えいえんのしあわせ
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「しかし、カービィの能力って便利だよな」
「え?なんで?」
「ちょっとの傷ならすぐ治るんだろ?」
「まあね……伊達に星の戦士じゃないからね。
この能力には今までかなり助けられたもん」
「その能力、正直少し羨ましかった。
オレ、能力とかは持ってても身体はそんなに丈夫じゃなかったからなぁ……刺されたら普通に死ぬ」
「今は逆にそれが邪魔だよ~……ほら、言ってるそばから止まってきちゃった。
すぐ治っちゃうんだよね」
「どうする?切るか?」
「うん、お願い」
「じゃあこの辺を……っと」
「っ……!」
「っ!大丈夫か?痛かったか?」
「ううん、ドロッチェだからへーき!」
「フッ……そうか。
……それにしても、カービィは本当に綺麗だな。
改めてそう思うよ」
「そんなことないよ!
絶対ドロッチェの方が綺麗!
でもね、交じると……ほら、もっと綺麗なんだよ?」
「本当だ、今まで見たどんな赤より綺麗だな。
……最期に見れてよかったな」
「あ……ドロッチェ、ちょっと顔色悪くなってきた」
「やっぱりか?
あーあ、もうちょっと楽しみたかったのに……
そろそろ限界が来そうだな」
「えっ……やだやだやだっ!
置いてかないで!
先にいっちゃやだよぉ!」
「ハハッ、そんな泣くなよ……
大丈夫だ。
オレが逝く前に、ちゃーんとしっかりキミのこと、殺すからさ」
「ホント?
ちゃんと殺してくれる?」
ボクの言葉にドロッチェはゆっくりと、でもしっかりと頷いた。
「オレも、本当はキミに殺されたかったな……」
「ごめんね……だってボク、自殺しても生き返っちゃうから、しっかり殺してもらわないと死ねないんだもん」
「フッ……わかってるよ。
仕方の無いことだもんな」
ドロッチェは血に濡れていない左手でボクの頭を撫でてくれる。
その手は少しだけ冷たいし、いつもより弱々しかったけど……それでも温かかった。
胸がポカポカして、こんなにも幸せで、ずうっとその気持ちを味わっていたくなっちゃう。
でも、それはもう無理な話なんだよね。
「じゃあそろそろ……いこうか?」
「うん!」
ドロッチェボクを抱き上げて、ベッドに横たえた。
「……でも本当は、ドロッチェを抱きしめて一緒に死にたかったなぁ」
自然とそんな言葉が漏れていた。
ボクは自然と再生しちゃうから仕方がないけど、それでもやっぱり残念だと思っちゃう。
ドロッチェはちょっとだけ困ったように笑った後、得意そうな顔をした。
「フッ……オレが死ぬときは、カービィを抱き締めて死ねるからな!」
「ずるいずるいー!」
「いいだろ?
だって、オレはカービィに殺してもらえないから」
「う……それを言われるとなぁ……
しょうがないなぁ……」
ドロッチェは子どもをあやすように、ボクの頭をもう一度優しく撫でた。
「ねぇドロッチェ」
「なんだ?」
「最期に、愛してるって言って?」
「愛してるぞ、カービィ」
「えへへっ、ボクも愛してる!」
ぎゅうっとドロッチェに抱きつくと、トクントクンという心臓の音を感じた。
こんなに懸命に動いている心臓を、ボクも突き刺したかった。
彼の心臓を、あかいあかいしんぞうを、みてからてんごくにいきたかったなぁ……。
でもそれは叶わないから、せめてボクのすべてをドロッチェにあげるんだ。
「……改めて言うって、なんか照れるな」
「ボクもちょっと恥ずかしかった」
お揃いだね!と笑うと、そうだなと笑いながら答えてくれる。
そういう他愛のないやり取りも、大好きだったよ。
だからそれを永遠にするために、これは仕方のないことだったんだ。
ううん……仕方のないことなんかじゃない。
最初からこうするべきだったんだ。
いつかボクらは必ず死ぬ。
それはわかっているけど、寿命はそれぞれ違う。
ボクとドロッチェだったら、ボクの方が長生きしちゃう。
そんなのは耐えられない。
だったら、一緒に逝けばいいよね?
そのままボクらはじっと見つめ合う。
自然と唇が近づき、ゆっくりと重なった。
長い長い口付けだった。
それはまるで、永遠の時のようで。
お互いの存在を確かめ合うように、深く深く……。
ボクは白いワンピースを着ていたから、まるでお嫁さんのような気分だった。
幸せで、幸せで、死んじゃうくらい幸せで。
どれ程時が経ったのか、ようやく唇を離すとドロッチェはうんと優しく笑った。
「……じゃあね」
「ああ」
鋭利なナイフを振り上げるドロッチェ。
不思議と死に恐怖は抱かない。
そしてナイフは、真っ直ぐにボクの胸を貫いた。
痛い痛い痛い痛い、すっごくいたい、死ぬほど痛い。
あ、そうだ、死ぬんだよね、ボク。
ドロッチェが殺してくれるんだもん。
大好きな人が殺してくれる。
こんなに幸せなことってないよね?
「ね……ボク…待ってるよ……」
「ああ、すぐ行くから安心しろ」
ドロッチェがそう言ってくれるなら、もう大丈夫だよね。
ボク、待ってるよ。
ホントは待つの嫌いだけど、これからずーっと一緒にいるためだからぼくさみしくてもがんばってまつよ!
だからはやくきてね
ああ、いたみもなにもかんじなくなっていしきがうすれていく
あたまのなかがまっしろになって、ふらふら、くらくら、しあわせだなぁ
きみとであえて
ほんとうにしあわせだったなぁ
これからもずーっと、しあわせなんだぁ
***
「……おやすみ、カービィ」
まだ少し温かいカービィの身体を抱き上げ、もう一度抱き締める。
決して抱き返してこないのはわかっている。
それでもこうせずにはいられなかった。
死してなお、カービィはこんなにも可愛らしい。
「……さて」
オレはカービィを再びベッドに寝かせると、胸に刺さっているナイフを引き抜いた。
白いシーツに爆発的に血が広がっていく。
それはまるで、赤い薔薇が一斉に開花したかのようだった。
彼女のワンピースをたくし上げる。
決していやらしい目的があるわけではない。
……いや、正直に言うと少しそそられたが、それよりも早く彼女のところに逝きたい気持ちの方が強かった。
しかしオレにはまだやらなくてはならないことがある。
ナイフでその身体を割り開くと、血に塗れた臓腑の奥に目的の物――彼女の心臓があった。
彼女は高い再生力を誇る星の戦士だが、心臓を失えばさすがに再生できないらしい。
「念には念を入れて、ボクが二度と生き返らないようにしてね」と真剣な表情で言っていた彼女を思い出す。
繋がっている血管をぶちぶちと引き千切ぎりながら心臓を取り出す。
赤い血が更に溢れ出てきた。
カービィの身体を、濃い紅色が彩っていく。
こんなに美しい光景は、今までも人生で一度も見たことがない。
「やっぱり赤、似合うよな……」
改めて、手に持っている心臓に目をやる。
赤い血でてらてらと輝くそれも、今までに見たどんな財宝よりも美しかった。
「ああ……綺麗な人は心臓も綺麗なんだなぁ……」
まだ熱を持っている心臓に頬擦りをした。
べしゃ、と血が付くのにも構わない。
甘美な芳香につられて口付けると、咽香るような鉄錆の味を感じた。
そのまま傾けると、口の中に熱い液体が満ちていく。
ゆっくりと味わいながら、嚥下する。
どろりとした液体が喉と食道を通っていくその感覚に身体が震えた。
「カービィ……」
もう、本当に戻れない。
自分でやっておきながら、彼女だけでも生き返ればいいと思ってしまった。
「くっ……」
立ち上がろうとすると、不意に強いめまいがオレを襲った。
おそらく既に致死量近くまで出血している……そろそろタイムリミットか。
カービィの服を綺麗に整えて、身を起こす。
ウエディングドレスを模した白いワンピースは、すっかり真っ赤に染まってしまっていた。
決して抱き返してはくれないその身体を、オレはまたしばらく抱いていた。
「……ごめんな」
絶対に聞こえていないはずなのに、何度も何度も繰り返す。
涙が止まらなかった。
本当ならばオレが死んでも、笑ってくれるのが一番良かった。
そりゃ他の男の隣で笑うキミを空から見るなんて考えたくないし死ぬほど嫌だし死んでも嫌だ。
でも、オレが居なくなった後に泣いてばかりいるのはもっと嫌だ。
後を追いたくても追えない、と言っていた彼女の表情は酷く悲痛だった。
特異な身体を持つ彼女は自殺ができない。
その身が寿命を終えるのには、どれ程の時間が必要になるのだろう。
その間中オレを想い続けながら生きてくれるのは嬉しいけれども、それはきっと彼女にとって幸せではない。
だからこれは、オレ達の幸せを永遠にするためなんだ。
「……オレも逝かなきゃな。
カービィが待ってる」
カービィに刺したナイフを手に取った。
切っ先から彼女の血がポタリと垂れて、シーツに赤い染みを作る。
「……血ィついたままじゃ切れづらいか……?」
彼女の血が付いたままでは切れ味が悪くなっているかもしれない。
もし一度で死ねなくても、何度でも掻き切ればいいさ。
それにオレの身体は脆いから、意識を失っても出血多量で死ねる。
それに彼女の血が付いた刃で己の身を裂けば、罪だらけのこの身も少しは救われるだろうか。
「……もうすぐ会えるな」
そう呟いてから自らの喉笛を掻き切った。
幸いにも切れ味はそんなに衰えていなかったらしい。
壮絶な痛みと共にオレの血が噴き出して、カービィの身体にかかった。
汚いオレの血が、カービィの身体を穢してしまっている。
汚い汚い、早く拭かなくては彼女の身体が――ああ、でも。
カービィは『絶対ドロッチェの方が綺麗!』って言ってくれた。
呪われた、汚らわしいこの血を綺麗と言ってくれた。
それに混ざった方が綺麗とも言ってくれた。
なんだ、じゃあこれが一番美しいということか。
「カービィ、愛してる……永遠に……」
残った最期の力を振り絞り、彼女の身体を強く抱き締める。
一瞬だけ、彼女が抱き返してくれたような気がした。
まるでそれはオレの言葉に応えてくれたようで。
オレは安心して目を閉じた。
痛くて痛くて堪らないけど、これでえいえんになれる。
おれは、ほんとうにしあわせだ。
えいえんのしあわせ
さあ、えいえんにいっしょにいよう
NEXT
→あとがき
「え?なんで?」
「ちょっとの傷ならすぐ治るんだろ?」
「まあね……伊達に星の戦士じゃないからね。
この能力には今までかなり助けられたもん」
「その能力、正直少し羨ましかった。
オレ、能力とかは持ってても身体はそんなに丈夫じゃなかったからなぁ……刺されたら普通に死ぬ」
「今は逆にそれが邪魔だよ~……ほら、言ってるそばから止まってきちゃった。
すぐ治っちゃうんだよね」
「どうする?切るか?」
「うん、お願い」
「じゃあこの辺を……っと」
「っ……!」
「っ!大丈夫か?痛かったか?」
「ううん、ドロッチェだからへーき!」
「フッ……そうか。
……それにしても、カービィは本当に綺麗だな。
改めてそう思うよ」
「そんなことないよ!
絶対ドロッチェの方が綺麗!
でもね、交じると……ほら、もっと綺麗なんだよ?」
「本当だ、今まで見たどんな赤より綺麗だな。
……最期に見れてよかったな」
「あ……ドロッチェ、ちょっと顔色悪くなってきた」
「やっぱりか?
あーあ、もうちょっと楽しみたかったのに……
そろそろ限界が来そうだな」
「えっ……やだやだやだっ!
置いてかないで!
先にいっちゃやだよぉ!」
「ハハッ、そんな泣くなよ……
大丈夫だ。
オレが逝く前に、ちゃーんとしっかりキミのこと、殺すからさ」
「ホント?
ちゃんと殺してくれる?」
ボクの言葉にドロッチェはゆっくりと、でもしっかりと頷いた。
「オレも、本当はキミに殺されたかったな……」
「ごめんね……だってボク、自殺しても生き返っちゃうから、しっかり殺してもらわないと死ねないんだもん」
「フッ……わかってるよ。
仕方の無いことだもんな」
ドロッチェは血に濡れていない左手でボクの頭を撫でてくれる。
その手は少しだけ冷たいし、いつもより弱々しかったけど……それでも温かかった。
胸がポカポカして、こんなにも幸せで、ずうっとその気持ちを味わっていたくなっちゃう。
でも、それはもう無理な話なんだよね。
「じゃあそろそろ……いこうか?」
「うん!」
ドロッチェボクを抱き上げて、ベッドに横たえた。
「……でも本当は、ドロッチェを抱きしめて一緒に死にたかったなぁ」
自然とそんな言葉が漏れていた。
ボクは自然と再生しちゃうから仕方がないけど、それでもやっぱり残念だと思っちゃう。
ドロッチェはちょっとだけ困ったように笑った後、得意そうな顔をした。
「フッ……オレが死ぬときは、カービィを抱き締めて死ねるからな!」
「ずるいずるいー!」
「いいだろ?
だって、オレはカービィに殺してもらえないから」
「う……それを言われるとなぁ……
しょうがないなぁ……」
ドロッチェは子どもをあやすように、ボクの頭をもう一度優しく撫でた。
「ねぇドロッチェ」
「なんだ?」
「最期に、愛してるって言って?」
「愛してるぞ、カービィ」
「えへへっ、ボクも愛してる!」
ぎゅうっとドロッチェに抱きつくと、トクントクンという心臓の音を感じた。
こんなに懸命に動いている心臓を、ボクも突き刺したかった。
彼の心臓を、あかいあかいしんぞうを、みてからてんごくにいきたかったなぁ……。
でもそれは叶わないから、せめてボクのすべてをドロッチェにあげるんだ。
「……改めて言うって、なんか照れるな」
「ボクもちょっと恥ずかしかった」
お揃いだね!と笑うと、そうだなと笑いながら答えてくれる。
そういう他愛のないやり取りも、大好きだったよ。
だからそれを永遠にするために、これは仕方のないことだったんだ。
ううん……仕方のないことなんかじゃない。
最初からこうするべきだったんだ。
いつかボクらは必ず死ぬ。
それはわかっているけど、寿命はそれぞれ違う。
ボクとドロッチェだったら、ボクの方が長生きしちゃう。
そんなのは耐えられない。
だったら、一緒に逝けばいいよね?
そのままボクらはじっと見つめ合う。
自然と唇が近づき、ゆっくりと重なった。
長い長い口付けだった。
それはまるで、永遠の時のようで。
お互いの存在を確かめ合うように、深く深く……。
ボクは白いワンピースを着ていたから、まるでお嫁さんのような気分だった。
幸せで、幸せで、死んじゃうくらい幸せで。
どれ程時が経ったのか、ようやく唇を離すとドロッチェはうんと優しく笑った。
「……じゃあね」
「ああ」
鋭利なナイフを振り上げるドロッチェ。
不思議と死に恐怖は抱かない。
そしてナイフは、真っ直ぐにボクの胸を貫いた。
痛い痛い痛い痛い、すっごくいたい、死ぬほど痛い。
あ、そうだ、死ぬんだよね、ボク。
ドロッチェが殺してくれるんだもん。
大好きな人が殺してくれる。
こんなに幸せなことってないよね?
「ね……ボク…待ってるよ……」
「ああ、すぐ行くから安心しろ」
ドロッチェがそう言ってくれるなら、もう大丈夫だよね。
ボク、待ってるよ。
ホントは待つの嫌いだけど、これからずーっと一緒にいるためだからぼくさみしくてもがんばってまつよ!
だからはやくきてね
ああ、いたみもなにもかんじなくなっていしきがうすれていく
あたまのなかがまっしろになって、ふらふら、くらくら、しあわせだなぁ
きみとであえて
ほんとうにしあわせだったなぁ
これからもずーっと、しあわせなんだぁ
***
「……おやすみ、カービィ」
まだ少し温かいカービィの身体を抱き上げ、もう一度抱き締める。
決して抱き返してこないのはわかっている。
それでもこうせずにはいられなかった。
死してなお、カービィはこんなにも可愛らしい。
「……さて」
オレはカービィを再びベッドに寝かせると、胸に刺さっているナイフを引き抜いた。
白いシーツに爆発的に血が広がっていく。
それはまるで、赤い薔薇が一斉に開花したかのようだった。
彼女のワンピースをたくし上げる。
決していやらしい目的があるわけではない。
……いや、正直に言うと少しそそられたが、それよりも早く彼女のところに逝きたい気持ちの方が強かった。
しかしオレにはまだやらなくてはならないことがある。
ナイフでその身体を割り開くと、血に塗れた臓腑の奥に目的の物――彼女の心臓があった。
彼女は高い再生力を誇る星の戦士だが、心臓を失えばさすがに再生できないらしい。
「念には念を入れて、ボクが二度と生き返らないようにしてね」と真剣な表情で言っていた彼女を思い出す。
繋がっている血管をぶちぶちと引き千切ぎりながら心臓を取り出す。
赤い血が更に溢れ出てきた。
カービィの身体を、濃い紅色が彩っていく。
こんなに美しい光景は、今までも人生で一度も見たことがない。
「やっぱり赤、似合うよな……」
改めて、手に持っている心臓に目をやる。
赤い血でてらてらと輝くそれも、今までに見たどんな財宝よりも美しかった。
「ああ……綺麗な人は心臓も綺麗なんだなぁ……」
まだ熱を持っている心臓に頬擦りをした。
べしゃ、と血が付くのにも構わない。
甘美な芳香につられて口付けると、咽香るような鉄錆の味を感じた。
そのまま傾けると、口の中に熱い液体が満ちていく。
ゆっくりと味わいながら、嚥下する。
どろりとした液体が喉と食道を通っていくその感覚に身体が震えた。
「カービィ……」
もう、本当に戻れない。
自分でやっておきながら、彼女だけでも生き返ればいいと思ってしまった。
「くっ……」
立ち上がろうとすると、不意に強いめまいがオレを襲った。
おそらく既に致死量近くまで出血している……そろそろタイムリミットか。
カービィの服を綺麗に整えて、身を起こす。
ウエディングドレスを模した白いワンピースは、すっかり真っ赤に染まってしまっていた。
決して抱き返してはくれないその身体を、オレはまたしばらく抱いていた。
「……ごめんな」
絶対に聞こえていないはずなのに、何度も何度も繰り返す。
涙が止まらなかった。
本当ならばオレが死んでも、笑ってくれるのが一番良かった。
そりゃ他の男の隣で笑うキミを空から見るなんて考えたくないし死ぬほど嫌だし死んでも嫌だ。
でも、オレが居なくなった後に泣いてばかりいるのはもっと嫌だ。
後を追いたくても追えない、と言っていた彼女の表情は酷く悲痛だった。
特異な身体を持つ彼女は自殺ができない。
その身が寿命を終えるのには、どれ程の時間が必要になるのだろう。
その間中オレを想い続けながら生きてくれるのは嬉しいけれども、それはきっと彼女にとって幸せではない。
だからこれは、オレ達の幸せを永遠にするためなんだ。
「……オレも逝かなきゃな。
カービィが待ってる」
カービィに刺したナイフを手に取った。
切っ先から彼女の血がポタリと垂れて、シーツに赤い染みを作る。
「……血ィついたままじゃ切れづらいか……?」
彼女の血が付いたままでは切れ味が悪くなっているかもしれない。
もし一度で死ねなくても、何度でも掻き切ればいいさ。
それにオレの身体は脆いから、意識を失っても出血多量で死ねる。
それに彼女の血が付いた刃で己の身を裂けば、罪だらけのこの身も少しは救われるだろうか。
「……もうすぐ会えるな」
そう呟いてから自らの喉笛を掻き切った。
幸いにも切れ味はそんなに衰えていなかったらしい。
壮絶な痛みと共にオレの血が噴き出して、カービィの身体にかかった。
汚いオレの血が、カービィの身体を穢してしまっている。
汚い汚い、早く拭かなくては彼女の身体が――ああ、でも。
カービィは『絶対ドロッチェの方が綺麗!』って言ってくれた。
呪われた、汚らわしいこの血を綺麗と言ってくれた。
それに混ざった方が綺麗とも言ってくれた。
なんだ、じゃあこれが一番美しいということか。
「カービィ、愛してる……永遠に……」
残った最期の力を振り絞り、彼女の身体を強く抱き締める。
一瞬だけ、彼女が抱き返してくれたような気がした。
まるでそれはオレの言葉に応えてくれたようで。
オレは安心して目を閉じた。
痛くて痛くて堪らないけど、これでえいえんになれる。
おれは、ほんとうにしあわせだ。
えいえんのしあわせ
さあ、えいえんにいっしょにいよう
NEXT
→あとがき
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