甘いのはチョコか、それとも……
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今日は2月14日、バレンタインデーだ。
カービィは毎年私のためにチョコレートを作ってくれる。
長の職権乱用により、いつもより幾分早めに訓練を終えた私は彼女を探して城の廊下を歩いていた。
彼女はどこにいるのだろう?
自ら貰いに行くのは少々子どもっぽい気もするが……そんなことがどうでもよくなる程度には、早く会いたくて仕方がない。
今年は何を作ってくれたのだろうか。
あの子が一生懸命料理をしている姿を想像するだけで、心にじわりと温かいものが広がっていく。
それが顔か声にでも出ていたのだろうか、すれ違うワドルディがギョッとした顔をしていた。
「めーた?」
どこからか彼女の声がした。
辺りを見渡すと、視界の端に桃色を捉えた。
毛先が柱の影からチラッと見えている。
思わず笑みが漏れそうになるが、ここは我慢我慢。
「おや?どこに隠れている?
出ておいで」
彼女がいる柱にわざと背を向けてそう問えば、少しずつにじり寄ってくる気配を感じた。
何をしようと考えているのかくらい、すぐにわかる。
が、ここはあえて乗ってあげよう。
「こっちだよ!」
勢いよく後ろから飛びついてきた。
予測はしていたがなかなか激しいタックルで、思わずバランスを崩しそうになる……が、そこは男の意地で耐えた。
当の本人は悪びれもせず「えへへー」とご機嫌だ。
……可愛いから許してしまう辺り、自分でも相当惚れ込んでいると自覚する瞬間だ。
「今日もお仕事お疲れ様!」
「ああ、ありがとう。
それで、そなたはこんなところで何をしているんだ?」
「もう、わかってるくせに!」
向き合ってからわざとらしく問えば、恥じらいながら私の胸に顔を埋める。
ほんのりと顔を染めて上目遣い。
それは反則だ、いくらなんでも可愛いが過ぎる。
思わず頬が緩みそうになってしまった――いや、緩んでいない自信がない。
しかし折角(?)だから、もう少しいじめてみようか。
「ほう……なんのことやら?
私には皆目見当がつかないな」
「メタの意地悪!
えっとね、今日はメタに渡したいものがあるんだ。
はい!ハッピーバレンタイン!」
「ありがとう。
ふふ、今年も作ってくれたんだな?」
ピンク色の包装紙と金色のリボンで飾られた箱を受け取りながらそう聞けば、コクリと頷く。
……が、珍しいことに自信がなさそうだ。
「だって……みんなのお世話してたら、自分のにかける時間があんまり無くなっちゃって……」
「友達と作ったのか?」
「うん!
この前たくさん女の子たちが来てたでしょ?
そのときにみんなで作ったんだ!」
なるほど。
普段ポップスターにはいないリボン殿や酸s…ゴホンゴホン、ゼロツーを見かけたのも、それのせいだったのか。
そう問うてみれば、元気良く頷いた。
「ボクとリボンちゃんとでみんなに教えたんだよ!」
なるほど。
2人共料理が得意だからいい先生になっただろう。
当たり前のようにゼロツーが入り込んでいるのはもう今更だからあまり気にしないことにする。
立場としてはアレだが、仲良くやれているならまあいいだろう。
闇の種族だからとあえて排除する理由もあるまい。
「でも大変だったんだよー?
アドは分量テキトーだし、チョコ溶かしてって言ったら電子レンジにでチンしてたし。
ドロシアのなんてちょっとボクには理解できない芸術的なカラーリングに仕上がってたの……正直この世のモノとは思えなかったねアレは。
二人とも絵はすごく上手なのにどうしてああなっちゃうんだろうね?
マルクとマホロアはつまみ食いに来るし……挙句の果てにはポップスターの危機でゼロと戦闘」
まぁ楽しかったけどね、と笑うカービィ。
まずメンバーがカオスな気がするが……
前半もかなりアレだが、最後どうしてそうなった!?
「いったい何をどうすれば料理講座から一つの星の危機に発展するのだ……!?」
「ぽよ……ゼロがね……
『お兄ちゃん以外の男にチョコをあげるなんて許さない!こんな世界ぶっ壊してやる!
ついでにポップスター略奪してやる!』って大荒れ。
そこからはみんなでバトルだよ……」
……なぜだろう、いともたやすく想像ができた。
あの重度のシスコンのゼロならばそれくらいはやってのけそうだ。
そしていまだにポップスター略奪を諦めていないのか。
本当に懲りないやつだな……と溜息が漏れる。
「まぁボクが負けるはずないし、今回は酸素が宥めてくれたんだけどね」
えっへんと胸を張るカービィの頭を撫でると、嬉しそうにはにかんだ。
「ところでその努力の結晶、食べてもいいか?」
「えっ、今!?」
「ちょうど腹が減っていたんだ」
リボンをシュルリと解き、包み紙も破かないように丁寧に剥ぐ。
箱を開ければ、中に入っていたのはトリュフとマフィン。
形も整っていてとても美味しそうだ。
「ぽよよよよよ、美味しくないかもよ!」
「うん、美味い」
「もう食べてる!?」
少し行儀が悪いのは否めないが、早く食べたかった。
トリュフは口の中でとろけて、甘さもちょうどいい。
こんなに美味しいのだから自信を持てばいいのに……それほど料理教室は悲惨な状況だったわけか。
「ほほほほほんとに大丈夫?変な味とかしなっ」
「もちろん」
身体を引き寄せてカービィの唇を塞ぐ。
不意打ちに驚いたようで、「ぽよ!?」と声が漏れた。
唇を離せば、真っ赤に染まった顔。
……私は一日に何度カービィのことを可愛いと思えば気が済むのだろうか。
「カービィ、ありがとう。
残りは部屋でゆっくりいただこう。
……そなたも来るだろう?」
「ん……でもその前に、もっかい……して?」
彼女の腕が首に回された。
私を見つめる青い瞳は、期待に満ちている。
「部屋に着いたら一回では済まないぞ?」
更に強く身体を引き寄せて、口付けた。
甘いのはチョコなのか、それとも……
「……卿、きっとここが廊下だってこと忘れてるんだろうな……」
「クソッ……リア充め……!」
NEXT
→あとがき
カービィは毎年私のためにチョコレートを作ってくれる。
長の職権乱用により、いつもより幾分早めに訓練を終えた私は彼女を探して城の廊下を歩いていた。
彼女はどこにいるのだろう?
自ら貰いに行くのは少々子どもっぽい気もするが……そんなことがどうでもよくなる程度には、早く会いたくて仕方がない。
今年は何を作ってくれたのだろうか。
あの子が一生懸命料理をしている姿を想像するだけで、心にじわりと温かいものが広がっていく。
それが顔か声にでも出ていたのだろうか、すれ違うワドルディがギョッとした顔をしていた。
「めーた?」
どこからか彼女の声がした。
辺りを見渡すと、視界の端に桃色を捉えた。
毛先が柱の影からチラッと見えている。
思わず笑みが漏れそうになるが、ここは我慢我慢。
「おや?どこに隠れている?
出ておいで」
彼女がいる柱にわざと背を向けてそう問えば、少しずつにじり寄ってくる気配を感じた。
何をしようと考えているのかくらい、すぐにわかる。
が、ここはあえて乗ってあげよう。
「こっちだよ!」
勢いよく後ろから飛びついてきた。
予測はしていたがなかなか激しいタックルで、思わずバランスを崩しそうになる……が、そこは男の意地で耐えた。
当の本人は悪びれもせず「えへへー」とご機嫌だ。
……可愛いから許してしまう辺り、自分でも相当惚れ込んでいると自覚する瞬間だ。
「今日もお仕事お疲れ様!」
「ああ、ありがとう。
それで、そなたはこんなところで何をしているんだ?」
「もう、わかってるくせに!」
向き合ってからわざとらしく問えば、恥じらいながら私の胸に顔を埋める。
ほんのりと顔を染めて上目遣い。
それは反則だ、いくらなんでも可愛いが過ぎる。
思わず頬が緩みそうになってしまった――いや、緩んでいない自信がない。
しかし折角(?)だから、もう少しいじめてみようか。
「ほう……なんのことやら?
私には皆目見当がつかないな」
「メタの意地悪!
えっとね、今日はメタに渡したいものがあるんだ。
はい!ハッピーバレンタイン!」
「ありがとう。
ふふ、今年も作ってくれたんだな?」
ピンク色の包装紙と金色のリボンで飾られた箱を受け取りながらそう聞けば、コクリと頷く。
……が、珍しいことに自信がなさそうだ。
「だって……みんなのお世話してたら、自分のにかける時間があんまり無くなっちゃって……」
「友達と作ったのか?」
「うん!
この前たくさん女の子たちが来てたでしょ?
そのときにみんなで作ったんだ!」
なるほど。
普段ポップスターにはいないリボン殿や酸s…ゴホンゴホン、ゼロツーを見かけたのも、それのせいだったのか。
そう問うてみれば、元気良く頷いた。
「ボクとリボンちゃんとでみんなに教えたんだよ!」
なるほど。
2人共料理が得意だからいい先生になっただろう。
当たり前のようにゼロツーが入り込んでいるのはもう今更だからあまり気にしないことにする。
立場としてはアレだが、仲良くやれているならまあいいだろう。
闇の種族だからとあえて排除する理由もあるまい。
「でも大変だったんだよー?
アドは分量テキトーだし、チョコ溶かしてって言ったら電子レンジにでチンしてたし。
ドロシアのなんてちょっとボクには理解できない芸術的なカラーリングに仕上がってたの……正直この世のモノとは思えなかったねアレは。
二人とも絵はすごく上手なのにどうしてああなっちゃうんだろうね?
マルクとマホロアはつまみ食いに来るし……挙句の果てにはポップスターの危機でゼロと戦闘」
まぁ楽しかったけどね、と笑うカービィ。
まずメンバーがカオスな気がするが……
前半もかなりアレだが、最後どうしてそうなった!?
「いったい何をどうすれば料理講座から一つの星の危機に発展するのだ……!?」
「ぽよ……ゼロがね……
『お兄ちゃん以外の男にチョコをあげるなんて許さない!こんな世界ぶっ壊してやる!
ついでにポップスター略奪してやる!』って大荒れ。
そこからはみんなでバトルだよ……」
……なぜだろう、いともたやすく想像ができた。
あの重度のシスコンのゼロならばそれくらいはやってのけそうだ。
そしていまだにポップスター略奪を諦めていないのか。
本当に懲りないやつだな……と溜息が漏れる。
「まぁボクが負けるはずないし、今回は酸素が宥めてくれたんだけどね」
えっへんと胸を張るカービィの頭を撫でると、嬉しそうにはにかんだ。
「ところでその努力の結晶、食べてもいいか?」
「えっ、今!?」
「ちょうど腹が減っていたんだ」
リボンをシュルリと解き、包み紙も破かないように丁寧に剥ぐ。
箱を開ければ、中に入っていたのはトリュフとマフィン。
形も整っていてとても美味しそうだ。
「ぽよよよよよ、美味しくないかもよ!」
「うん、美味い」
「もう食べてる!?」
少し行儀が悪いのは否めないが、早く食べたかった。
トリュフは口の中でとろけて、甘さもちょうどいい。
こんなに美味しいのだから自信を持てばいいのに……それほど料理教室は悲惨な状況だったわけか。
「ほほほほほんとに大丈夫?変な味とかしなっ」
「もちろん」
身体を引き寄せてカービィの唇を塞ぐ。
不意打ちに驚いたようで、「ぽよ!?」と声が漏れた。
唇を離せば、真っ赤に染まった顔。
……私は一日に何度カービィのことを可愛いと思えば気が済むのだろうか。
「カービィ、ありがとう。
残りは部屋でゆっくりいただこう。
……そなたも来るだろう?」
「ん……でもその前に、もっかい……して?」
彼女の腕が首に回された。
私を見つめる青い瞳は、期待に満ちている。
「部屋に着いたら一回では済まないぞ?」
更に強く身体を引き寄せて、口付けた。
甘いのはチョコなのか、それとも……
「……卿、きっとここが廊下だってこと忘れてるんだろうな……」
「クソッ……リア充め……!」
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