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「ラーン」
ウィズは手に持った黒のクイーンを弄びながら、ソファに腰掛け本を読むランプキンに話しかけた。
だが彼は黙々と本を読み続けている。
「ラーンー!」
もう一度大きな声で呼び掛けても完全無視である。
「ラーンープーキーンーさーん!?」
更に大きな声でもう一度呼び掛けても、ことごとく無視である。
というか、彼の声が耳に入っているのかどうかも定かではない。
部屋にはペラ、とページを捲る音だけがしている。
随分厚い本だが、いったい何を読んでいるのだろうか――気になったウィズは立ち上がり、彼の方へと寄っていった。
「そんなに真剣に何を読んでいるのデスかー?」
前から本の表紙を覗き込み――そのまま固まった。
本のタイトルは『世界の拷問』だった。
……様々な世界に流通していて、その筋の人間には人気を博しているらしいが定かではない。
「……」
ウィズは何も見なかったことにした。
元の位置に戻り、意味もなくトランプをシャッフルしてみる。
ちらとランプキンの方を見ても、彼はずっと本に視線を落としたままだ。
ウィズはむくれて、トランプでタワーを組み立て始めた。
絶妙なバランスをとり、タワーが積み上がっていく。
普通の人であったら固唾を飲んだり拍手をしたりなどの反応を期待できるだろう。
しかしそれでもランプキンは一瞥すらしない。
ウィズの瞳が段々と潤んでくる。
「……っ、一人チェス飽きマシたー!
一人大富豪飽きマシたー!
タワー造るのも何度目だと思っているのデスか!?」
ウィズの不満が爆発した、と同時にトランプタワーが崩壊した。
彼は暇をもて余していた。
卓上にはチェスの駒やトランプ、などが散乱している。
まるで子供が遊んだ後のようだ。
「……良いではないですか、ずっと貴方のターンですよ」
「ずっと俺のターンすぎマス!
いくらなんでも一人寂しすぎマス!
遊んでったら遊んでったら遊んでくだサイ!」
「嫌です」
「うわああああああん!!」
不平不満を唱えながらも、ウィズは意外にも大人しくチェス盤に駒を並べ始めた。
ランプキンがほんの一瞬だけウィズの方を見た――が、ウィズは気が付かなかった。
一たびゲームを始めれば、あとは黙って白黒交互に駒を動かすだけだった。
ページを捲る音に加え、駒を動かす音が部屋に響く。
しばらくして戦局も終盤となり、白のルークが黒のクイーンを取った。
さあ次でチェックメートだ!というところで、不意に白のピジョップがふわりと動いた。
「え」と言う声を出す間も無く、それは黒のキングの前に止まる。
「……チェックメート」
ウィズが顔を上げてランプキンを見ると、彼は顔を上げてニヤリと笑っていた。
ウィズは一瞬起きた状況を飲み込みかね呆然としたが――すぐにハッとして猛然と叫び始めた。
「ええええええええなんで最後の最後のとこで美味しいとこ取り!?」
ランプキンは悪びれもせずにニヤニヤと笑っている。
「遊んであげたんですよ?」
「だからってひどいデス!
最後の!最後の!一番気持ちいいところをっ!
ユーはミーから奪ったのデス!
トゥックバイフォース!」
「良いじゃないですか、所詮一人遊びでしょう?
そんなにムキになって、子供みたいですよ」
「だ、だってランが遊んでくれないから……」
「……そんなに遊びたいのですか?」
ランプキンは本を膝の上に置き、立ち上がるようなそぶりを見せた。
刹那、ウィズの瞳がきらりと輝く。
「遊んでくれるの!?」
「嫌です」
「この鬼畜!」
ウィズが喚くのも気にせず、彼は再び読書を始めてしまう。
ウィズはぶーぶー言いながら今度は先程派手にばらまいて散らばっていたトランプを掻き集め始めた。
一頻り回収し終わり、無言でシャッフルしながら、ちらりとランプキンの方を盗み見る。
日に透けるサラサラの髪や本に向けられた橙色の瞳が、ハッとするほどに美しかった。
同じ男とは思えないと感嘆が漏れそうになるのを、すんでのところで耐える。
そして彼の左目には、何時もと違わず金色の縁の片眼鏡――以前ウィズがプレゼントしたものが嵌まっていた。
それを見るたびに、彼は何となくくすぐったい気持ちになる。
「……ね、ラン。
ミーがあげたモノクル、ちゃんとつけてくれてるんデスね」
「別に、貴方のためではありませんよ」
ウィズの方など目も呉れず、ランプキンはただひたすらにページをめくる。
口ではそう言うが、毎日欠かさずつけてくれていることは確かで。
ただそのことが、彼にとって嬉しかった。
「ヘヘッ、ランのそういうところ、ミーは好きデスよ」
へろりと笑うウィズ。
ランプキンは思わず顔をあげ、ウィズの顔を見つめた。
ウィズはというと、ん?と小首を傾げてランプキンを見つめ返す。
しばらく見つめあったまま時間は過ぎ――ランプキンは唐突にパタンと本を閉じ、下を向いて大きな溜め息をついた。
そして次の瞬間、満面の笑みで顔を上げた。
「……遊んであげましょうか」
ランプキンがすくっと立ち上がる。
ポウ、と橙色の光がランプキンの手に灯ったかと思うと、鎖と手錠と首輪と蝋燭が彼の手中に収まっていた。
鮮烈な赤がウィズの目を焼く。
さらに本能的に危険を感じたのか、額に汗が浮いた。
一方ランプキンは爽やかとすらも言える笑みを浮かべていた。
……が、瞳は明らかに獣のそれであった。
「ちょっ、遊ぶって、違っ……!」
ランプキンは笑顔を保ったまま――もちろん瞳もそのままで、ウィズの方に歩み寄る。
コツコツという革靴の音が、やけに大きく響いていた。
「その気にさせた貴方が悪いのですよ?」
「なっ、なんの話デスか!?」
ランプキンは問いには答えず、くい、と指を動かす。
手錠はふわりと浮かんだかと思うと、次の瞬間にはウィズの手首に嵌まっていた。
「ちょっ……!」
「さぁ、遊びましょう」
顔を引き攣らせるウィズと、微笑むランプキン。
二人の遊びは、始まったばかり……?
Let's play.
遊びは遊びでも、ちょっと危険な遊び
NEXT
→あとがき&オマケ
ウィズは手に持った黒のクイーンを弄びながら、ソファに腰掛け本を読むランプキンに話しかけた。
だが彼は黙々と本を読み続けている。
「ラーンー!」
もう一度大きな声で呼び掛けても完全無視である。
「ラーンープーキーンーさーん!?」
更に大きな声でもう一度呼び掛けても、ことごとく無視である。
というか、彼の声が耳に入っているのかどうかも定かではない。
部屋にはペラ、とページを捲る音だけがしている。
随分厚い本だが、いったい何を読んでいるのだろうか――気になったウィズは立ち上がり、彼の方へと寄っていった。
「そんなに真剣に何を読んでいるのデスかー?」
前から本の表紙を覗き込み――そのまま固まった。
本のタイトルは『世界の拷問』だった。
……様々な世界に流通していて、その筋の人間には人気を博しているらしいが定かではない。
「……」
ウィズは何も見なかったことにした。
元の位置に戻り、意味もなくトランプをシャッフルしてみる。
ちらとランプキンの方を見ても、彼はずっと本に視線を落としたままだ。
ウィズはむくれて、トランプでタワーを組み立て始めた。
絶妙なバランスをとり、タワーが積み上がっていく。
普通の人であったら固唾を飲んだり拍手をしたりなどの反応を期待できるだろう。
しかしそれでもランプキンは一瞥すらしない。
ウィズの瞳が段々と潤んでくる。
「……っ、一人チェス飽きマシたー!
一人大富豪飽きマシたー!
タワー造るのも何度目だと思っているのデスか!?」
ウィズの不満が爆発した、と同時にトランプタワーが崩壊した。
彼は暇をもて余していた。
卓上にはチェスの駒やトランプ、などが散乱している。
まるで子供が遊んだ後のようだ。
「……良いではないですか、ずっと貴方のターンですよ」
「ずっと俺のターンすぎマス!
いくらなんでも一人寂しすぎマス!
遊んでったら遊んでったら遊んでくだサイ!」
「嫌です」
「うわああああああん!!」
不平不満を唱えながらも、ウィズは意外にも大人しくチェス盤に駒を並べ始めた。
ランプキンがほんの一瞬だけウィズの方を見た――が、ウィズは気が付かなかった。
一たびゲームを始めれば、あとは黙って白黒交互に駒を動かすだけだった。
ページを捲る音に加え、駒を動かす音が部屋に響く。
しばらくして戦局も終盤となり、白のルークが黒のクイーンを取った。
さあ次でチェックメートだ!というところで、不意に白のピジョップがふわりと動いた。
「え」と言う声を出す間も無く、それは黒のキングの前に止まる。
「……チェックメート」
ウィズが顔を上げてランプキンを見ると、彼は顔を上げてニヤリと笑っていた。
ウィズは一瞬起きた状況を飲み込みかね呆然としたが――すぐにハッとして猛然と叫び始めた。
「ええええええええなんで最後の最後のとこで美味しいとこ取り!?」
ランプキンは悪びれもせずにニヤニヤと笑っている。
「遊んであげたんですよ?」
「だからってひどいデス!
最後の!最後の!一番気持ちいいところをっ!
ユーはミーから奪ったのデス!
トゥックバイフォース!」
「良いじゃないですか、所詮一人遊びでしょう?
そんなにムキになって、子供みたいですよ」
「だ、だってランが遊んでくれないから……」
「……そんなに遊びたいのですか?」
ランプキンは本を膝の上に置き、立ち上がるようなそぶりを見せた。
刹那、ウィズの瞳がきらりと輝く。
「遊んでくれるの!?」
「嫌です」
「この鬼畜!」
ウィズが喚くのも気にせず、彼は再び読書を始めてしまう。
ウィズはぶーぶー言いながら今度は先程派手にばらまいて散らばっていたトランプを掻き集め始めた。
一頻り回収し終わり、無言でシャッフルしながら、ちらりとランプキンの方を盗み見る。
日に透けるサラサラの髪や本に向けられた橙色の瞳が、ハッとするほどに美しかった。
同じ男とは思えないと感嘆が漏れそうになるのを、すんでのところで耐える。
そして彼の左目には、何時もと違わず金色の縁の片眼鏡――以前ウィズがプレゼントしたものが嵌まっていた。
それを見るたびに、彼は何となくくすぐったい気持ちになる。
「……ね、ラン。
ミーがあげたモノクル、ちゃんとつけてくれてるんデスね」
「別に、貴方のためではありませんよ」
ウィズの方など目も呉れず、ランプキンはただひたすらにページをめくる。
口ではそう言うが、毎日欠かさずつけてくれていることは確かで。
ただそのことが、彼にとって嬉しかった。
「ヘヘッ、ランのそういうところ、ミーは好きデスよ」
へろりと笑うウィズ。
ランプキンは思わず顔をあげ、ウィズの顔を見つめた。
ウィズはというと、ん?と小首を傾げてランプキンを見つめ返す。
しばらく見つめあったまま時間は過ぎ――ランプキンは唐突にパタンと本を閉じ、下を向いて大きな溜め息をついた。
そして次の瞬間、満面の笑みで顔を上げた。
「……遊んであげましょうか」
ランプキンがすくっと立ち上がる。
ポウ、と橙色の光がランプキンの手に灯ったかと思うと、鎖と手錠と首輪と蝋燭が彼の手中に収まっていた。
鮮烈な赤がウィズの目を焼く。
さらに本能的に危険を感じたのか、額に汗が浮いた。
一方ランプキンは爽やかとすらも言える笑みを浮かべていた。
……が、瞳は明らかに獣のそれであった。
「ちょっ、遊ぶって、違っ……!」
ランプキンは笑顔を保ったまま――もちろん瞳もそのままで、ウィズの方に歩み寄る。
コツコツという革靴の音が、やけに大きく響いていた。
「その気にさせた貴方が悪いのですよ?」
「なっ、なんの話デスか!?」
ランプキンは問いには答えず、くい、と指を動かす。
手錠はふわりと浮かんだかと思うと、次の瞬間にはウィズの手首に嵌まっていた。
「ちょっ……!」
「さぁ、遊びましょう」
顔を引き攣らせるウィズと、微笑むランプキン。
二人の遊びは、始まったばかり……?
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