｢真琴ちゃん！｣

｢はい！…痛っ！｣


想像した通り、私だけ全くできない。

バレーボール硬すぎる。人の身体にぶつけるような硬さではない。

痛みだけ感じて、ボールは地面に転がる。


｢あー…これからやから！｣


若干諦めた顔のバレー部員の子が言う。

別にこんなに下手なら出ない方がいいんだけど、人数がギリギリだからそういう訳にもいかない。

ちらっと男子の練習を見てみると、みんながプロみたいな動きをしている。


一氏くんも、かっこよくスパイクなんて決めちゃっている。



私も、頑張らないと


そう思っても、すぐに上手くなることはなかった。


そもそも基本の動きもできなくて、レシーブをしてもボールに当たらない。


いちいちみんなの練習を止めてしまって、だんだん申し訳なくなってくる。


｢本当にごめん！私、壁で練習してるからみんなはみんなでやってて！｣


バレー部の子にやり方を聞いて、壁に打ちつけてやってみる。


全く上手くはないけど、罪悪感は消えた。


そもそもこういうのは、上手い人がやるものなんだと思うけど、変に足を引っ張るよりはマシだ。


やがて授業が終わり、みんなが更衣室に向かう。

みんながお腹空いたーなんて言いながら着替えている。


確かに、もう4限目で、次はお昼


そうだ、お昼休みもずっとやっていようかな。


今の下手くそさでは、練習量が足りない。



そう思っていると、後ろから声をかけられる。

｢おい｣

｢…なに｣

一氏くんだ。


お願いだから、変なこと言わないで。

下手くそとか言われたら、立ち直れない。


思いを込めて見つめると、予想外の言葉をかけられる。

｢練習すんやろ。付き合うたる。｣

ボールをよこせと、一氏くんがジェスチャーした。