第一章
2026年5月25日、ワールドカップ北中米大会前の、日本代表が千葉市内のトレーニングセンターに集まり始めた。
今回から代表専属シェフの推薦で、管理栄養士として野上真琴(のがみ まこと) 28歳が就任した。
一週間後のワールドカップ直前の親善試合に向けて28日、海外組も代表に合流した。
スペインでプレーする柴原直樹(しばはら なおき)も、早速到着後のメディカルチェックで真琴と初対面した。
海外リーグでの連戦。
スペインからの長時間移動で、疲れ気味の直樹。
センターのメディカルルーム。
長時間のフライトを終えた選手たちが順番にメディカルチェックを受けている。
そしてーーー
『コンコン』
ドアをノックされる。
「はい、どうぞ。」
ゆっくりとドアが開くと、長身の直樹が入ってきた。
少し疲れた表情を浮かべている。
「お疲れさまです。野上真琴です。今回から代表の栄養管理を担当します。」
「柴原です。よろしくお願いします。」
メディカルチェックの結果を真琴に渡し、ソファに座る。
「スペインから直行ですか?」
真琴も椅子に座った。
直樹は、ふと爽やかで、ほんのり甘い、良い香りを感じた。
長時間の移動で重かった頭が、一瞬だけ軽くなるような気がした。
「はい。昨日試合が終わって、そのまま移動でした。」
直樹は一つ小さいあくびをしたが、『あ、マズイ。』と途中であくびを殺した。
真琴はタブレットを見ながらクスッと笑って『お疲れ様です。』と返した。
タブレットで直樹の数値を確認する。
体重、筋肉量、水分量。
海外組の中でもコンディション管理が優秀だと聞いていたが、やはり数値は安定している。
しかしーーー
「移動の影響だと思うんですけど少し脱水気味ですね。今日は練習に参加しますか?」
「軽くやろうと思ってます。」
「じゃぁ、後で電解質多めのドリンク用意しますね。」
「ありがとうございます。」
「あと夕食。絶対におかわりしてください。」
「え?」
「今の状態だとエネルギー不足です。」
「いや、そんな食べる方じゃないんで……。」
「はい……知ってます。」
「え?」
「スペインでの試合映像も見ましたし、普段の食事データも確認済みです。」
「えー、流石っすね。」
「それが私の仕事ですよ。」
少しだけ笑いが起きる。
初対面なのに不思議と緊張感がない。
「皆さんを試合の日に一番いい状態で送り出すために頑張ります!」
直樹の表情が少し柔らかくなる。
長い移動で張り詰めていた気持ちがほぐれていく。
「ありがとうございます。頼りにしてます。よろしくお願いします。」
(こういう言葉をさらっと言える人なんだ。)
直樹に対して少し親近感が湧く。
「じゃぁ、今日の夕食、ちゃんと食べてくださいね。」
「わかりました。」
「では、以上です。」
直樹は立ち上がりながら『ありがとうございました。』と言いドアへ向かいかけて、ふと振り返った。
「後で夕飯チェックして下さい。」
次の選手のデータを準備していた手を止めて直樹を見る。
「わかりました。」
柔らかい笑顔で答える真琴に好印象を覚えた。

今回から代表専属シェフの推薦で、管理栄養士として野上真琴(のがみ まこと) 28歳が就任した。
一週間後のワールドカップ直前の親善試合に向けて28日、海外組も代表に合流した。
スペインでプレーする柴原直樹(しばはら なおき)も、早速到着後のメディカルチェックで真琴と初対面した。
海外リーグでの連戦。
スペインからの長時間移動で、疲れ気味の直樹。
センターのメディカルルーム。
長時間のフライトを終えた選手たちが順番にメディカルチェックを受けている。
そしてーーー
『コンコン』
ドアをノックされる。
「はい、どうぞ。」
ゆっくりとドアが開くと、長身の直樹が入ってきた。
少し疲れた表情を浮かべている。
「お疲れさまです。野上真琴です。今回から代表の栄養管理を担当します。」
「柴原です。よろしくお願いします。」
メディカルチェックの結果を真琴に渡し、ソファに座る。
「スペインから直行ですか?」
真琴も椅子に座った。
直樹は、ふと爽やかで、ほんのり甘い、良い香りを感じた。
長時間の移動で重かった頭が、一瞬だけ軽くなるような気がした。
「はい。昨日試合が終わって、そのまま移動でした。」
直樹は一つ小さいあくびをしたが、『あ、マズイ。』と途中であくびを殺した。
真琴はタブレットを見ながらクスッと笑って『お疲れ様です。』と返した。
タブレットで直樹の数値を確認する。
体重、筋肉量、水分量。
海外組の中でもコンディション管理が優秀だと聞いていたが、やはり数値は安定している。
しかしーーー
「移動の影響だと思うんですけど少し脱水気味ですね。今日は練習に参加しますか?」
「軽くやろうと思ってます。」
「じゃぁ、後で電解質多めのドリンク用意しますね。」
「ありがとうございます。」
「あと夕食。絶対におかわりしてください。」
「え?」
「今の状態だとエネルギー不足です。」
「いや、そんな食べる方じゃないんで……。」
「はい……知ってます。」
「え?」
「スペインでの試合映像も見ましたし、普段の食事データも確認済みです。」
「えー、流石っすね。」
「それが私の仕事ですよ。」
少しだけ笑いが起きる。
初対面なのに不思議と緊張感がない。
「皆さんを試合の日に一番いい状態で送り出すために頑張ります!」
直樹の表情が少し柔らかくなる。
長い移動で張り詰めていた気持ちがほぐれていく。
「ありがとうございます。頼りにしてます。よろしくお願いします。」
(こういう言葉をさらっと言える人なんだ。)
直樹に対して少し親近感が湧く。
「じゃぁ、今日の夕食、ちゃんと食べてくださいね。」
「わかりました。」
「では、以上です。」
直樹は立ち上がりながら『ありがとうございました。』と言いドアへ向かいかけて、ふと振り返った。
「後で夕飯チェックして下さい。」
次の選手のデータを準備していた手を止めて直樹を見る。
「わかりました。」
柔らかい笑顔で答える真琴に好印象を覚えた。

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