1章
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シリウスは、アランの手を優しく引いて、校舎裏の小さな空き地へと連れていった。そこには彼の愛用の箒が一本、朝露に濡れて光っていた。
「乗ってみるか?」と、シリウスはいたずらっぽく微笑む。
アランは少し戸惑いながらも、うなずいた。箒にまたがるのは初めてだった。これまで何度か授業で乗ったことはあったが、どうしても浮遊感が苦手で、いつも地面を離れる瞬間に心がすくんだ。
けれど、今日は違う。シリウスがすぐ後ろから支えてくれる。
「しっかりつかまれよ」と彼が優しく声をかけると、アランは思いきってシリウスの腰に両手を回した。
箒がふわりと浮かび上がる。風が頬を撫で、ローブの裾が軽やかに揺れる。アランはぎゅっとシリウスにしがみついた。彼の温もりと、しっかりとした背中の感触が、どんなお守りよりも心強かった。
空は思ったよりも広く、どこまでも澄んでいた。下を見ればホグワーツの塔が小さくなり、湖の水面が銀色にきらめいている。シリウスの腕が箒を操るたび、空気が新しく切り拓かれていく。
怖さは不思議と消えていた。シリウスの背中越しに、彼が見ている世界を自分も同じ目線で見ている――そのことが、アランにはたまらなく幸福だった。
「どうだ?」とシリウスが振り返る。
アランは、風に髪をなびかせながら、思わず笑みをこぼした。
「とても、きれい……」
その声は風に溶けて、ふたりだけの秘密の音色になった。
シリウスの世界に触れた瞬間、アランの心は、どこまでも自由で、どこまでも軽やかだった。
シリウスは、まるで風とひとつになったかのように、軽やかに空を駆けていた。箒の上での動きは滑らかで、どこか楽しげで、見ているだけで胸が高鳴る。アランは、これまで何度も「自分もこんな風に箒を乗りこなせたら」と思ったことがあった。けれど、いざひとりで空に飛び立とうとすると、どうしても足がすくみ、恐怖に負けてしまっていた。
けれど今、シリウスの背中にしがみついていると、不思議と怖さは消えていった。彼の存在が、どんなお守りよりも心強く感じられた。シリウスと一緒なら、どこまでも高く、どこまでも遠くへ行ける気がした。空の青さも、風の冷たさも、すべてが新鮮で、ただただ楽しかった。
やっぱりシリウスは、アランにとって自由の象徴だった。太陽のように眩しくて、どこまでも手が届かないようで、それでも一緒にいるときだけは、世界が広がっていく気がした。
「好きだ――」
その気持ちは、空の上でさらに膨れ上がっていく。胸の奥が熱くなり、言葉にできない想いが溢れそうになる。ずっと話したかった。ずっと、こうして隣にいたかった。
シリウスの背中越しに、アランはそっと目を閉じた。風の音、シリウスの笑い声、遠くに流れる雲の影。すべてが愛おしくて、今この瞬間が永遠に続けばいいと、心から願っていた。
アランの世界は、シリウスと一緒にいるだけで、どこまでも自由で、どこまでも眩しかった。
空の上、箒の上で風に包まれながら、シリウスがふいに声を落とした。
「ずっと心配だったんだ。」
その言葉は、まるで優しい魔法のようにアランの心に染み込んだ。胸がいっぱいになり、鼓動が早くなる。シリウスの背中越しに伝わる体温と、耳元に届く低く柔らかな声。アランは、今この瞬間だけは何も恐れるものがないと感じていた。
「私も……ずっと、あなたを待ってたの。」
その言葉は、恥ずかしいと思う隙もないほど自然に、迷いなく口からこぼれた。心の奥に閉じ込めていた想いが、風に乗ってシリウスに届くような気がした。
シリウスが振り返り、驚いたようにアランの瞳を見つめる。その瞳の奥に、太陽のようなあたたかさと、どこか切なげな光が揺れていた。
空の青さ、頬を撫でる風、ふたりの間を満たす静けさ――すべてが美しく、どこまでも透明だった。アランの胸の奥で、長い間しまい込んでいた想いが、静かに、けれど確かに花開いていく。
「……ありがとう、アラン。」
シリウスの声は、優しく、そしてどこか安堵に満ちていた。アランは小さく微笑み、彼の背中にもう一度しっかりとしがみついた。
ふたりを包む空は、今までで一番広く、どこまでも自由だった。「また……連れて行ってくれる?」
アランの声は、風に溶けてしまいそうなほど小さく、それでいて切実だった。今日が最後だなんて、どうしても思いたくなかった。今この瞬間が、夢のように儚く消えてしまうのが怖かった。
シリウスは、ふっと優しく微笑んだ。空の青さをそのまま映したような、はにかむ笑顔だった。
「ああ、もちろんだ。色々連れて行ってやるからな。」
その言葉は、アランの心の奥深くまで静かに沁みていった。胸の中にあった不安や寂しさが、シリウスの笑顔と約束で、ふわりと溶けていく。
アランは、シリウスの背中にそっとしがみついた。彼の体温が、鼓動が、確かに自分のものとして感じられる。風の中で、ふたりだけの秘密の約束が結ばれたような気がした。
「幸せだな……」
心の中でそっと呟く。シリウスの隣にいるだけで、世界がこんなにも広く、優しく、輝いて見える。今日の空も、風も、すべてが特別だった。
アランの瞳に浮かんだ涙は、嬉しさと安堵の光で静かにきらめいた。
そして、ふたりを包む空は、これからもずっと続いていくように思えた。
シリウスがグリフィンドール寮の談話室に戻ると、すでに何人かの親友たちがソファや暖炉の前に集まっていた。部屋の中は夕焼けの光に包まれ、暖かい雰囲気が漂っている。だが、その空気を切り裂くように、ジェームズ・ポッターがすぐにシリウスのもとへ駆け寄ってきた。
「で、どうだったんだい?セシール嬢とは?」
ジェームズは悪戯な笑みを浮かべ、目をきらきらと輝かせている。リリーやピーターも、興味津々といった様子でこちらを見ていた。予想はしていたが、シリウスは思わず苦笑いを浮かべる。まさかここまで徹底的に質問攻めにされるとは思っていなかった。
「ちゃんと話せたさ」と、シリウスは肩をすくめて答えた。
「何を話したのかって聞いてるんだよ」と、ジェームズがさらに身を乗り出す。ピーターも「そうそう、どんな話?」と合いの手を入れる。
シリウスは、暖炉の前の椅子に腰を下ろし、少しだけ視線を遠くにやった。アランと過ごした空の上での時間、風の匂い、彼女の笑顔――そのひとつひとつが胸の中で鮮やかに蘇る。だが、親友たちの前でそのすべてを言葉にするのは、どこか照れくさかった。
「別に、大したことは話してないよ」と、わざと素っ気なく言う。
「嘘つけ、顔がにやけてるぞ」と、ジェームズがすかさず突っ込む。リリーも「シリウスがこんな顔するの、珍しいわね」と微笑む。
「……まあ、ちょっとだけ昔の話をしただけさ。あいつ、マグルの世界に興味があるんだってさ。俺が昔、連れて行ったことを覚えててくれてた」
「へぇー、それは意外だな」とピーターが口を挟む。「スリザリンの中でも、あの子はちょっと違うって噂だよ」
「うん、そうかもしれない」とシリウスは静かにうなずいた。「でも、俺は……あいつと話してると、なんか昔に戻ったみたいな気がしたんだ」
ジェームズは、少しだけ真剣な表情になり、シリウスの肩をぽんと叩いた。「よかったじゃないか。お前、ずっと気にしてただろ?」
「……まあな」
それだけで、十分だった。親友たちは、からかいながらもどこか温かい目でシリウスを見守っていた。シリウスは、暖炉の炎を見つめながら、アランと交わした約束と、彼女の笑顔を心の中でそっと抱きしめた。
談話室のざわめきの中、シリウスの胸の奥には、静かな幸福感がじんわりと広がっていた。
シリウスはアランと過ごした日の余韻を胸に、次はどこへ連れて行こうかと考えるのがすっかり日課になっていた。授業の合間や夜の寮のベッドの上でも、ふとした瞬間にアランが喜ぶ顔を思い浮かべては、さまざまな案を思い描いてしまう。
たとえば、禁じられた森の探検。ホグワーツの敷地内に広がるこの森は、闇と神秘に包まれ、ケンタウルスやユニコーン、アクロマンチュラなど多彩な魔法生物が棲む不思議な場所だ。危険も多いが、シリウスにとっては子どもの頃からの冒険心をくすぐる場所だった。ただ、アランが怖がるかもしれないという思いもあり、誘うべきかどうか迷ってしまう。
他にも、ホグズミード村の小さなカフェでバタービールを飲むのもいい。冬なら三本の箒で暖炉の前に座り、外の雪景色を眺めながらゆっくり話すのも素敵だろう。湖のほとりでピクニックをしたり、天文台で星を眺めたり、ホグワーツの塔の屋上で夜風に吹かれながら語り合うのもきっと楽しいはずだ。
時には、クィディッチの試合観戦や、魔法生物飼育学の授業で珍しい生き物を一緒に見に行くのもアランが喜ぶかもしれない。マグルの世界に興味がある彼女のために、ホグワーツの外へこっそり抜け出して、マグルの街を再び案内することも考えた。
シリウスの頭の中には、アランと一緒に過ごしたい場所ややりたいことが次々と浮かんでくる。どの案も、アランの笑顔を思い浮かべるだけで胸が高鳴った。
「禁じられた森は危ないかもしれないけど、俺がいれば大丈夫だって思ってもらえるかな……。でも、怖がらせたくはないし……」
そんなふうに悩みながらも、シリウスは毎日、アランのために新しい冒険の計画を練るのが何よりの楽しみになっていた。シリウスがアランのために次の行き先を考えていること――その様子を、親友たちはすぐに見抜いていた。グリフィンドール寮の談話室、シリウスが何気なく地図や校内案内書を眺めていると、ジェームズ・ポッターがすかさず横から覗き込んでくる。
「なあ、ここなんてどうだい?湖のほとりでピクニックとかさ。あとは天文台もいいぞ、夜景がきれいだし」と、ジェームズは乗り気で次々と提案してくれる。彼の目はどこか楽しげで、シリウスの恋路を本気で応援している様子が伝わってくる。
リーマス・ルーピンも、やや呆れたような微笑みを浮かべながら忠告を忘れない。「減点を喰らわない程度にしておきなよ。先生たちも最近は目を光らせてるし……」と、冷静に現実的なアドバイスを付け加える。
ピーターも「でも、禁じられた森はやめておいた方がいいよ。あそこは本当に危ないし……」と小声で心配そうに言う。
シリウスは、そんな親友たちの反応に少し照れながらも、内心とても嬉しかった。自分の気持ちをからかうのではなく、真剣に相談に乗ってくれる――それが、ジェームズやリーマスたちとの強い絆だった。
「まあ、アランが喜びそうな場所を選ぶさ。減点は……ほどほどにしておくよ」と、シリウスは肩をすくめて笑う。
ジェームズが「そうこなくっちゃ!」と背中を叩き、リーマスも「いい時間になるといいね」と静かに励ましてくれる。
こうして、シリウスの毎日は親友たちの温かい助言と、アランへの新しい冒険の計画でますます彩られていった。
「乗ってみるか?」と、シリウスはいたずらっぽく微笑む。
アランは少し戸惑いながらも、うなずいた。箒にまたがるのは初めてだった。これまで何度か授業で乗ったことはあったが、どうしても浮遊感が苦手で、いつも地面を離れる瞬間に心がすくんだ。
けれど、今日は違う。シリウスがすぐ後ろから支えてくれる。
「しっかりつかまれよ」と彼が優しく声をかけると、アランは思いきってシリウスの腰に両手を回した。
箒がふわりと浮かび上がる。風が頬を撫で、ローブの裾が軽やかに揺れる。アランはぎゅっとシリウスにしがみついた。彼の温もりと、しっかりとした背中の感触が、どんなお守りよりも心強かった。
空は思ったよりも広く、どこまでも澄んでいた。下を見ればホグワーツの塔が小さくなり、湖の水面が銀色にきらめいている。シリウスの腕が箒を操るたび、空気が新しく切り拓かれていく。
怖さは不思議と消えていた。シリウスの背中越しに、彼が見ている世界を自分も同じ目線で見ている――そのことが、アランにはたまらなく幸福だった。
「どうだ?」とシリウスが振り返る。
アランは、風に髪をなびかせながら、思わず笑みをこぼした。
「とても、きれい……」
その声は風に溶けて、ふたりだけの秘密の音色になった。
シリウスの世界に触れた瞬間、アランの心は、どこまでも自由で、どこまでも軽やかだった。
シリウスは、まるで風とひとつになったかのように、軽やかに空を駆けていた。箒の上での動きは滑らかで、どこか楽しげで、見ているだけで胸が高鳴る。アランは、これまで何度も「自分もこんな風に箒を乗りこなせたら」と思ったことがあった。けれど、いざひとりで空に飛び立とうとすると、どうしても足がすくみ、恐怖に負けてしまっていた。
けれど今、シリウスの背中にしがみついていると、不思議と怖さは消えていった。彼の存在が、どんなお守りよりも心強く感じられた。シリウスと一緒なら、どこまでも高く、どこまでも遠くへ行ける気がした。空の青さも、風の冷たさも、すべてが新鮮で、ただただ楽しかった。
やっぱりシリウスは、アランにとって自由の象徴だった。太陽のように眩しくて、どこまでも手が届かないようで、それでも一緒にいるときだけは、世界が広がっていく気がした。
「好きだ――」
その気持ちは、空の上でさらに膨れ上がっていく。胸の奥が熱くなり、言葉にできない想いが溢れそうになる。ずっと話したかった。ずっと、こうして隣にいたかった。
シリウスの背中越しに、アランはそっと目を閉じた。風の音、シリウスの笑い声、遠くに流れる雲の影。すべてが愛おしくて、今この瞬間が永遠に続けばいいと、心から願っていた。
アランの世界は、シリウスと一緒にいるだけで、どこまでも自由で、どこまでも眩しかった。
空の上、箒の上で風に包まれながら、シリウスがふいに声を落とした。
「ずっと心配だったんだ。」
その言葉は、まるで優しい魔法のようにアランの心に染み込んだ。胸がいっぱいになり、鼓動が早くなる。シリウスの背中越しに伝わる体温と、耳元に届く低く柔らかな声。アランは、今この瞬間だけは何も恐れるものがないと感じていた。
「私も……ずっと、あなたを待ってたの。」
その言葉は、恥ずかしいと思う隙もないほど自然に、迷いなく口からこぼれた。心の奥に閉じ込めていた想いが、風に乗ってシリウスに届くような気がした。
シリウスが振り返り、驚いたようにアランの瞳を見つめる。その瞳の奥に、太陽のようなあたたかさと、どこか切なげな光が揺れていた。
空の青さ、頬を撫でる風、ふたりの間を満たす静けさ――すべてが美しく、どこまでも透明だった。アランの胸の奥で、長い間しまい込んでいた想いが、静かに、けれど確かに花開いていく。
「……ありがとう、アラン。」
シリウスの声は、優しく、そしてどこか安堵に満ちていた。アランは小さく微笑み、彼の背中にもう一度しっかりとしがみついた。
ふたりを包む空は、今までで一番広く、どこまでも自由だった。「また……連れて行ってくれる?」
アランの声は、風に溶けてしまいそうなほど小さく、それでいて切実だった。今日が最後だなんて、どうしても思いたくなかった。今この瞬間が、夢のように儚く消えてしまうのが怖かった。
シリウスは、ふっと優しく微笑んだ。空の青さをそのまま映したような、はにかむ笑顔だった。
「ああ、もちろんだ。色々連れて行ってやるからな。」
その言葉は、アランの心の奥深くまで静かに沁みていった。胸の中にあった不安や寂しさが、シリウスの笑顔と約束で、ふわりと溶けていく。
アランは、シリウスの背中にそっとしがみついた。彼の体温が、鼓動が、確かに自分のものとして感じられる。風の中で、ふたりだけの秘密の約束が結ばれたような気がした。
「幸せだな……」
心の中でそっと呟く。シリウスの隣にいるだけで、世界がこんなにも広く、優しく、輝いて見える。今日の空も、風も、すべてが特別だった。
アランの瞳に浮かんだ涙は、嬉しさと安堵の光で静かにきらめいた。
そして、ふたりを包む空は、これからもずっと続いていくように思えた。
シリウスがグリフィンドール寮の談話室に戻ると、すでに何人かの親友たちがソファや暖炉の前に集まっていた。部屋の中は夕焼けの光に包まれ、暖かい雰囲気が漂っている。だが、その空気を切り裂くように、ジェームズ・ポッターがすぐにシリウスのもとへ駆け寄ってきた。
「で、どうだったんだい?セシール嬢とは?」
ジェームズは悪戯な笑みを浮かべ、目をきらきらと輝かせている。リリーやピーターも、興味津々といった様子でこちらを見ていた。予想はしていたが、シリウスは思わず苦笑いを浮かべる。まさかここまで徹底的に質問攻めにされるとは思っていなかった。
「ちゃんと話せたさ」と、シリウスは肩をすくめて答えた。
「何を話したのかって聞いてるんだよ」と、ジェームズがさらに身を乗り出す。ピーターも「そうそう、どんな話?」と合いの手を入れる。
シリウスは、暖炉の前の椅子に腰を下ろし、少しだけ視線を遠くにやった。アランと過ごした空の上での時間、風の匂い、彼女の笑顔――そのひとつひとつが胸の中で鮮やかに蘇る。だが、親友たちの前でそのすべてを言葉にするのは、どこか照れくさかった。
「別に、大したことは話してないよ」と、わざと素っ気なく言う。
「嘘つけ、顔がにやけてるぞ」と、ジェームズがすかさず突っ込む。リリーも「シリウスがこんな顔するの、珍しいわね」と微笑む。
「……まあ、ちょっとだけ昔の話をしただけさ。あいつ、マグルの世界に興味があるんだってさ。俺が昔、連れて行ったことを覚えててくれてた」
「へぇー、それは意外だな」とピーターが口を挟む。「スリザリンの中でも、あの子はちょっと違うって噂だよ」
「うん、そうかもしれない」とシリウスは静かにうなずいた。「でも、俺は……あいつと話してると、なんか昔に戻ったみたいな気がしたんだ」
ジェームズは、少しだけ真剣な表情になり、シリウスの肩をぽんと叩いた。「よかったじゃないか。お前、ずっと気にしてただろ?」
「……まあな」
それだけで、十分だった。親友たちは、からかいながらもどこか温かい目でシリウスを見守っていた。シリウスは、暖炉の炎を見つめながら、アランと交わした約束と、彼女の笑顔を心の中でそっと抱きしめた。
談話室のざわめきの中、シリウスの胸の奥には、静かな幸福感がじんわりと広がっていた。
シリウスはアランと過ごした日の余韻を胸に、次はどこへ連れて行こうかと考えるのがすっかり日課になっていた。授業の合間や夜の寮のベッドの上でも、ふとした瞬間にアランが喜ぶ顔を思い浮かべては、さまざまな案を思い描いてしまう。
たとえば、禁じられた森の探検。ホグワーツの敷地内に広がるこの森は、闇と神秘に包まれ、ケンタウルスやユニコーン、アクロマンチュラなど多彩な魔法生物が棲む不思議な場所だ。危険も多いが、シリウスにとっては子どもの頃からの冒険心をくすぐる場所だった。ただ、アランが怖がるかもしれないという思いもあり、誘うべきかどうか迷ってしまう。
他にも、ホグズミード村の小さなカフェでバタービールを飲むのもいい。冬なら三本の箒で暖炉の前に座り、外の雪景色を眺めながらゆっくり話すのも素敵だろう。湖のほとりでピクニックをしたり、天文台で星を眺めたり、ホグワーツの塔の屋上で夜風に吹かれながら語り合うのもきっと楽しいはずだ。
時には、クィディッチの試合観戦や、魔法生物飼育学の授業で珍しい生き物を一緒に見に行くのもアランが喜ぶかもしれない。マグルの世界に興味がある彼女のために、ホグワーツの外へこっそり抜け出して、マグルの街を再び案内することも考えた。
シリウスの頭の中には、アランと一緒に過ごしたい場所ややりたいことが次々と浮かんでくる。どの案も、アランの笑顔を思い浮かべるだけで胸が高鳴った。
「禁じられた森は危ないかもしれないけど、俺がいれば大丈夫だって思ってもらえるかな……。でも、怖がらせたくはないし……」
そんなふうに悩みながらも、シリウスは毎日、アランのために新しい冒険の計画を練るのが何よりの楽しみになっていた。シリウスがアランのために次の行き先を考えていること――その様子を、親友たちはすぐに見抜いていた。グリフィンドール寮の談話室、シリウスが何気なく地図や校内案内書を眺めていると、ジェームズ・ポッターがすかさず横から覗き込んでくる。
「なあ、ここなんてどうだい?湖のほとりでピクニックとかさ。あとは天文台もいいぞ、夜景がきれいだし」と、ジェームズは乗り気で次々と提案してくれる。彼の目はどこか楽しげで、シリウスの恋路を本気で応援している様子が伝わってくる。
リーマス・ルーピンも、やや呆れたような微笑みを浮かべながら忠告を忘れない。「減点を喰らわない程度にしておきなよ。先生たちも最近は目を光らせてるし……」と、冷静に現実的なアドバイスを付け加える。
ピーターも「でも、禁じられた森はやめておいた方がいいよ。あそこは本当に危ないし……」と小声で心配そうに言う。
シリウスは、そんな親友たちの反応に少し照れながらも、内心とても嬉しかった。自分の気持ちをからかうのではなく、真剣に相談に乗ってくれる――それが、ジェームズやリーマスたちとの強い絆だった。
「まあ、アランが喜びそうな場所を選ぶさ。減点は……ほどほどにしておくよ」と、シリウスは肩をすくめて笑う。
ジェームズが「そうこなくっちゃ!」と背中を叩き、リーマスも「いい時間になるといいね」と静かに励ましてくれる。
こうして、シリウスの毎日は親友たちの温かい助言と、アランへの新しい冒険の計画でますます彩られていった。
