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その女は部屋に到着した。今日がついにその日だ。彼女は体にフィットした黒色のジャンプスーツに全身を包み、鈍色に輝く円筒状の機械の前に佇んでいる。部屋の中央に鎮座するその機械からは無数のコードが伸び、壁付のまた別の機械に繋がっている。部屋全体が大きなコンピューターのようだった。
「僕の可愛い娘……気を付けて行ってくるんだよ。」
スーツを着た男が女に近づく。彼女のウェーブがかった栗色の髪を一房取り、そのまま愛おしそうに口づけた。
「お父様。」
彼女はにこりと笑い、父と呼んだその男に向き直る。
「ほら。行ってきますの挨拶は?」
「ええ、もちろん。」
彼女は父に一歩近づき、彼の唇に自分のそれを押し付けた。男は目を開けたまま、彼女の伏せた睫毛を眺める。先ほどまで共にベッドにいたというのに、もう欲しくなる。男は女の腰を撫でた。
「行ってきます、お父様。」
「行ってらっしゃい。……期待しているよ。」
彼女は大きな荷物を抱えて円筒の中に入り、ちょうど正面にある小窓から父に向けて微笑む。作動音と共に部屋全体がまばゆい光に包まれた。
この装置を動かすとき、男はあまりの眩しさにいつも顔を背けてしまう。そして次に彼が中を確認したときには、入っていた者は例外なく消えるのだ。
もちろん女も、すでにそこから消えた後だった。
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