2人はきっと
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ベッドに入っても落ち着かない。
何度も何度も寝返りをしてしまう。
目蓋を閉じれば、思い浮かぶのは彼の顔。
駄目だ、と思うのに気持ちは募るばかり。
そろそろ寝なくちゃと思ってもう一度寝返りをしたときに、コンコンと扉が叩かれた。
こんな時間に誰だろう、と少し不審感を抱きながら扉を開け、ボクは思わず目を瞠った。
「……なに?」
外に立っていたのは、さっきまでボクが思い浮かべていた人物……ダークマターだった。
こんな時間に来るなんてことが今までに無くて困惑してしまう。
しかも強かに酔っている。
どうせまたドロッチェとでも飲んでいたのだろう。
「まさかこんな夜中に、決闘とか言い出さないよね?」
普段ボクのところにこの人が来るとしたら、ポップスター目当ての決闘か、たまに嫌味を言いに来るくらい。
ボクの質問にダークマターは首を振った。
まあそれも当然。
いくらなんでもこの時間に、しかもそんなに酔った状態で闘いなんてするはずがない。
じゃあ、いったい何の用なの?
「……話があって……」
いったいボクに何の話があるのだというのだろう。
ボクのことなんか嫌いなくせに。
そう、ボクとこの人は天敵。
ポップスターを狙うダークマター族で、ボクはポップスターを守る星の戦士。
何だかんだでゼロツーとかが遊びに来てたり、パーティーに参戦したりしてるけど、根本的には“敵”。
でも、それでも……たとえ天敵としてでも、会えることが嬉しかった。
不謹慎だとわかっていたけど、彼が来るたびに嬉しかった。
天敵にこんなに恋焦がれているなんて、星の戦士失格だ。
もしみんなが知ったらどう思うのかな。
それに、彼だってボクをそういう目で見るわけがない。
自分の目的を邪魔する存在、その程度の認識。
結ばれるはずのない関係。
だからなるべく会いたくなかった。
これ以上思いが募ったら、誰かに見透かされてしまいそうで怖かった。
だからと言って話があると言っている人を帰すわけにもいかない。
……違う、なんだかんだで少しでも一緒に居たいんだ。
矛盾しすぎていて、自分のことながら可笑しいと思う。
とりあえず優しいボクは椅子に座らせてあげて、ボクもその向かいの席に着いた。
***
あれからしばらく時間が経ったけど、ダークマターは一向に口を開こうとしない。
「……話さないなら帰ってよ。
ボクは眠いんだ。」
痺れを切らしたボクは椅子から立ち上がって、ベッドの方に歩き始めた。
本当は眠くなんかない。
焦れた胸が張り裂けそうに痛くて、とてもじゃないけど眠れる気なんてしない。
「待て。」
やっと言葉を発したダークマターがボクの腕を掴んだ。
心拍数が一気に上がり、咄嗟に振り払ってしまう。
「何?
ボクは酔っぱらいの相手をしてるほど暇じゃないんだけど。」
掴まれた腕が熱い。
でもそのことを感じさせないように、なるべく素っ気なく、突き放すように言い放つ。
もうこれ以上彼といると、泣いてしまいそうだった。
それと同時に、彼への想いが漏れそうになってしまう。
それだけはダメ、絶対ダメ。
こんなことを伝えたとしても、困らせるだけ。
ダークマターが立ち上がった。
やっと帰ってくれる気になったのかな。
「……」
「ッ!?」
不意にトンッと肩を押された。
そんなに痛くないのに体から力が抜ける。
視界が大きく揺れて、背中に衝撃を受け思わず目をつぶった。
恐る恐る目を開けてみると、目の前にはダークマターのどアップ。
いったいどういうことなのか、ボクはベッドに押し倒されて、ダークマターに乗られていた。
「ちょっ……!何の真似!?」
「黙れ」
「んっ……!?」
ダークマターの顔が、目の前にある。
キスされた、ってことに気付いたのは、唇が離れた後だった。
「な、なななっ、どういう戦法!?」
「貴様が鈍感なのが悪い。」
半ばパニックに陥っていたボクを、ダークマターの真剣な瞳が射た。
これまで見たことがないくらいの真剣な表情に、思わず息をのむ。
「……好きなんだ。」
「え?」
囁かれたことの意味が一瞬理解できず、硬直するボクに、ダークマターはもう一度言った。
「好きだと言っているんだ。
……いい加減気づけ、馬鹿者……」
彼の言葉が、ボクの心を満たす。
顔から火がふくんじゃないか、ってくらい熱くなった。
心臓も爆発しちゃうんじゃ、って思うくらいに鼓動が早くなる。
嘘だ、と言おうとした。
でも彼の目がそれを許さなかった。
それと同時に、彼がどれだけ本気だということも、ボクへの気持ちが真実だということも物語っていた。
すごく嬉しい、飛び上がるくらい嬉しい。
彼がボクと同じ想いだったなんて、思ってもみなかったんだ。
なのに、いざこうなるとどうしたらいいのかわからない。
「ボ、ボクだって……ホントは……」
自分の想いも伝えなきゃ。
そう思ってもしどろもどろになっちゃって、うまく言葉に出せない。
言い終わらないうちに、また口付けられた。
今度はさっきのとは違い、比べ物にならないくらい深く、熱い。
熱い舌が唇を割り開き、ボクの口内を犯す。
身体がゾクゾクして、頭がどうにかなりそう。
どれくらいの時間だったかなんてわからない。
若干の名残惜しさを残しながら、唇は離れた。
「……ポップスターより、貴様が欲しい……」
ダークマターがボクの首をペロリと舐めた。
今まで感じたことの無い感覚に、短い悲鳴が漏れる。
そのまま顔を埋めたまま、彼の手がするりと身体のラインをなぞる。
優しい手つきにぞくりと感じていると、手が服の中に潜りこもうとしてきた。
「あっ、ちょ、まだそれは早いよぉっ……!」
彼の意図を察し抵抗を試みるも、うまく体に力が入らない。
このままでは彼の思うがままにされちゃう。
でも、それでもいいかも……
抵抗を諦めて目をギュッと瞑った。
……が、ダークマターの動きが急に止まった。
何もされないことに不審に思って、ボクは目を開けた。
「おーい?」
「……」
返事もないし、動かない。
心なしか、さっきよりも体重がかかっている気がする。
「マターさーん?
どうしたのー?」
「……ぐー……」
ま、まさか……
両手でダークマターの顔を持ち上げてみると、彼は安らかに眠っていた。
「寝たんかいっ!?
なっ、なんなのっ!?
いきなりキスして、ああああんなことしようとしてっ……寝るの!?」
激昂したボクの怒鳴り声にも彼は動じず、ぐうぐう眠っている。
ボクが言うのもなんだけど、大した根性だよね。
一応立場上は天敵なんだよ?
警戒心なさすぎでしょ……。
「ね、寝るならせめて降りてよ……」
ボクはいまだに彼の下敷き。
別に苦しいとか、重いとかいうわけではないけど、落ち着かない。
好きな人にずっとのし掛かられてて、落ち着くはずはないけど。
よいしょ、と彼の身体を少しずらす。
起こさないように、できるだけ衝撃を与えないように、そうっと退けようとした。
「ぽよっ!」
なんとか降りてもらえたものの、今度は抱き寄せられた。
まさに抱き枕状態。
まさかこの人、確信犯じゃないの……?
「もう、動けないじゃん……」
ガッチリと抱き締められていて、抜け出すのは無理そう。
……抜け出す気もさらさらないんだけどね。
彼の腕の中は温かくて、優しくて……ドキドキする。
なんだか眠くなってきちゃった。
「ボクも……寝ちゃおう……」
久しぶりに感じた眠気。
今まで、ずっと苦しくて眠気なんか感じていなかったから。
ボクは目を閉じて、彼に全身を委ねた。
―――――――
―――――
――――
ズキン、と痛む頭。
頭痛で目覚めるなんて最悪だ。
目を開いても白んでうまく見えないのは二日酔い特有のそれであり、また飲み過ぎてしまったのかと痛感する。
「我、は……」
頭がぼうっとする上に記憶があやふやで何が何だかわからない。
飲み仲間のドロッチェにカービィのことで相談していたことまでは覚えているが……。
いつの間に寝てしまったのだろうか。
普段はいろいろやらかすものの、記憶はちゃんと残っているはずなのだが……。
しかも、随分と恥ずかしい夢を見ていたような気がする。
カービィに好きだとか欲しいだとか言ったり、挙句の果てにキスまでしていたような……?
そういえばここは何処だ?
やけに温かく、落ち着いた香りがするが……。
「……は?」
目を開くと、もうかすみは治っていた。
……が、それ以上に衝撃的な光景が広がっていた。
「これは、いったい……」
我の腕の中に、カービィがいた。
いったい何があったのだ!?
無防備に全身を我に預け、あろうことか安らかな寝息を立てている。
それを直視してしまい、胸が有り得ないほどに高鳴った。
「え?は?ちょっと待て、落ち着け、落ち着け、冷静になれ、クールになれダークマター!」
とりあえず、カービィを起こさないように自分の上半身を起き上がらせる。
そうでもしないとこの高鳴った心臓を、落ちつけられる気がしなかった。
この世に生を受けてかなりの年月が経っているが、こんなに混乱したことは一度もない。
ま、まさか、夢で見たのは……夢でなくて……
「んっ……」
カービィがもぞもぞと身じろぎ始めた。
どうすればいいのかわからず、おろおろするばかりの我。
ぱち、と目が開くと青い瞳と視線がぶつかった。
「おはよ!」
カービィは我にニッコリと微笑みかけた。
それは、今までに見たことないくらいに愛らしく、胸をときめかせる笑顔。
……こんな顔をしている彼女を、我はいまだかつて見たことがなかった。
「どうしたの?まだ酔ってるの?」
彼女は起き上がって、我の顔を不思議そうに……否、心配そうに覗き込んだ。
なんなんだ、いつもの彼女じゃない。
彼女はいつも私を睨み、その青い瞳には闘志が燃えていたはずなのに。
ふと、一つの不安が過った。
まさか、いや、そんなはずはない、と恐る恐る口を開く。
「つかぬことを聞くが、我……貴様に何か変なことを言ったり、したりはしていないよ…な?」
「うん、してないよ!」
よ、よかった……全身から力が抜けるくらいに安心した……!
もしあの夢の通りに好きとか欲しいとか言ったり、キスしてたりしたらどうしたらいいかわからないし、何よりあわす顔がない!
「でも、好きとか欲しいとか言ったり、キスしたりはしてたよ!」
「あっあああああっあああああ!!!!」
なんということだ!なんということだ!
穴があったら入りたい!今すぐ切腹したい!
「思いっきり変なことしてるではないか!
これ以上ないくらい!怒るぞ!我怒るぞ!
いやスマン!無理矢理してスマン!」
自分でも何が言いたいのかわからなくなっている私を見て、カービィが少し傷ついたように俯いた。
「変なことって……じゃあ、昨日言ってくれたのは嘘だったの?」
「違う!」
思わず勢いよくカービィの肩を掴んでしまった。
頭で考えるより、身体が先に動いていた。
「わ、我は……本当に、おまえのことが……っ」
好きなんだ、と言おうと思っていたのに言えなかった。
何故なら、カービィが我の唇を塞いでいたのだ。
ぎこちなく、決して上手とは言えないそれだが……何故か狂おしいほどに愛おしい。
唇が離れると、カービィは頬を紅潮させ、目を潤ませて我を見上げた。
「ボク、嬉しかったんだよ……?
マターは覚えてないかもしれなけど、ボク返事しようとしたんだよ。
……ボクも好きだよ、って。」
心が、何か温かいもので満たされていく。
「……信じられん……我らは、敵同士で……てっきり嫌われてるかとばかり……」
「ボクだって信じられないよ。
だって、ダークマターったらいつも決闘だー勝負しろーばかりだったし。」
「……それは会いに行く口実だ」
「そうだったんだ……」
ふわりと微笑んで、我に体を預けてくるカービィ。
それを嬉しいと思いながらも、一つの不安が沸き起こってきた。
「……天敵と付き合っても、大丈夫なのか?」
天敵と付き合うことにより、彼女に被害が及ばないか、彼女の立場が悪くならないか……それが不安だった。
「そういうのが絶対ないとは言い切れない。
……でも、好きになっちゃったんだからしょうがないよ。
他の人に口出しなんかさせない。
それに……」
真剣な青い瞳が、我をジッと見つめた。
そこにあるのは、揺るぎのない自信と意志。
「マターがいれば大丈夫!」
「……!」
たまらず、強く抱きしめた。
苦しいよ、と笑う彼女が愛おしい。
「ダークマターこそ大丈夫なの?」
「そんなのは今更だ。
たとえ誰にどう言われようとも、もうお前を離しはしない。」
彼女をぎゅっと抱きしめて宣言する。
……これが我の本心だった。
“星の戦士”と“ダークマター族”。
決して祝福はされないだろう。
ときには茨の道を歩むことになるかもしれない。
「ねぇ、またー」
「なんだ?」
「これからは、ずっと一緒だよ!」
「ああ。」
だが……それでもきっと、2人でなら乗り越えられる。
2人はきっと
(実は両想いってことはみんな知っていて、次の日2人はみんなに祝福されるのでした。)
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→オマケ
何度も何度も寝返りをしてしまう。
目蓋を閉じれば、思い浮かぶのは彼の顔。
駄目だ、と思うのに気持ちは募るばかり。
そろそろ寝なくちゃと思ってもう一度寝返りをしたときに、コンコンと扉が叩かれた。
こんな時間に誰だろう、と少し不審感を抱きながら扉を開け、ボクは思わず目を瞠った。
「……なに?」
外に立っていたのは、さっきまでボクが思い浮かべていた人物……ダークマターだった。
こんな時間に来るなんてことが今までに無くて困惑してしまう。
しかも強かに酔っている。
どうせまたドロッチェとでも飲んでいたのだろう。
「まさかこんな夜中に、決闘とか言い出さないよね?」
普段ボクのところにこの人が来るとしたら、ポップスター目当ての決闘か、たまに嫌味を言いに来るくらい。
ボクの質問にダークマターは首を振った。
まあそれも当然。
いくらなんでもこの時間に、しかもそんなに酔った状態で闘いなんてするはずがない。
じゃあ、いったい何の用なの?
「……話があって……」
いったいボクに何の話があるのだというのだろう。
ボクのことなんか嫌いなくせに。
そう、ボクとこの人は天敵。
ポップスターを狙うダークマター族で、ボクはポップスターを守る星の戦士。
何だかんだでゼロツーとかが遊びに来てたり、パーティーに参戦したりしてるけど、根本的には“敵”。
でも、それでも……たとえ天敵としてでも、会えることが嬉しかった。
不謹慎だとわかっていたけど、彼が来るたびに嬉しかった。
天敵にこんなに恋焦がれているなんて、星の戦士失格だ。
もしみんなが知ったらどう思うのかな。
それに、彼だってボクをそういう目で見るわけがない。
自分の目的を邪魔する存在、その程度の認識。
結ばれるはずのない関係。
だからなるべく会いたくなかった。
これ以上思いが募ったら、誰かに見透かされてしまいそうで怖かった。
だからと言って話があると言っている人を帰すわけにもいかない。
……違う、なんだかんだで少しでも一緒に居たいんだ。
矛盾しすぎていて、自分のことながら可笑しいと思う。
とりあえず優しいボクは椅子に座らせてあげて、ボクもその向かいの席に着いた。
***
あれからしばらく時間が経ったけど、ダークマターは一向に口を開こうとしない。
「……話さないなら帰ってよ。
ボクは眠いんだ。」
痺れを切らしたボクは椅子から立ち上がって、ベッドの方に歩き始めた。
本当は眠くなんかない。
焦れた胸が張り裂けそうに痛くて、とてもじゃないけど眠れる気なんてしない。
「待て。」
やっと言葉を発したダークマターがボクの腕を掴んだ。
心拍数が一気に上がり、咄嗟に振り払ってしまう。
「何?
ボクは酔っぱらいの相手をしてるほど暇じゃないんだけど。」
掴まれた腕が熱い。
でもそのことを感じさせないように、なるべく素っ気なく、突き放すように言い放つ。
もうこれ以上彼といると、泣いてしまいそうだった。
それと同時に、彼への想いが漏れそうになってしまう。
それだけはダメ、絶対ダメ。
こんなことを伝えたとしても、困らせるだけ。
ダークマターが立ち上がった。
やっと帰ってくれる気になったのかな。
「……」
「ッ!?」
不意にトンッと肩を押された。
そんなに痛くないのに体から力が抜ける。
視界が大きく揺れて、背中に衝撃を受け思わず目をつぶった。
恐る恐る目を開けてみると、目の前にはダークマターのどアップ。
いったいどういうことなのか、ボクはベッドに押し倒されて、ダークマターに乗られていた。
「ちょっ……!何の真似!?」
「黙れ」
「んっ……!?」
ダークマターの顔が、目の前にある。
キスされた、ってことに気付いたのは、唇が離れた後だった。
「な、なななっ、どういう戦法!?」
「貴様が鈍感なのが悪い。」
半ばパニックに陥っていたボクを、ダークマターの真剣な瞳が射た。
これまで見たことがないくらいの真剣な表情に、思わず息をのむ。
「……好きなんだ。」
「え?」
囁かれたことの意味が一瞬理解できず、硬直するボクに、ダークマターはもう一度言った。
「好きだと言っているんだ。
……いい加減気づけ、馬鹿者……」
彼の言葉が、ボクの心を満たす。
顔から火がふくんじゃないか、ってくらい熱くなった。
心臓も爆発しちゃうんじゃ、って思うくらいに鼓動が早くなる。
嘘だ、と言おうとした。
でも彼の目がそれを許さなかった。
それと同時に、彼がどれだけ本気だということも、ボクへの気持ちが真実だということも物語っていた。
すごく嬉しい、飛び上がるくらい嬉しい。
彼がボクと同じ想いだったなんて、思ってもみなかったんだ。
なのに、いざこうなるとどうしたらいいのかわからない。
「ボ、ボクだって……ホントは……」
自分の想いも伝えなきゃ。
そう思ってもしどろもどろになっちゃって、うまく言葉に出せない。
言い終わらないうちに、また口付けられた。
今度はさっきのとは違い、比べ物にならないくらい深く、熱い。
熱い舌が唇を割り開き、ボクの口内を犯す。
身体がゾクゾクして、頭がどうにかなりそう。
どれくらいの時間だったかなんてわからない。
若干の名残惜しさを残しながら、唇は離れた。
「……ポップスターより、貴様が欲しい……」
ダークマターがボクの首をペロリと舐めた。
今まで感じたことの無い感覚に、短い悲鳴が漏れる。
そのまま顔を埋めたまま、彼の手がするりと身体のラインをなぞる。
優しい手つきにぞくりと感じていると、手が服の中に潜りこもうとしてきた。
「あっ、ちょ、まだそれは早いよぉっ……!」
彼の意図を察し抵抗を試みるも、うまく体に力が入らない。
このままでは彼の思うがままにされちゃう。
でも、それでもいいかも……
抵抗を諦めて目をギュッと瞑った。
……が、ダークマターの動きが急に止まった。
何もされないことに不審に思って、ボクは目を開けた。
「おーい?」
「……」
返事もないし、動かない。
心なしか、さっきよりも体重がかかっている気がする。
「マターさーん?
どうしたのー?」
「……ぐー……」
ま、まさか……
両手でダークマターの顔を持ち上げてみると、彼は安らかに眠っていた。
「寝たんかいっ!?
なっ、なんなのっ!?
いきなりキスして、ああああんなことしようとしてっ……寝るの!?」
激昂したボクの怒鳴り声にも彼は動じず、ぐうぐう眠っている。
ボクが言うのもなんだけど、大した根性だよね。
一応立場上は天敵なんだよ?
警戒心なさすぎでしょ……。
「ね、寝るならせめて降りてよ……」
ボクはいまだに彼の下敷き。
別に苦しいとか、重いとかいうわけではないけど、落ち着かない。
好きな人にずっとのし掛かられてて、落ち着くはずはないけど。
よいしょ、と彼の身体を少しずらす。
起こさないように、できるだけ衝撃を与えないように、そうっと退けようとした。
「ぽよっ!」
なんとか降りてもらえたものの、今度は抱き寄せられた。
まさに抱き枕状態。
まさかこの人、確信犯じゃないの……?
「もう、動けないじゃん……」
ガッチリと抱き締められていて、抜け出すのは無理そう。
……抜け出す気もさらさらないんだけどね。
彼の腕の中は温かくて、優しくて……ドキドキする。
なんだか眠くなってきちゃった。
「ボクも……寝ちゃおう……」
久しぶりに感じた眠気。
今まで、ずっと苦しくて眠気なんか感じていなかったから。
ボクは目を閉じて、彼に全身を委ねた。
―――――――
―――――
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ズキン、と痛む頭。
頭痛で目覚めるなんて最悪だ。
目を開いても白んでうまく見えないのは二日酔い特有のそれであり、また飲み過ぎてしまったのかと痛感する。
「我、は……」
頭がぼうっとする上に記憶があやふやで何が何だかわからない。
飲み仲間のドロッチェにカービィのことで相談していたことまでは覚えているが……。
いつの間に寝てしまったのだろうか。
普段はいろいろやらかすものの、記憶はちゃんと残っているはずなのだが……。
しかも、随分と恥ずかしい夢を見ていたような気がする。
カービィに好きだとか欲しいだとか言ったり、挙句の果てにキスまでしていたような……?
そういえばここは何処だ?
やけに温かく、落ち着いた香りがするが……。
「……は?」
目を開くと、もうかすみは治っていた。
……が、それ以上に衝撃的な光景が広がっていた。
「これは、いったい……」
我の腕の中に、カービィがいた。
いったい何があったのだ!?
無防備に全身を我に預け、あろうことか安らかな寝息を立てている。
それを直視してしまい、胸が有り得ないほどに高鳴った。
「え?は?ちょっと待て、落ち着け、落ち着け、冷静になれ、クールになれダークマター!」
とりあえず、カービィを起こさないように自分の上半身を起き上がらせる。
そうでもしないとこの高鳴った心臓を、落ちつけられる気がしなかった。
この世に生を受けてかなりの年月が経っているが、こんなに混乱したことは一度もない。
ま、まさか、夢で見たのは……夢でなくて……
「んっ……」
カービィがもぞもぞと身じろぎ始めた。
どうすればいいのかわからず、おろおろするばかりの我。
ぱち、と目が開くと青い瞳と視線がぶつかった。
「おはよ!」
カービィは我にニッコリと微笑みかけた。
それは、今までに見たことないくらいに愛らしく、胸をときめかせる笑顔。
……こんな顔をしている彼女を、我はいまだかつて見たことがなかった。
「どうしたの?まだ酔ってるの?」
彼女は起き上がって、我の顔を不思議そうに……否、心配そうに覗き込んだ。
なんなんだ、いつもの彼女じゃない。
彼女はいつも私を睨み、その青い瞳には闘志が燃えていたはずなのに。
ふと、一つの不安が過った。
まさか、いや、そんなはずはない、と恐る恐る口を開く。
「つかぬことを聞くが、我……貴様に何か変なことを言ったり、したりはしていないよ…な?」
「うん、してないよ!」
よ、よかった……全身から力が抜けるくらいに安心した……!
もしあの夢の通りに好きとか欲しいとか言ったり、キスしてたりしたらどうしたらいいかわからないし、何よりあわす顔がない!
「でも、好きとか欲しいとか言ったり、キスしたりはしてたよ!」
「あっあああああっあああああ!!!!」
なんということだ!なんということだ!
穴があったら入りたい!今すぐ切腹したい!
「思いっきり変なことしてるではないか!
これ以上ないくらい!怒るぞ!我怒るぞ!
いやスマン!無理矢理してスマン!」
自分でも何が言いたいのかわからなくなっている私を見て、カービィが少し傷ついたように俯いた。
「変なことって……じゃあ、昨日言ってくれたのは嘘だったの?」
「違う!」
思わず勢いよくカービィの肩を掴んでしまった。
頭で考えるより、身体が先に動いていた。
「わ、我は……本当に、おまえのことが……っ」
好きなんだ、と言おうと思っていたのに言えなかった。
何故なら、カービィが我の唇を塞いでいたのだ。
ぎこちなく、決して上手とは言えないそれだが……何故か狂おしいほどに愛おしい。
唇が離れると、カービィは頬を紅潮させ、目を潤ませて我を見上げた。
「ボク、嬉しかったんだよ……?
マターは覚えてないかもしれなけど、ボク返事しようとしたんだよ。
……ボクも好きだよ、って。」
心が、何か温かいもので満たされていく。
「……信じられん……我らは、敵同士で……てっきり嫌われてるかとばかり……」
「ボクだって信じられないよ。
だって、ダークマターったらいつも決闘だー勝負しろーばかりだったし。」
「……それは会いに行く口実だ」
「そうだったんだ……」
ふわりと微笑んで、我に体を預けてくるカービィ。
それを嬉しいと思いながらも、一つの不安が沸き起こってきた。
「……天敵と付き合っても、大丈夫なのか?」
天敵と付き合うことにより、彼女に被害が及ばないか、彼女の立場が悪くならないか……それが不安だった。
「そういうのが絶対ないとは言い切れない。
……でも、好きになっちゃったんだからしょうがないよ。
他の人に口出しなんかさせない。
それに……」
真剣な青い瞳が、我をジッと見つめた。
そこにあるのは、揺るぎのない自信と意志。
「マターがいれば大丈夫!」
「……!」
たまらず、強く抱きしめた。
苦しいよ、と笑う彼女が愛おしい。
「ダークマターこそ大丈夫なの?」
「そんなのは今更だ。
たとえ誰にどう言われようとも、もうお前を離しはしない。」
彼女をぎゅっと抱きしめて宣言する。
……これが我の本心だった。
“星の戦士”と“ダークマター族”。
決して祝福はされないだろう。
ときには茨の道を歩むことになるかもしれない。
「ねぇ、またー」
「なんだ?」
「これからは、ずっと一緒だよ!」
「ああ。」
だが……それでもきっと、2人でなら乗り越えられる。
2人はきっと
(実は両想いってことはみんな知っていて、次の日2人はみんなに祝福されるのでした。)
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