天然無自覚的誘惑
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あれから特に何事もなく、無事に部屋についた。
とりあえず身に着けていた重たい鎧は外してしまい、片付ける。
彼女をベッドに横たえ、俺は濃く淹れた紅茶を持ってきた。
……いや、ここまで濃く煮出したらもはや黒茶と言った方がいいのかもしれない。
「よし、患部出せ。」
「はぁぁぁぁっ!?」
ブレイドがすっとんきょうな声をあげた。
そのことに逆に驚いてしまう。
何のためにこの黒…紅茶を作って来たというのだろうか。
「何驚いてるんだ?」
「え、だ、だって……」
「毒針抜かなきゃだろ。
あと毒も。」
「そ、そうだけどさ」
何をそんなに焦っているのだろう。
ブレイドはしばらく目を泳がせていたが。
「わ、わかったよ……ちょっとあっち向いてろ。」
と呟いた。
なぜかはわからなかったが一応背を向けると、がさごそと衣擦れの音がした。
裾を捲り上げているか何かしているのだろう。
「い、いいぞ……」
よし、じゃあ……と振り返り、俺はそのまま固まった。
ブレイドはとんでもない格好をしていたのだ。
はっきり言うと、ものすごくエロい。
下半身は下着のみで、腹部から大事なところにかけては毛布で隠しているだけだった。
少しでも動いたら下着が見えてしまいそうだ。
「ちょっ、おまっ、なんて格好してるんだよ!」
「だってっ、ズボン穿いてたら出せないんだっ!」
「……お前、どこ怪我したんだっけ?」
ブレイドが指差したのは太ももの付け根。
あぁ、と俺は合点がいった。
確かにこれでは捲って露出はできないだろう。
さっき躊躇っていた理由がようやく分かった。
「なら……まぁ、仕方ないよ、な。」
ちらり、とブレイドの脚に目をやる。
細いながらも女性らしいそのラインは美しい。
普段なら欲情してしまうところだが、今はそんなことを言っている場合じゃない。
毒針を抜いたら口で毒を吸い出さなければならない。
吸い出すってことはそこに口づけるってことで……正直言うと……まぁ……ほら、本能的なあれがな、うん、仕方ない俺だって健全な男だし……
いやいや、駄目だ駄目だ!
今は治療第一だ!
邪念は振り払え!
脳裏に過った淫靡な邪念を振り払うと、俺はブレイドに向き直った。
「よし、じゃあ抜くからな。」
「お、おう」
毒針は抜き方次第では毒を注入してしまう恐れがあるらしい。
だから俺は慎重に慎重に針を抜いていく。
なるべく痛くないようにゆっくりと抜くが、それでも痛むのか彼女の顔が苦痛に少し歪んだ。
見ているだけでこちらも痛くなる。
抜き終わると、傷口から血が流れ出した。
だが、思ったよりかは傷も浅いし血の量もあまりない。
これならば失血多量からは程遠いだろう。
てっきりもっと出てしまうかと懸念していたから、このことは不幸中の幸いだった。
「よし、じゃあ次は毒抜くからな。」
手で絞れたらそれが良かったのだが、部位的に口で吸い出すしかない。
決してやましい気持ちなどない……そう自分に言い聞かせる。
ブレイドもそれはわかっているようで、恥ずかしがりながらも抵抗はしなかった。
口づけてちゅう、と吸う
鉄錆の味が口内に広がった。
「ひあっ……」
ブレイドから漏れた思わぬ声に、吸ったものをそのまま飲み込んでしまいそうになる。
慌ててブレイドの血と恐らく毒素であろう苦味の混じったそれを、慌ててティッシュに吐き出す。
白い紙に赤い血が染み込んでいった。
「おい、変な声出すなよ!」
「だって……そんなとこ……」
不安そうな目で俺を見つめ、それから俯いてしまう。
それはものすごく可愛いが、今はそんなこと言っている場合じゃない。
「我慢しろ我慢!」
こっちだって必死なんだぞ……(邪念と闘ってる的な意味で)
よし、気を取り直してもう一度。
「んっ……あっ……」
「余計にいやらしくなってるじゃねーか!」
「知らない!」
ブレイドは真っ赤になって反論した。
だが、さっきよりも苦味は無くなっているから多分あと少しの辛抱だ。
そう言うとブレイドは曖昧に頷いた。
あと俺の息子も頑張って鎮まれ、頼むから……とは言わなかったが。
幸い気付かれてはいないだろう。
もう少し我慢してもらわなければ……。
「ん……ぅぁ……」
……我慢できる自信が無い。
必死に唇を噛み締めて声を抑えているのが、余計に色気を醸し出している。
もう誘っているようにしか見えなかった。
本人に自覚はあるのだろうか?
……あるはずないな。
***
「……ふぅ」
多分、これくらいやっておけば応急処置は大丈夫だろう。
血ももうほとんど出ていないから、包帯なども必要ないだろう。
あとは卿がヤブイ殿から頂いてくる薬を塗れば、きっと大丈夫だ。
一段落ついて、卿に言われた通り紅茶で口を濯ごうとして口に含み、そのまま最新型スプリンクラーのごとく吹いた。
「うげ……」
だいぶ濃く入れたから苦い、というか渋い。
口がへの字に曲がってしまいそうなくらいだ。
舌がじりじりと麻痺するような感覚に囚われた。
しかし一応飲まなくては。
一気に紅茶(これを紅茶と呼ぶのは紅茶に失礼な気もしてくる)をあおって飲み込んだ。
……不味い。
ブレイドは申し訳なさそうにちらりとこちらを見た。
「……ありがとな、ソード」
そういうと小さくはにかんだ。
安心しきったその表情に、俺の心のある部分がひどく疼いた。
「……まだ終わってないぞ。」
ベッドから降りようとする彼女を制し、俺は再び近付く。
俺はこれで終わらせる気など毛頭なかった。
きょとんとする彼女に手を伸ばして、内太ももをするりと撫でる。
即座に彼女の身体がビクンと震えた。
「な、なにすんだヘンタイ!」
「いや、もし腫れてたり異変があったら大変だろ?
それを確かめているだけだ。」
もちろん大嘘だ。
だがブレイドは「そ、そうか……」とまんまと騙されてくれた。
大人しくなった彼女に、再び手を伸ばす。
「ちょ……ぅあ……」
指先で撫でたり、爪の先で優しく引っ掻くように擽れば、その度にビクンと身体を震わす。
確実に“女”の表情になっていく。
だが、変化した部分は表情だけではない。
毛布に手を滑り込ませ下着に触れると……わずかに湿り気を帯びているのを感じた。
「んー?なんで濡れてるのかなー?
俺は応急処置と確認してただけだぞ?」
わざとそう言えば、うう、と呻く。
一番敏感なソコを下着の上から擦れば、それは甘い嬌声に変わった。
「太もも触られて感じちゃった?
ブレイドはえっちだなぁ。」
ここまできたら、もうこっちのものだ…と俺は油断しきっていた。
だから見逃していた。
ブレイドの瞳が、一瞬妖しく光るのを。
「……そういうおまえだってっ」
ブレイドは怪我人とは思えないほど俊敏な動きで、起ち上がった俺のを掴んだ。
「おまえだって応急手当しながらこんなとこ起たせてんじゃん、このヘンタイ!」
それは、彼女なりの精一杯の反撃だったのだろう。
だがそれは、彼女にとっては墓穴であり……
俺にとっては決定打だった。
ドグン、と心臓が高鳴る。
身体中の血液が熱くなる。
「……もう、限界」
自分の中で、何かが切れた気がした。
それは、俗に言う“理性”というもの。
俺はブレイドを躊躇いなく押し倒し、覆い被さった。
「やめっ……!」
抵抗なんて許さない。
あんな格好見せられて、あんなエロい声聞かされて、挙げ句の果てに触れられて我慢できるほど俺の理性は強くなかった。
「あっ、ちょ、んんっ……ぁ」
舌を絡め、互いの口内を弄りあう。
さっきの紅茶で苦かったはずの口内がどんどん甘くなっていく。
唇を離すと、銀色の糸が一瞬だけ二人を繋いだ。
「ぅ…そーど……もっと……」
物欲しそうな潤んだ目で俺を見るのは国を守る剣士ではなく、ただ一人の“女”であった。
滅多に見られないねだる姿に、思わず笑みが漏れる。
ブレイドのこんなに可愛い姿を見れるのは、きっと俺だけなんだ。
そう思うと、なんだか嬉しかった。
「やっと乗り気になって来たか?」
「……うるさい、焦らすなよぉ……」
腕を俺の首に回し、自分の方へ引き寄せる。
こんなに積極的になるのだから、そろそろ彼女も限界なのだろう。
……俺はもうとっくに限界。
早く、彼女と繋がりたかった。
もう一度唇を重ねながら指で首筋をなぞれば、くすぐったいのか感じているのか、身を捩じらせた。
「ぁぅ…ん………ッ!」
ブレイドが唐突に目を見開いた。
紅潮していたはずの顔も、青ざめていく。
そして、視線は俺の肩を越したところにある。
ひどく、嫌な予感がした。
それと同時に後ろから物凄い殺気を感じた。
すごく振り返りたくない。
でも振り返らなければもっと大変なことになる気がする。
意を決した俺は恐る恐る振り返り……固まってしまった。
そこには、すこぶる笑顔でこちらを見ている卿がいた。
仮面越しにもかかわらず、なぜ笑顔だとわかるのだろう。
そんなこともわからなくなるくらい、とにかく笑顔だった。
……一瞬、笑顔すぎて誰だかわからなかったくらいだ。
仮面越しに目が合うと、卿の笑みがさらに深まった……あくまでもそう感じるだけなのだが。
全身の血液がサーっと下がっていく感じがした。
暑かったはずなのに寒気がひどい。
「お、おかえりなさいませ、きょ…」
俺の言葉が終わらないうちに卿は無言でガシッと俺の頭を鷲掴みにし、そのまま引きずり上げた。
……もちろん笑ったままで。
ブレイドの口から小さな悲鳴が漏れる。
「貴様は何をしているんだ?」
「すみませんすみませんすみませんすみませんすみませんすみませんすみま「私はブレイドの毒を抜けと言っただけで、貴様の精を抜けとは一言も言っていないはずだが?ん?」
卿はずっと笑顔だ。
だが、それが余計に俺の恐怖心を駆り立てた。
彼の手の中で、俺の頭蓋骨がギチギチと軋む。
ものすごく痛い、死ぬほど痛い、つか死ぬ、これ絶対死ぬ。
「体温上がって毒の廻りが活発になったらどうするんだしかもシャワーも浴びずに事に及ぶとは衛生上どうなんだ避妊具も用意せずに事に及んでもしものことがあったらどうするんだ貴様責任は取れるのかおい聞いてるのか何故そんなに虚ろな目をし「きょ、卿っ!
出来れば早く解毒をしていただけるとありがたいのですがっ」
慌ててブレイドが挙手をして申し出ると、卿は「そうだ、そちらの方が大切だ」と言うと俺からパッと手を離した。
重力に従って落ち、床に叩きつけられる。痛い。
だが、先程までの痛みよりもこっちの方がいくらかマシだった。
「さて、薬を塗ろう。」
「あ、私がやります!」
卿の手を煩わせるわけにはいかないと思い慌てて立ち上がると、一瞬頭がぐらりとした。
卿は俺を一瞥すると、
「いや、遠慮しておく。
また変な気でも起こされたら困るからな。」
と言って薬を塗り始めてしまった。
黙々と。
「……。」
ブレイドは憐れみの目で俺を見ている。
かくして俺は、卿が帰ってきそうなときはブレイドに手出ししないようにしようと心に決めたのであった。
誘惑
ただ、ひとつ嬉しかったのは……卿には触られても、感じていなかったこと
next
→あとがき
とりあえず身に着けていた重たい鎧は外してしまい、片付ける。
彼女をベッドに横たえ、俺は濃く淹れた紅茶を持ってきた。
……いや、ここまで濃く煮出したらもはや黒茶と言った方がいいのかもしれない。
「よし、患部出せ。」
「はぁぁぁぁっ!?」
ブレイドがすっとんきょうな声をあげた。
そのことに逆に驚いてしまう。
何のためにこの黒…紅茶を作って来たというのだろうか。
「何驚いてるんだ?」
「え、だ、だって……」
「毒針抜かなきゃだろ。
あと毒も。」
「そ、そうだけどさ」
何をそんなに焦っているのだろう。
ブレイドはしばらく目を泳がせていたが。
「わ、わかったよ……ちょっとあっち向いてろ。」
と呟いた。
なぜかはわからなかったが一応背を向けると、がさごそと衣擦れの音がした。
裾を捲り上げているか何かしているのだろう。
「い、いいぞ……」
よし、じゃあ……と振り返り、俺はそのまま固まった。
ブレイドはとんでもない格好をしていたのだ。
はっきり言うと、ものすごくエロい。
下半身は下着のみで、腹部から大事なところにかけては毛布で隠しているだけだった。
少しでも動いたら下着が見えてしまいそうだ。
「ちょっ、おまっ、なんて格好してるんだよ!」
「だってっ、ズボン穿いてたら出せないんだっ!」
「……お前、どこ怪我したんだっけ?」
ブレイドが指差したのは太ももの付け根。
あぁ、と俺は合点がいった。
確かにこれでは捲って露出はできないだろう。
さっき躊躇っていた理由がようやく分かった。
「なら……まぁ、仕方ないよ、な。」
ちらり、とブレイドの脚に目をやる。
細いながらも女性らしいそのラインは美しい。
普段なら欲情してしまうところだが、今はそんなことを言っている場合じゃない。
毒針を抜いたら口で毒を吸い出さなければならない。
吸い出すってことはそこに口づけるってことで……正直言うと……まぁ……ほら、本能的なあれがな、うん、仕方ない俺だって健全な男だし……
いやいや、駄目だ駄目だ!
今は治療第一だ!
邪念は振り払え!
脳裏に過った淫靡な邪念を振り払うと、俺はブレイドに向き直った。
「よし、じゃあ抜くからな。」
「お、おう」
毒針は抜き方次第では毒を注入してしまう恐れがあるらしい。
だから俺は慎重に慎重に針を抜いていく。
なるべく痛くないようにゆっくりと抜くが、それでも痛むのか彼女の顔が苦痛に少し歪んだ。
見ているだけでこちらも痛くなる。
抜き終わると、傷口から血が流れ出した。
だが、思ったよりかは傷も浅いし血の量もあまりない。
これならば失血多量からは程遠いだろう。
てっきりもっと出てしまうかと懸念していたから、このことは不幸中の幸いだった。
「よし、じゃあ次は毒抜くからな。」
手で絞れたらそれが良かったのだが、部位的に口で吸い出すしかない。
決してやましい気持ちなどない……そう自分に言い聞かせる。
ブレイドもそれはわかっているようで、恥ずかしがりながらも抵抗はしなかった。
口づけてちゅう、と吸う
鉄錆の味が口内に広がった。
「ひあっ……」
ブレイドから漏れた思わぬ声に、吸ったものをそのまま飲み込んでしまいそうになる。
慌ててブレイドの血と恐らく毒素であろう苦味の混じったそれを、慌ててティッシュに吐き出す。
白い紙に赤い血が染み込んでいった。
「おい、変な声出すなよ!」
「だって……そんなとこ……」
不安そうな目で俺を見つめ、それから俯いてしまう。
それはものすごく可愛いが、今はそんなこと言っている場合じゃない。
「我慢しろ我慢!」
こっちだって必死なんだぞ……(邪念と闘ってる的な意味で)
よし、気を取り直してもう一度。
「んっ……あっ……」
「余計にいやらしくなってるじゃねーか!」
「知らない!」
ブレイドは真っ赤になって反論した。
だが、さっきよりも苦味は無くなっているから多分あと少しの辛抱だ。
そう言うとブレイドは曖昧に頷いた。
あと俺の息子も頑張って鎮まれ、頼むから……とは言わなかったが。
幸い気付かれてはいないだろう。
もう少し我慢してもらわなければ……。
「ん……ぅぁ……」
……我慢できる自信が無い。
必死に唇を噛み締めて声を抑えているのが、余計に色気を醸し出している。
もう誘っているようにしか見えなかった。
本人に自覚はあるのだろうか?
……あるはずないな。
***
「……ふぅ」
多分、これくらいやっておけば応急処置は大丈夫だろう。
血ももうほとんど出ていないから、包帯なども必要ないだろう。
あとは卿がヤブイ殿から頂いてくる薬を塗れば、きっと大丈夫だ。
一段落ついて、卿に言われた通り紅茶で口を濯ごうとして口に含み、そのまま最新型スプリンクラーのごとく吹いた。
「うげ……」
だいぶ濃く入れたから苦い、というか渋い。
口がへの字に曲がってしまいそうなくらいだ。
舌がじりじりと麻痺するような感覚に囚われた。
しかし一応飲まなくては。
一気に紅茶(これを紅茶と呼ぶのは紅茶に失礼な気もしてくる)をあおって飲み込んだ。
……不味い。
ブレイドは申し訳なさそうにちらりとこちらを見た。
「……ありがとな、ソード」
そういうと小さくはにかんだ。
安心しきったその表情に、俺の心のある部分がひどく疼いた。
「……まだ終わってないぞ。」
ベッドから降りようとする彼女を制し、俺は再び近付く。
俺はこれで終わらせる気など毛頭なかった。
きょとんとする彼女に手を伸ばして、内太ももをするりと撫でる。
即座に彼女の身体がビクンと震えた。
「な、なにすんだヘンタイ!」
「いや、もし腫れてたり異変があったら大変だろ?
それを確かめているだけだ。」
もちろん大嘘だ。
だがブレイドは「そ、そうか……」とまんまと騙されてくれた。
大人しくなった彼女に、再び手を伸ばす。
「ちょ……ぅあ……」
指先で撫でたり、爪の先で優しく引っ掻くように擽れば、その度にビクンと身体を震わす。
確実に“女”の表情になっていく。
だが、変化した部分は表情だけではない。
毛布に手を滑り込ませ下着に触れると……わずかに湿り気を帯びているのを感じた。
「んー?なんで濡れてるのかなー?
俺は応急処置と確認してただけだぞ?」
わざとそう言えば、うう、と呻く。
一番敏感なソコを下着の上から擦れば、それは甘い嬌声に変わった。
「太もも触られて感じちゃった?
ブレイドはえっちだなぁ。」
ここまできたら、もうこっちのものだ…と俺は油断しきっていた。
だから見逃していた。
ブレイドの瞳が、一瞬妖しく光るのを。
「……そういうおまえだってっ」
ブレイドは怪我人とは思えないほど俊敏な動きで、起ち上がった俺のを掴んだ。
「おまえだって応急手当しながらこんなとこ起たせてんじゃん、このヘンタイ!」
それは、彼女なりの精一杯の反撃だったのだろう。
だがそれは、彼女にとっては墓穴であり……
俺にとっては決定打だった。
ドグン、と心臓が高鳴る。
身体中の血液が熱くなる。
「……もう、限界」
自分の中で、何かが切れた気がした。
それは、俗に言う“理性”というもの。
俺はブレイドを躊躇いなく押し倒し、覆い被さった。
「やめっ……!」
抵抗なんて許さない。
あんな格好見せられて、あんなエロい声聞かされて、挙げ句の果てに触れられて我慢できるほど俺の理性は強くなかった。
「あっ、ちょ、んんっ……ぁ」
舌を絡め、互いの口内を弄りあう。
さっきの紅茶で苦かったはずの口内がどんどん甘くなっていく。
唇を離すと、銀色の糸が一瞬だけ二人を繋いだ。
「ぅ…そーど……もっと……」
物欲しそうな潤んだ目で俺を見るのは国を守る剣士ではなく、ただ一人の“女”であった。
滅多に見られないねだる姿に、思わず笑みが漏れる。
ブレイドのこんなに可愛い姿を見れるのは、きっと俺だけなんだ。
そう思うと、なんだか嬉しかった。
「やっと乗り気になって来たか?」
「……うるさい、焦らすなよぉ……」
腕を俺の首に回し、自分の方へ引き寄せる。
こんなに積極的になるのだから、そろそろ彼女も限界なのだろう。
……俺はもうとっくに限界。
早く、彼女と繋がりたかった。
もう一度唇を重ねながら指で首筋をなぞれば、くすぐったいのか感じているのか、身を捩じらせた。
「ぁぅ…ん………ッ!」
ブレイドが唐突に目を見開いた。
紅潮していたはずの顔も、青ざめていく。
そして、視線は俺の肩を越したところにある。
ひどく、嫌な予感がした。
それと同時に後ろから物凄い殺気を感じた。
すごく振り返りたくない。
でも振り返らなければもっと大変なことになる気がする。
意を決した俺は恐る恐る振り返り……固まってしまった。
そこには、すこぶる笑顔でこちらを見ている卿がいた。
仮面越しにもかかわらず、なぜ笑顔だとわかるのだろう。
そんなこともわからなくなるくらい、とにかく笑顔だった。
……一瞬、笑顔すぎて誰だかわからなかったくらいだ。
仮面越しに目が合うと、卿の笑みがさらに深まった……あくまでもそう感じるだけなのだが。
全身の血液がサーっと下がっていく感じがした。
暑かったはずなのに寒気がひどい。
「お、おかえりなさいませ、きょ…」
俺の言葉が終わらないうちに卿は無言でガシッと俺の頭を鷲掴みにし、そのまま引きずり上げた。
……もちろん笑ったままで。
ブレイドの口から小さな悲鳴が漏れる。
「貴様は何をしているんだ?」
「すみませんすみませんすみませんすみませんすみませんすみませんすみま「私はブレイドの毒を抜けと言っただけで、貴様の精を抜けとは一言も言っていないはずだが?ん?」
卿はずっと笑顔だ。
だが、それが余計に俺の恐怖心を駆り立てた。
彼の手の中で、俺の頭蓋骨がギチギチと軋む。
ものすごく痛い、死ぬほど痛い、つか死ぬ、これ絶対死ぬ。
「体温上がって毒の廻りが活発になったらどうするんだしかもシャワーも浴びずに事に及ぶとは衛生上どうなんだ避妊具も用意せずに事に及んでもしものことがあったらどうするんだ貴様責任は取れるのかおい聞いてるのか何故そんなに虚ろな目をし「きょ、卿っ!
出来れば早く解毒をしていただけるとありがたいのですがっ」
慌ててブレイドが挙手をして申し出ると、卿は「そうだ、そちらの方が大切だ」と言うと俺からパッと手を離した。
重力に従って落ち、床に叩きつけられる。痛い。
だが、先程までの痛みよりもこっちの方がいくらかマシだった。
「さて、薬を塗ろう。」
「あ、私がやります!」
卿の手を煩わせるわけにはいかないと思い慌てて立ち上がると、一瞬頭がぐらりとした。
卿は俺を一瞥すると、
「いや、遠慮しておく。
また変な気でも起こされたら困るからな。」
と言って薬を塗り始めてしまった。
黙々と。
「……。」
ブレイドは憐れみの目で俺を見ている。
かくして俺は、卿が帰ってきそうなときはブレイドに手出ししないようにしようと心に決めたのであった。
誘惑
ただ、ひとつ嬉しかったのは……卿には触られても、感じていなかったこと
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→あとがき
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