Because......
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水晶の城の中、ボロボロの女性が一人きりで佇んでいた。
時は鏡の国の事件の後、カービィに敗れたダークマインドは果てしない虚無感と無気力状態に陥っていた。
身体も傷付いていて服もボロボロだが、どうにかする気にはなれない。
家に帰る気すら起こらない。
まさに彼女は死んだように生きていた。
時間にしておそらく夜分だろうか。
ふと大きな鏡を覗くと、黒髪の少女が写し出された。
その彼女は目を真っ赤にして泣いている。
昼間は気丈に振る舞っている彼女が泣いているから、やはり今は夜か……とマインドはぼんやりと考える。
「シャドー……」
掠れた声で少女の名前を呟く。
しかし、その声は届かない。
次に、棚の置いてあるビンの方へと目を向けた。
中にはキラキラと光るものが入っている。
鏡の……ダークメタナイトが砕けた残骸である。
粉々に砕け散ったそれは、淡く光を反射していた。
これこそが彼女の泣いている原因だった。
シャドーとダークは相思相愛だった。
だが、二人には致命的に違うところがあった――創造主への忠誠心である。
ダークマインドに忠誠を尽くしたダークは、カービィに倒されて砕け散った。
シャドーは彼女を裏切ってカービィに手を貸した。
その結果、二人は引き裂かれた。
彼女の中には苦いものが残る。
自分の思い通りに動く手駒が1つ無くなった。
彼女にとってはそれだけの話のはずであった。
なのに、どうしようもなく胸が痛んだ。
鏡越しにシャドーを見ていると、余計に苦しくなる。
マインドは無理矢理視線を引き剥がした。
気を紛らわそうと、他のことを考え始める。
キングゴーレムは元気だろうか。
モーリィは奥さんと仲直りできたのだろうか。
クラッコは最近大気汚染が盛んだが大丈夫だろうか。
ガブリエルは水質汚濁以下省略。
メガタイタンはちゃんと治ったのだろうか。
マスターハンドとクレイジーハンドは無事にスマブラの世界に帰れただろうか。
――かつて操っていた者どもの顔が、思い浮かんでは消えていく。
更に強く思い出すのは、一人の青年――彼女のマインドコントロールが強く効いたのか、もはや崇拝レベルにまで達していた者の姿。
『マインド様……!』
そう彼女に慕い忠誠を誓っていた彼の姿が、妙に鮮やかに甦る。
あの時彼女は、たしかに女王であった。
だが今は、一人ぼっちだ。
マインドコントロールで従えていた者たちは彼女が敗れたことによってそれが解け、どこかへと行ってしまった。
力で従わせていたものは、力が無くなれば離れていく。
それは当たり前のことでどうにもならない――わかっていても、改めてその状況に直面するのは堪えた。
「……今日は……冷えるわ……」
すー、と風が吹く。
それは隙間風などではなく扉が開いたからだと気付いたと同時に、マインドは人の気配を感じて顔を上げた。
「……っ」
気配の正体がわかり、彼女はあからさまに嫌そうな顔をする。
彼は、躊躇わずに彼女の前に歩み出た。
「何しに来たの?
貴方はもうここに来る必要はないはず」
マインドは目の前の人物を精一杯睨み付ける。
シルクハットをかぶり、燕尾服を着た――彼女に記憶に残るそのままのウィズが立っていた。
「何?無様に負けた私を笑いにでも来たの?」
「違いマス……ミーはユーに会いに来ました」
「はぁ?
貴方に掛かったマインドコントロールも解けたはずよ!
晴れて貴方は自由の身!よかったじゃない!」
ダークマインドは壊れかけた笑顔で言い放つ……が、ウィズは酷く悲しそうに眼を伏せた。
「……そのことでユーに1つ、嘘をついていマシタ。
本当は、ユーのマインドコントロールにはかかっていませんデシタ」
え?とダークマインドの目が見開かれた。
引きつれた笑みが消え、無表情になっていく。
「すみません、あのとき咄嗟にバリアーを張りマシた。
ミーはあのメンバーの中で、唯一ユーのマインドコントロールからまぬがれていマシた」
「じゃあ……なぜ、私のそばにいた……?」
震える声で問うマインド。
彼の告白は、彼女にとって余りにも衝撃的であった。
ダークマインドは散々彼を虐げ、痛めつけてきた。
どうやら彼はそれを好んでいたようだが……従順に躾た者は扱いやすい。
彼女にとっては便利な手駒が一つでも増えればどうでもよかった。
そのはずだった。
訳が分からない、そう言いたそうなマインドの顔をじっと見て、ウィズは盛大な溜め息をついた。
「……ここまで言ってもまだわからないんデスか?
感情を司るなら、そろそろ察してくだサイよ」
「なっ……失礼な!
だいたいそれ、貴方が筋金入りのマゾ――」
ウィズはマインドの身体を抱き寄せた。
ぽすん、とウィズの胸にマインドの顔が押し付けられる。
驚きの余り動けないマインドを、そっと包み込むように抱き締めた。
「ユーの傍に居たかったんデスよ」
耳元で、優しく囁くウィズ。
思ってもみなかった言葉にマインドの瞳が見開かれた。
「あの日ユーを見た瞬間、ミーは違う意味でユーのマインドコントロールにかかってしまったみたいデス」
囁かれる甘い言葉。
マインドは自分の体温が一気に上がっていくのをありありと感じていた。
冷えていた身体に、再び熱が拡がっていく。
彼の体温に、声に、言葉に、溶かされてしまいそうになる。
「だからミーはどんなに虐げられても、ユーの傍に居ました。
……まぁ、虐げられるのが良かったのもありマスが」
さらりと爆弾発言をかましているが、生憎マインドにツッコむ余裕は無い。
「……ウィ、ズ……」
「マインド様、ミーは何があってもマインド様の傍に居マス。
奴隷でも、しもべでもいい。
ただ、寂しくて辛いなら……ミーを傍に置いてくだサイ」
真剣な彼の言葉が、すとんと彼女の心に落ちる。
それはゆっくりと、優しく染み込んでいった。
そして彼女は、自分が寂しかったということを急速に理解した。
虚しいような気持ちも、脱力感のような気持ちも、全ては寂しさだった――
胸を、温かな気持ちが満たしていく。
固く強張っていたものが、するするとほどけていくのを感じる。
マインドの瞳から、透明な雫がぽろぽろと転がり落ちた。
それは、彼女が敗北してから初めての涙だった。
必死に耐えようとしたが――ウィズに頭を撫でられ、余計に溢れてしまう。
彼の手は、ひどく温かかった。
マインドは顔を上げてウィズを見上げる。
その表情はかつて一つの世界の覇権を握りかけた者のではなく、ただ一人の初々しい少女の表情だった。
ウィズの黄色い瞳もそれに応えるように、彼女のまなざしをしっかりと受け止める。
その瞳もまた、純粋な情愛に満ちている。
マインドの薄い桃色の唇がゆっくりと開かれ――
「やだ」
マインドの言葉に、空気がピシリと固まった。
ウィズも笑顔のままピタリと固まった。
マインドの方は不満そうな顔でウィズを見上げている。
「そんなのやだ」
「マ、マインド様、いくらなんでもそこまでハッキリ言われるとちょっとミーのハートがブロークンし……」
そこまで言ったところで、不意に言葉が途切れた。
温かで柔らかな感触に、今度はウィズの目が驚きに見開かれる。
マインドが自らの唇でウィズの唇を塞いでいた。
短い口づけの後、マインドは俯いてウィズのシャツをギュッと握りしめる。
「マ、インド……さ、ま?」
ウィズは真っ赤な顔でマインドの旋毛を見つめた。
「……いやだ」
「あの、ミーちょっと意味がよくわからないのデスが……」
マインドは顔を上げると、キッとウィズを睨んだ。
「しもべとか、奴隷じゃなくて……こういう関係じゃなきゃ嫌!」
真っ赤になって叫ぶマインド。
彼女の言わんとする意味を理解し、ウィズも更に赤くなった。
「……で、では……あの、ミーは……ユーのボーイフレンドということで……いいのデスか?」
「……いいんじゃないの?」
照れくさそうな笑みを浮かべるマインドに、ウィズは目をウルウルとさせて飛びついた。
「マインド様っ……!」
今度はウィズの方から口付ける。
マインドはそれを戸惑いながらも受け止めた。
二度目の口付けは先ほどよりも長い。
甘く、胸の震えるような時が流れる。
……が、故意なのか不慮なのかは定かではないが、ウィズは彼女をそのままの勢いで押し倒してしまった。
「っゴルアアアアアアッ!」
パァン!とマインドの平手打ちが炸裂した。
綺麗な手形がウィズの左頬に残るが、彼はニコニコと笑みを浮かべている。
「あああああああああなたなんか一生奴隷よ!
さっきのは気の迷い!気のせい!勘違い!」
「一生奴隷!?
じゃあ一生傍に置いてくれるんデスね!」
「いいのそれで!?」
「でもやっぱり奴隷は嫌デス。
……奴隷は、こんなことできませんからね」
ウィズは再びマインドを抱き寄せた。
マインドは抵抗することなく、彼の腕の中に収まる。
彼の体温に、彼の匂いに、彼の優しさにいつまでも包まれていたかった。
……が、ふとマインドは自分がここ数日(といっても日付感覚すら無くなっていたのだが)風呂に入っていないことを思い出した。
自分の臭いは自分ではわからないものだが、こうも密着していればわかってしまうだろう――そう悟ると同時に、ウィズを突き飛ばしてしまった。
「ど、どうしマシた?」
ウィズはキョトンとした表情で、再びマインドに近寄る。
マインドは一定の間合いをとるようにじりじりと後ろに後退った。
「だ、だめ!
今の私絶対臭いから!」
ウィズはマインドの言いたいことを察したのか、へろりとした笑みを浮かべた。
「そんなことないデスよ、マインド様はいつでもいい香りデス……。
むしろ今だからこそ余計に素晴らしい匂いが「ごめんキモい」
ウィズは良いとは言うが、それでも一度気になると収まりがつかない。
……それに、今ごろ気づいたが服はボロボロでかなりきわどい格好であった。
こんな姿でいるのもなんだか恥ずかしい。
「……ちょっとお風呂いってくる」
「ではミーが背中流しマ「来るな変態!」
バチン!と今度はウィズの右頬に赤い手形ができた。
マインドはそのままズンズンと浴室の方へと歩いて行ってしまった。
「……ちょっとは元気になったみたいデスね」
赤く腫れた頬を擦りながら呟くウィズは、安心したように笑っていた。
Because......
(ただ貴女の傍に)
next
→あとがき
時は鏡の国の事件の後、カービィに敗れたダークマインドは果てしない虚無感と無気力状態に陥っていた。
身体も傷付いていて服もボロボロだが、どうにかする気にはなれない。
家に帰る気すら起こらない。
まさに彼女は死んだように生きていた。
時間にしておそらく夜分だろうか。
ふと大きな鏡を覗くと、黒髪の少女が写し出された。
その彼女は目を真っ赤にして泣いている。
昼間は気丈に振る舞っている彼女が泣いているから、やはり今は夜か……とマインドはぼんやりと考える。
「シャドー……」
掠れた声で少女の名前を呟く。
しかし、その声は届かない。
次に、棚の置いてあるビンの方へと目を向けた。
中にはキラキラと光るものが入っている。
鏡の……ダークメタナイトが砕けた残骸である。
粉々に砕け散ったそれは、淡く光を反射していた。
これこそが彼女の泣いている原因だった。
シャドーとダークは相思相愛だった。
だが、二人には致命的に違うところがあった――創造主への忠誠心である。
ダークマインドに忠誠を尽くしたダークは、カービィに倒されて砕け散った。
シャドーは彼女を裏切ってカービィに手を貸した。
その結果、二人は引き裂かれた。
彼女の中には苦いものが残る。
自分の思い通りに動く手駒が1つ無くなった。
彼女にとってはそれだけの話のはずであった。
なのに、どうしようもなく胸が痛んだ。
鏡越しにシャドーを見ていると、余計に苦しくなる。
マインドは無理矢理視線を引き剥がした。
気を紛らわそうと、他のことを考え始める。
キングゴーレムは元気だろうか。
モーリィは奥さんと仲直りできたのだろうか。
クラッコは最近大気汚染が盛んだが大丈夫だろうか。
ガブリエルは水質汚濁以下省略。
メガタイタンはちゃんと治ったのだろうか。
マスターハンドとクレイジーハンドは無事にスマブラの世界に帰れただろうか。
――かつて操っていた者どもの顔が、思い浮かんでは消えていく。
更に強く思い出すのは、一人の青年――彼女のマインドコントロールが強く効いたのか、もはや崇拝レベルにまで達していた者の姿。
『マインド様……!』
そう彼女に慕い忠誠を誓っていた彼の姿が、妙に鮮やかに甦る。
あの時彼女は、たしかに女王であった。
だが今は、一人ぼっちだ。
マインドコントロールで従えていた者たちは彼女が敗れたことによってそれが解け、どこかへと行ってしまった。
力で従わせていたものは、力が無くなれば離れていく。
それは当たり前のことでどうにもならない――わかっていても、改めてその状況に直面するのは堪えた。
「……今日は……冷えるわ……」
すー、と風が吹く。
それは隙間風などではなく扉が開いたからだと気付いたと同時に、マインドは人の気配を感じて顔を上げた。
「……っ」
気配の正体がわかり、彼女はあからさまに嫌そうな顔をする。
彼は、躊躇わずに彼女の前に歩み出た。
「何しに来たの?
貴方はもうここに来る必要はないはず」
マインドは目の前の人物を精一杯睨み付ける。
シルクハットをかぶり、燕尾服を着た――彼女に記憶に残るそのままのウィズが立っていた。
「何?無様に負けた私を笑いにでも来たの?」
「違いマス……ミーはユーに会いに来ました」
「はぁ?
貴方に掛かったマインドコントロールも解けたはずよ!
晴れて貴方は自由の身!よかったじゃない!」
ダークマインドは壊れかけた笑顔で言い放つ……が、ウィズは酷く悲しそうに眼を伏せた。
「……そのことでユーに1つ、嘘をついていマシタ。
本当は、ユーのマインドコントロールにはかかっていませんデシタ」
え?とダークマインドの目が見開かれた。
引きつれた笑みが消え、無表情になっていく。
「すみません、あのとき咄嗟にバリアーを張りマシた。
ミーはあのメンバーの中で、唯一ユーのマインドコントロールからまぬがれていマシた」
「じゃあ……なぜ、私のそばにいた……?」
震える声で問うマインド。
彼の告白は、彼女にとって余りにも衝撃的であった。
ダークマインドは散々彼を虐げ、痛めつけてきた。
どうやら彼はそれを好んでいたようだが……従順に躾た者は扱いやすい。
彼女にとっては便利な手駒が一つでも増えればどうでもよかった。
そのはずだった。
訳が分からない、そう言いたそうなマインドの顔をじっと見て、ウィズは盛大な溜め息をついた。
「……ここまで言ってもまだわからないんデスか?
感情を司るなら、そろそろ察してくだサイよ」
「なっ……失礼な!
だいたいそれ、貴方が筋金入りのマゾ――」
ウィズはマインドの身体を抱き寄せた。
ぽすん、とウィズの胸にマインドの顔が押し付けられる。
驚きの余り動けないマインドを、そっと包み込むように抱き締めた。
「ユーの傍に居たかったんデスよ」
耳元で、優しく囁くウィズ。
思ってもみなかった言葉にマインドの瞳が見開かれた。
「あの日ユーを見た瞬間、ミーは違う意味でユーのマインドコントロールにかかってしまったみたいデス」
囁かれる甘い言葉。
マインドは自分の体温が一気に上がっていくのをありありと感じていた。
冷えていた身体に、再び熱が拡がっていく。
彼の体温に、声に、言葉に、溶かされてしまいそうになる。
「だからミーはどんなに虐げられても、ユーの傍に居ました。
……まぁ、虐げられるのが良かったのもありマスが」
さらりと爆弾発言をかましているが、生憎マインドにツッコむ余裕は無い。
「……ウィ、ズ……」
「マインド様、ミーは何があってもマインド様の傍に居マス。
奴隷でも、しもべでもいい。
ただ、寂しくて辛いなら……ミーを傍に置いてくだサイ」
真剣な彼の言葉が、すとんと彼女の心に落ちる。
それはゆっくりと、優しく染み込んでいった。
そして彼女は、自分が寂しかったということを急速に理解した。
虚しいような気持ちも、脱力感のような気持ちも、全ては寂しさだった――
胸を、温かな気持ちが満たしていく。
固く強張っていたものが、するするとほどけていくのを感じる。
マインドの瞳から、透明な雫がぽろぽろと転がり落ちた。
それは、彼女が敗北してから初めての涙だった。
必死に耐えようとしたが――ウィズに頭を撫でられ、余計に溢れてしまう。
彼の手は、ひどく温かかった。
マインドは顔を上げてウィズを見上げる。
その表情はかつて一つの世界の覇権を握りかけた者のではなく、ただ一人の初々しい少女の表情だった。
ウィズの黄色い瞳もそれに応えるように、彼女のまなざしをしっかりと受け止める。
その瞳もまた、純粋な情愛に満ちている。
マインドの薄い桃色の唇がゆっくりと開かれ――
「やだ」
マインドの言葉に、空気がピシリと固まった。
ウィズも笑顔のままピタリと固まった。
マインドの方は不満そうな顔でウィズを見上げている。
「そんなのやだ」
「マ、マインド様、いくらなんでもそこまでハッキリ言われるとちょっとミーのハートがブロークンし……」
そこまで言ったところで、不意に言葉が途切れた。
温かで柔らかな感触に、今度はウィズの目が驚きに見開かれる。
マインドが自らの唇でウィズの唇を塞いでいた。
短い口づけの後、マインドは俯いてウィズのシャツをギュッと握りしめる。
「マ、インド……さ、ま?」
ウィズは真っ赤な顔でマインドの旋毛を見つめた。
「……いやだ」
「あの、ミーちょっと意味がよくわからないのデスが……」
マインドは顔を上げると、キッとウィズを睨んだ。
「しもべとか、奴隷じゃなくて……こういう関係じゃなきゃ嫌!」
真っ赤になって叫ぶマインド。
彼女の言わんとする意味を理解し、ウィズも更に赤くなった。
「……で、では……あの、ミーは……ユーのボーイフレンドということで……いいのデスか?」
「……いいんじゃないの?」
照れくさそうな笑みを浮かべるマインドに、ウィズは目をウルウルとさせて飛びついた。
「マインド様っ……!」
今度はウィズの方から口付ける。
マインドはそれを戸惑いながらも受け止めた。
二度目の口付けは先ほどよりも長い。
甘く、胸の震えるような時が流れる。
……が、故意なのか不慮なのかは定かではないが、ウィズは彼女をそのままの勢いで押し倒してしまった。
「っゴルアアアアアアッ!」
パァン!とマインドの平手打ちが炸裂した。
綺麗な手形がウィズの左頬に残るが、彼はニコニコと笑みを浮かべている。
「あああああああああなたなんか一生奴隷よ!
さっきのは気の迷い!気のせい!勘違い!」
「一生奴隷!?
じゃあ一生傍に置いてくれるんデスね!」
「いいのそれで!?」
「でもやっぱり奴隷は嫌デス。
……奴隷は、こんなことできませんからね」
ウィズは再びマインドを抱き寄せた。
マインドは抵抗することなく、彼の腕の中に収まる。
彼の体温に、彼の匂いに、彼の優しさにいつまでも包まれていたかった。
……が、ふとマインドは自分がここ数日(といっても日付感覚すら無くなっていたのだが)風呂に入っていないことを思い出した。
自分の臭いは自分ではわからないものだが、こうも密着していればわかってしまうだろう――そう悟ると同時に、ウィズを突き飛ばしてしまった。
「ど、どうしマシた?」
ウィズはキョトンとした表情で、再びマインドに近寄る。
マインドは一定の間合いをとるようにじりじりと後ろに後退った。
「だ、だめ!
今の私絶対臭いから!」
ウィズはマインドの言いたいことを察したのか、へろりとした笑みを浮かべた。
「そんなことないデスよ、マインド様はいつでもいい香りデス……。
むしろ今だからこそ余計に素晴らしい匂いが「ごめんキモい」
ウィズは良いとは言うが、それでも一度気になると収まりがつかない。
……それに、今ごろ気づいたが服はボロボロでかなりきわどい格好であった。
こんな姿でいるのもなんだか恥ずかしい。
「……ちょっとお風呂いってくる」
「ではミーが背中流しマ「来るな変態!」
バチン!と今度はウィズの右頬に赤い手形ができた。
マインドはそのままズンズンと浴室の方へと歩いて行ってしまった。
「……ちょっとは元気になったみたいデスね」
赤く腫れた頬を擦りながら呟くウィズは、安心したように笑っていた。
Because......
(ただ貴女の傍に)
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