Love magic
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「♪~♪~~」
休日のある日、ブレイドは自分の剣を磨いていた。
こうしてのんびりとしていられるのもプププランドが平和な証拠だなぁ、事件なんて起きなければいいのになぁ、と思いながら。
が、直後に事件は起こった。
「ブレイド!
お前に頼みがある!」
ソードが息をあらげて、部屋の中に転がり込むように入ってきた。
あまりにも緊迫した雰囲気に何か緊急事態でも起きたのか!?とブレイドは身を固くする。
「はぁ、はぁ……ゲホゲホゲホッ」
「だ、大丈夫か!?」
ブレイドは咳き込んでしまったソードのもとに駆け寄り、背中を軽く叩いてやった。
苦しそうに呼吸を繰り返すソードは、何やら布の塊を持っている。
「頼む……俺の頼みを……!」
「な、なんだ!?
俺にできることならなんでもする!!
言ってみろ!!」
「ならば…!
是非、これを着てくれ!!」
キラキラとした目でソードがブレイドに差し出したのは……レースやフリルがふんだんにあしらわれた、乙女チックで可愛らしいドレスだった。
##IMGR28##
「……あのさ、お前、バカ?
俺がこんな女の子みたいなの似合うわけないだろ?」
「絶対似合うから!!
ブレイドは可愛いから!!」
可愛い、と言われた瞬間にブレイドの顔が瞬間湯沸かし器の如く真っ赤になった。
その反応を見て、ソードは内心「よし、かかった……!」と笑う。
ソードは、彼女が可愛い、などの褒め言葉に慣れていないことを知っているのだ。
「絶対似合わないから!保障する!」
「可愛いブレイドが可愛い服を着て何がおかしいんだ!
可愛いに決まってい「きっしょいから何度も可愛いとか言うなあああ!」
「可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い「だぁぁぁっうるさいっ!連呼すんな!」
「……受け取るなら、連呼やめるぞ?」
にやりと笑うソード。
言葉に詰まるブレイド。
どちらが勝者なのかは一目瞭然だった。
そして………
***
「……はぁ……」
ブレイドは盛大な溜め息をついた。
彼女の視線の先には……先ほどのドレスがあった。
ハンガーにかけられているそれは、明らかに女の子らしいそれである。
結局ソードの脅しに負け、受け取ってしまった。
ソードはその後すぐに、逃げるように何処かへ走り去っていってしまった。
受け取ったからと言って着るとは限らない、と背中に叫んだ俺の声は聞こえていたのだろうか……と心の中で呟くと、もう一度大きな溜め息をついた。
「……そりゃ、ちょっとは着てみたいとは思うけどさぁ……」
日々身体を鍛えていても、戦いに明け暮れていたとしても、彼女はれっきとした少女なのである。
少女の好むような可愛いものは大好きだし、花や美しい物も大好きなのだ。
ソードにもそれを見透かされているようで、なんとなく悔しかった。
もっとも、ソードは自分の願望を押しつけていっただけなのかもしれないが。
「……俺みたいなのが、似合うわけなんか……」
頭の中で目の前のドレスを着ている自分を想像し――すぐにそれを打ち消す。
何の罰ゲームだよ、誰得だよ、と毒づくが、その声は空しく部屋に響くばかりだった。
もしも、俺がもっと可愛かったら。
女の子らしかったら……そんな思いが、頭の中を巡る。
―――コンコン
不意に、部屋のドアがノックされてハッと我に返った。
慌てて立ち上がり、ドアの方へ歩いていった。
「はい、どなたですか?」
「ボクだけど、メタいる?」
声の主はカービィだった。
すぐに扉を開け、出迎える。
「すみません、卿はただいま外出していまして……」
「あ、そっか。」
「どうせですから、中で待たれていきませんか?」
「ううん、ちょっと遊びに来ただけなんだけど……あれ?」
カービィの視線は、部屋にあるあのドレスに注がれていた。
別にやましいことがあるわけではないが、なんとなく気まずさを感じてしまう。
「ぽよ!すごく可愛い!
ブレイドもああいうの着るんだ~」
カービィの言葉に、ブレイドは真っ赤になって「違うんです!」と否定した。
「じゃあ誰の?」
「あれはソードの普段着で!」
「嘘でしょ?」
「はい…すみません……」
がっくりと項垂れるブレイド。
嘘にしてももう少しまともなのがあるでしょ、とカービィは笑った。
「……実はあれ、ソードからのプレゼントなんです。」
「まあそんなところだろうと思ったよ。」
カービィはうんうんと頷いて、続けて着ないの?と問いかけた。
「着ませんよ!絶対似合いませんし!
そ、そりゃあ着てみたい気もしなくもありませんが……」
「ぽよ?じゃあ着ればいいじゃん!
だって、せっかくソードがブレイドのために買ってくれたんだよ?」
「……あんな可愛らしいのが、私に似合うわけがありません。」
「えー、絶対似合うと思うけどな。
あんなにブレイドのことばっか見てるソードが、キミに似合わない物なんて買うわけないよ!」
その言葉に赤面し、おろおろとしてしまう。
ソードが俺のために……と口に出して呟くと、「着てみようかな」という気にもなった。
しかしやはり、自分の着ている姿を想像すると……何とも言えない気持ちになってしまうのである。
「無理です……やっぱり勇気が……」
「うーん……じゃあ、ちょっと待ってて!」
「はい?」
カービィはポケットから携帯電話を取り出すと、どこかにかけ始めた。
***
しばらくして
「きたわよー!」
「ひっさしぶりー!」
「こんにちは!」
やってきたのは、フーム、アドレーヌ、リボンの三人だった。
「三人ともありがとう!」
「それじゃ、メイクは私とアドがやるわ!」
「合点承知!元が良いから腕がなるわー」
「じゃあ私はヘアーのセットをしますね。」
「ちょ、ちょっと……話が見えないのですけど……」
盛り上がる四人に、ブレイドは止めをかけようとする。
「え、だから」
「私達がブレイドさんに」
「魔法をかけてあげます!」
「えっえええええええええええええ!!!!?」
身の危険(?)を感じ、逃げを試み慌てて回れ右をし――…カービィに腕をがっしりと掴まれてしまった。
「はい、逃げちゃ駄目だよー」
「私、前からブレイドはこういう恰好が似合うと思っていたの!
実をいうとあなたにメイクしてみたかったわ!」
「実はボクも」
「あたしもー」
「私もです」
「なんですかそのカミングアウト!」
ブレイドは叫ぶが、一度盛り上がった四人がその程度で収まるはずがなかった。
ノリノリで道具を取りだし、ブレイドを取り囲んでしまった。
「失礼します。」
リボンが、ポニーテールにしてあったブレイドの髪をほどいた。
続けて、いい香りのするスプレーを振りかけた。
「……いい香り…」
「でしょ?
これ、私も愛用しているんです!
髪にも優しいのでオススメですよ。」
そう言いながら、ゆっくりとコテでポニーテールの癖を伸ばしていく。
「うーん、元の癖を活かしたゆるふわの巻き髪なんて似合いそうですね!」
リボンがそう言うと、「まっ、巻き髪!?」と驚いた声をあげた。
常に動きやすいポニーテールでいた彼女にとって、巻き髪というものは未知の世界のものなのである。
「メイクは……大人っぽい中にピンクを取り入れましょう!」
「ピーチピンクの系統が似合いそうだね、髪色とも合いそうだし……」
「ピ、ピンク!?」
これもまた、化粧っ気のない彼女にとっては未知の世界だった。
急的な展開に頭がぐるぐるしているブレイドに、カービィが更に追い討ちをかける。
「……はい、ブレイド服脱いで!」
「え。」
「だって、まずはドレス着なきゃでしょ?」
カービィが真っ黒い笑顔でにじり寄ってくる。
本能的に「逃げたい」と思った。
「三人とも押さえてて」
「え、ちょ、あっ、待って!
心の準備が…アッー!」
約30分後。
ブレイドはどこからどう見ても可愛らしい女の子になっていた。
元の大人っぽい顔立ちの中にピンクを取り入れたメイクで女の子らしさ、愛らしさを表現し、リボン力作のゆるふわの巻き髪は愛らしさを更に増していた。
その見た目はまさに“お姫様”と形容するのが一番最適である。
「これで、靴もいいのあれば完璧なんだけどねー…合う靴、持ってないんだよなー」
残念そうに言うアドレーヌに、フームとリボンがうんうんと同意をした。
可愛らしい格好の中に、靴だけが戦闘用で明らかに浮いていたのである。
「フッフッフッ、実はもう手配してあるんだよねー♪」
カービィはにやりと笑った。
それと同時に化粧鏡の表面から、何かが飛び出した。
「やっほー!
お、ブレイド可愛いじゃん!」
鏡の中からやってきたのは、なにやら大切そうに箱を抱えたシャドーカービィだった。
「はいこれ!頼まれた品!」
「ありがとシャドー!」
シャドーから受け取っていそいそと箱を開けると、中に入っていたのは大人っぽいドレスシューズだった。
そう、カービィがシャドーに電話で頼んでおいたのである。
「さ、これ履いてみて!」
カービィに勧められるまま、ブレイドは繊細な造りのドレスシューズに足を通した。
慣れない高いヒールに戸惑いを隠せない。
「わあああ……すごく綺麗です……!」
「ほら、鏡見てみて!」
リボンが感嘆の声を上げ、アドレーヌはキラキラとした目でブレイドを見つめた。
フームが全身鏡を指差すとブレイドは恐る恐る視線をそちらに向け、驚愕の表情を浮かべた。
「これが…俺……?」
ブレイドが呆然と「信じられない」と呟いた。
なにもかもが普段の自分と違って、目の前に写っているのは別人なのでは、と疑ってしまう。
だが、紛れもない自分自身である。
「これで完成ですね!」
「ううん、あと1つだけあるよ。」
「え?」
聞き返すフームに、カービィはイタズラっぽい顔で頷く。
「あと1つ、ボク達にはできない魔法が、ね♪」
ちょうどそのとき、廊下から男性の声が聞こえてきた。
メタナイトとソードのものだ。
「……ちょうど来たね!」
「ただいま。
……ん?客人か?」
「随分たくさん来てま……」
ソードがブレイドを見た瞬間、固まってしまった。
「き、着てみたんだが……変、か?」
恐る恐る聞いてみるブレイド。
しかし、ソードは微動だにしない。
まるで石像のように固まってしまった彼を見つめるブレイドの心に、重い物が伸し掛かってくるような感覚がした。
やっぱり、自分なんかじゃ似合わないんだと。
皆がこんなに頑張ってくれたのに、似合わないのだと。
そう思うと、苦しかった。
自分が惨めで涙が溢れそうだったけど、ここで涙を見せるのは悔しかった。
「や、やっぱり似合わないんだって!
脱ぐ!もう脱ぐ!」
「ま、待て!
違うんだっ!そうじゃなくって!」
ソードは慌てて彼女の腕を掴み、脱ごうとするのを阻止をした。
「なんだよ!どうせ似合わ「すっげえ可愛いんだよ!」
それは、半ば叫び声に近かった。
ブレイドの動きも思わず止まってしまう。
「似合わないわけない!めちゃくちゃ可愛い!
絶対似合うと思ったけど、正直ここまで似合うとは思わなかった!
可愛すぎて、咄嗟に何て言えばいいかわかんなかったんだ!」
一気にまくしたてたあとに我に返ったのか、顔を真っ赤に染めた。
だが次にキリッと表情を引き締め――それでもやはり少し照れ臭そうに―――真っ直ぐにブレイドの目を見つめた。
「本当に可愛い、凄く似合っている。」
「……!」
ブレイドは一瞬泣きそうな顔になる。
しかしそれは瞬時に笑顔に変わった。
「ありがとう……!」
まるで一斉に花が咲いたかのような笑顔。
そのとびきりの笑顔に、ソードではなくても見惚れてしまう。
見る者を癒し、幸せを分け与える、そんな笑顔であった。
「……もしかして、最後の魔法って……」
「そう、ソードの『可愛い』って言葉だよ♪」
リボンに問われ、カービィは得意気な顔をした。
やっと状況を把握したらしいメタナイトが、感心したように彼女達を眺めている。
「……それにしても、すごいな……あんなに変わるものなのか……。」
「恋の魔法って、偉大でしょ。」
カービィの言葉に、メタナイトが納得のいったように大きく頷く。
幸せそうにはにかむ恋人達を、五人は満足そうな目で見ていた。
##IMGR29##
Love magic
それは、女の子特権の魔法
NEXT
→あとがき
休日のある日、ブレイドは自分の剣を磨いていた。
こうしてのんびりとしていられるのもプププランドが平和な証拠だなぁ、事件なんて起きなければいいのになぁ、と思いながら。
が、直後に事件は起こった。
「ブレイド!
お前に頼みがある!」
ソードが息をあらげて、部屋の中に転がり込むように入ってきた。
あまりにも緊迫した雰囲気に何か緊急事態でも起きたのか!?とブレイドは身を固くする。
「はぁ、はぁ……ゲホゲホゲホッ」
「だ、大丈夫か!?」
ブレイドは咳き込んでしまったソードのもとに駆け寄り、背中を軽く叩いてやった。
苦しそうに呼吸を繰り返すソードは、何やら布の塊を持っている。
「頼む……俺の頼みを……!」
「な、なんだ!?
俺にできることならなんでもする!!
言ってみろ!!」
「ならば…!
是非、これを着てくれ!!」
キラキラとした目でソードがブレイドに差し出したのは……レースやフリルがふんだんにあしらわれた、乙女チックで可愛らしいドレスだった。
##IMGR28##
「……あのさ、お前、バカ?
俺がこんな女の子みたいなの似合うわけないだろ?」
「絶対似合うから!!
ブレイドは可愛いから!!」
可愛い、と言われた瞬間にブレイドの顔が瞬間湯沸かし器の如く真っ赤になった。
その反応を見て、ソードは内心「よし、かかった……!」と笑う。
ソードは、彼女が可愛い、などの褒め言葉に慣れていないことを知っているのだ。
「絶対似合わないから!保障する!」
「可愛いブレイドが可愛い服を着て何がおかしいんだ!
可愛いに決まってい「きっしょいから何度も可愛いとか言うなあああ!」
「可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い「だぁぁぁっうるさいっ!連呼すんな!」
「……受け取るなら、連呼やめるぞ?」
にやりと笑うソード。
言葉に詰まるブレイド。
どちらが勝者なのかは一目瞭然だった。
そして………
***
「……はぁ……」
ブレイドは盛大な溜め息をついた。
彼女の視線の先には……先ほどのドレスがあった。
ハンガーにかけられているそれは、明らかに女の子らしいそれである。
結局ソードの脅しに負け、受け取ってしまった。
ソードはその後すぐに、逃げるように何処かへ走り去っていってしまった。
受け取ったからと言って着るとは限らない、と背中に叫んだ俺の声は聞こえていたのだろうか……と心の中で呟くと、もう一度大きな溜め息をついた。
「……そりゃ、ちょっとは着てみたいとは思うけどさぁ……」
日々身体を鍛えていても、戦いに明け暮れていたとしても、彼女はれっきとした少女なのである。
少女の好むような可愛いものは大好きだし、花や美しい物も大好きなのだ。
ソードにもそれを見透かされているようで、なんとなく悔しかった。
もっとも、ソードは自分の願望を押しつけていっただけなのかもしれないが。
「……俺みたいなのが、似合うわけなんか……」
頭の中で目の前のドレスを着ている自分を想像し――すぐにそれを打ち消す。
何の罰ゲームだよ、誰得だよ、と毒づくが、その声は空しく部屋に響くばかりだった。
もしも、俺がもっと可愛かったら。
女の子らしかったら……そんな思いが、頭の中を巡る。
―――コンコン
不意に、部屋のドアがノックされてハッと我に返った。
慌てて立ち上がり、ドアの方へ歩いていった。
「はい、どなたですか?」
「ボクだけど、メタいる?」
声の主はカービィだった。
すぐに扉を開け、出迎える。
「すみません、卿はただいま外出していまして……」
「あ、そっか。」
「どうせですから、中で待たれていきませんか?」
「ううん、ちょっと遊びに来ただけなんだけど……あれ?」
カービィの視線は、部屋にあるあのドレスに注がれていた。
別にやましいことがあるわけではないが、なんとなく気まずさを感じてしまう。
「ぽよ!すごく可愛い!
ブレイドもああいうの着るんだ~」
カービィの言葉に、ブレイドは真っ赤になって「違うんです!」と否定した。
「じゃあ誰の?」
「あれはソードの普段着で!」
「嘘でしょ?」
「はい…すみません……」
がっくりと項垂れるブレイド。
嘘にしてももう少しまともなのがあるでしょ、とカービィは笑った。
「……実はあれ、ソードからのプレゼントなんです。」
「まあそんなところだろうと思ったよ。」
カービィはうんうんと頷いて、続けて着ないの?と問いかけた。
「着ませんよ!絶対似合いませんし!
そ、そりゃあ着てみたい気もしなくもありませんが……」
「ぽよ?じゃあ着ればいいじゃん!
だって、せっかくソードがブレイドのために買ってくれたんだよ?」
「……あんな可愛らしいのが、私に似合うわけがありません。」
「えー、絶対似合うと思うけどな。
あんなにブレイドのことばっか見てるソードが、キミに似合わない物なんて買うわけないよ!」
その言葉に赤面し、おろおろとしてしまう。
ソードが俺のために……と口に出して呟くと、「着てみようかな」という気にもなった。
しかしやはり、自分の着ている姿を想像すると……何とも言えない気持ちになってしまうのである。
「無理です……やっぱり勇気が……」
「うーん……じゃあ、ちょっと待ってて!」
「はい?」
カービィはポケットから携帯電話を取り出すと、どこかにかけ始めた。
***
しばらくして
「きたわよー!」
「ひっさしぶりー!」
「こんにちは!」
やってきたのは、フーム、アドレーヌ、リボンの三人だった。
「三人ともありがとう!」
「それじゃ、メイクは私とアドがやるわ!」
「合点承知!元が良いから腕がなるわー」
「じゃあ私はヘアーのセットをしますね。」
「ちょ、ちょっと……話が見えないのですけど……」
盛り上がる四人に、ブレイドは止めをかけようとする。
「え、だから」
「私達がブレイドさんに」
「魔法をかけてあげます!」
「えっえええええええええええええ!!!!?」
身の危険(?)を感じ、逃げを試み慌てて回れ右をし――…カービィに腕をがっしりと掴まれてしまった。
「はい、逃げちゃ駄目だよー」
「私、前からブレイドはこういう恰好が似合うと思っていたの!
実をいうとあなたにメイクしてみたかったわ!」
「実はボクも」
「あたしもー」
「私もです」
「なんですかそのカミングアウト!」
ブレイドは叫ぶが、一度盛り上がった四人がその程度で収まるはずがなかった。
ノリノリで道具を取りだし、ブレイドを取り囲んでしまった。
「失礼します。」
リボンが、ポニーテールにしてあったブレイドの髪をほどいた。
続けて、いい香りのするスプレーを振りかけた。
「……いい香り…」
「でしょ?
これ、私も愛用しているんです!
髪にも優しいのでオススメですよ。」
そう言いながら、ゆっくりとコテでポニーテールの癖を伸ばしていく。
「うーん、元の癖を活かしたゆるふわの巻き髪なんて似合いそうですね!」
リボンがそう言うと、「まっ、巻き髪!?」と驚いた声をあげた。
常に動きやすいポニーテールでいた彼女にとって、巻き髪というものは未知の世界のものなのである。
「メイクは……大人っぽい中にピンクを取り入れましょう!」
「ピーチピンクの系統が似合いそうだね、髪色とも合いそうだし……」
「ピ、ピンク!?」
これもまた、化粧っ気のない彼女にとっては未知の世界だった。
急的な展開に頭がぐるぐるしているブレイドに、カービィが更に追い討ちをかける。
「……はい、ブレイド服脱いで!」
「え。」
「だって、まずはドレス着なきゃでしょ?」
カービィが
本能的に「逃げたい」と思った。
「三人とも押さえてて」
「え、ちょ、あっ、待って!
心の準備が…アッー!」
約30分後。
ブレイドはどこからどう見ても可愛らしい女の子になっていた。
元の大人っぽい顔立ちの中にピンクを取り入れたメイクで女の子らしさ、愛らしさを表現し、リボン力作のゆるふわの巻き髪は愛らしさを更に増していた。
その見た目はまさに“お姫様”と形容するのが一番最適である。
「これで、靴もいいのあれば完璧なんだけどねー…合う靴、持ってないんだよなー」
残念そうに言うアドレーヌに、フームとリボンがうんうんと同意をした。
可愛らしい格好の中に、靴だけが戦闘用で明らかに浮いていたのである。
「フッフッフッ、実はもう手配してあるんだよねー♪」
カービィはにやりと笑った。
それと同時に化粧鏡の表面から、何かが飛び出した。
「やっほー!
お、ブレイド可愛いじゃん!」
鏡の中からやってきたのは、なにやら大切そうに箱を抱えたシャドーカービィだった。
「はいこれ!頼まれた品!」
「ありがとシャドー!」
シャドーから受け取っていそいそと箱を開けると、中に入っていたのは大人っぽいドレスシューズだった。
そう、カービィがシャドーに電話で頼んでおいたのである。
「さ、これ履いてみて!」
カービィに勧められるまま、ブレイドは繊細な造りのドレスシューズに足を通した。
慣れない高いヒールに戸惑いを隠せない。
「わあああ……すごく綺麗です……!」
「ほら、鏡見てみて!」
リボンが感嘆の声を上げ、アドレーヌはキラキラとした目でブレイドを見つめた。
フームが全身鏡を指差すとブレイドは恐る恐る視線をそちらに向け、驚愕の表情を浮かべた。
「これが…俺……?」
ブレイドが呆然と「信じられない」と呟いた。
なにもかもが普段の自分と違って、目の前に写っているのは別人なのでは、と疑ってしまう。
だが、紛れもない自分自身である。
「これで完成ですね!」
「ううん、あと1つだけあるよ。」
「え?」
聞き返すフームに、カービィはイタズラっぽい顔で頷く。
「あと1つ、ボク達にはできない魔法が、ね♪」
ちょうどそのとき、廊下から男性の声が聞こえてきた。
メタナイトとソードのものだ。
「……ちょうど来たね!」
「ただいま。
……ん?客人か?」
「随分たくさん来てま……」
ソードがブレイドを見た瞬間、固まってしまった。
「き、着てみたんだが……変、か?」
恐る恐る聞いてみるブレイド。
しかし、ソードは微動だにしない。
まるで石像のように固まってしまった彼を見つめるブレイドの心に、重い物が伸し掛かってくるような感覚がした。
やっぱり、自分なんかじゃ似合わないんだと。
皆がこんなに頑張ってくれたのに、似合わないのだと。
そう思うと、苦しかった。
自分が惨めで涙が溢れそうだったけど、ここで涙を見せるのは悔しかった。
「や、やっぱり似合わないんだって!
脱ぐ!もう脱ぐ!」
「ま、待て!
違うんだっ!そうじゃなくって!」
ソードは慌てて彼女の腕を掴み、脱ごうとするのを阻止をした。
「なんだよ!どうせ似合わ「すっげえ可愛いんだよ!」
それは、半ば叫び声に近かった。
ブレイドの動きも思わず止まってしまう。
「似合わないわけない!めちゃくちゃ可愛い!
絶対似合うと思ったけど、正直ここまで似合うとは思わなかった!
可愛すぎて、咄嗟に何て言えばいいかわかんなかったんだ!」
一気にまくしたてたあとに我に返ったのか、顔を真っ赤に染めた。
だが次にキリッと表情を引き締め――それでもやはり少し照れ臭そうに―――真っ直ぐにブレイドの目を見つめた。
「本当に可愛い、凄く似合っている。」
「……!」
ブレイドは一瞬泣きそうな顔になる。
しかしそれは瞬時に笑顔に変わった。
「ありがとう……!」
まるで一斉に花が咲いたかのような笑顔。
そのとびきりの笑顔に、ソードではなくても見惚れてしまう。
見る者を癒し、幸せを分け与える、そんな笑顔であった。
「……もしかして、最後の魔法って……」
「そう、ソードの『可愛い』って言葉だよ♪」
リボンに問われ、カービィは得意気な顔をした。
やっと状況を把握したらしいメタナイトが、感心したように彼女達を眺めている。
「……それにしても、すごいな……あんなに変わるものなのか……。」
「恋の魔法って、偉大でしょ。」
カービィの言葉に、メタナイトが納得のいったように大きく頷く。
幸せそうにはにかむ恋人達を、五人は満足そうな目で見ていた。
##IMGR29##
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