superbia~傲慢~
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「あ、ドロッチェ!」
デデデ城の廊下を歩いていると、目の前を派手な赤いマントを羽織った人物を見つけた。
「なんだ?」
彼はマントを翻して振り向く。
少し眠そうなのは、昨日も盗みに出ていたからだろうか。
「エスカルゴンが探してたよ!」
そう、さっきすれ違ったエスカルゴンに、ドロッチェの居場所を聞かれたんだ。
「あぁ、どうせまた大王が何か無くしものでもして、オレのこと疑ってるんだろう……。
わかった。ありがとうな」
「あはは、疑われてるとか可哀想に」
「まぁ、盗賊だから仕方ないさ」
その時、いきなりビュウウと突風がふいた。
開け放たれたままの窓から、かなりたくさんの砂埃が入ってきてボク達を襲う。
「ぽよ!目に……」
目にずきんと鋭い痛みが走った。
どうやら砂が入ってしまったらしい。
咄嗟に目を擦ろうとすると、ドロッチェがボクの腕を掴んで止めた。
「コラ、擦るな!目に傷がつくだろ?
コレを……」
彼は赤いハンカチをボクに渡してくれた。
よくアイロンのかかったそれをありがたく使わせていただく。
……本当に赤が大好きだなぁ。
「見せてみろ」
グイッと顎を持ち上げられて、ドロッチェはボクに顔を寄せた。
下目蓋を少し下に引っ張られ、覗き込んでくる。
不覚にも彼の金の瞳が綺麗で、心臓が跳ねた。
「ん……とりあえずは大丈夫そうだな。
一応水で洗った方がいいと思うぞ」
「あ、ありがと……」
別に好きとかではないけど、整った顔立ちの人に間近に迫られると、なんだか変にどぎまぎしてしまう。
その時、背後から刺すような視線を感じた。
まさか……と思うと身体中の血液が一気に下っていく心持がした。
「あっれれー?
カービィとドロッチェじゃん」
聞きなれた声に振り向くと、マルクが不自然なほどにニコニコして立っていた。
やっぱりという安堵にも似た奇妙な思いと、違ってほしかったという絶望が混じり、ボクは思わず固まってしまった。
だけど、この状況が酷くマズイということは嫌ってほどに理解できた。
だって、マルクの目は笑っていない。
マルクは物凄く嫉妬深い。
ボクが他の男の人――たとえそれが子供であっても、話しているだけで不機嫌になるほどだ。
しかも今のこの状況を見て、マルクが不快に思わないはずがない。
「オイそこのナルシ野郎。
カービィから離れないとグッチャグチャに殺しちゃうのサ」
案の定、物凄い笑顔で脅迫をしてきた。
今にもナイフを取り出してドロッチェに斬りかかりそうだ。
「おやおや、嫉妬深いピエロさんに見つかっちゃったな。
それじゃあ、オレはこれで」
ドロッチェはひらひらと右手を振って行ってしまう。
賢明な判断だけど、ボクとしてはいてほしかった気がしなくもない……。
だって、今のマルク絶対怒ってるもん。
マルクは先ほどまでとは打って変わって、物凄く不機嫌そうな顔をしてボクを見ていた。
「カービィ」
呼ぶ声にも少し怒気が滲んでいて、反応できなくなる。
反応しないボクに痺れを切らしたのか、マルクはボクの腕を掴んで引っ張った。
そのまま廊下をずんずんと歩き始める。
掴む力は強く、歩くペースも速いからか腕には痛みが走った。
「ちょっ……マルク、痛い……」
「黙れ、ボクに口答えするな」
怒気を含んだ低い声にボクは何も言い返せず、引かれるままに彼の後を追いかけることしかできなかった。
しばらく歩き、マルクはボクを適当な空き部屋に押し込んだ。
あんまり使われていないのか、少し埃っぽいにおいがする。
マルクは後ろ手で鍵を閉めると、ボクににじりよってきた。
反射的に後退りしてしまうボクを、苛立たしそうな目で見ながら、壁際へと追い詰めていく。
「ねえ………なんで逃げるの?」
マルクは一気に詰め寄り、そしてボクの身体を壁に押し付けた。
壁はひどくひんやりしていた。
しかしボクを見下ろす目はもっと冷たくて、背筋がぞくりとする。
……ヤバい、これは相当不機嫌だ……。
「ねぇ、カービィ。
さっきのはなんなのサ?」
2色の瞳から放たれた冷たい視線がボクを射る。
隠してもしょうがない、正直に話そう……。
「あのね、エスカルゴンにドロッチェの居場所を聞かれたの。
だから、ドロッチェに探してたよって伝えていたの」
「うんうん」
「そしたら急に強い風が吹いて、目に砂が入っちゃったんだ。
それで、ドロッチェに見てもらってたの。
……だからアレは不可抗力だよ?」
「ふーん……まぁ、たしかにちょっとは仕方がない面もあるかもしれないけど。
話しかけた辺りはカービィは優しいからね」
言葉とは裏腹に、マルクはボクの腕を掴む力を強めた。
「でも、ドロッチェとのは許せないサ。
傍から見たら、まるで恋人同士みたいに見つめ合っちゃってサ。
誘ってたんじゃないの?」
「ちがっ……!」
何かが弾けるような音と同時に、頬に焼けるほどの痛みが走った。
口の中には生温かい鉄錆の味が広がっていく。
……マルクに殴られたのだと気付くのに、少し時間がかかった。
痛みとショックで声が出ない。
「違くないだろ!何が違うんだよ!」
そのまま鳩尾のあたりに膝蹴りをされ、ボクは咳き込みながらその場に崩れ落ちた。
吐き出してしまいそうになるのを、必死に堪える。
マルクは腕を掴むとボクを無理矢理立たせた。
痛いほどに、紅く痕が残るくらいに腕を掴まれて、ボクは呻き声をあげる。
そのまま頬を叩かれる。
口に広がる血の味が増した。
「ほら、自分から誘惑したんだろ?」
「ごめんなさい……ごめんなさい……」
ボクの意思など関係なしに、常に判断は彼に委ねられる。
ちゃんと事実を説明しても、納得してもらえなかったらそれはボクが悪いということになるのだ。
「キミはまだ、ボクのモノだって自覚が足りないみたいなのサ。
……なら、嫌ってほどわからせてあげる」
マルクはボクの衣服の胸元を破り捨てて、胸元や首筋に吸い付いて、紅い花を散らした。
自分のモノだと誇示するように、少しの痛みと共に次々と所有印を刻んでいく……。
その痛みは、さっきのものとは比べ物にならないくらい小さい。
一瞬だけ視線が交わった。
その瞳が映した感情に、ボクは胸を衝かれた。
独占欲、寂しさ、嫉妬……様々な感情が入り混じったその瞳は、ボクだけを映している。
満足したのか、彼は顔を上げた。
ボクの胸元には病的な数の赤い印が刻まれていた。
「これで……カービィがボクのモノだってわかるね。
キミはボクだけ見てればいいのサ。
他の奴なんか見る必要ないサ。
なのにどうしてキミはそうやってほかの男を誘惑するのかなぁ……?」
耳元で低く囁くその声に、再び背筋がぞくりとする。
「いっそのこと、その綺麗な青い目玉を抉ってだぁれも見えないようにしちゃおうかなぁ?」
楽しそうにマルクは笑う。
怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い。
だって、目が、本気。
「やだよぉ……そしたら、マルクのことも見れなくなる……」
ボクの返答を意外に思ったのか、マルクは一瞬だけだけ照れたようにはにかみ――すぐに冷え冷えとした笑みに戻った。
「そう……キミはボクのモノ」
ボクを自分の所有物とみなし、ボクを縛り付ける。
ボクを見張り、ボクを糾弾し、ボクに暴力を振るう。
ボクを見下して、ボクの意思など軽んじる。
逃げ出そうとすれば逃げ出せた。
でも、その瞳の奥に寂しそうな光を見てしまったから。
どうしようもなくボクを求める瞳を見てしまったから。
だから彼も変わらない。
歪んだまま日常は続いていく。
「でも、キミがボクのモノだなんて、今更当たり前すぎるよね」
そんな傲慢なキミから離れられないボクも、相当堕ちてる。
傲慢なキミ
(いつからボクらはこうなってしまったのだろう。)
デデデ城の廊下を歩いていると、目の前を派手な赤いマントを羽織った人物を見つけた。
「なんだ?」
彼はマントを翻して振り向く。
少し眠そうなのは、昨日も盗みに出ていたからだろうか。
「エスカルゴンが探してたよ!」
そう、さっきすれ違ったエスカルゴンに、ドロッチェの居場所を聞かれたんだ。
「あぁ、どうせまた大王が何か無くしものでもして、オレのこと疑ってるんだろう……。
わかった。ありがとうな」
「あはは、疑われてるとか可哀想に」
「まぁ、盗賊だから仕方ないさ」
その時、いきなりビュウウと突風がふいた。
開け放たれたままの窓から、かなりたくさんの砂埃が入ってきてボク達を襲う。
「ぽよ!目に……」
目にずきんと鋭い痛みが走った。
どうやら砂が入ってしまったらしい。
咄嗟に目を擦ろうとすると、ドロッチェがボクの腕を掴んで止めた。
「コラ、擦るな!目に傷がつくだろ?
コレを……」
彼は赤いハンカチをボクに渡してくれた。
よくアイロンのかかったそれをありがたく使わせていただく。
……本当に赤が大好きだなぁ。
「見せてみろ」
グイッと顎を持ち上げられて、ドロッチェはボクに顔を寄せた。
下目蓋を少し下に引っ張られ、覗き込んでくる。
不覚にも彼の金の瞳が綺麗で、心臓が跳ねた。
「ん……とりあえずは大丈夫そうだな。
一応水で洗った方がいいと思うぞ」
「あ、ありがと……」
別に好きとかではないけど、整った顔立ちの人に間近に迫られると、なんだか変にどぎまぎしてしまう。
その時、背後から刺すような視線を感じた。
まさか……と思うと身体中の血液が一気に下っていく心持がした。
「あっれれー?
カービィとドロッチェじゃん」
聞きなれた声に振り向くと、マルクが不自然なほどにニコニコして立っていた。
やっぱりという安堵にも似た奇妙な思いと、違ってほしかったという絶望が混じり、ボクは思わず固まってしまった。
だけど、この状況が酷くマズイということは嫌ってほどに理解できた。
だって、マルクの目は笑っていない。
マルクは物凄く嫉妬深い。
ボクが他の男の人――たとえそれが子供であっても、話しているだけで不機嫌になるほどだ。
しかも今のこの状況を見て、マルクが不快に思わないはずがない。
「オイそこのナルシ野郎。
カービィから離れないとグッチャグチャに殺しちゃうのサ」
案の定、物凄い笑顔で脅迫をしてきた。
今にもナイフを取り出してドロッチェに斬りかかりそうだ。
「おやおや、嫉妬深いピエロさんに見つかっちゃったな。
それじゃあ、オレはこれで」
ドロッチェはひらひらと右手を振って行ってしまう。
賢明な判断だけど、ボクとしてはいてほしかった気がしなくもない……。
だって、今のマルク絶対怒ってるもん。
マルクは先ほどまでとは打って変わって、物凄く不機嫌そうな顔をしてボクを見ていた。
「カービィ」
呼ぶ声にも少し怒気が滲んでいて、反応できなくなる。
反応しないボクに痺れを切らしたのか、マルクはボクの腕を掴んで引っ張った。
そのまま廊下をずんずんと歩き始める。
掴む力は強く、歩くペースも速いからか腕には痛みが走った。
「ちょっ……マルク、痛い……」
「黙れ、ボクに口答えするな」
怒気を含んだ低い声にボクは何も言い返せず、引かれるままに彼の後を追いかけることしかできなかった。
しばらく歩き、マルクはボクを適当な空き部屋に押し込んだ。
あんまり使われていないのか、少し埃っぽいにおいがする。
マルクは後ろ手で鍵を閉めると、ボクににじりよってきた。
反射的に後退りしてしまうボクを、苛立たしそうな目で見ながら、壁際へと追い詰めていく。
「ねえ………なんで逃げるの?」
マルクは一気に詰め寄り、そしてボクの身体を壁に押し付けた。
壁はひどくひんやりしていた。
しかしボクを見下ろす目はもっと冷たくて、背筋がぞくりとする。
……ヤバい、これは相当不機嫌だ……。
「ねぇ、カービィ。
さっきのはなんなのサ?」
2色の瞳から放たれた冷たい視線がボクを射る。
隠してもしょうがない、正直に話そう……。
「あのね、エスカルゴンにドロッチェの居場所を聞かれたの。
だから、ドロッチェに探してたよって伝えていたの」
「うんうん」
「そしたら急に強い風が吹いて、目に砂が入っちゃったんだ。
それで、ドロッチェに見てもらってたの。
……だからアレは不可抗力だよ?」
「ふーん……まぁ、たしかにちょっとは仕方がない面もあるかもしれないけど。
話しかけた辺りはカービィは優しいからね」
言葉とは裏腹に、マルクはボクの腕を掴む力を強めた。
「でも、ドロッチェとのは許せないサ。
傍から見たら、まるで恋人同士みたいに見つめ合っちゃってサ。
誘ってたんじゃないの?」
「ちがっ……!」
何かが弾けるような音と同時に、頬に焼けるほどの痛みが走った。
口の中には生温かい鉄錆の味が広がっていく。
……マルクに殴られたのだと気付くのに、少し時間がかかった。
痛みとショックで声が出ない。
「違くないだろ!何が違うんだよ!」
そのまま鳩尾のあたりに膝蹴りをされ、ボクは咳き込みながらその場に崩れ落ちた。
吐き出してしまいそうになるのを、必死に堪える。
マルクは腕を掴むとボクを無理矢理立たせた。
痛いほどに、紅く痕が残るくらいに腕を掴まれて、ボクは呻き声をあげる。
そのまま頬を叩かれる。
口に広がる血の味が増した。
「ほら、自分から誘惑したんだろ?」
「ごめんなさい……ごめんなさい……」
ボクの意思など関係なしに、常に判断は彼に委ねられる。
ちゃんと事実を説明しても、納得してもらえなかったらそれはボクが悪いということになるのだ。
「キミはまだ、ボクのモノだって自覚が足りないみたいなのサ。
……なら、嫌ってほどわからせてあげる」
マルクはボクの衣服の胸元を破り捨てて、胸元や首筋に吸い付いて、紅い花を散らした。
自分のモノだと誇示するように、少しの痛みと共に次々と所有印を刻んでいく……。
その痛みは、さっきのものとは比べ物にならないくらい小さい。
一瞬だけ視線が交わった。
その瞳が映した感情に、ボクは胸を衝かれた。
独占欲、寂しさ、嫉妬……様々な感情が入り混じったその瞳は、ボクだけを映している。
満足したのか、彼は顔を上げた。
ボクの胸元には病的な数の赤い印が刻まれていた。
「これで……カービィがボクのモノだってわかるね。
キミはボクだけ見てればいいのサ。
他の奴なんか見る必要ないサ。
なのにどうしてキミはそうやってほかの男を誘惑するのかなぁ……?」
耳元で低く囁くその声に、再び背筋がぞくりとする。
「いっそのこと、その綺麗な青い目玉を抉ってだぁれも見えないようにしちゃおうかなぁ?」
楽しそうにマルクは笑う。
怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い。
だって、目が、本気。
「やだよぉ……そしたら、マルクのことも見れなくなる……」
ボクの返答を意外に思ったのか、マルクは一瞬だけだけ照れたようにはにかみ――すぐに冷え冷えとした笑みに戻った。
「そう……キミはボクのモノ」
ボクを自分の所有物とみなし、ボクを縛り付ける。
ボクを見張り、ボクを糾弾し、ボクに暴力を振るう。
ボクを見下して、ボクの意思など軽んじる。
逃げ出そうとすれば逃げ出せた。
でも、その瞳の奥に寂しそうな光を見てしまったから。
どうしようもなくボクを求める瞳を見てしまったから。
だから彼も変わらない。
歪んだまま日常は続いていく。
「でも、キミがボクのモノだなんて、今更当たり前すぎるよね」
そんな傲慢なキミから離れられないボクも、相当堕ちてる。
傲慢なキミ
(いつからボクらはこうなってしまったのだろう。)
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