮するなよ」「いやいやいや」と話していると、ふとマルクが黙りこんだ。
「カービィ、空見て」
顔を上げると、思わず感嘆の声が漏れた。
いつの間にかすっかり暗くなった空に、幾千もの星たちが瞬いていた。
それらはちょうど帯のような形を成している……天の川だ。
普段は織姫と彦星を隔てている川のはずなのに、あんまりキラキラと輝いているから、今夜は二人の再会を祝福しているようにも見える。
本当に綺麗だった。
さっきマルクがいきなり黙ったのも頷ける。
「すごーい……」
それ以外の感想が言えなかった。
目の前の星空を形容する言葉が見つからなかった。
正直、星なんて見慣れていると思っていた。
でも今この頭上に広がる光景は、そんな言葉を一切寄せ付けない。
一つひとつの星が輝いて、あの大河を作り出していた。
「マルクと見られてよかった」
空を見上げながら、自然とそんな言葉が漏れていた。
口に出してから改めて思う、マルクとこの星空を見てよかった。
「……ボクも、カービィと見られてよかった」
素直な言葉に驚いてマルクの方に向き直ってみると、彼は優しい笑みを浮かべてボクを見ていた。
二色の瞳はまるで天上の星のように輝いていて、目が離せなくなる。
「……ボクね、彦星じゃなくてよかった。
1年に1回しか会えないなんて、きっと耐えられない……気が狂いそうなのサ」
ボクを抱き締める腕に力がこもった。
離さない――言葉にはしなくても、彼の気持ちがその瞳から、腕からひしひしと伝わってきていた。
「ボクも織姫じゃなくてよかった。
こうしていつでも会えるもん。
……これって、すっごく幸せなことなんだね」
「うん、ボクらはとっても幸せ者なのサ」
「ああ、ボクはなんて幸せなんだろ……」
ボクと彼、どっちの言葉だったろう。
わからないけれど、多分どちらにしろ正解だと思う。
ボクらが世界で一番幸せなんじゃないかって、本気で思っていた。
織姫と彦星のように引き離される恋愛もあるけど、ボクらは一緒にいられる。
隣に居られて、一緒に星空を見られて、こうして抱きしめあえて……。
そんなことを考えていると、スッとボクの顔を持ち上げられた。
マルクの顔が目前に迫る。
まるで最初から約束されていたかのように、ボクは自然に瞳を閉じた。
唇に熱が触れる。
そこから全身に、じわりと熱が伝わっていく。
決してそれは不快な熱ではなく、むしろ心地よいものだった。
ゆっくりと唇が離れていってからも、身体は熱を求めている。
「ね……もっと……」
「どれくらい……?」
「星の数くらい……」
マルクはクスリと笑い、「いいよ」と言うと再び口付けてきた。
星の下で、何度も何度も口付けを交わす。
周りが静かだからか、舌が絡み合う音がやけに大きく聞こえる。
恥ずかしいはずなのに、そんなこともうどうでもよくなってしまう。
ただただ、熱に溺れていたい……。
唇を重ねるごとに、舌を絡ませるごとに増す熱が、ボクの思考回路を甘く溶かしていく。
今頃織姫と彦星は、1年ぶりの再会の喜びを分かち合っているのかな……。
おぼろげになった思考の隅で、ふとそんなことを思っていた。
星の熱度
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